3歳の誕生日
今回は、説明じみた感じです。
うまく話の中に盛り込むことが出来ませんでした。
誤字・脱字等ございましたら、ご連絡下さい。
此処は、異世界エレンティア。
竜人達が住まうサラスのクローゼ家の屋敷では大勢の竜人達が集まり、フィニティスの3歳の誕生日が行われていた。
「フィニティス誕生日おめでとう。」
「フィーちゃん、あめでとう。」
「フィー、3歳の誕生日おめでとう。」
父、母、兄の順で祝いの言葉をくれる。
「とぉしゃま、かぁしゃま、にいしゃま・・・ありがとう。」
照れて俯きながら言葉を返すと、三人はそれぞれに微笑む。
「御父様、後からエルも来ると言っていました。」
「そうなのか?たしか任務で遠方に行っているのではなかったか?」
「それが、やっと長い任務を終えて、こちらに向かうために現地を発ったそうです。昨日手紙が届きました。予想だともうそろそろ来ても良いころだと思います。生まれた時も会いたがっていましたし。」
「そうか、体は大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思います。かなり体力ありますし、何と言っても武門ミレキア家の出身ですからね。」
「そうだな。」
そんなやり取りをしていると、足元に小さな影が近寄って来た。
「とぉさま、誰が来るの?」
「あぁ、エルローゼ。フェスの婚約者だ。」
「こんやくしゃ・・・。」
(たまに出てくる名前だと思っていたら兄様の婚約者だったんだ。会うの楽しみ。)
だが、フィニティスは同時に不安になった。
自分が生まれた家は、竜人の中でもかなりの高位の家だ。
属性の代表である”オブ”を名乗っている家である。
”竜人達が住む地域サラス”となっているが、”サラス”とは一つの国のようなものだ。
”教会・議会・長”の3つが集まり、話し合いをしてサラスを運営している。
その内の”長”とは、気が遠くなるような昔から不在の位となっている。
”長”になるためには、条件が必要だからだ。
その為、現在サラスを運営しているのは”議会”と”教会”となる。
”教会”とは、原種の竜・始まりの竜の女神を信教する宗教である。
”議会”は、それぞれの属性の代表が集まった組織のことである。
竜人は、それぞれ血統により得意な属性があり、”水・地・火・風・闇・光”の中で1番その力が色濃く出たものが、代表である”オブ”を名乗る事を許される。
その為、”オブ”は属性に一人ずつ、六人しかいない。
その六人の内の一人が、父、オズワイドなのだ。
(私も・・・婚約者、決まっているのかな。)
その不安を感じたのか、オズワイドがフィニティスに話しかける。
「フィニティス、お前の兄はエルローゼに初めて会った時に求婚したのだ。勝手に婚約者を決めるような事はないよ。竜人は直感で生涯の伴侶を決める、いつかフィニティスも解るようになる。」
「おっ御父様!?何を言い出されるのですか・・・。」
フェスニストは慌てた様子で、父の続く言葉を遮ろうとしたが間に合わない。
「いくら竜人が一目惚れの種族だからと言っても、求婚から婚約までその日の内に済ませてしまった。」
「ジョウネツテキでぇすね、にいしゃまオトコらしいです。」
「あっあぅっ」
うろたえているフェスニストを横目に話はどんどん進む。
「いいでしゅね!あこがれでしゅぅ~。どんなかたなのでしょう?」
「それは・・・・・・」
その時、部屋に扉をノックする音が響いた。
執事が扉を開く前に、外側から凄い勢いで開いた。
「失礼致します。案内も待たずに申し訳ございません。お久しぶりにございます。」
二十歳前後の女性が腰を折って挨拶していた。
筋の通った鼻梁、アーモンド形の大きな紫色の瞳、結い上げた金の髪の美しい女性だ。
「フィニティス様には、お初にお目に掛かります。エルローゼ・イス・ミレキアと申します。以後、よろしくお願い申し上げます。」
「はっはじめましゅて、フィニティス・オブ・クローゼともうしゅます。こちらこそ、よろしゅくおねがいいたしゅます。えるろーぜねぇしゃま。」
フィニティスは見蕩れてボーっとしていたが、ハッとして慌てて挨拶した。
「まあ、ありがとうございます。姉様だなんて、どうぞエルとお呼びください。」
「では、えるねぇしゃまとおよびさせてくだしゃい。」
そう言ったフィニティスを見て、エルローゼは感極まる。
(”イス”ってことは、貴族のお嬢様だぁ。お嬢様、初めて見た!それにしても竜人は美形しかいないのかな・・・背も高い人が大きいし、私も将来大きくなるのかな?)
自分のことは棚に上げて、初めて見る家族以外の上品な女性に感動を覚えていた。
竜人達に貴族の概念は無い。
あるのは、その血統がどれだけ原種の血に近いか?である。
フィニティスは「貴族」と考えたほうが判りやすい為、そのように判断するようにしている。
人間側も竜人達のように竜の血を感じ取れる能力など無い為、名と姓の間に入る名称で血統を確認、人間側でいうところの、どれだけ王家=竜に近いのか?の確認を行っている。
そのため、人間側からすれば貴族と変わらない。
濃い順に”ロード=王家・オブ=公爵、侯爵・イス=伯爵・テス=子爵、男爵”といった括りになる。
”ロード”は”長”のみに与えられるので、今のところ存在しない。
ちなみにクローゼ家は、”水”の属性の”オブ”だ。
その属性しか使えない訳ではなく、あくまでその系統の血筋だというだけだ。
髪や瞳に属性の特徴が出やすいので、大体は外見で属性が判る。
ちなみにフィニティスの家族は、父=水・母=光・兄=水である。
フィニティスは原種=始まりの竜に近いとされているため、属性はいまだ不明だ。
フィニティスがキラキラしている瞳で見上げていると、エルローゼがハッとしたように誕生日の祝辞を述べた。
「御誕生日おめでとうございます。遅くなりまして申し訳ございません、フィニティス様に見蕩れてしまいましたわ。」
フィニティスはその言葉に真っ赤になって俯いたまま言った。
「ありがとうございましゅ。ねぇさまこそ、きれいです。」
その言葉にエルローゼは、口元を押さえて後ろを向いてしまった。
「ねぇさま。ぐあいわるくなりましゅたか?」
オロオロしながらフィニティスがエルローゼを伺うが、手で覆っているため顔は見えない。
するとそのこに、父のオズワイドが声をかけた。
「エル、どうした?フィニティスが心配しているぞ。」
「オズワイド様、きちんとしたご挨拶もせず、申し訳ありません。お話には聞いていたのですが・・・やられてしまいましたわ。」
名前を出さなかったが誰を指していった言葉か、顔を覆ったまま言ったエルローゼを見れば一目瞭然だ。
「クローゼ家に居る者は、全員、不治の病に侵されて末期だ。」
そんなエルローゼへ冗談めかしてオズワルドが答える。
だが、二人の会話を聞いてはいても意味不明なフィニティスに、復活した兄のフェスニストが声を掛ける。
「フィー、向こうに美味しいケーキがあるから食べに行かない?」
「わぁい。いきましゅ。」
移動している二人に声を掛けたそうな視線が集まっているが、フェスニストがすべて遮っている。
親しい者だけでもかなりの人数がいるので、料理もかなりの豪勢さだ。
その中にあるケーキを目指して歩くフィニティスは、自然とウキウキしてしまう。
そんな姿を周りでみていた者達は、皆、微笑ましそうだ。
(なんか前世でいうところの、中世もヨーロッパってん感じよね。歴史は得意じゃなかったけど、文明もそれくらいのような気がする。それにしてもケーキは前世と少し違うけど、おいしいからなぁ~早く食べたい。)
前世では、御菓子好きが高じて洋菓子店でバイトをしていたほどである。
そんなことを思いながら兄に手を引かれてケーキがある場所に向かっていると、一人の男性が近寄ってきた。
「フェスニスト様、ご紹介していただけませんか?」
声を掛けられた瞬間、フェスニストから怒気を籠めたオーラが噴出された。
フェスニストはきつくフィニティスの手を握りしめ、男に言葉を返す。
「これは、サクト殿。わざわざ有難う御座います。」
フェスニストが冷たい言葉で答える。
(兄様・・・。でも、こちらの世界にも空気読めない人いるのね。)
今日のフィニティスは、白銀の髪を隠す為に魔術で髪を瞳と同じ青銀色に変えている。
それでも血統は隠しきれるものではないらしい、ちなみに服装はヒラヒラした薄ピンクのドレスに、同色のバラを髪に飾った女の子の格好だ。
今は生まれたときから自分の体として定着している為か、フィニティスは不思議と両性の為に両方あることがあまり気にならない。
だが、将来的に男女の違いが分かれてくる思春期、色々気にするようになるかもしれないと今から危惧している。
そもそも竜人の外見は、人間とそんなに変わらない。
尖がった耳、鋭い犬歯、だが決定的に人間と違うところがある。
それは外見と年齢が同じとは限らないことだ。
その竜人の最高潮の能力時に成長が止まり、寿命が近づくにつれて少しずす老化が進む。
それでいくと目の前の男性は、兄と同じくらいに見えるが・・・年齢は判断がつかない。
位は兄の方が上のようだが、失礼にならないように挨拶すべきかと思っていると兄が先に口を開いた。
「サクト殿には、まだまだ紹介できる年齢ではございません。」
「っ!?」
痛烈な嫌味にサクトは絶句する。
確かに血統が下位だが、こんな扱いを受けるとは思いもよらなかったのである。
フェスニストからすれば、竜人には珍しく「女好き」であり悪い評判しか聞かない、サクト・テス・イバーリに紹介するなど「ふざけるなっ!」の一言である。
サクトの父は、出来た人物で有名なのだが息子の教育には失敗したらしい。
そもそも、下位の者から上位の者へと声を掛けること事態が非常識なのである。
父親の事が無ければ今日も招待などされなかったのだが、本人は自分の能力なら当たり前と過信していた。
サクトが絶句している間に、兄はフィニティスを連れて歩き出した。
大丈夫なのか心配になり、後ろを振り返ろうとするが兄に話しかけられその思いも霧散する。
「フィーは、どんなケーキが良いかな?クリームがついたのが良いかな?」
「クリーム!」
フィニティスの頭の中は、ケーキのことでいっぱいだった。