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世界を渡る竜  作者: 海響
第1章:幼少期
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名前

私がいるベットを囲んだ三人を困惑しながら見ていた。



「この子に名前をつけてあげなくちゃね。この子の名前は、可愛い名前がいいわ。」

「いいえ。御母様、強くなれるような名前が良いと思います。」

「いやいや。この子の将来が明るくなるように”光”に因んだ名が良いと思う。」


発端は、母様が言い出したことだが・・・・・・・今は収拾がつかなくなってきている。

ここには4人しかいない。他にいないので誰も止めてくれない。

居たとしても誰にも止められないような気はするが・・・・・。


「強くなれるような名前って、例えばどんなの?」

「それは、”ガイアス”とか”ダンテス”とかですよ。」


「あうーーっ!!」(そんな名前はイヤーッ!!)


思わず抗議の声を上げてしまった・・・いくらなんでもそんな名前は嫌だ。

前世では女の子だったので、男らしすぎる名前は受付けない。

勝手に「兄様センス悪い」と思いながら、兄様から顔を背け「頼みは両親のみ」とばかりに二人を見上げる。


「この子も嫌だって言っているわよ。」

「御母様、分かっていませんね。これは喜びによる雄叫びです!」


兄のフェスニストが自信に満ちた様子で、拳を握り締めて言った。

その部屋に沈黙が襲い掛かったのは言うまでもない。


「―――フェス。貴方はもう黙っていなさい。」


沈黙の中、いち早く立ち直った母様が言った・・・たぶん息子のセンスの無さに思考が停止してしまったのだろう。

私の外見は、周りの言葉を聞いている限り白銀の髪に青銀色の瞳、顔は中性的(赤ん坊で中性的とかあるのかなぁ?)な造りだが、どちらかといえば可愛い部類に入るらしい。

そんな私に考えた名前だから・・・母様の衝撃も理解できる。


「何故です!?」

「・・・話をするだけ無駄だわ。」


母様はヒラヒラと手を振りながら、呆れた顔を隠しもせず兄様へ言い放った。

兄様は部屋の隅でブツブツ言っているが、この際存在を気にしないことにする。

「カッコイイのに・・・・・」とか聞こえてくるが、忘れることに集中する。




「この瞳を見てよ。キラキラしてるわ。可愛い、やっぱり可愛い名前が必要だわ。」


母様が頬に手をやり、うっとりした顔で見つめてくる。


「さっきから何を言っているんだ。参考までに一応聞くが、可愛い名前というのは?」


父様が何を聞いても大丈夫とばかりに真剣な様子で母様に話しかける。


「”エルフィーネ”が第一候補ね。」


そんな父様へ自信満々に答える母様。

兄様が誰に似たか垣間見えた気がしたが、前世が女の子だった事もあり、そんな可愛い名前は大歓迎だ。「母様センス良い。名前可愛い」と笑顔声援を送りながら見つめる。


「・・・悪くは無いが、将来の事を考えるともう少し慎重になったほうが良い。」


そうだった・・・私は両方の性を持って生まれてきてしまったのだった。

最初は驚いたがもう慣れてしまった。

慣れとは恐ろしい。

魔力もその影響で大きいらしく、どうやら竜人の原種、竜に近いらしい。

あまり詳しくは話してくれないが(あたりまえだが)、父様が「”光”に因んだ名前」と言ったときは単純に嬉しかった。

この先、私は必ず原種に近い事が原因で苦労する。

そのことは避けられないが、私の将来が幸せであることを願っていることが分かる言葉だったからだ。


「そうね。その通りだわ。」

「仕方が無いさ。君はずっと女の子だと思っていたのだから。」

「なんとなく女の子のような気がしただけだったの。でも、この子が両性だろうと私の大切な子の変わりはないわ。」

「もちろんだよ。でも、まさか私達の間から原種に近い血が生まれるとは思わなかった。」

「それは私もよ。貴方が言った通り”光”に因んだ名前にしましょう。」


その話を聞きながら私は涙が出るかと思った。

きっと心地よい空間は母様のお腹の中にいた時のことだろう。

意識は分からないが、体は確かにお腹の中にいたはず。

でも私は死んだと思っていたから、前世の両親の事ばかり考えていた。

これからはこの二人の子供として、”精一杯生きていこう”そう思った。





「―――子のこの名前は、”フィニティス”にしよう。”ティス”は古代言語で”光”という意味がる。」

「すごく良い名前ね。この子も気に入るかしら?」

「あぁ~う~。」


了承の意味で両親に向かって笑顔で答えた。


「うふふ、気に入ったみたいね。”フィニティス”だから愛称は”フィー”か”フィニス”かしら?」

「そうだな。これからお前は”フィニティス”だ。」

「きゃう~う~。」(うれしぃ~。)


嬉しくて、笑顔で答えた。





部屋の隅では存在を忘れられた兄様が、いまだに何事かを呟いていた。







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