誕生(忍視点)
「―――おぎゃーっ!おぎゃー!!」
私は不思議な声とのやり取りから、突然明るい世界へと出た。
眩しい・・・何っ!!
体が動かない・・・でも全身で叫んでいる気がする。
「おぎゃーっおぎゃー。」
わたしっ?私の口から赤ちゃんの泣き声がしているっ!?
「―――元気な御子がお生まれです!」
「っ!?この御子はっ!!」
誰かが息を呑む声が聞こえてきた。
どういうこと?わたし・・・もしかして転生した?一度は死んだのだから転生よね?
そんな事を考えている内に、気が付くとベットに寝かされていた。
生まれたばかりで目は見えないが、軟らかい生地にふかふかとした感じが背中にあたる。
やがて母親らしき人の声が聞こえてきた。
「この子の行く末は・・・貴方・・・。」
「私の気持ちは変わらない。お前もだろう?」
「もちろんよっ!でもっ!!」
「そんなに興奮するな。少し落ち着け、産後の体に良くない。それに心配する気持ちももっともだ。そのためにはフェスニストの協力が必要だが。」
なんだろう?私、変なのかなっ?
だんだん不安になってきた・・・この先どうなるんどろ?
―――バンッ!!
「御父様!生まれたのですね!!」
突然の声に驚きながら、今後のため話を聞くために集中する。
盗み聞きのようで気が引けるが、自分自身のことなのであまり考えないことにする。
その後は家族らしいやり取りをしていたが、途中から様子が変わった。
「あれっ?この魔力・・・」
えっ!?魔力?私、魔力あるんだ!!
どうやらファンタジーな世界に転生したらしい。
前世でもファンタジー小説好きだったので気分が上昇する。
「その子はこれから色々困難が待ち受けているだろう。だが、私達が支えて幸せにしてやろう。」
「御父様、もちろんだよ。その努力は惜しまないよ。」
そんなやり取りに感動していた私を衝撃が襲った。
「それにこの子は、”両性の原種に近い竜人”なんだ。」
っ!?リョウセイ?ゲンシュニチカイリュウジン??
なにそれ・・・わたし人間じゃないの?
たしかに周りが話している言葉は知らない言葉だけど、意味は理解できるし・・・。
目が見えるようになったら・・・そのことを考えると恐くなる。
「えっ・・・まさかっ!?」
「いくら私でもこんな冗談は言わない。」
兄と思われる人物も驚いた様子だ。
そんな兄に父親が落ち着いた様子で話しかけている。
「たとえこの子がそうでも、家族だから何も変わらないよ。」
「あぁ幸せにしてやろう。」
そんな兄に父親が安心した様子で答えている。
これから家族になる人達の気持ちが嬉しかった。
人間でないのは不安だが、きっとこの家族がいれば大丈夫な気がする。
前世では失ってしまった大切な家族・・・でも、新たな家族が迎え入れてくれた。
その気持ちを胸に秘め、眠りの世界に落ちていった。