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世界を渡る竜  作者: 海響
第1章:幼少期
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巡る策略、竜玉への誓い

ここまで待っていてくださった方々、有難うございます。


そして申し訳ないことに、だらだら意味の無い会話が続きます。

寛大な気持ちで読んでやってください。

「叔父様・・・」

「なんだ、どうしたそんな顔をして?あっフィーが倒れて心配なんだな。」


叔父のディレイスは、姉のレスキアーネとよく似ている華やかな顔に似合わない悪戯っぽい顔をしている。

引きつりそうになる口元を笑顔で隠しながら、叔父を部屋に入るよう促す。

何故かフェスニストの心を敗北感が占める・・・暗い顔にならないよう気をつけていると叔父の後ろからひょっこりと顔を出す人物が居た。


わたしもよろしいでしょうか?」


叔父の息子、メーフィスだ。

フェスニストは焦った、自分の予定ではこの部屋に訪れるのは叔父一人のはずだった・・・。


(御父様は知っていたのだろうか・・・いや、知らないはずないか・・・)


フェスニストの予想を遥かに上回る父親だ、予想出来ないはずがない。

というか最初から息子も巻き込むつもりだったのだろう、今度の儀式・・にも関わってくる可能性が非常に高い息子共々親子そろって組み込むつもりだったのだ。


「あぁ、メーフィスか、久しぶりだな。少し背が高くなったか?」

「何をおっしゃっているのですか、この前フィニティス様の誕生会でお会いしたばかりでしょう?」


クスクス微笑みながら答えるメーティスを見ながら、フェスニストは不思議に思った。

何故あんな軽薄な雰囲気を持つ叔父から、こんなしっかりした息子が生まれたのかと・・・。

そもそもオズワイドは、色合いからして変わっている。

普通”光”のオブなら”金髪”が基本だ、そんな中ディレイスの髪は”赤”、しかも”深紅”だった。

”光”のオブらしく瞳は琥珀色だが、”深紅”の髪は”火”のオブの特長にも関わらず、”火”ではなく”光”の代表になれるほど”光”のチカラが突出していた。

本人はちっとも気にしていないらしく「この髪は太陽の色だ!」とか言いながら最終的には、いつも豪快に笑っている。

何故そこで笑いが入ってくるのかフェスニストには理解できないが、そんな叔父が嫌いではなかった。

そんな変人もとい叔父と違い、非常に出来が良い息子も共に巻き込むと思うと申し訳ない気もしたが、フィニティスの事ともなれば仕方が無い、そんな心の内を微笑みに隠しながらメーフィスにも部屋に入るよう促す。



「よっオズ!この間は楽しかったぜ。今度フィニティス貸してくれ♪」

「冗談は、態度だけで十分だ。見舞いに来たのに手ぶらか?」


笑顔なのに目が笑っていない父親に怯えながら、フェスニストは隣に立つメーフィスを見た。

突然、問題発言をはじめた父親に、明るい金の髪とは対照的に青ざめた顔をしながら、窓の向こうに碧の瞳を向けている。

過去の色々を思い出しているのか・・・何を考えているのか分からないが、状況いまの空気を感じたくなかったであろうことは分かる。

フェスニストが同情の目線でメーフィスを見ているうちに、何やら父親同士の話が進んでいた。


「――まぁ、難しい話は得意じゃないから、単刀直入に言う。俺達を仲間はずれにするなっ!」

「仲間はずれ?お前は子供か・・・無能に用は無いぞ。」


呆れながら言葉を返すオズワイドに、ディレイスが噛み付く。


「意地の悪い事言うなよーいじめっ子っ!」


部屋の気温が一気に氷点下にまで下がる。

窓の外を見ていたメーフィスも現実逃避をしていられなくなったのか、父親を止めようと視線を送っている。

そんな息子の視線に気づかないディレイスは、至って真剣なのだとアピールするためか言葉を止めない。

助けを求めてフェスニストは母の居る方へ視線を向けた、叔父達を迎え入れたときに預けた水球に収まったフィニティスを抱えながら、レスキアーネは部屋の雰囲気を無視するかのように自分達の周りにだけ”光の結界”を張り、周りから隔絶した空間を造りだしていた。

助けを求める視線に気づいたのか、レスキアーネは息子に微笑を返すだけで何も言ってくれない。

夫や弟を信じているのか、それとも頑張れと言っているのか解らないが・・・あの性格の母親だ。後者のような気がしてならない。

頼りにならない母親から冷気を出している父親に視線を戻し、この空気を払拭するため叔父の言葉をフォローする。


「御父様、叔父様は『俺達』と言っています。それは此処に居るメーフィスを指しているのでしょうか?それと”光のオブ全体を指しているのでしょうか?それだけでも確認してみたらいかがでしょうか。」

「そうだな。頭は使えなくてもそれなりに役に立つかもしれんしな。」

「親子そろって俺のこと馬鹿にしてんの?」

「叔父様・・・私の言葉の何処に馬鹿にする言葉が含まれていたでしょうか?」

「そんなもんは、雰囲気に出てるっ!」

「言いがかりですね・・・御父様、話にならないので後は任せました。」


諦めたような言葉を発するフェスニストに、「そんな」と言いたげな視線をメーフィスが向けてくる。

そもそも怒りからか言葉が崩れ出した恐ろしい父親に、これ以上フェスニストは何か言葉をかけるのは無理だ。

もはや自分しか父を守れる者はいないとばかりに、メーフィスは奮起した様子で必死に言葉を発した。


「たしかに父上は馬鹿ですっ!考えなしかもしれませんが、フィニティス様を心配する気持ちは本物です。父上も本当はこんな話がしたかったわけじゃないと思います。お願いです!父上の話をもう一度聞いてあげてください。」


言葉とともに頭を下げて懇願するメーフィスに視線を向けながら、オズワイドがポツリと呟く。


「出来の良い息子に助けられたな。」

「当たり前だ。メーは俺と違って頭が良いからな。」


自分の息子に馬鹿呼ばわりされたにも関わらず、途端に上機嫌で自慢げに話し出すディレイスに三人は呆れた顔を隠せない。


「こいつに話を聞くより、息子と話をしたほうが話が進みそうだ。」

「そのようですね・・・御父様。」

「・・・・・・・・。」


メーフィスは恥ずかしそうに自分の父親を見ている。

きっと何処に行っても、自分が馬鹿にされている言葉に今のような言葉を返しているのだろう。



「まー冗談は此処までにして真剣な話をしようじゃないか。先ほどの答えだが『俺達』は、『俺、メーフィス』だ。」

「一言いわせてもらうが、君が一番話の腰を折っている。それに意外だな、愛する妻を除け者にするのか?」

「なわけないだろう。オズに負けないくらい妻のことは愛しているが、今回、”誓い”をたてるのが俺達二人だからだ。」

「誓い?何の誓いのことだ」

「とぼけるなよ。それが狙いだろう?」


悪戯を思いついた猫のような目で自分の父親を見る叔父に、寒気を覚えフェスニストは身を振るわせる。


(御父様の思惑に気づいていたというのか・・・)


「とぼけるとは何の事だか・・・だが、話は聞いてやろう。それに勝手に自分の息子も巻き込んでるが?」

「二人で話し合った結果だ。それにオズワイド、お前は”誓い”なしくして俺達をお前の『秘密』に加える気がないだろう?」


オズワイドはその言葉に微笑で答える。


「よく解ってくれていて嬉しいよ。『秘密』に関わるために”誓い”をたてると言うなら、考えないでもない。どうする本当に竜神に誓いを・・・」


そんなオズワイドの言葉を遮って、ディレイスがはっきりと言い切る。


「いや、”竜玉”に誓うつもりだ。」


その言葉を聞いたとたん場に緊張が走った。

”竜玉”とは、竜人にとって”命”だ、心臓が人としての”命”なら”竜”としての”命”が”竜玉”だ。

その竜玉に誓いをたてるということは、”命”をかけるという事だ。

”竜神への誓い”も破れば竜人としての特殊能力を失うが、”竜玉への誓い”ほど重くは無い。

さすがのオズワイドも此処までのことを言い出すとは思っていなかったらしく、珍しく困惑したように瞳を揺らしながらメーフィスに声をかける。


「メーフィスは承知しているのか。たとえ承知していたとしても、ことの重大さが解っていて言っているとは思えない。」


オズワイドの瞳に心配の色を見たのか、安心させるようにニッコリとした笑顔を返しながら力強く答える。


「もちろん解っていて言っています。まだ、十五歳と幼いことは自覚していますが、そのまでしなければいけないだと感じるのです。」

「――それは”光”の血筋としてかな?」

「それもそうですが・・・”運命”を感じるのです。そうすることが当たり前のような・・・うまく言い表せないのですが・・・・そもそも”竜玉への誓い”を言い出したのは私なのです。」


その言葉にフェスニストは驚きを隠せない。

どちらかといえば日ごろはおっとりとしているメーフィスが、今はかなり強気だ。

顔はどちらかと言えば女の子のように綺麗な顔だが、今はその顔が男らしく凛々しく見える。


「私は、本気です。」


その瞳に中に強い意志を感じたのか、オズワイドは問うような眼差しをディレイスに向ける。


「本当のことだよ。俺が強要したわけじゃないし、というか俺が強要された側だ。」

「まぁ、ここまで言われて『秘密』に加えないわけにはいかないな・・・後悔が無ければいいが、ただ、二人が誓いをたてる事を君の奥さんは承知しているのかな?」

「当たり前だっ!俺はともかく黙ってメーフィスが”誓い”をたてた事がばれてみろっ!!俺は半殺しの上、ボロ雑巾よろしく捨てられる・・・」


想像したのかディレイスは青い顔をしながら最後は呟くように言った。


「そうか・・・そうだろうな。」

「そうだよ。あと、あいつが誓いをたてないのは、『フィニティスを大事に想っているが、それ以上に息子が大切だから自分は誓えないし、ほかより優先できないなら誓いをたてるべきじゃない。』といっていた。聞かれたら伝えてくれと頼まれた。」

「今日は一緒に来ていないようだが?」

「あぁ、その場にいたら止めてしまうかもしれないからと今日は来なかった。」

「わかった。では『寛大な心に感謝する』と伝えてくれ。」


頷き返すディレイスに、オズワイドが思いついたように聞く。


「それでいくとお前は、妻や息子よりフィニティスを優先するといっているようなモノじゃないか。」

「俺は、妻を愛しているからこそパートナーとして信頼している、一緒に戦ってくれる奴だと思ってる。それにメーは息子なんだから守る必要ないだろ。娘だったら考えたかもな。」



まとまりはじめた空気を感じたのか、それまで静観していたレスキアーネが声をかけてきた。


「ディレイス、先に言っておくけれど私も自分の子供が一番可愛いの。いくら弟といえども助けてあげられないわよ。」

「承知の上だよ。メーフィスも解ってる。それに竜玉に誓ったら逃げられないしな。」

「わかってるならいいのよ。まあ、中途半端なことをするようなら精神こころに色々覚えさせようと思ったけどね。」

「―--いくら俺が馬鹿でも、御姉様にお手間を取らせることは致しません。」


いままでの覚えさせられた精神こころが珍しく丁寧な言葉を反射的に吐き出させる。

それを見て恐怖に震える体を抑えられない三人が、同情に満ち溢れた目でディレイスを見つめるのだった。



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