聖歌の後、巡る策略
やっと投稿することができました。
お気に入りにしてくださっている方々に感謝を!
すごく何かありそうなタイトルですが其処までのことは無いと思います。
部屋に集まって居るのは、両親、フィニティス、フェスニストを入れた4人だ。
簡素な、だが、しっかりした造りの部屋にフィニティスを囲んだ形で話込んでいた。
だが、肝心のフィニティスはといえば、いまだ眠り続けていた。
水球とでも言ったらよのだろうか、薄く色が付いた水の膜に膝を抱えた状態で納まっている。
それを抱えた状態で椅子に腰掛けているフェスニストへ、水球に手を添えながら、父、オズワイドが尋ねる。
「フェス、フィニティスの状態は?」
「一応、状態は安定しているようですが、何しろ今までの事と勝手が違ってはっきりした事はいえません。」
「まあ、そうだろうな・・・私もここまでは想像していなかった。」
そんな父の言葉に「本当に?」と疑わしい目を向けながら、フェスニストは口を開く。
「とりあえず、精神に効果が高い『精癒』の膜で覆いましたが、果たして効果があるかどうか・・・」
心配そうな面持ちで話すフェスニストへ、母のレスキアーネが声をかける。
「フェス、貴方が精一杯の手を尽くした知っているわ。貴方の想いが詰まった膜に守られているのですもの、フィニティスにも伝わっているはず、大丈夫よ。」
「ですが・・・」
それでも不安を払拭できていない息子へ、母は、茶化したよな言葉を投げる。
「そんな顔をしていては、フィニティスの目が覚めたときに心配されちゃうわよ。兄として恥ずかしくないのかしら?」
「そっそれは・・・」
赤面し、うろたえる息子を見かねた父が、助け舟とばかりに話を遮る。
「それくらいにしておきなさい。それより今後のことだが・・・」
気をとりなおしたフェスニストは、姿勢を正して続く言葉を待つ。
そんな生真面目な息子に苦笑しつつ、オズワイドは切り出した。
「まあ、今のところは何の動きも見られないが、レスの実家が動くと思う。」
「御母様の?」
「ああ、あそこは”光”の家だ、フィニティスに近づくこの機会を見逃すとは思えない。」
「たしかに、伯父様はフィニティスを気に入っていたようですし・・・」
「気に入っている」という言葉を選んだが、実際は自分の娘のような可愛がり様だ。
母の兄、伯父の行動は、まさに「目に入れても痛くない」と言った呈である。
「っ!?、まさかっ御父様は狙って、この日を選んだのですか!」
竜人達は、自分が決めた日に教会へ通う。
よほどの事情が無い限り、変更する事はない。
大声を出した息子を注意するように、煩そうに顔を顰めて頷く。
それを見たフェスニストは、大声を上げてしまった自分を恥じながら、小声で疑問を口にする。
「でも、なぜこちらから・・・・っ!?」
「教えるような真似を?」と考えながら、何かに気づいた様子の息子に肯定を返す。
「そうだ、こちらもリスクは仕方がない。」
「・・・大きく出ましたね。あまり関心できませんが、フィニティスの為なら仕方ありません。それに”光”の中でも、伯父様はかなり敏感ですからね、何も言わなくても薄々気づいているような気はしますが・・・」
”光”は、他に比べて予知とまではいかないものの、そういった勘が突出している。
「それをはっきりさせておきたい。フィニティスの不利になるような事はしないだろうが、勝手に先回りして動かれても困る。」
「そう、うまく事が運べば良いのですが・・・」
大きなため息をつきながら、呆れた目を隠そうとせず、父に言葉を返す。
「運ばなければ、運ぶまでだ。」
その問いに笑顔で返してくる父に、息子の背に汗が流れる。
伯父の未来を思わずにはいられないフェスニストの耳に、来訪者を告げるノックの音が聞こえてくるのはそれから間もなくのことだった。
来訪者とは、フェスニストに未来を心配されていた伯父、その人だった。