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いつもの日常?

あれから1ヶ月ほど。

なんか退院できた。


どうやら彼女の身体情報が私自身の身体も多少は作り変えていたようだ。

そのため、適応力も上がっていたのだ。


加えて、“環境適応”のスキル効果で更に回復が早まったのだと思う。

ただ、痛み自体は未だあるので完全回復ではない。


それでも、病院ではなんだか集中しにくかったので退院は嬉しい。

研究のためにも自室に戻りたい。


そして、王宮(お家)目指して歩いていく――


前言撤回。集中できないわ。

そう思うのも無理ない。


何故か、クラッカーを持った人が王宮の扉の向こうにいるのだから。

正確には、僕達が暮らしている王宮の宿?のドアの向こうにいる。


なにか悪寒がしたから見てみたが、これどうしよう。

多分、退院祝いなんだと思うけど……

バレてしまっている。


そもそも祝われたことすらはるか昔過ぎてリアクションがわからない。

顔は作れる。前の一件で知ってしまった謎の才能だ。


……シミュレーションはできた。そして、今まで以上に思考加速を使う。


ドアを開ける。

クラッカーが鳴る。0.2秒後に1.7秒間驚いた顔をする。

「退院おめでとう」の言葉が発せられる。

すぐさま喜んだ顔と困惑した顔を混ぜて礼を言う。


――よし、成功した。

みんな満足げだ。


もしかしたら、今までで一番緊張したかも。


その後は、なんかすごかった。

良く覚えてないけど、結婚式よりも遥かに大きい謎のケーキや埋もれるほどの退院祝いを渡されたような……


きっと気の所為だ。亜空間にすべて詰め込んだのもただの気のせいだ。うん。



さて、自室に帰ってきたわけだけど。流石にホコリがすごい。

机を指なぞっただけで指先が白くなる。


まずは掃除からだな――



うん。悪い癖が出た。

ただホコリを払うだけのつもりが別のこともしてしまった。


といっても、何かと集めてた薬草をちゃんと整えただけだが。

それでも3時間ほどかかってしまった。

ついでに、保管場所を作ったのが悪かった。


きれいになったし良しとしよう。

まあ、なくしていた物も見つけれたし結果的には本当に良かった。


大事なものだったから普通に嬉しいな。

でも、なんでこんなに大きな箱を失くしたんだろう?


手のひらくらいと言っても無くすようなものでは無いと思うのだけど……

最近、色々と忙しかったし、そのせいかな?


箱を開け、そっと金具を持つ。

顔と同じ位置に持っていくと、日差しが当たり、青白いシラーが走る。


僕に似合うからと渡してくれたものだが、前世に渡された物だ。

すなわち、男の時に渡されたのだ。なぜイヤリングなど似合うと思ったのだろう。


今なら似合うかと思い、耳元に近づける。

今の髪色もあり、ムーンストーンの飾りはやはり似合っていた。


これを付けれるようになったのは素直に嬉しい。

けど、やっぱり複雑だ。


飾りを箱の中に戻し、気持ちの良い音を出しながら蓋を締める。

また失くさないために亜空間になおそうと思う。

それを、寸前で止める。


別の空間だと、離れたような感覚になる。

また失くすかもだけど、机の上に置く。


その流れのまま机よりも少し大きい白紙を広げる。

そこに、次々と数式を浮かべていく。


時折、魔法陣のような図形を書きながら端から端まで埋めていく。

日は沈み、城壁から月が覗く。


ランプの火が踊り、影が揺らめく。


集中が切れ始めた頃、背後で布が擦れる音が聞こえた。

ふとベットを見ると横になって寝ているシアがいる。


いま横になったばかりだが、すでにスースーと気持ちよさそうな寝息が聞こえる。


そうだった。シアは僕の部屋で暮らすのだった。


「ふあぁー」


思わずあくびが漏れる。

シアを見ていたのでつられて眠くなったのだろう。


気づけば、城壁の近くだった月はかなり上まで昇っている。

大体、8時といったところかな?


僕もそろそろ寝ようかな。


そう考え、寝支度を始める。

引き出しを開け、綺麗に畳まれた寝間着を取り出す。


それを持ったまま、出入り口とは異なる扉を開ける。

中には小さな空間と鏡と洗面台。

加えて、別の扉がある。


それを開けると、頑丈な白磁器の湯船。

木でできた椅子と湯桶が。

そして、贅沢に三枚目の長細い鏡がある。


流石に、寝る前には入っておかないと気持ちが悪くなる。

体に異常が出るわけではないが、入っておかないと気持ちよく寝れない。


空の湯船に手を向ける。

手のひらから、水が勢いよく流れる。

湯気が立ち込め、それだけで体が温まる。


湯船を跨ぎ、中に入る。

湯気と違い、こちらは芯まで温めてくれる。


体を伸ばし、疲れを取る。

思わず寝てしまいそうなのを必死に堪える。


根が生える前に、湯船から出る。

長居すると、どんどん動けなくなってしまうので、さっさと洗っておくのだ。


そうして、鏡の前に座る。

タオルを巻いているとはいえ、やはり罪悪感がある。

何ヶ月経ってもこれには慣れないだろう。


以前もらったシャンプーを髪にのせる。

栗山さんがくれたのだ。


その後も、リンスー。ボディーソープの順番に洗っていく。

極力、体を見ないようにしながら。


幸い、この身体は断崖絶壁に近い。だから、目さえ瞑っていればほぼほぼ前世と同じだ。


さっぱりとした気持ちで部屋に戻る。

髪は魔法で乾かしたので、動きに合わしてなびく。


髪の毛邪魔だな。

そう感じ、引き出しからヘアゴムを取り出す。


手を頭に回し、ひとまとめに持つ。

そのまま、まだぎこちない動作で纏める。


やはり、何においてもポニテが一番楽でいい。

寝てる時に引っ張って痛ってならないのもいい。


そして、シアを起こさないように布団に潜る。

普段よりも狭く感じるが、その方が安心できた。



――さざ波が鳴り、果てしなく続く青が視界を埋める。

今現在は、神山達とキャンプの真っ最中だ。


なぜこうなったのかは至ってシンプル。

平和ボケしてるからだ。それ以外は思いつかなかった。


事の経緯は――


――イリムの退院から約一ヶ月後。ギルドにて。


「身体も良くなってきたし、リハビリがてらに依頼でも受けようかな」


そう思い立ち、町中へと足を運ぶ。

一人で出かけたら毎度と言ってもいいほど神山達が付いてくる。


そうして、いつもの依頼板を人混みの隙間から覗き込む。

なんか、いつもより多い気がする。


依頼板にはいつものBランクの依頼。それと、見慣れない依頼がある。

いつもは日焼けた紙みたいな色だが、純白の依頼書が一つ。


えーっと、確か強さが分らない物はこんな感じで出されるんだっけ?

少しでも抵抗を下げようとする為の白色なのだろう。


そして、その内容が

  『ラブーム塩湖で目撃された影の調査。報酬 100銀貨』

                       のようだ。


調査だけだし、報酬そこそこ嬉しい。

ランクは不明だが、こうも連続で強者と戦っているのだ。またAランクが出てくることは少ない。


だが、不明なこともあってBランクの4人グループじゃないと頼むことができない。そのため、柱の後ろにいる神山たちをペシぃしに行った――



そして今。眼の前にバーベキューコンロを広げて肉を食べる3人の姿がある。

全員水着なので泳ぐ気満載だ。


といっても、調査のために水の中に入るので水着自体は問題ない。

だが、あからさまに遊ぶための水着だ。


かという僕も、戦闘用と言われればそうではない。

この前の退院祝いに貰ったものを使っている。


水着は最近売り出されたそうでこの世界では高い。

それでも、斬新なアイデアだったそうなのでこれを売り出している場所はかなり儲けているだろうな。


いい匂いがして、神山たちの方を見る。

安肉とは違う、上品な香りがその場に漂う。


「この肉どうしたの?この世界ってここまでいいのあったっけ?」

「どうだろすごいだろ。どうやら、遠くの場所に日本の転移者が建国した国があるんだけど、そこは品質が化け物級らしく、そこから輸入した」


神山がトング片手に得意げに腕を組む。


これは自慢していいと思う。

元の世界でもあまり見られないほどの上質な霜降りだ。

普通に美味しそうだ。


網に置かれたものをサッと取り出す。

外が焼かれているが少しレアの所で取る。


食べた瞬間舌で溶け、食べてないみたいだ。

しかし味はしっかり残る。


うん、美味しい。

ふと隣を見ると、桜凛さんが頬に手を当て感激している。


栗山さんもそこまでではないが味を噛み締めていた。


「最後!」


桜凛さんが、勢い良く箸を伸ばす。

神山も遅れて掴みにかかる。


そこを、横から栗山さんがサッと取る。

……今スキル使ってたよね?そんなにかな?


「お肉、無くなっちゃった」


桜凛さんがそう嘆く。

かなり食べていたと思っていたが、まだ食べたりないようだ。


そうすると、何故か僕に視線が集まる。


「な、何?」


そう言うと、手を顔の前で合し頼み込む。


「お願いイリムちゃん。何か他にない?」

「あのね、もう7枚も食べたでしょ?」


「まだ7枚しか食べてないんだよ!」


周りを見ると、神山だけでなく栗山さんも“お願い”とジェスチャーを送る。


「はー。仕方ない。だけど期待はするなよ」


僕は着ていたパーカーを脱ぎながら湖へと向かう。

右手が急にぼやけたと思うと、魔力が固まり徐々に形を作っていく。

その武器は……


「――銛?」

「うん銛」


そうして、水の中に沈んでいく。



塩湖って聞いてたけど、意外にも魚がいるな。

眼の前には多種多様の魚が美しい集団ショーを演じている。


その周りも肉食魚が取り囲んでいる。

なんかアジっぽいしアジもどきでいいや。


僕はアジもどきの群れに向かって銛を投げる。

それは、滑るように海中を進み、一回で3匹ほどを突き刺す。


銛自体の魔力を操り、手元に戻す。

魚を引き抜き、作った紐を尾に結ぶ。


流石にあと4匹は欲しいかな。

そうして、もう一度銛を構える。


その時、足元が暗いように感じる。

ふと下を見る。すると、先程まで海底まで見えたいたのに、今は闇に飲まれたようだ。


日の入りまでは早すぎる。ここは一旦戻ったほうが良さそうだ。

そうして、海面に上がりみんなを目指して泳ぎ始める。

少しばかり補完 

クラッカーが鳴る瞬間。イリムは引き伸ばされた時間で0.2秒。現実換算で約0.0001秒ほど、素で音にびっくりしています。イリム自身は気づいていません。


追記、ケーキは最下層が直径10m。高さ6mです。

退院祝いはイリムの部屋。4畳ほどの部屋を4回埋めるほどです。

イリムの退院が急だったためすべて即日用意です。クラッカーも1時間で作りました。1から。(火薬から)

ケーキの味は普通にミシュラン取れるくらいです。

本来の注文は直径2mのウェディングケーキです。

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