エラーメッセージ――危険因子を持つ個体を確認――制御不能、排除を推奨―――この…報は…神リ…ネ……ッ…ングに……数秒…に…去さ……す。直ち…対応を。“マスター”――……通常業務に戻ります。
あれから、六日ほど。
道中の街を出て、少し進んだ辺りだ。
ここまで歩いているとシアの体力も向上する。
当初は1時間が限界だったが、今では3時間ほど連続歩行ができるようになった。
旅にも慣れてきたのか、歩き方が安定するようになった。
子供の成長って早いね。
そう思いながらも、着実に進んでいく。
ふと地面を見ると、タイヤ痕が微かに残っていた。
最近にここを通った馬車がいたのだろうか。
ここは、街が多い地域だ。なので街間での交易が多い。
そのため、自然と葉っぱが剥がれ道ができる。
今は、その道を歩いていたのだ。
なので、ここに馬車が通ったあとがあっても何ら不思議ではない。
だが、この跡が必ずしも商人のもととは限らない。
警戒のために、感覚を外側に広げる。
すると、ある一点で、魔力のゆらぎが見えた。
移動はしておらず、人と馬の様な感じがする。
複数の気配はなく、一人旅のようだ。
だが、どうしてあそこで止まっているのだろう。
考えられるのは馬だ、だとしたら……大丈夫だな。
そこまでの脅威とは感じられない。
不安要素を伝えたら、かえってストレスになるだろう。
ここは、一人で処理するのが無難だ。
どちらにしろ、夕暮れにはその真相が分かるだろうしね。
しばらくして、遠くに例の馬車が見えてきた。
荷物を載せているので、商人の可能性が高い。
悪人の気配もないので大丈夫だろう。
30分ほど進んだあたりでみんなも気づき始めた。
馬車まであと僅かというところで。神山が小走りで馬車に近づいた。
賊程度なら神山でも脅威にはならない。わざわざ止める必要はない。
「大丈夫ですか?」
馬車の主に尋ねる。
それに驚いた様子を見せつつ、答える。
「大丈夫だが……」
そう言い淀み、僕達を一瞥する。
こちらを警戒しているようだ。
「この先で馬が止まってしまってな。仕方なく引き帰ってきたのさ」
残念そうな顔をしながら、そう言う。
嫌な予感がしなくもないが、一縷の望みにかけて……こう、質問する。
「馬が止まった理由って分かりますか?」
「愚問だな、魔物に決まっている」
あー、やっぱり……
こうなったら、たどる末路はたったの一つだけ……
「私達がなんとかしましょうか?みんなの良いか?」
止める暇もなく神山がそう提案する。
こいつ、正義感だけはいっちょ前にあるんだよな。
「私は良いよ。困ってる人は助けないと!」
桜凛さんも彼に賛同する。
それに追従するように栗山さんも静かに頷く。
ここで賛成しなかったらただの空気読めないやつだよ。
「正直、乗り気じゃないけど僕もいいよ」
まあ、どっちみち倒さないと通れなかっただろうから、それ以外に道はなかった。遠回りで回避したかったよ――
シアは馬車でお留守番してもらい、僕達は道を進む。
しばらくして、道に痕跡を見つけた。
「6cm程の足跡が二対で続いてる。それが複数……また呀狼かな?」
無意識に、そう呟く。
草原だから出てきても不思議ではないが最近はよく会う。
なにか、因果でもあるのだろうか?
それよりも、魔力感知を広げないと。因果はまた考えれば良い。
足跡は比較的新しいものだった。
近くにいる可能性が高い。
そう考えていると、揺らぎが感じられた。
数は13、脅威にはならないな。
僕は口に指を当てて静かにするようにとジェスチャーをする。
意図を理解してみな気配を小さくする。
無意識でしているようなのでやはりチートだと思う、勇者は。
身を屈めながら前進をする。
かなりきつい姿勢だがすでに強化済みなのでそれほど大変ではなかった。
小高い丘を遮蔽にして敵に近づく。
丘の上から顔を覗かせる。眼下には予想通りの数が群れをなしており、獲物を食べている。どうやら、この付近で鹿など狩って暮らしていたようだ。
まずは、順番を待っている奴らからやる。
そのほうが敵の注意が向きにくい。
その事を目線で伝える。
それだけで伝わったのか頷いてくれる。
神山たちも戦闘に慣れてきたようだ。
武道をしていたものからしたら嬉しい成長だ。
そして、僕は手で合図を送り一斉に動き出す。
桜凛さんはレイピアで最後尾の呀狼の掃討を開始する。
それに合わせて、栗山さんが魔法で後方からの支援を行う。
肝心の神山は――敵陣の、目線のど真ん中に堂々と立っている。
やはり馬鹿だ、男子は特に……僕も男だったけど――
呀狼は無事に倒せた。
案外、神山が囮のような役割をしてくれたので楽に倒せた。
本人は今にも泣き出しそうな顔で頑張っていたが意図を理解しないのが悪い。
まあ、一度に6体の呀狼を相手にしていたのだ。少しだけ可哀想とは思わなかった。なぜだろう?
馬車に戻り、倒してきたことを馬車主に伝える。
これも、言い出しっぺの神山に押し付ける。
疲労困憊のところに更に雑用を与える。
鬼畜のようだがこれも全ては神山のため。
という体で推し進めよう。
神山は背中を完全に曲げており、顔が少し青白く見えそうなほどげんなりしている。
元の好青年の面影は綺麗サッパリ消えている。
傍から見たら苦労ポジに見えるがただの自業自得。手伝う気にはならなかった。
その後は、円滑に話が進み途中まで馬車に乗せてくれるところまで話が進んだ。
意気消沈していても神山のコミュ力は健在だった。
――話しによれば、馬車の主である彼――ウィム・クローバはこの周辺で商売をしている商人だそうだ。
予想通りだ。
それにしても、なんだかこいつは敏腕な気配がする。
馬車に乗せてくれたのも、迷惑代を踏み倒すための可能性もある。
戦士でもないのに隙がないように思える。
物理的な隙ではなく精神。心の隙と言われたほうがスッキリする。
ここは、神山の暴走を食い止めることを懸念したほうが良さそう。
そう思い、神山に目を向ける。
予想以上に疲れていたみたいで、疲れ果てた顔で居眠りしている。
馬車の揺れが心地良いので仕方ないと思う。
さっきは流石にやりすぎた感があるから、ここはそっとしておいてあげよう。
そうなれば、僕には暇な時間ができるわけだ。
ならば、この時間をちゃんと活用しよう。
「シア、こっちおいで」
そう言うと、はーい、と元気な声で返事をし、僕に近づく。
さっきまでは神山を突いて遊んでいたのでシアも暇だろう。
「えー、シアに攻撃手段を教えたいと思うけど、この前教えた事は覚えてる?」
「うん。えっとー、“人を簡単に傷つけれる物だから使うには気をつけろ”っだたよね?」
シアは首を傾げながら確認する。
一般通過一般人ならそれだけで行動不能に陥る危険性のある攻撃だ。
かわいいと思う。そんな事は一切顔に出さずそのまま続ける。
「うん、あってる。まずはその事を頭においてくれてたら良い。」
そう言うと、亜空間から物体を取り出し、シアに渡す。
「……糸?」
不思議そうにその武器、ワイヤーを見る。
「うん、シアにはこの武器を使ってほしい。シアの得意にはこれが合っていると思うからね」
そう言うと、シア含め正面の桜凛さんも分かっていなさそうだった。
栗山さんは分かりそうでわからないと言った、中途半端な顔をしている。
「えっと、シアは気配を――魔力を消すのが得意でしょ?それって、魔力操作が得意ってことと一緒。だから、魔力で動かすこれなら子供でも扱いやすいはずなんだよ」
その説明に、二人はわかった様子だったがシアはまだ分かっていなさそうだった。
「まあ、やりながら覚えたら良いよ」
そう言い、糸に僕の魔力を通す。
すると、透明だった糸に青白い色がうつる。
その直後に、糸が動き、幾何学模様が宙を彩る。
「すごい!魔法みたい!……私もできるかな……」
その光景に目を輝かしたが、直後に不安そうに呟いた。
「シアならできるよ」
僕はそう言い、シアの小さな手に束ねられた糸を手渡す。
シアも決心がついたのか、小さく頷いてから糸に視線を落とした。
しばらくは何も起きなかった。
それでも、諦めずに挑戦し続ける。
馬車が進み、街に着こうかとういところで進展はあった。
「動いた!」
少しだが、かすかに動いたのだ。
少しとはいえ、魔力で物を、しかも糸の内側に溜めた魔力で動かすのはかなりの高等技術。僕はガルの知識で分かったが、言語化しろと言われればそうはいかない。
僕が得たものは魔力操作は体感的なもののみだった。
他と違い、知識としての情報ではなかった。
その分、すんなり扱えるが人に教えろと言われると難しくなる。
頭で考えることをどうして考えれるのかと聞かれても上手く答えられないのと一緒だ。
だから、シアがほぼ自力で技術の入口に立ててよかった。
どうにか自力で身を守れるくらい。最低でもCランクほどの強さになってもらわないと。
じゃないと、僕もカバーしきれなくなった時にただの獲物になってしまうからだ。
正直、今から行く先は本気で子供はもちろん。大人も立ち入ってはいけない。
僕達の前のパーティーも同じくBランクの集まりだったが帰って来たものはいない。
今まで一攫千金を狙って挑んだものは二桁を超える。
その中で戻ってきたのはたったの一人、彼も発見された数秒後に亡くなった。
『化物がいた』とだけ、残して……
そのため、シアには早急に強くなってもらわないといけない。
順調に行けばB、少なくともCランクにはなれると思う。
普通はCランクに、しかも子供が数日でなるなどありえない。
それこそ凄まじい血筋に恵まれなき限りほとんど無い。
そのため、シアは天才と言っても言い過ぎではない。
贔屓と言われるかもだが、それでもこの事実は変わらない。
実際、習得に何年のかかる“純粋な魔力のみの干渉”を半日で成功させた。
そのことからも、物凄いセンスを持っていることは明白だ。
あの、切れ者と思っていたクローバーさんも、馬の操作を思わず止めてその光景を驚き顔で見ている。
すぐに平常に戻っていたが、思わぬ光景にまだ興奮が冷めない様子だ。
シアのしたことはそれほどまでに凄いことなのだ。
そんなこんなで、二個目の街についた。ここはそこそこ大きいそうなので宿もある。前の街では冒険者は城壁の外で寝ないといけなかったからありがたかった。
問題の宿代だが、状態のよかった呀狼を一匹分けてもらたのだ。
亜空間魔法はそんな簡単に使えない。
さっきシアに糸を渡す際もカバンから出したように見せながら使っていた。
だが、呀狼を何体も小さなカバンに入れるのは無理がある。
そのため、死体はクローバーさんに運んでもらった。
そうすると、運んだ人が取り分を貰わないと平等じゃない。
だから、一匹をもらったというわけだ。
これだけでも、一週間強は生活できる額なので、1日宿に泊まるくらい余裕でできる。
優しい方で良かった。
意地悪なやつだったら逆ギレしてくるからね。
たいていそんな奴の商売は良くないものだけどね。
商人にとって一番が信用を得ること。
当たり前だが本当に大事なものなのだ。
それを、クローバーさんは理解しているように見える。
次の街に本店があるそうだし、ついでに寄っていってもいいかな?
シアに渡した糸――“消失”
イリムが“創造”で作った練習用の武器。
武器のランクはCランク。練習用といっても普通は熟練の人が使うレベルだ。
魔力を具現化、魔法術式を織り込み形を固定、安定化させたもの。
他の同種の武器と違い、元が魔力なので魔力伝導率が非常に高い。
効率良く魔力を運用できるので魔力消費が極端に少なくなっています。
名前の由来は魔力を止めると消えたかのように透明になり、ピアノ線以上の不視性をほこる。
そのため“消失”と命名した。シアの隠密性ともかけられてある。
副次的利用方法 電線のようなもの、魔力線に代用可能。現段階では利用方法は確立されていない。
基本性能、弾性はピアノ線と同じ。耐久性はDランクの鉄の剣と同等。束ねることで単純計算で耐久度も上がっていく。欠点として、絡まりやすい点が上げられる。これも魔力制御の訓練に利用できる。
追記、32行目のイリムの思考の内容。
一人だけで馬が一体。周りに他の人は……いないみたい。ならばとてつもなく自信のある賊か冒険者か商人。冒険者は基本的にいないから除外して良し。すると、賊か商人。
賊の場合、僕でも感知できない気配の隠蔽ならまず勝ち目はない。だがそんなやつのみの集団など伝説上でも少ない。これも除外して良し。そうなるとAランク級の賊。または商人。
僕は対人に関してはAランクでも十分拮抗可能……ガルは人じゃないからセーフ。
そうなると賊でも大丈夫。そもそもそんな大物がわざわざここにいる意味がない。
加えて、馬の魔力が多く放出されている。と思う。なので賊が使うような恐れを知らない馬じゃない。
となると賊の可能性が消えた。
それだと、商人は何かしらのことで足止めを食らっている。
馬が怯えていることからも、魔物である可能性が高い。ここ近辺ではCランク以上の魔物が発見されて未討伐なものはいない。なので、基本的にCランクだろう。
今の神山たちやシアを連れていても命に関わる危険性はない。
面倒だろうが危険は少ない。大丈夫だな。
これは、思考加速で感覚を数十倍に引き伸ばして考えています。
わかりにくくてごめん。




