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旅の開始点

「さて、シアについての事情は伝えたし、そろそろ出発するとしようかな?」


僕は、みんなに向けてそう言う。

神山たちもそれに賛同してくれた。


それにより旅が始まった。

当初はシアが来る予定ではなかったので馬など用意していなかった。


そのため、最初は徒歩での移動となる。

子供にとってはかなりしんどいだろう。


だが、そこそこの距離があるので日が昇っている間は移動していたい……

歩けなくなったらおんぶでもしてあげよう。



あれから一時間程度、3km程進んだところでシアに限界が来たようだ。

今も、

「もうむり、歩けなーい」

と言っている。


まあ仕方ない。

やはりと言うべきか、異世界でも子供は長距離移動はできないみたいだ。


まだ進みたいのでおんぶでもしてあげようかな?


「シア、こっちおいで」


僕はそう言い、背中に登りやすいようにしゃがむ。

それだけで、意図を理解したようで、背中に微かな重みが加わったのが感じられた。


僕は基本スペックが高い身体なので子供くらい誤差でしかなかった。

その後は順調に進み、一日の折り返し。大体20km程。


その間、シアをずっと背負っていたので寝てしまった。

揺れが気持ちよかったようでスースーと気持ちよさそうな寝息が聞こえる。


そして右を向けば。


「うぇーん、つかれたよー」


そんな感じで桜凛さんが弱音を吐いている。

栗山さんや神山も音を上げている。


「イリム〜、もうそろそろ休憩しよぉ……お腹すいた〜……」


神山が腹を抱えながらそう意見する。

確かにそろそろお昼だろう。太陽が頭上で輝いていることからも分かる。


「そうだね、そろそろお昼にしようか」


そう言って、ご飯の準備を始める。

軽い飯テロになるかもなので注意しておこう。


まずは、何を食べるか考えておこう。

干し肉は非常食として最後まで残したい。危険地帯だと料理などできないからだ。


そのため、できるだけ現地調達がいいが近くに川などは見えない。

……ここは、買っておいたお魚でも使おうかな。


まずは、地面に砂をまいて焚き火の準備をする。

砂は周りの草に燃え移るのを防止するためだ。砂自体は“創造”で出した。

普通に買うのを忘れていた。


撒いた砂の上に薪を山みたいな形にして設置する。

なにかと、謎に学んだ前世の知識が活用されたのだった。


「イリム、火つけたい」


神山が子供みたいな事を言ってきた。

都会人からしたら自然なんてあまり眼にしないからこういう経験は少ないのだろう。


旅の終盤だとそんな事をする余裕はない可能性のほうが多いから今回は許してもいいだろう。


そうと決まれば、神山に火打石を渡す。

使い方は分かっていそうで簡単に火花が起きる。

……あのドヤ顔を普通にうざい。


しかし、一切火が移っていない。

それもそのはず、直接火を木に移すなどできるわけがないのだ。


棉はないのでナイフで木をフサフサさせる。

完全に切らず、最後だけ繋げて火を移りやすくさせるのだ。


その手慣れた手さばきは神山達からしたら『なぜそこまで慣れているのだろう』と思わせるほどだった。


無事、木に火が移り煌々と燃えている。

その光景に感嘆の声を上げている。


そのまま、内臓の処理をした魚に口から棒を刺す。

一旦外に棒を出してから尻尾あたりでもう一回突き刺す

――口打ちと言われる刺し方だ。

そして、地面に棒を突き刺して焼く。


しばらくしたら、魚のいい匂いが鼻を刺激する。

それにつられてか、シアも目が覚めた。


そこそこ長く寝ていたのでかなり眠そうだ。

目をこすって大きなあくびをしている。


そのまま、再び眠ってしまいそうなのを支え、目を徐々に覚ましていく。

魚が焼ききる頃には完全に目を覚まし、目の前の魚を楽しみに待っている。


「やっとお腹を満たせる……」


冷静ポジの栗山さんですら、思わず本音が漏れていた。

言っても20kmは進んだと思うので疲労も蓄積していたのだろう。


焼けた魚をみんなに配る。

神山はいいとして、桜凛さんと栗山さんまで魚を2本ほしいと言ってくる。

本当に疲れていたようだ。


シアはみんなほど疲労は溜まっていないので単純に食事を楽しんでいる。

その近くでは、魚の味を心から堪能する高校生たちが。


「それにしてもそんなに疲れる?前の世界ならまだしもここって異世界だよね?勇者なんだから体力とか上がってないの?」


純粋に不思議に思ったためそう聞く。

帰ってきたのは意外な答えだった。


「筋力は一切上がってないなー。確かに少しは上がっただろうが、だいたいスキルで上げてるから常時からは魔力的に維持できない。逆になんでそんなに体力あるの?」


そう聞かれてしまった。


「なんでって言われても前とは種族が違うからとしか……」


あるとすれば、これくらいだ。

素で数百kgのものを持てるので、これぐらいしか思い浮かばなかった――



みんなが魚を食べ終わったころには木は完全に燃え尽きており、灰が堆積している。


一旦、みんなに離れてもらってから、僕はその焚き火跡を蹴り飛ばす。

焚き火の残骸は砂もろとも遠くに吹き飛び、砂も残らないのでここに誰かがいた跡は綺麗さっぱり無くなった。


「わかる〜、俺も子供の頃よくしてた。もしかして、イリムってk――」


神山が戯言を言っているので、毎度のごとく腹を小突いてあげる。

みんなにとっては慣れたものなので反応することはなくなっている。


そして、神山の回復速度もなんだか上がっているような……

腹の痛みは引いているようで、すでに立ち上がっている。

これからは、もう少し強くしてもいいかも。


「遊びでするわけ無いだろ。こうしておかないと、これを目印に賊が追いかけてくるかもだからこうしておくんだよ」


そう言うと、神山だけでなく桜凛さんも理解していなかったようで、なるほどと呟いていた。


唯一理解できているのは栗山さんだけだと思って振り向く。

だけど、そこにいたのは、手であからさまに『なるほど』とジェスチャーしている栗山さんだった。


だめだこいつら……



日が傾き始めた頃。僕達はテントを張り始めた。


店の中では相対的に小さく見えたが、実際に広げるとかなりの大きさだった。

大体、大型バスを半分に切ったほどの大きさだ。


寝るには十分な大きさだろう。

が、ここで問題がある。


僕はどこで寝ればいいのだろう。

前世は男だし、今世も心は男だ。


なので、できるだけ神山を寝る予定で買っておいたしょぼい小さめのテントで寝たい。だけど、身体は女性なので神山に悪影響を及ぼしかねない。


その事を伝えたらあからさまに喜んでるし……

悩ましい所だ。


と思っていたら。女子陣から、


「絶対に駄目なんだから」

「そうそう、信次だとイリムさんに悪影響を及ぼしかねない」


と、猛烈に反対された。

それにしても、神山が僕に悪影響を与えるとはどういうことだろう。

普通逆じゃない?


まあ、僕としてもそっちのほうがありがたい。

なんせ、僕はともかく、シアにとっては絶対に悪影響だ。


そのため、寝るときは別れる必要があると思ったのだ。

女子陣からOKが出たのならその心配は無くなるわけだ。


……神山には悪いがここは一人で夜を過ごしてもらおう。



その晩、僕達は寝袋で眠った。

用意していたのが4つだったため、シアは誰かの寝袋で一緒に寝ないといけない。


すなわち、ここで選ばれた人が一番懐いているということだ。


その事に気づいたのか、テントの中は一瞬にして張り詰めた空気に……

なることはなく、どちらかと言うとほんわかした空気感だ。


「お姉ちゃんと一緒に寝る」


シアの答えはもちろん僕だった。

その瞬間、周りが一気に暖かい空気に包まれる。

それが当然とばかしに。


みんなは意外と欲が薄いのかな?

そんな、新たな発見とともに僕達は眠りにつく。


その間、結界内とはいえ、一人、質素なテントで寝ている神山は一人悲しんでいた。


まあ、シアの体温が暖かかったのでどうでもいいか。

シアかわいい。

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