後の話
羞恥心で死にそう……
昨日は民衆の前で堂々と演説し、羽を出して飛行した。
無論、今考えたら絶対にしていなかった。
理由は単純。ガルが渡した魔法があまりにも多く、思考が馬鹿になっていたからだ。
今回の件でクラスの全員に僕が人じゃないとバレてしまった。
一部のオタクは、
『TS✕転生✕人外……むふふうふふううふ。構想が捗る——』
とか言ってた。正直怖い……
そこに茂がいたのも怖い。
正直、怖がられると思っていた。
でも、現代人からしたら「ファンタジーの亜人」なんて当たり前なのかもしれない。
後は、シアがその事に気づいていたことだ。
あいつらは勇者なので見えていても当然だがシアはまだ子供だ。
——もしかしたら、シアって結構な逸材かも……
あと、シアも怯えなかった。
何ならきれいとまで言ってくれた。
神山なら殴るが、シアに言われるとただただ嬉しい。
それにしても、一部の人間が僕の羽を見て『天使だ!』とか言って新しい宗教が生まれてるのが怖い。
まあ、そのおかげで僕=亜人とバレていないのが救いだった。
だけど、その“白翼会”の教祖って誰だろう?
まあ、また今度調べればいいか。
そんな、誰かも知らない教祖より、今はシア達の事をどうにかしないといけない。
いま、彼女らは家がない。孤児院が燃えたのだ。
そういうわけで、新しい家。孤児院が建つまで王宮に住むことになった。
僕の高校は頭が良い学校だ、だけど考え方が馬鹿だ。特に男子陣が。
そのため、子供たち——シアに悪影響が出そうなのであいつらにはあまり接触させないでおこう。
後の懸念は城の一部が破壊されていることだ。
ガルが放った一撃は城の一割を破壊し、その賠償が僕が払うことになった。
いや、なんでだよ。
僕はこの王都を解放しようとしただけなのに……
まあ、王都メズマ——いや、新都“フォス”のために頑張るか……
ちなみに、賠償の値段は400金貨。
僕達の感覚で言えば4000万ほどだ。
もしこれが、現代よりの文明レベルだったらこれの1000倍と考えたら少し楽になった。
ちなみに今の貯金が30金貨ほど。到底届かない。
まあ、Bランクの素材を20体ほど売れば返済できるので不可能ではない。
此処から先は理不尽な借金の返済が待っている……
まずは、ギルドに寄るとでもしよう。
あそこならBランクの依頼くらいなら一つくらいはあった筈だ。
——ギルドの中はアイルスのギルドとは違い、白の大理石の床に広いエントランス。それもそのはず、ここは国内最大規模のギルドだからだ。
実は、この王国はダンジョンの上に建国されている。
この前使った通路もその名残だ。
そして、ダンジョンの近くは魔力濃度が高い傾向にある。
その分、強い魔物も多く生まれる。
Aランクは生まれなくともBランクは結構多いみたいだ。
そのため、Bランクの依頼は常時でも7個が入れ替わりで変化している。
そして、Bランクの中でもとてつもなく強い魔物が三体居る。
この三体は一体倒すだけで借金が半分返せるらしい。
行ったものが誰も帰ってこなかったそうだ。
しかし、素材が上振れたら一体のみで借金を返済できる一攫千金魔物だ。
が、そいつがいる場所まではめちゃくちゃ遠い。
大体1000kmほどだそうだ。
それに加え、そいつらのランク帯がB⁺、Bランクの上位となっているので僕一人じゃ行ってはいけない。少なくとも同ランク帯が三人は募らないといけないのだ。
その時、後ろで聞き覚えのある声がする。
桜凛さんと栗山さんだ。ついでに神山。
どうやら、僕の跡を追ってきたようだ。
あからさまに、僕の遮蔽になるところからこちらを見ているからだ。
まあ、桜凛さん達も勇者、そのためBランクはあると思う。
だから、パーティーを組むには最適な人たちと思う。
ただ、つけられていたのは何か嫌だと思ったので、ささやかな仕返しをする。
桜凛さんの居る方とは反対方向を見て瞬歩を使う。
そのままバックステップの要領でみんなの背後まで跳ぶ。
調査対象がいきなり消えたのだ、皆僕の姿を探している。
そこに意識の外側から不意の一撃を頭に入れる。神山に。
突如の頭上からの急襲に神山が崩れ落ち、即座に栗山さんが、その後に桜凛さんが気づく。
「え、イリム?いつの間に」
「わっ、びっくりした……」
二人はそう反応する。
神山は痛みでうずくまっているため、うめき声を上げていた。
「どうしてここに?」
「えっと、イリムが一人で出かけるのは珍しい気がして……」
なるほど、まあ、僕も自主的な外出はあまりしようとは思わない。
ただ、国の司法から借金を命じられているから仕方なくって感じだ。
「まあ、丁度いいですかね。いま、Bランクを三人募集しようかと思っていたのですが、どうです。僕のメンバーになりませんか?」
そう言うと三人とも驚いた表情をする。
「え、いいの?というかイリムが自分から誘うって珍しい……」
「まあ、理不尽な借金を返さないといけないので」
「あー、なるほど」
栗山さんが相槌を入れる。
「でも、私達はともかく、信次がまだBじゃないのよね〜」
そう、桜凛さんが言う。
なんと、明らかパーティーの中心ぽい神山がまだCランクだったとは。
主人公ポジ失格ですね。
まあ、後少しでBランクになるそうなので、その時まで待ってやろう——
——あれから2日ほど、神山も無事Bランクへと昇格した。
神山曰く『待たせ過ぎたら本気で置いてかれそうだったからガチで頑張った』だそうだ。
勇者とは言え、2日でランクを上げたのだ。そこに嘘はなく、ちゃんと頑張ったのが見受けられる。まあ、その頑張りの影響で周辺の魔物の巣が消え去った。
ギルドでは毎回血まみれで返ってくることにちなんで“ブラッド”と言われているらしい。勇者の二つ名がそれでいいのか……
まあ、頑張ってはいたが少なくとも後3日経ってたら確実に置いてってた。
普通に距離が遠いからできるだけ早く出発したいのだ。
まあ、一番の問題が解決したので後は軽く準備するだけでいい。
まずは、テント用品などが無いのでそれを買いに行こう。
ここで豆知識:イリムの服の修復問題
イリムは羽を出すと服が破けてしまいます。だからといって背中が空いた服は嫌だそうです。
そのため、普通の服を着ているのですが。服の破損の回数と場面が――
・孤児院にシアたちを助けるのに一回
・ガルの攻撃回避で一回
・その後のレフォルストの合流直前に一回。
・ドラゴン襲来時に一回 その間服の修復の描写ゼロ
ですので、ここでのの陰ながらのサポートを伝えます。
孤児院では気絶中にレフォルスがササッと似たような服を引き出しから。
ガルは飛び立つ前に背中を見てそれで服に修復魔法を。
その後はガルが教えた魔法でイリム自身が修復しています。




