早めの再開
「それで、嬢ちゃんはあの男に勝ってきたのか?」
レフォルスが不安そうにそう尋ねる。
「うん、倒した――ていうより、逃げたが正しいかな?死なない程度に気絶させようと思ってたんだけどテレポートで……」
レフォルス達は一様に悩みこむ。
人類でテレポートができるのはごく限られた者のみ。
敵の脅威度が、想像よりも高いものと考えなければならない。
それと同時にイリムの強さも上方修正しなければならない。
みんなは、イリムの弱っていた姿しか見たことがない。
それに加え、幼女と言っても差し支えないほどの小柄な体格。
そんな子が本当にあの男を退けることができたのだ。
強いと認めざるを得ないだろう。
「それで、ここからどうするの?」
イリムがそう尋ねる。
計画を知っていないとダメだと、そう考えたからだ。
それにレフォルスが答える。
「まずは子供たちを安全なところに置こう。確か、ここの地下に安全な空間があったはずだ。そこに向かおうと思う」
イリム自身も一番に子供の安全を確保したかった。
そのため、その計画に異論はなかった。
レフォルス曰く、ここは地下ダンジョンの通路だそうだ。
危険では、と思ったがすでに死んだダンジョンらしく魔物は生まれないらしい。
だから、迷路のような構造だったのか。
それにしても、ここの通路を丸暗記しているこの人は一体何なのだろう?
全員レフォルスが見つけたメンバーらしいけど……
――安全と言っていた場所付近に到着した。
そこはただの通路のようにしか見えない。
その場所の天井の一箇所を一人の男性が押す。
そうすると、“カポッ”と音とともに石が凹み、同時に隠し扉が現れる。
これには驚いた。魔力感知で調べても部屋らしい場所は見つからなかった。
壁の石材が魔力を遮断し奥の部屋を隠していたようだ。
たしかに、これほどまでの隠密性能があれば大丈夫だろう。
ただ、ちょっとした心配事もあったので曲がり角の向かわない方に魔法を飛ばす。
「ん?何してんだ?」
「ちょっと懸念があったから」
レフォルスが尋ねてくるが重要ってほどではないから軽く誤魔化す。
でも、懸念があったのは本当だ。これで騙しやすくなったらいいけど……
「そして、ここからどうするの?もともと集まってたみたいだから2個目の作戦くらい用意してるでしょ?」
そう言うと、彼らは全員目線をそらし始めた。
え…いやいや……ね。まさか――
「あのー、まさかとは思うけど。第2プランとか無いの……」
そう言うと、レフォルスは苦汁でも飲んだ表情をして、
「非常に言いにくいのですが、そのようなものはございません」
そういった後に「そもそも、第一プランとかもなかった」とどこかからか聞こえた。
僕は、額に手を置き、思いっきりため息をつく。
仕方ない、今から考えよう。
「まず、今回の勝利条件を考えよう」
そう言ってどこからか紙とペンを出す。
“創造”で出したのだ。
おじさん連中はその事に感嘆し、
子供たちは素直に凄いと思った。
けど、今は時間を詰めたいので一旦無視する。
「僕達は街の異変に対して反逆を犯してるわけだからその原因の除去、加えて首謀者の確保が今の勝利条件」
イリムは紙にそのことを書き加える。
「僕達の戦力はBランク、僕自身はAランクだけど城にも何人かはいると思うからなるべく隠密行動が推奨される」
皆がその言葉に頷く。
対して、シア含む子供たちは理解できていなそうだった。
「だから、城の何処かにある精神支配の魔法陣を破壊する、てのが大まかな作戦。今回は隠密行動が必須と言ってもいいからみんなはここにいてほしい」
そう言うと真っ先にレフォルスが反対する。
「何言ってる、俺達だって役に立てる!」
「今回はそういうわけには行かないの。それに、命をつなぐことも大事な役目だから」
そう言ってレフォルスたちを説得する。
最終的には信じてくれたが普通に数十分かかった。
まだ神山のほうが物わかりが良かった。
おじさんになると自己主張が増えるのかも。
そう呑気なことを考えながら、僕は城へ向かう。
教わった通路を通ると、説明通りにはしごがあった。
この上が城の部屋に通じているそうだ。
普段は使われていないので見つかることは早々ないらしい。
その言葉を信じ、天井を押す。
出た先は、茂が貴族と交渉してた部屋だった。
幸運なことに、この場所から怪しいと思っていた場所は結構近かったはずだ。
そう思い、ゆっくりとドアを開ける。
ここには人は滅多に通ってなかったように思う。
だから、基本的には誰にも会わない……
そんなことを思ったのがいけなかったのか。
神山がいた。
思わぬことで再開してしまった。
下手したら反逆罪で何年かは会えないかもと思っていたからだ。
神山は眼を丸くして声も出ない様子だったが、即座に意識を刈り取った。
そのまま、僕が出てきた部屋に放置する。
一応、“僕がここにいたことは絶対に喋るな”と書き置きを残したがちゃんと気づくのかが心配だ。
その後は簡単に立入禁止と言われていた場所についた。
ここは、王族の隠し通路や人体実験をしてるなどいろんな噂が立っていた場所だ。
そこからは何も感じなかった。
けど、さっきもそう思っていたら隠し扉が現れた。
そのため、注意深く壁を注視する。
すると、壁紙が四角く削れた場所を見つける。
いつもなら何か物をぶつけたとしか思わないが、今はそうは思えない。
僕は、その場所を強く押し込む。
すると、予想通りに壁が動いた。
地下に向かって階段が続いているようだ。
先は見えず、闇が通路を塞いでいる。
そこで、雷魔法で明かりを灯す。
火でも良かったけど、狭い場所だと一酸化炭素中毒のリスクがある。
そのため、今回は雷を選んだのだ。
そして、僕は下へと降りていく。
しばらくして、扉がしまったのか背後も真っ暗になった。
そして、眼の前に淡い紫の光が現れる。
それは、進むに連れ明るくなり、魔法で明るくする必要もないほどになった。
十中八九ここだろうが、僕には嫌な予感がした。
そしてその予感は的中することになる。
階段を降りた先には、一人の男性が立っていた。
テレポートで逃げた、あの男だ。




