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商談&魔法防具

桜凛さんの部屋を出て、自室にもどった際。


あまりにも意気消沈しすぎてもらった服――厳密には着させされた服――のまま自室に戻ってしまった。

その際、一人の(おたく)に目をつけられていたとは露知らず――


うぅ、寝ても昨日の傷がいえない……

そんな感じで嘆いていると自室の扉がノックされた。


誰だろうと見ると――

えーっと、誰だっけ?

見た事はある。見たことはあるのよ。


まあ、クラスメイトなので怪しいやつではないだろう。

取りあえず返事をしつつドアを開ける。


そこには、僕よりも40cmも背の高い青年がいた。

大体170くらいである。決して僕の背が低いわけではない!


内心で取り繕っていたら彼から話しかけてくれた。


「はじめまして、世界の深淵を覗こ――。ごめんミスった」


その時、僕は体感でわかった。こいつ、やばいやつだと――


瞬時にドアを閉じようとしたが「まって、大事な話が――」と途中まで聞こえたので仕方なく開けてやることにした。

そうするとホッとしたような顔になり、すぐに真剣な眼差しに変わった。


「印象は最悪かもしれないが、商談を持ってきた。」

「商談って言うんだからこっちにも利はあるんでしょ?」


そう言うとニヤリと笑って。


「そりゃもちろん。それも特上のものをね…」


そう言われるとさすがの僕でも興味が湧いてきた。

まだ、寝間着だったので着替えてから自室に招きこんだ。


彼――野和茂の話によると、新型の魔法の発動を補助する服を作成したそうだ。


そして、それを貴族、それも軍事に関係する貴族に売りつけたいそうだ。

だが、実際に着てみないと買い手側も想像しにくい。そのため、モデルとして着てほしいそうだ。


実際に売れた場合は利益のうちの1割ほどをくれるそうだ。

それに加え、今回着てもらうサンプルをくれると確約してくれた。


それに、曰く『サンプルといえど侮るなかれ。何十種類もの異なる魔法陣同士を複雑に絡ませ、単体ではそこまでの魔法を相乗効果で何倍にも膨れ上がらせたものだ。』と熱弁してくれた。


――ホントはもっと詳しく話してくれたが良くわからなかった。

悔しかったので、今後は魔法陣についても詳しく学ぼう――


そうこうして貴族との商談の日になったのだが――


どうしてこうなった。

最近こう思うことが多いが今回のは本気で意味がわからない。

もっと詳しく聞いとけばよかった。

なぜなら、


前後の長さが少し異なる膝上の純白のドレスに、

先端がピンクに染まったフリルがたくさんついていて、

さらに可愛らしい装飾があちこちに施されている――


……いわゆる魔法少女と言われる服だったからだ。

本来は、前日とかに渡されるのでこのようなことはないが。

『ギリギリまで改良を続けたい』

と言ってたのでこのような事態に陥ってしまった。


だが、ほんとにギリギリまで詰めていたようで目の下にクマが見受けられる。

だが、この柄は何だ。


たしかこれって軍人関係の貴族に見せるのよね。流石に即却下でしょ。

いざ、商談が開始される。


僕は概要を紹介した後に出てくる予定だけどそのほうが緊張する。

ましてやこのような格好。緊張しないわけがない。


実際に論文を言うのと羞恥心丸出しの服で人前に出るのじゃそりゃ緊張の度合いも変わってくる。


そして、出番が来た。

もうどうにでもなれ、と思いながら僕は登場する。


瞬間。貴族から抗議が入る。


「そのふざけたカッコは何だ。バカにしているのか?」


そう憤慨した。

だが、茂はそれに対し冷静に対処する。


「いえ、この国の象徴は"白"だと聞いたのでその色に揃えました」

「戦場を舐めているのか!そのような目立つ服ではすぐに射抜かれるわ!」


貴族は到底採用できぬと猛抗議する。

だが、ここからが野和茂という男の変態的で、なのに恐ろしいところだった。


「いえ、この色にしたのにはしっかりとした理由があります」

「ふん、言ってみろ」


貴族は(どうせ大したことではない)と心で思いながらも聞いてやった。


「まず第一にこの服は誰が着ると思いますか?」

「バカにしておるのか、先程話したな内容ではその服は他の魔法防護服に比べても高価過ぎる。よって指揮官などの者が着るだろう。加え魔法の補助を行ってくれるそうじゃないか。ならば必然的に高位の魔法使いに……」


そう言い終わる途中でなにかに気づいたのか言葉を止める。

ここからが茂の猛反撃が始まる。


「そうです、この服は高位のもの、加え魔法使いに渡されるでしょう。ならば、弓矢で狙われやすい前衛に行くことは少ない。それに、指揮官クラスが着るのであれば自国の象徴とも言える色であれば自ずと士気も上がるでしょう。」


「だが、そのフリルはなんだ。絶対に必要ではないだろう」


そう反論しようとしたがここで食い下がる男ではない。


「いえ必要です。この服には魔力の吸収を行うのは先程話しましたよね?」

「ああ、ここが"一番重要だ"と言っておったな。それがどうした」


「実は、このフリルがその効果を何倍にも膨れ上がらせていつのです」


貴族は実に驚いたように問いを投げかける。


「どうやって、ただの飾りではないのか?」

「原理としては簡単です。

今回開発した魔法は、触媒の面積で魔力を吸収します。

ですので、このフリルで総面積を大きくすることで吸収効率を大幅に上げることができました。

更に魔力貯蔵の効果も併用してますので戦闘継続能力も飛躍的に上昇します。

例えばですけど魔力吸収のみで中級魔法が数分間に一発打てるようになります。」


「数分間に一発だと!、現状どう頑張っても一日に五発が限界なのに……」


うーん、良くわからないが凄いことがわかった。

それよりも恥ずかしいから早く終わってくれ。


そう願うも茂の説明は続く。


「それに加えこの服は事実上の物理的な遠距離攻撃を無効化します」

「え、今なんと言った。遠距離攻撃の無効化……、それは矢や他国が開発している高速で飛ぶ鉄の玉もか?」


「はい、その通りでございます。この服のフリルの一部に"荷重力魔法"と名付けた魔法が組み込まれており、矢やそれこそ鉄の玉でも瞬時に地面に叩きつけます。」

「それは他の者への影響は……」


「もちろん皆無でございます。ただし金属を身に着けていた場合は対象外でございます。ただし、チタンなどの例外もございます」


ん?ちょっと待てよ。

魔法の名前が『荷重力魔法』で、金属に影響を及ぼしチタンのような例外もある。

これって重力とか言ってるけど実はただの指向性の磁力場の魔法なんじゃ……


気配を感じたのか茂が振り返ってくる。

なにも不信感は抱いてませんよ……


ただ、凄いのは事実。

今の世界は現代的な兵器はない。

が、今の発展状況でも兵器には鉄が含まれている。


例えば矢じりなど、もちろん剣にも含まれているので近接も対策できるだろう。


口には出さないが心で称賛すると茂が満足そうに頷いていた。

――エスパーかなにかなのかな?


結局、商談はうまく進み、円満に終わっていた。

かなり長く話していたのでこの服にも少し慣れてしまった……

悲しい――


そう思い、着替えるために部屋に戻る――

そこには見覚えのあるセットと栗山カメラマンがいた。

当然の如く桜凛さんも……


「はめやがったな茂ー」


そう叫ぶもその声は届くことはなく、

二回目のファッションショーが開始された――



――今から4日前の夜。

私は一人の女の子を見つけた。


その子はどこか疲れた様子だったけど、私の目に強く残った。

その後に彼女が誰なのか情報通のオタク仲間に聞いてみた。


そしたら、驚いたことに彼女が藤村くんと言うではないか。

もともと彼には興味があった。同じオタクとしての強い匂いを感じたのだ。

だが、あの静寂なる空間に入り込むのはどうも気圧された。


だが、今の彼――いや彼女からはそんな気配はまったくない。

そこで前に考えてやめたオリジナル小説「性別が変わったら魔法少女になっちゃった!」の設定と見事に一致していることに気づいた。


結局、改めて考えたら『うん、無いな』と思いやめてしまった。

が、ここでそれを成熟させる!


眼の前にはちょうどよい人材。

それに加えもともと気になっていたあの藤村君という好都合。

これは話しに行かなくては。


そう思い彼女の部屋を訪れる。

前準備は完璧。彼女と親しくしていた神山にどのような人物かも聞いた。


彼によれば、イリムは女の子の服はあまり着たくないそうだ。

なので、あくまで商談という形で持ち込む!


そうして部屋の扉を叩く。

そうすると中から可愛らしい、なのにどこか神聖感を感じる声が聞こえる。

そうして、ドアが開く。


そこには、今起きたのかネグリジェ姿の真珠色の髪の女の子が立っており、金色の目が私の顔を覗き込む。


低身長に加え他の子より更に小さな顔が他のパーツを更に仕立て上げ、

結果、可憐という言葉が似合うような少女だった。


え、思ってた以上に美人なんだけど!?


そう思ってしまうのも無理はない。

なんせ"イリム"なのだから。


それに加え、彼は夜中にイリムを見つけた。

暗い上に離れていてはその容姿を完璧に把握するなど至難の業なのだ。


そして彼はそもそも女子との対話経験が少なすぎた。

それ故の過ちで、


「はじめまして、世界の深淵を覗こ――。ごめんミスった」


やばい、本当にミスった。今も彼女は扉を締めている最中だ。


「まって、大事な話があるんだ」


あまりにもテンパっていたので思わすプロポーズ直前のような文言を言う。

幸いにもイリムには途中までしか聞こえていなかったので、

そのような誤解は生まれずに済んだ。


その後は円滑に事が運び貴族との商談が決まった。

これは予想外だった。


『貴族との話をするから試しに着てー』

っと言うつもりだったが、実際に話し合えるとは思ってもいなかった。

正直、イリムの魔法少女姿を見るだけで十分だったのだ。


そして、いざ話し合いが始まった。

最初はどのような仕組みでどのような効果になるのか――って説明をしたのだが案の定理解できないようだった。


そして実際に見てもらおうとイリムに出てもらった瞬間、

その貴族がキレた。


その行為は茂の作った、イリムが着た服をバカにされたような気がした。

それは、職人が作った物を愚弄するのと同じ。


そして茂の心に火が灯る。

この貴族を見返してやろうという、熱い火が。


そして、その性能を認めざるを得なくなる。

彼自身もせっかくなら全ての装飾に意味をもたせてあった。


それは、単に妥協が許されない、というだけではない。

彼の中で3日間の相談の中で、イリムが最推しになっていた。


『そんな至上の方に欠陥品など渡していけない』

という強いオタク心があったからだ。


そして、鬼迫すらも感じられるその姿が貴族を押し負したのだ――


ちなみに、茂はこの3日間で『イリムを守る会』に出会い、

そこでのリーダー格。桜凛と栗山に出会う。


そして面白いほどに意気投合。

その中でイリムの魔法少女姿が話題が上がり撮影班として参加することになった。


そして、半ば冗談で設立された"イリムを守る会"は、野和茂の参加により、本格的に動き出す。


が、そのことを知るのはまだまだ先の話。

脅威の4000文字超え。最初期ならこれだけで2話分に、下手したら3話分になります。

ここまで多くなったのは、私がイリムの推しだから。

そして、魔法少女が好きだから。


ですのでここまで長くなってしまいましたが頑張って読んでくれてありがとうございます。

ここまで続いたのもなにげに皆さんのおかげです。

実際、途中でやめようとも考えていましたので。


それでは、今後とよろしくお願いしましゅ。

あ、新年明けましておめでとうございます。

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