宴という名のパーティー
昨日はひどい夢を見た。
そう、あれは夢だ。きっと、おそらく、たぶん......
さて、今日は例の祝賀会がある。
そのために、いろいろと準備しなければならなかった。
僕は、一応メイドなので買い出しを頼まれた。
のだが、案の定メイド服のままだ。
うん、なんか慣れてきちゃった...
それは一旦置いといて、頼まれたものを確認する。
その内容は、ごく一般的な内容だったが、いかんせん量が多い。
例えば、牛肉を30kg、玉ねぎ20kgなど。
このテンションでまだ20個もの買い出しをしなくてわならなく、
合計で、脅威の600kg強。往復不可避だ。
えーと、まずは野菜から買って、最後が生物だな。
そう考え、出店に向かう。
ここでは、スーパーみたいな概念がなく、すべてこの形式だ。
そのため、足りるのだろうか?という一抹の不安を抱きつつ、足を運ぶ。
結果は、ちゃんと買えた。
意外だった。外見はあんなに小さいのに。
その後も、簡単に集まった。
更に意外だったのは、自分で言うのも何だが、
この華奢な身体でよくもまあ600kgもの荷物を持てたことだ。
傍から見たら小学校高学年くらいの少女が自分より大きな荷物を持つ。
メイド服で...... なかなかにシュールだ。
最初、野菜を買ったときにもしかしたらと思ったが、
ためしたら、案外軽かったのだ。
もちろん、重いと思うのだが、想像してたほどではなく、
感覚的には小さめのテレビを持っているくらいだった。
たしか、あっちでの世界記録が400kgほどだったような......
向こうなら、国民的テレビが取材に来るくらいだろう。
話は変わるが、ちゃんと材料を調達できたのは王宮に“用意するように”と言われていたからだそうだ。
彼らは、『王宮の方々の役に立てて光栄だ』とは言っていたがホントだろうか?
僕が見た王宮は、王様自体はいい人だ。
でも、大臣のほうがあまりいけ好かない。
僕にメイド服を渡してきたし......
そのメイド服自体もかなり高い。
20人の生涯年収をあわせてギリギリ買えるかどうか、といった具合だ。
『勇者に合わせたら必然的にそうなった』と言っていたがあまりにも高すぎる。
しかも、まだ正体も完全にわかっていない者に渡すなど......
正直、市民からは嫌われてると思っていたんだけど、そうではなかった。
情報規制でもしてるのかな?
それくらいしか納得できない。
なぜなら、僕なら確実に嫌いになっているからだ。
――買い出しが終わり、王宮に戻ってくる頃には祝賀会の準備が始まっていた。
進捗はだいたい8割ってところかな。
5時くらいから始める予定と聞いていたので、食料はシェフに渡し、
僕は正装になる準備をした。
部屋に戻って、机の上に置いた服を見る。
それが今日、来ないといけない制服だ。
......この世界に来てから、やけに女物の服を着る機会が増えた。
ほんと、慣れてきてしまった......
このことに喜べばいいのか、悲しめばいいのか。
僕もわからなくなってきた。
そんなことを思いながら、制服に着替える。
姿を確認するとそこには、
紺色が主体のタータンチェックのスカートに、同色のブレザー。
その裏に無地のYシャツが覗いており、
それを、白髪の容姿だけなら小学校高学年くらいの子が着ている。
それなのに、不思議と不自然ではなく、うまく調和が取れていた。
うーん、ちょっと大きいかな。
なんせ、今の身長は140cmほど。
借りた人は小柄と言っても158cmくらいはあった。
でも、ある程度着れているからまだ大丈夫でしょ。
すこし、楽観視しながらその時を待った。
――時間になり、会場に向かっている途中。
クラスのみんなと一緒に移動することになっていたので、
クラスから、特に女子連中からいじられる。と思っていたがそんなことはなかった。
顔を見ると、個人差はあるものの、皆一様に顔がひきつっていた。
祝賀会には他国の貴族なども参加するそうなので、そこに緊張しているのだろう。
僕は、あっちで天皇や総理にそこそこの頻度であっていたからね。
そんな経験がなければ、そうなるのも必然だ。
しかも、主役側であるというおまけつき。
僕も、主役の経験はストックホルムに行ったときくらいかな。
流石に、緊張するが、食べ物の方に興味があったのでさほど重要ではなかった。
そんなことを考えていたら、気づけば会場についていた。
かなり広く、壁には美しい金の装飾が施されており、シャンデリアが輝いていた。
みんなはその光景に気圧されていたけど、それは悪手かな。
おそらくだが、ここは貴族を選定する場所。
ここで、堂々としていなければ小物として扱われるだろう。
まあ、彼らは勇者なのでこの程度で見限られることはないだろうが。
案の定、他の貴族からは下に見られているようだ。
最近では視線が集まることが多くなったので、視線の種類をある程度見分けれるようになったのだ。
その分、威風堂々たる佇まいの僕はそんな目線、もらうことはない。
実際、そんな視線はなかった。
のだが、なぜか大人が小動物を見るような、微笑ましい目で見られた。
胸を張っている小さな子どもを見るような……そんな目だった。
解せぬ……
――あれから数分後。パーティーが始まった。
テーブルには、色とりどりの西洋の食べ物が並び、会場を彩る。
僕はというと、ダンスのお誘いを全部跳ね除けて、舌鼓を打っていた。
これは仕方がない。なんせ異世界の食文化なんだから。
第二王子の誘いを突っぱねても仕方がない。
何処かで、王様が僕を暫定的な勇者とする、的なことを行っていた気もしなくもないが、やはり、人の食欲には勝てなかった......
その時、ガラスの割れる音とともに会場が闇に包みこまれた。
状況を理解するまもなく複数人の気配を感じ、瞬時に勇者の背後に回る。
その刹那、金属同士がぶつかる音が聞こえ、貴族どもが一斉に逃げ始める。
「こういうのって、王様とか狙うもんでしょ」
そう問いかけたが相手からは反応はなく、代わりに斬撃が眼の前をかすめる。
別のところでも、戦闘の気配が感じるが無差別には思えない。
最初にシャンデリアを落とし、敵の視覚を奪う。
そなまま、減速せずに人に接近。
気配の消し方も上手く、魔力感知がなかったら見つけれていなかったかも。
そのことからも、最低でもCランクぐらいはありそうだ。
そのような、世界的に見て強者と言われる部類のものがお金に困ってるとは思えない。
襲ってきた理由は何だ?何が目的だ?
考えても答えは出ず、その間も攻撃は続いている。
考えても仕方がない。とりあえず目の前の問題を片付けることに専念しよう。




