野外演習.2
夜が明け、皆が起き始めた。
暇つぶしのスライムはというと、元の野に返してやった。
魔物を逃がしてよかったのかって?
スライム位なら大丈夫だよ。
それに、人間が乱獲するもんだから、スライム保護条例なるものに各国が著名もしてるし...
更に、スライムが危険と思われるまで進化するのは超低確率。
出現頻度自体は数万年に一回、早くても数千年だ。
まあ、出現した際は世界滅亡の危機とさえ言われ、人魔の垣根なく討伐に尽力するのだ。
まさか、ね...
ってことだから安心しても大丈夫!
あの子が逆襲に来ることはない!多分...
さて、呀狼討伐。あらため、勇者の訓練は順調に二日目に入った。
昨日は、呀狼を半分くらい倒したところで何処かに行ってしまった。
その時に、偵察班がその後をつけていたらしい。
結果、呀狼の巣を特定できたらしい。
だから、昨日に遅く来た人がいたのか。
お疲れ様。
というわけだから、根本原因を潰すことにしたらしい。
神山によると、『呀狼は数が増えると、縄張りを増やしていくそうだ。いずれ居住区まで迫ってくる可能性がある。そのため呀狼をここで倒すぞ!』
とみんなを鼓舞していた。
やけに呀狼の生態について知っていたので聞いてみたところ。
『あの時に劣勢になったのが悔しかった』と答えた。
...頬を赤らめながら...
解せぬ。でも、失敗したからこそ、次に備えていたことには驚いた。
神山は思ってた以上に指揮官に向いていそうだ。
そうこう考えながら歩いていると。呀狼の巣についていた。
数は、多すぎて分らない。だが、少なくとも100匹以上はいるだろう。
その時、神山が突っ込んでいった。
この数相手では圧倒的不利なのに...
はー。仕方ない、勇者たちのサポートをするのも私の役目。
脅威になりえるやつを私が対処しよう。
絶対後で説教するけど。
——あれから40分ほど経ったかな?
数は減るどころか増える一方。
みんなにも疲れが見え始めていた。
そんな時だった。地を揺らすほどの咆哮が轟く。
現れたのはきれいな緑色の狼...
疾呀狼だ。これは呀狼の正当進化先なんだけど...
こんな至近距離でプライドの高い呀狼が、更にその上位種が争わずにいた。
これは...
警戒したほうがいいか。
それより勇者たちがやっと動き出した。
びっくりしたのはわかるけど、戦場で固まるな。
その間、噛みつこうとしていたやつを片っ端からぶった切ってたんだぞ。
34人分...
幸い、今回はタガーを両手に持つスタイル。
手数が多かったからギリギリ守りきれた。
それでも、慣れない武器での戦闘は結構きつかったぞ!
そう、心で文句を言いながらも手は止めない。
だけど、一つ問題がある。
それは、みんなに全面的に協力するかそうかだ。
さっきので減ってきたが、まだ呀狼は60匹いる。
それに加えBランク上位の疾呀狼。
全体評価はAランク。
今のみんなでは運が良くても数人の死亡の上の勝利だろう。
うまく下っ端の呀狼だけでも引きつけれれば...
うん、めんどい!
あまり目立ちたくはないんだけどな。
そう思うと、イリムは右手を天高く掲げ、一気に落とす。
その瞬間、呀狼めがけ、数多の氷柱が飛翔する。
次には、残っていたのは疾呀狼のみだった。
「土俵は整えたぞ。めいいっぱいやれ!」
そう声を掛けると皆一斉に疾呀狼に意識を集中させた。
あるものは分厚い毛皮に斬りかかり、あるものは数人がかりで攻撃を防ぐ。
——熱戦が続き、気づいたときには日が暮れかけていた。
このまま日が落ちるかと思われたとき。神山の一閃が疾呀狼の首を捕らえ...
みんなの勝利が決定した。
その後は、疾呀狼の解体をして売れる部分を取っていった。
Bランクの素材はかなり珍しく、毛皮だけでも家が立つくらいだ。
それにしても、このメイド服、性能凄すぎ。
血がはねても水滴みたいに滑り落ちる。
それに加え、自動的なサイズ調整、自己修復、強度増加までされてる。
更に、戦いやすいようにスカートが前後に分かれるギミック付き。
そのせいで、戦闘向きではないと言って着ないということができない...
うん、なんだか悲しくなってきた...
——解体を終え、城に戻る際、神山には思いっきり説教した。
流石にあの数では不利だから、一旦引くことも大事。命大事に!
僕が言えたことではないけど...
街に戻った際には冒険者ギルドに寄って、毛皮と今回の違和感について話しておいた。
それにしても、この街の人はやさしいな。
全員、笑顔以外はあまり見ない。
それに比べ、大臣たちはかなり意地悪だ。
この人たちを見習ってほしいね。
城に戻ったときにはすでに日は落ち、静寂が街を覆っていた。
それとは裏腹に、王宮はクラスの枕投げでうるさかった。




