王都に向かって
朝起きると、僕は街の人達へ挨拶を始めた。
この後、少なくとも数年は会わないだろうから。
それが終わると、僕は旅の準備を始めた。
旅に必要なリュックサックや水筒などが不足しているからまずそれを買いに行った。
街を出る際、お世話になった方々が旅の安全を祈ってくれた。
他人との繋がりが増すのはまだ怖い。
それでも嬉しかった。
さて、みんながいるこの国の首都。
名前は確か“メズマ”だったはず。
ちなみに僕が滞在してた街は要塞都市“アイルス”
なので首都メズマを目指そう。
食料は...
まあ問題ないでしょ。
必要になれば水なら作れるし。食べ物もそこらへんの魔物倒せばいいしね。
えっと、たしかここから首都まではだいたい馬車で2日って言ってたっけ。
走ったら数時間で着く距離だけど、そこまで急いではいないからゆっくり行こうかな。
とか呑気なことを考えてから2日、だいたい折り返しくらいについた頃。
賊に絡まれた。
いやね。脅威ではないのよ。でも倒した後の対処をどうしよう。
それに、相手がどのくらいの強さかわからないから、下手したら殺してしまうかも...
まあ。まだ完全に賊と決まったわけではない。見るからに賊っぽいけど...
まずは話し合いから始めよう。
「えっと、はじめまして。僕はイリム=テルミ——」
「こいつ律儀に自己紹介始めたぞw」
「まだ自分の状況を理解していないみたいだな。」
多少イラッとはしたが、まだ冷静に答える。
「自分の状況とは?」
「こいつアホにもほどがあるぞw」
「みりゃわかるだろ。賊だよぞく。」
「それにしてもこいつ、いい見た目してるな。こりゃ高く売れる!」
「ああ、でも売りに出す前に味見くらいはしてもいいよな。」
うん。完全にアウト。
それにこいつ。僕を売るって言ったよね。
この世界では奴隷制度はなく、人身売買を行った場合は重い罰則を食らうはず...
こいつは放っては置けないな。とりあえず探りを入れよう。
「売るって...今僕以外にも捕まっている人がいるんですか...」
「いーや、お前が今日で最初だ。まあこの後も何人かは捕まえるがな。」
...なるほど。今他に捕まっている人はいないみたいだな。
なら、気兼ねなしにこの連中を止めることができる。
「黙り込んでどうしたんだ嬢ちゃん。もしかしてビビって——」
男が喋り切る前に僕は腹に重たい一撃を放つ。
「ウェルソン!このやろ——」
瞬時に後ろにいたやつが顔を殴りかかってくるが、寸前でよけ、前と同じく気絶させる。
他の三人はまだ状況を理解できていなかったので、楽に気絶させれた。
「さて、こいつらをどうしよう」
そう。まだこいつらどうしよう問題がのこっているのだ。
とりあえず“創造”で出したロープでひとまとめにしたが。
こいつらを街で衛兵に渡すのは距離的に現実的ではない。
...僕にこいつらを殺れるのか...
これを放っておけばまた被害が出る。
だからといって自分の手で殺す勇気もない。
...僕はそいつらを放置した。
縄で結ばれている以上、あそこから身動きはできない。
もし、誰にも会わなかったら...
僕は考えるのをやめた。
怖くなったからだ。自分の手が汚れるのを嫌って。
彼らにとって最も苦しいことをしてしまった。
賊からはかなり離れているのに悲鳴が聞こえる気がする。
これはあの連中からなのか。
はたまた、過去の記憶からなのか...
その場を離れた後も、忘れたくても頭から離れなかった。
結局沈んだ気持ちのまま首都—“メズマ”についてしまった。
クラスメイト探しに努めなきゃなのに...
「はー」
深い溜息がその場に響く。
僕は暗い気持ちのまま関所に入る。




