第19話『王都からの依頼』
その日、ギルドの空気はいつもと違っていた。
受付嬢の表情は硬く、冒険者たちの声も沈んでいた。
俺とリリィが任務報告に訪れたとき、すぐに呼び止められた。
「朔さん、リリィさん。王都から、緊急の依頼が届いています」
「……王都?」
リリィが眉をひそめる。
王都からの依頼は、滅多に来ない。
それが“緊急”となれば、何かが起きている。
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依頼内容は、こうだった。
>「魔獣領にて、Aランクパーティーが消息不明。
> 救出のため、実力ある冒険者の派遣を求む」
魔獣領――王都の北に広がる危険地帯。
魔力濃度が高く、魔獣の活動も活発。
通常の任務では、まず立ち入らない場所だ。
「……行こう」
俺は即答した。
リリィも頷いた。
「うん。放っておけない」
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準備を整え、俺たちは魔獣領へ向かった。
森は濃く、空気は重い。
魔獣の気配が、そこかしこに漂っていた。
数日かけて、捜索範囲を広げていく。
そして、崖下の洞窟で――彼らを見つけた。
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傷だらけの冒険者たち。
魔獣に囲まれ、逃げ場を失っていた。
俺とリリィは連携して魔法と剣を繰り出し、魔獣を一掃した。
「……助かった……誰かが来てくれるなんて……」
その中に、見覚えのある顔があった。
鋭い眼差し。
短くなった髪。
でも、確かに――レイナだった。
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「……レイナ?」
俺が声をかけると、彼女は目を見開いた。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
「……朔……? 嘘だろ……お前……なんで……」
彼女は、俺の顔を見て、言葉を詰まらせた。
そして、ぽつりと呟いた。
「……お前、なんで歳をとらないんだ……」
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>「止まった時間の俺と、進んだ時間の彼女。
> 再会は、静かに――でも確かに、過去を揺らした」
俺は、何も言えなかった。
ただ、彼女の問いが、胸に深く刺さっていた。