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死なないだけの僕がいつか世界を救う  作者: 木挽
誕生と新しい町
18/40

第18話『それなりに幸せな日々』



ルミナスの朝は、静かで澄んでいた。

窓の外には湖が広がり、風が草原を撫でていく。

俺たちの家は、町の外れにある小さな一軒家。

双子の笑い声が、毎日そこに響いていた。


---


ユウは風の魔法に夢中で、ミナは光の魔法を器用に操るようになってきた。

リリィは町の魔法学校で講師として教えていて、俺はギルドの任務をこなしながら、剣術を教える場を持つようになった。


「パパ、見て! 風の玉、できたよ!」


「すごいな。ちゃんと形になってる」


「えへへ、ママに褒められた!」


子供たちの成長は、俺の時間とは違う速さで進んでいた。

それが、嬉しくて、少しだけ怖かった。


---


ギルドでは、俺とリリィの存在が少しずつ知られるようになっていた。

任務の成功率、対応力、そして――Sランクという肩書き。

ただの転入者だと思っていた人たちが、少しずつ距離を詰めてくる。


「……あの人、若いのにすごいな」

「いや、若いっていうか……10年前から変わってないって噂もあるぞ」


そんな声が、耳に入るようになった。


---


ある日、任務帰りにギルドの休憩室で、若い冒険者に声をかけられた。


「すみません、朔さんって……何歳なんですか?」


「……見た目よりは、ずっと上です」


「え、でも……全然老けてないですよね。僕、五年前に見たときと全く同じで……」


俺は、少しだけ笑ってごまかした。

でも、心の奥に冷たいものが残った。


---


夜、リリィが俺の隣で静かに言った。


「……気づいてる人、増えてきたね」


「……ああ」


「でも、私は気にしてない。あなたが変わらなくても、私たちはちゃんと“家族”だよ」


彼女の言葉は、いつも俺を救ってくれる。

でも、俺の中には、言葉にできない不安が少しずつ積もっていた。


---


>「それなりに幸せな日々。

> でも、“変わらない”俺は、いつか誰かの目に留まる。

> そのとき、何を守れるだろうか」


静かな日々の中に、少しずつ揺らぎが生まれていた。

それでも、俺は家族と共に生きていた。


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