第16話『双子の誕生』
「……生まれたよ、朔くん。見て……ふたりとも、元気」
リリィの声は、涙で震えていた。
俺は、言葉が出なかった。
ただ、彼女の隣で、小さく息をするふたりの命を見つめていた。
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男の子と女の子。
小さな手、小さな瞳。
名前は――ユウとミナ。
リリィが考えてくれた。意味は「優しさ」と「皆の光」。
「あなたが変わらなくても、子供たちはちゃんとあなたを“父”として見てるよ」
リリィはそう言って笑った。
その笑顔は、10年前と変わらない。
でも、彼女は確かに“母”になっていた。
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仲間たちも祝福してくれた。
街の人々も、温かく迎えてくれた。
俺たちは、仕事の合間に育児を覚え、家族としての時間を少しずつ積み重ねていった。
危険な任務は減らし、穏やかな日々を選ぶようになった。
それでも、剣と魔法は手放さなかった。
それは、俺たちが生きてきた証だから。
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夜、眠る双子の隣で、リリィがぽつりと呟いた。
「ねえ朔くん。子供たちが大きくなったら、あなたのこと……どう思うかな」
「……わからない。でも、俺は彼らを守る。それだけは、変わらない」
「うん。それでいい。あなたが“生きてる”ってこと、ちゃんと伝わると思う」
彼女は俺の手を握った。
その温もりは、確かに“今”を生きている証だった。
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>「止まった時間の中でも、命は生まれる。
> それは、俺にとって――奇跡だった」
俺は、父になった。
引きこもりの俺が、ママ、パパ…俺父親になったよ…
そして、家族としての旅が、静かに始まった。