表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリス  作者: 冬桜
9/17

時計塔~歪みの悲劇~

ある日、鏡の中から出てきた手に引っ張られて「鏡の国」へやってきた陽菜。


そこで、ウサギのアリスと出会う。


鏡の国のアリス”をモチーフにした、とても不思議な世界を主人公の陽菜が旅をするお話です。

 次の朝、マーリが真剣な顔をしてアリスの家の前に立っていた。


「おはようございます。マーリさん、どうしましたか?」


 アリスはブルーのネグリジェのまま応対した。


「朝っぱらから私がここに来ているんだ。どうしたかなんて聞かなくてもわかるだろう」


 マーリは憎たらしそうに言う。


「まあ、朝から聞きたくない話だろということは予測できますね。・・・中に入りますか?」


「ああ」


 マーリは家の中に入るとますます小さく見えた――家の中では遠近法が普通に戻る――


 陽菜は張り詰めた空気にいたたまれなくなり、部屋に戻ろうとしたが・・・


「陽菜さんもここに居てください」


「ああ、選ばれし者も聞く必要があるな」


 二人に引き止められてしまった。


 (選ばれし者っていう名前じゃないんだけど)


 少し不機嫌になりつつ、しかたなく言われたとおりに一番端の椅子に座った。


「さて、昨夜街の靴屋の親父が時計を巻き戻すのを忘れたそうだ。そして、今朝亡くなった」


「・・・・・・そうですか」


「これが、靴屋の親父の時計だ」


 その時計を見ると、今までにないくらい懐中時計がバラバラに壊れていた。


 まるで、時計に爆弾が仕掛けられていたかのように。


「親父さんは?」


 アリスが淡々と聞くと、マーリは苦い顔をして言った。


「消滅したそうだ。一瞬でな」


「・・・・・・そうですか」


 二人はしばらく沈黙する。


 陽菜も何も言うことができず――人間が一瞬で消滅するなんて想像もできなかったのだが――黙っていた。


「急ぐべきだよ、アリス。ゆがみは確実に大きくなっている」


「そうですね」


 珍しく真剣な様子の二人に、陽菜は何も言うことができなかった。


 そして部屋は再び沈黙に包まれる。


 陽菜は居たたまれない空気の中、壊れた時計をじっと見つめていた。


 〈トランプ遊園地~トランプ遊園地へ~へ続く〉

8月中UP完了に向けて、邁進中・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ