時計塔 ~不思議な世界~②
「時計塔 ~不思議な世界~」の続きです。
ある日、鏡の中から出てきた手に引っ張られて「鏡の国」へやってきた陽菜。
そこで、ウサギのアリスと出会う。
鏡の国のアリス”をモチーフにした、とても不思議な世界を主人公の陽菜が旅をするお話です。
20年ほど前に書いた、冬桜初のファンタジーです。
アリスは屈むことなく時計塔のドアに手をかけ、陽菜の手を引いたまま中へ入った。
陽菜が見る限り、時計塔の入り口はとても人が入れる大きさではない。
それでもアリスが柔らかな肉球のついた前足で陽菜の手を引くので、陽菜は仕方なくアリスについていくことにした。
しかし・・・
(絶対、無理だから!!)
さすがに、扉の前に来たときは心の中で叫んでしまった。
陽菜は覚悟を決めて眼を閉じ、思いっきり腰を低くして中に入ったが、アリスはそのまま進んだ。
(???)
ドアまで行くと自然に体の大きさがドアの大きさに合わせて変化する。
陽菜がさすがに驚きを隠せずに、目を大きく見開く。
しかし、そんな陽菜をアリスは面白をそうに見ていた。
「そんなに腰を曲げなくても入れるでしょうに」
アリスはおばあちゃんのような格好をしている陽菜に向って言った。
「か、体が縮むんなら、先に言ってよね!」
陽菜は強がって、恨めしそうにアリスに言うと、アリスはかわいらしくにこりと笑い、一言“忘れていました”といった。
(確信犯だ!!!)
陽菜は直感した。
「建物の内部では外のように近くのものが遠くに見えたりはしないので安心してください」
(早く言ってくれればいいのに!)
陽菜はアリスを睨むが、それすら楽しそうにアリスは笑っている。
しかたなく部屋を見回すと、アリスが言うように、陽菜にとってはいたって普通の風景がそこにはあった。
「ハァ~」
陽菜は、もうこれ以上この世界の”常識“に疑問を持たないことにした。
そうでないと、頭が混乱してしまいそうだったのである。
アリスは作ったような笑顔で微笑んでいた。
ウサギのアリスが人格を持ち始めて、書きながら「やばい奴だな、アリス」と思っていました(笑)
もっと、クールでかわいらしいキャラクターのはずだったのに・・
楽しんでいただければ嬉しいです。