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アリス  作者: 冬桜
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エピローグ

ある日、鏡の中から出てきた手に引っ張られて「鏡の国」へやってきた陽菜。

そこで、ウサギのアリスと出会う。


鏡の国のアリスをモチーフにした、とても不思議な世界を主人公の陽菜が旅をするお話です。

 陽菜は自宅の前に立っていた。



 ――もし、この世界が元に戻っているのなら、母は優しい笑顔で出迎えてくれるはず――



 アリスは、陽菜が鏡の国を救ったので、三次元のこの世界も元に戻っているといった。


 確かに、陽菜の友達はちゃんと陽菜のことを覚えていた。


 (後は、お母さんだけだ)


 母に拒絶された時のショックが大きくて、母に会うのが怖かった。


 もしも、母だけ陽菜のことを覚えていなかったら。


 もしそうなら・・・やっぱりこの世界に陽菜の居場所はなくなってしまう。


 陽菜は何度も自宅の呼び鈴を鳴らそうとするが、なかなか現実と向き合う覚悟が出来なかった。


 『おかしな人ですね。一国の大統領にあった人が、実の母に会うのに緊張するなんて』


 憎たらしいアリスの声が聞こえてきたような気がした。


 『簡単なことです。ボタンを押せばいいのです』


 (わかってるよ)


 緊張で、指が震える。


 それを見てアリスが馬鹿にしたように笑っている。


「もう。・・・よし!」


 陽菜は覚悟を決めた。


 そして、思い切って強く呼び鈴を押し付ける。


 ピンポ~ン


 間の抜けた音が家の中に響き渡る。


「はい」


 優しい母の声だ。


「お母さん?私、陽菜」


 緊張で声が裏返る。



 プツン。



 独特の機械音。


 扉は開くのだろうか。


 母は出てくるのだろうか。


「おかえり」と笑って出迎えてくれるだろうか。


 陽菜は不安の渦に飲み込まれそうだった。


 (逃げだしたい!!)


 母の罵声を浴びる前に、遠くに行ってしまいたい。


 そんな気持ちを押さえつけて、じっと玄関先で立っていた。



 カチャン・・・キィ



 いつもと変らない母がいた。


「陽菜ちゃん、どうしたの?いつも呼び鈴なんて鳴らさないのに」


 やさしい母の顔。


 ふと、鬼の形相をしていた母の顔が頭を過ぎったが、目の前の穏やかな母の顔ですぐにその映像は消えてなくなった。


「た、ただいま!」


 いつものように言ったつもりが、近所中に響くほど大きな声が出てしまった。


「おかえり。おかしな子ね、なにかあったの?」


「ううん、何にもない」


「そう」


「うん!」


 いつもと同じ世界。


 それが嬉しかった。


 (この世界を守らなきゃいけない)


 陽菜は強く心に誓った。


 「お母さん」




 「何?」


 もし、元の世界に戻るなら母に伝えようと思っていた言葉。


 当たり前のことが続くとは限らない。


 だって、不変の世界である鏡の国でさえ変ることもあるのだから。


 「お母さん、大好きよ」


 陽菜が心からそういうと、母は少女のように真っ赤になった。


 「いきなり何?変な子ね」


 そう言って、陽菜に背を向けて母はキッチンに行ってしまった。


 しかし、しばらくしてキッチンから楽しげな鼻歌が聞こえてきた。


 陽菜も嬉しくなって――でも、すこし胸がくすぐったかったけど――自分の部屋に向かった。


 そして、部屋の扉を開けると・・・ベットの上に30センチくらいの大きさの、タキシードを着たウサギの人形があった。


 その人形はすくっと立ち上がり、陽菜の足元にやってきた。


「陽菜さん、これからもよろしくお願いしますね。」


「!!!!」


 陽菜のいつもと変らない、けれど新しい日々が始まった。






 〈『アリス』 終わり〉

終わったー!!!!

読んでみてどうだったでしょうか?


見知らぬどこかの大統領より、身近な家族の反応が怖い。

きっと、大人になりかけの子どもたちはそういう思いを抱えている子が多いのかなと感じていたし、今も思っている。

不思議なことはまだまだ続いていく陽菜の世界のようです(笑)

読んでいただいてありがとうございました!

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