世界を救え!!~思い~①
ある日、鏡の中から出てきた手に引っ張られて「鏡の国」へやってきた陽菜。
そこで、ウサギのアリスと出会う。
鏡の国のアリスをモチーフにした、とても不思議な世界を主人公の陽菜が旅をするお話です。
朝日に焼ける摩天楼、ここは世界が集結している。
政治も、お金も、貧困も、すべてがある。
世界一豊かで、世界一不幸な国。
まずこの国を止めなければ世界は救えない。
陽菜は、今までになく緊張していた。
今度の試練は、陽菜が暮らす現実世界を変えることだから。
――私が世界を変えるのか――
陽菜は大きなプレッシャーをはね退けるように深呼吸をし、アリスの目を見る。
「じゃあ、いこうか」
「ええ」
そして二人はA国の大統領がいるであろう、大きく重厚な建物へと向かった。
(ここか世界の中枢――)
ここで働くものたちが、世界を動かしている。
古く威厳に満ちた建物の中は、いいしれない緊張感に包まれていた。
(か、帰りたい!!)
陽菜は、自分が場違いなところにいることを自覚していた。
しかし、アリスには関係ないようだ。
「ここです、陽菜さん。では、がんばってきてください」
「え?」
「一緒に行ってくれるんじゃないの?」
当然そう思っていた陽菜は、アリスのこの発言にあわてた。
「いえ、私は鏡の国の住人ですから、三次元の世界の歴史に介入することは禁止されています」
「は?もう十分介入してるじゃない!」
陽菜の言葉を聴いていないかのように、アリスは人形のように、ただにっこりと笑うだけで何もいわなかった。
「ずるい。私一人じゃダメだよ。ねえアリス、一緒に行って!」
「大丈夫です。陽菜さんは“選ばれし者”なのですから。自信を持って行ってきてください」
陽菜は“選ばれし者”という言葉を呪った。
(“選ばれし者”なんて勇者扱いしているけれど、結局いやなこと押し付けられているだけじゃない!)
恨めしそうにアリスを見ると、まだニコニコと笑っていた。
可愛らしい笑顔が、いっそ恐ろしくなってくる。
「もうそろそろ決心はつきましたね。では行ってらっしゃい」
そういってアリスは、陽菜の背中をポンと押した。
「わわ!」
陽菜の目の前に大きなブラックホールのような空間が現われ、アリスの押された陽菜はその中へ飛び込んでしまった。
「がんばってくださいね」
入り口のほうを見ると、楽しそうに笑うアリスが手を振っていた。
「アリスの鬼~」
笑顔のアリスはやっぱりろくでもなかった。
〈世界を救え!!~思い~② へつづく〉
この章も思ったより長かったので、分割です。
もうすぐ夏休みも終わり。。。
頑張ろう