アリス①
ある日、鏡の中から出てきた手に引っ張られて「鏡の国」へやってきた陽菜。
そこで、ウサギのアリスと出会う。
鏡の国のアリスをモチーフにした、とても不思議な世界を主人公の陽菜が旅をするお話です。
閉ざされた自宅の玄関の扉を見つめ、陽菜は途方にくれる。
「どうして?」
母は本当に陽菜を知らないようだった。
しかし、陽菜の記憶の中の父親は真面目で家族思いだったはずだ。
母もことあるごとにそう言っていた。
『パパは忙しくていつもいないけど、私たちのことが大好きなのよ』
若いころの母の声が頭の中に木魂する。
けれど、その父が浮気・・・
(そんなはずない!!)
いったい私がいない間に何が起きてしまったのだろう。
陽菜には現実を受け止めることが出来なかった。
それにしても、ここは本当にもとの有限三次元の世界なのだろうか?
けれど、町の風景も同じだし、人も同じ。
ただ一つ違うことは・・・
陽菜は予感を確かめるために学校の友達や親戚、陽菜を知っているであろう人々のところへ片っ端から会いに行くことにした。
しかし、やはりその予感は当たり、誰一人陽菜を知っている人はいなかった。
そう――
陽菜の存在はここにはなかったである。
〈アリス② へつづく〉
この章、長かった!
ということで②に続きます。