崩壊と継承 #31
ここ幕府本陣では軍議が開かれていた。
「この賭け、必ず勝てるな。笑」
大将和秀は呟いた。
「あからさまに拓いた土地に、乱雑な陣形、そして老いぼれの休息。この全てが私を勝利へと導かせるものとなる。」
そこに参戦した中将の柳本則慶が言葉を挟む。
「その老いぼれがここに無事に来ることがあれば、我々は一気に危うくなるやもしれぬぞ。」
それに真っ向から言葉を返す。
「そんなもの、老いぼれを確実に消せば良いだけさ。」
陣は笑いに包まれた。
老いぼれを消すなんて容易いと。
笑いは一層に増して騒がしい。
「酒を準備させろ!!作品の完成が楽しみでたまらない!!」
そして、橋本より数里離れた場所に位置する本融寺。
刻一刻と迫りくる鉄が擦れる音。
それが止まると同時に辺りは火に包まれた。
そこには桐の紋章で溢れ返り、寺の門がこじ開けられると夥しい数の足音が響き渡る。
この本融寺にいたのは、信正含む少数の馬廻衆のみ。
直ちに信正の居る部屋が突き止められると部屋中が朱殷に染まると寺中にうめき声が轟く。
鼠一匹逃さない程の鉄壁の包囲により本融寺は完全に堕ちると、そこにいた兵士らは全員討死。そして、最期に信正は首を切られ焼け落ちた本融寺の門に吊るされた。
そこには異様な空気が漂い、誰一人として近くに寄せ付けない程の殺気を放っていた。
「、…。」
真っ先にその場に駆けつけたのは、牧野家当主ならぬ信正の実子である正一であった。
この状況を目の前にして動けずに、完全にそこに自らの心がそこにないようである。
数刻前までは絶対的にそこに位置していたはずの寺は、跡形もなく破壊され、身体は見分けがつかないほどに破裂していた。
予想もしていなかった大将軍の死去。
これは瞬く間に前線へと広がり、事件発覚当日には文頼や他の橋本にて火花を散らす者たち、そして非同盟国と隣接する地域にて警戒を払う者たちにまで届いていた。
「これは真なのか!!!!」
何処の配属であろうが、言うことは一つだった。
真っ先に虚偽を疑う程まで予想していなかった事件に戸惑いを隠せない。
「おい…、大殿が殺害されたらしいぞ、。」
「もう、牧野は終わりか。」
「少しだけど良い夢を見れてよかった、…。」
そんな結末が定まったかのように噂を流し、前線部隊は完全に戦意喪失。そして、文頼はその沈静化した場から離れるように、早く馬を駆け出した。
「少将までもが逃げ出したんだ、。」
「きっと、俺らには何も残らないんだろうな。…」
そんな時、砲弾が凄まじい音と共に前線部隊へと襲い掛かる。牽制なのか殺傷能力はさほど高くはないものであったが、、今の牧野軍の崩壊に追い討ちをかけ完全なる牧野家の殺戮に向けて着々と準備が整いつつあった。
砲弾も一通り落ち着いた頃、今度は号令が鳴り響いた。
「かかれ!!!牧野軍を破壊せよ!!!」
幕府軍の精鋭の集まりである騎馬隊が牧野軍向けて襲いかかった。数はおよそ2000騎。橋本内にてまともに戦闘をするのはおよそ150騎。圧倒的な戦力差を前により一層勢いを衰退させ、もはや地べたをも貫通し得るほどの低調である。
刻一刻と進むほどに150騎が125騎に、120騎が80騎にと。
益々戦意を失っていき、戦場には帰り支度を進める兵士もいた。
そして橋本に滞在する牧野軍は混乱を極め、士気は完全に下がり、そして僅かにあった熱気さえも取り戻せない程に冷めていた。
「おい!!馬鹿者共!!!」
そんな橋本に怒号が響く。
「お前らのそんな気持ち、御館様がお喜びになられるとでも思っているのか!!!御館様の御心を我々で継いでいくことこそ、御館様への恩返しになるのではないか!!くたばってないで、反撃を始めるぞ!!!」
発信元は不明であるが、この号令は牧野軍へと一定の追い風へと代わりそして橋本を轟音が覆い尽くした。
「狙うは、大将宇都宮和秀の首だ!!!かかれ!!!」
その頃。
幕府軍、本陣。
宇都宮和秀は、奇妙で不気味な甲高い笑い声を橋本に響かせていた。
「信正が、もう堕ちたか。」
予想していた以上に策にはまった牧野に対して少し見損なったとまで言いたげな態度を見せた。
「流石は元帥の仕事だ、迅速かつ正確だ。それに信正が将軍の話す通りの人物だったとしたら、元帥の強さは計り知れないな。」
そして、橋本に怒号が響き渡る。
「大将!!牧野軍が反撃に出ました!!」
和秀はそれをも見越していたかのように、座っていた椅子を立ち蹴り上げた。
「さあ!!!始めるぞ、一方的な破壊を!!!」
橋本の戦い。
牧野軍 vs 幕府軍
前線部隊 80騎 2000騎
総勢 3000 40000
総大将 ☠️牧野信正 隠帥 宇都宮和秀 大将
牧野正一 元帥 柳本則慶 中将




