崩れ去る中立地 #25
「ありったけの火矢を放て!!!」
あの衝撃が辺りを包み込んだ次の瞬間には、周りは赤く燃え盛り、文頼の心からも熱気が溢れ独特な輝きを放つ。
「何がお前をそうさせたのかは知らないがなあ。前にもこの感じは味わった気がするんだよなあ。…」
「まあいい。」
「俺は俺の役目を果たすだけ。戦争の火種は早いうちに消しておくことのみが、民を巻き込まずに平和を保てる要因となり得る。さあ、続きをやろうか。」
計り知れない程の力をもつ豪久の剛腕は刃と化し、文頼へと向かっていった。
それに抗うのは、魂に火が宿りさらに疾さを増す文頼は、その場の全ての物体を味方に付け豪久の刃にぶつける。
その威力は凄まじく、一階の兵士らがその音に怯え城外へと飛び出すほどであった。
続けて文頼は、その刃をさらに豪久へと押し返し始めると、豪久もそれに対抗して力を強める。
そして、確かな覚悟をもちそれは文頼の体を動かしていく。
太刀はその場のあらゆる物の真髄を断ちながら、豪久の首元へと運ばれていく。
そして遥か昔より続いてきていた長野家の無敗伝説はここに尽きる。
豪久の首に太刀は完全にめり込み、なぜ意識があるのか不思議なぐらいであった。
「お前。自分を天下の救世主とでも思ってんのか。」
豪久はその首から自らの言葉を残し始める。
「笑わせんな。お前が救世主???舐めたもんだな。」
武士として何も悔いはないような表面であるが、この一つ一つの言葉には明らかなる後悔の心がこもっていた。
「いいか。お前はこの世の破壊者。もう未来の決まっている陽高を破壊するクソ野郎だよ。」
この言葉は文頼に届くとその言葉により余計に増す首元を襲う力。
「もう一回言ってやるよクソガキ。お前はこの世の破壊者だよ!!!」
何も言い返せずにその場で動けない文頼に追い討ちをかける。
しかし、それも虚しくここに散る。
そして、文頼はその場に立ち尽くし自らの胸に手を当てる。
「火が消えた…、。」
魂にあった火は豪久を破ると完全に消滅した。
そこには微かに死への近道があるようであった。
「殿!!!」
そこに駆けつけたのは、城外にて数多の兵士らとの戦闘を無事に切り抜けた大野照景、木下隆房、元川清時らであった。
「この城はまもなく跡形も無く燃え尽きます。さあ、城を出て加勢に参りましょう。」
そして、豪久の首を目にすると彼らは文頼の成長に涙を浮かべる程に感動していた。
そして城の外へと出ると、辺りは炎の明かりで輝き、戦いの激しさをそこから感じられた。
ブルート街。
戦闘中の畠山らの下に無事に役目を果たした文頼らが駆けつける。
そして、則慶は文頼の姿に目を向けた。
「何と、。…豪久が死んだのか、…ならば、ここにいることも無いな。、」
そう呟くと、満身創痍の長克を残して素速く姿を消した。
長克はブルート街の真ん中で倒れ込み、信嗣が縄で括り付けると、されるがままにそこに伏した。
10人の武士が一同に会すと、豪久を自らの手で打ち破った文頼が声を上げた。
「勝鬨をあげよ!!!!」
中立地ハウゼムに力強く熱い声が響き渡る。
ーそして、今ここに中立地ハウゼムの戦いは幕を閉じるー
僅か10名の名のある武士団は、およそ2000にも上る兵士に加えて中将級の3名の武士を返り討ちにすることに成功した。
中立地にて起きたこの事件は瞬く間に世間に広まり、陽高中を巻き込んで時間が進んでいくことになる。
「ん、終わったようだね。笑、みんなお疲れ様。」
彼らとは少し離れた場所から見守っていた山内一宣もこの勝利を喜び、彼らの勇姿を褒め称えていた。
勝利を手にしてから数時間後、牧野軍の応援が駆けつけ10人全員の手当てを始めた。
そして牧野軍が中立地ハウゼムの後片付けを始めた時、彼らはハウゼム内の屋敷にて取り決めを行った。
その内容というのが、ここに集う6の家の領地は襲ってはならず、危機に瀕していると判明した際には応援へと駆けつけること、そして助けには出来る限り賛同することが決められた。
要するに、同盟を交わしたのである。
伊勢家、上杉家、畠山家、北畠家、白河家、牧野家の6の家による同盟は、強固なものであり、今後数十年は約束されしものとなると予想された。
その後、手当てが済んだ彼らは各々の領地へと戻っていった。
友と成った彼らが再び会える日はそんなに遠くないのかもしれないと全員が心に感じながら、彼らはハウゼムを離れる。




