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中立地ハウゼム
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ハウゼムの悲劇 #21


中立地ハウゼムの夜は、それはそれは静かなもので平和の均衡が保たれている何よりの証拠とされた。

しかし、その均衡を保てずに崩壊する時は必ずいつか訪れるもの。

それが、例え〝今〟だとしても何ら不思議ではない。





崩壊の音色が、この中立地ハウゼムを包み込んだ。

それは、数多の砲筒のユニゾンで構成されているかのように大地を揺るがせるものであった。


何事かと思うよりも先に自らの戦闘態勢をとるのは武器の性か、あの6の家の人々はみな直ぐに太刀や打刀、槍などを手に取ると、腰を低く保ち備えた。


ハウゼムの正門では。

「よし。この世の歴史から抹消するぞ。」

と、鎖の男から号令がかけられると、忽ち幕府の旗を掲げた者共がハウゼムへと侵入し始めた。

それを予感したハウゼムに住まう人々は、武装をしその兵士らと共に、あの6の家がそれぞれ滞在する屋敷へと向かっていく。



「叔父上。これは、嫌な予感がしますね。、」

そう一宣に話す文頼は、冷静さを欠き初めての状況に戸惑いを感じていた。

「まあな。でも、結局どれも招いていた結果は同じかもしれないな。」

一宣は文頼を落ち着かせようと、手を文頼の背中へ置くと、続けた。

「落ち着け。お前なら今何をするべきか分かるだろ。」

少し間をおいて文頼は応えた。

「……。はい。、すぐに行ってまいります。」


文頼は照景らをつれてすぐに屋敷を出て状況確認へと走る。



そして、それはどこの屋敷でも同等な対応が行われていた。

北畠陣営では。


「あの武家の代表ともいえる畠山だぞ。こんな真似はしない筈だ。」

未だ幼く、焦りもどこかに感じさせるような言葉使いであるが、年齢からは想像もできないほどの夥しい思考を繰り返している。

業雅は、直ちに戦闘態勢をとるように命じると、補佐役の信嗣と共に外へと出る。


畠山陣営は。


「北畠と言えども、ここまで汚い真似はしない。」

経験を下に考えつく先には、基盤のしっかりとした推論がある。

重洋も護身兵らに身の回りは自分で護るように伝えると、当主である重洋自ら問題解決へと向かった。


白河では。


「面白くないな。こんなクソみたいな襲撃なんてよ。」

呆れた口調で淡々と今考えつく事を周りの兵士に伝えると、春房はより真実に近づくために原因究明へと走った。


伊勢陣営では。


「…。、」

何も語ることは無いと言わんばかりの顔を兵士に見せると、そのまま槍を担ぎ、盛時は他の屋敷の見回りをしに向かう。


上杉陣営は。


「おい!すぐに城の方が無事か調べるのだ!」

最も慌てふためいていたのは、上杉家の当主、宣尚であった。

この中立地ハウゼムから最も近いところに領地を所有しており心配もあるのだろうが、自らの命よりも領地を心配しているかのような行動には、やはり護り通せるという自信がひたひたと感じられる。

その後、宣尚は自らの太刀をもつとそのまま屋敷を後にした。




そして、今ここに。


六の家、十名の武士が集う。


それぞれ得意とする凶器を手にし、目の前に広がる百鬼夜行のような人々の奇妙な進行にトドメを刺そうと意を決する。


「みつけたよ。、フフ…、」


夏とは考えられないほどの寒気が武士の全身を巡った。


その瞬間。

十名の武士の前に二人のまるで鬼のような姿をする者が現れる。


真っ先に二人を視界に捉えた重洋が口を開いた。

「なんと、。中立地に幕府が関与しているとは。、」

次に口を開けたのは春房。

「そのようだね。」

そして宣尚が同じ事に気がついた。

「陽高もここまで堕ちたのかね。」


この三人が気付いたのは、他でもなくこの謎の二人の素性である。


一人は、大将級の実力を有していながら、遊撃部隊として中将に残り、主に暗殺を主戦場とする者。


もう一人は、幕府の中でも首位を争うほどの出世頭であり、最近ではある軍の主城を発見したとして、功績を認められると中将へと命じられた。実力はそれほどであり、頭脳派である。


何とも、戦闘を得意としていなさそうな二名ではあるが、そんな事は今はどうでもいい。


そして、二人には将軍より直々に名を与えられている。

先に述べた順に、名越長克(なごえのながのり)柳本則慶(やなぎもとののりよし)である。


「あんまり面白味のないやつらだなー、少し残念。」


「そうだな、長克。折角ここまで来たのにな。」





その頃。

牧野家が借りていた屋敷の中。

山内一宣の唯一人がそこの縁側に留まっているところに、殺意に塗れた一つの姿があった。

それは長い鎖のようなものを引き摺っている。


そして、一宣はその者がすぐ背後に来ると口を開けた。

「まさかね。あなたが来るとは思わなかったよ。」


「流石。陽高一の武士と言わしめるだけあるな。」


「名前は何と言ったかね。たしか、変なやつだったよね。」


「あ!!思い出したよ。!」


「一度武士の頂点に達し、現将軍家の生みの母の出身家を出自としてもち赤橋の名を轟かせ時の将軍へと君臨した。」


「しかし、その後にとある事件を気に失脚。赤橋の名に泥を塗りたくり降格した。」


「たしか、赤橋久時(あかはしのひさとき)大将だったよなー。あ、!今は違うのか。」


「今は名越(なごえ)少将だっけ???笑」


久時は一宣の発言に耐えかね、怒りとともに鎖を一宣へと飛ばすと辺りは真っ赤に染まりながら視界は下へと写っていった。


久時に一瞬の集中の途絶えなど無かった筈であった。

しかし、山内一宣の一閃は久時を二つに斬り離し、口を開く隙さえ与えなかった。



こうして中立地ハウゼムに刺客が送り込まれ、文頼らはそれに相対する事となった。


中立地ハウゼムの民らもそれに参戦し、文頼側は完全な劣勢状態となる。


しかし今はまだ、この〝ハウゼムの悲劇〟を語るにあたる序章に過ぎない。









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