最期の晩餐 #20
中立地ハウゼムの朝は、大変爽快である。
そう世間に言わしめる程の朝は、文頼らにとっては不吉の前兆としか感じることが出来なかった。
我々の目的は、主に中立地の戦力把握。
これが、いかに遂行できるか。
まず、文頼らは倉庫や詰所などを見て回った。
それは明らかに怪しい行動であり、衛兵たちに少なくとも良い印象を与えなかった。
そして、ある衛兵は豪久へと進言をした。
「あの訪問者たちが、何やら企んでいるようで、。」
豪久は、一片たりとも疑わず、素直にこれを受け取ると、
「そうか、まあ。明日には全員死んでいるさ。」
豪久の顔には一切の迷いがなく、既に腹を決めているようであった。
〜
これと同じ頃に中立地ハウゼムに滞在している家は牧野家を含めて6の家である。
中立地ハウゼムから最も近いところに所領を持つ上杉家。
出自不明の家でありながら強固な軍を揃える白河家。
海を主な主戦場として名だたる名将を討ち滅ぼす伊勢家。
軍の数では陽高一で、豪将の血族である畠系の総本山、畠山家。
絶対的に気高い血が流れており、獣臭の強い畠山家とは敵対関係の北畠家。
そして、国衆という立場から一気に国力を上げ、今では近隣諸国を束ねる大名の牧野家。
これらが滞在する理由は各々違えど、目的は殆ど同じであり、重要な役目の為当主自身が直々に訪問しており、水面下で冷えきった戦いが行われていた。
〜
それが、何故か今ハウゼムという地のこの一つの茶屋の下で一堂に会している。
「この団子めちゃくちゃ旨いな!!とくにこの桃色のが旨い!!」
「殿、。一応色は様々あれど全て同じ味です。、」
「ハッハッハ!!!これは懐かしい味がするな笑!!」
「……。」
「おい!!!北畠のクソガキ!!うるせえぞ!!」
「くそうるさいな。情けないやつらだ。」
この中で、最も幼いのが北畠家当主の北畠業雅。それを補佐するのが北畠家の重臣でありながら世話役の北畠信嗣。
そして最も笑い転げているのが白河家の当主、白河春房。最も無口なのが、伊勢家当主であり海軍を束ねる伊勢盛時。
未だ幼い北畠の当主に激昂するのが畠山家当主の畠山重洋。
そしてこの中で、最も普通と言えるのが上杉家当主の上杉宣尚である。
これを茶屋から出たところで困惑しながら見ているのが牧野家の山内一宣、牧野文頼らであった。
「これは、。一体、何の罠なのだろうか。、」
これ程の当主達が一斉に集まるとなるとかなりの威圧感であるが、それぞれが側近らと行動している為、茶屋は今にも破裂しそうなものであり、困惑するのは最も優れている証拠であろうか。
ここは何が最善か。
そう文頼は考え頭を働かせるも思い付くはずもない。
こんな状況は二度と無いというよりは、あってはいけないのである。
それぞれが当主である為、もちろん実力は相応にあり、中将級の力を携えている。
その他にも中立地である点や他国との醜いことをしたくない点も相まって、下手に手出しもできないのである。
「まあ、疲れたしな、。入ってみようか。」
一宣がこう話すと文頼もこれに準ずる形で茶屋へと入っていった。
しばらくして茶屋は、笑い声で包まれた。
一宣の思わぬ発想で彼らと笑い合うほどの仲になったものの、武士である以上人を信用するところまではやはり行かないが、僅かながらでも友好的な方面へと進めた。
もちろん、敵対関係とまでは行かないまでも注視しているところまでもっていけたということであり、盟友と言えるほどでは決して無い。
そうして夜が更け、各々騒いだ所で屋敷へと帰っていった。
茶屋での一件を耳にした豪久は、少し苛立ちを覚えながら、鼻で笑った後に口を開いた。
「最後の晩餐には丁度良かったんじゃないかな。」
屋敷へと帰った者らが寝静まった頃。
何者かが、門を通過してハウゼムへと入ってくる。
ジャラジャラと、赤黒く輝きを失った鎖を引き摺りながら。




