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墨雪物語
17/32

八幡神の初陣 #17

「よし、覚悟は出来たか、お前ら!!」


決行日となった今日。


文頼はとうとう初陣を迎える。


文頼率いる護側衆の10名が、宗重の守る井口城へと向かった。


先鋒は、平元尚(たいらのものひさ)毛利國智(もうりくにとも)鈴木重永(すずきしげなが)中野季弘(なかのたかひろ)

 中軍は、鈴木重吉(すずきしげよし)永井晴智(ながいはるとも)元川清時(もとかわきよとき)

  本隊に、牧野文頼(まきのふみより)大野照景(おおのてるかげ)中原道永(なかはらのみちなが)

   御備には、木下隆房(きのしたたかふさ)


それぞれがそれぞれの任務を背負い、宗重へと挑む。


そして、霧のかかる井口城付近の草原にて、永原宗重率いる650兵が護側衆に迫る。

対する牧野軍は11名。数差は歴然である。


「舐めた真似をするなあ。、若造。」


文頼らの目からでも確認できた永原宗重の姿に覚悟を決めた。

しかし宗重は率いてきた650もの兵士らをそこへ留めると、文頼の方へと歩み始める。既に答えを決めたかのように目は1つの方向を向きながら。


「ある程度の意志はあるようだがな若造、その分の力を持っていることが必要になる。」


「お前には、それがあるか。、若造。」


(い、一度も、、言ったことは。、無いのに、。)

宗重の圧に押しつぶされそうになるも耐える文頼は、これまで一度も口にしていなかった文頼の内部にある意志を、宗重に見破られ、怯えていた。

しかし、その意志を強く持ち文頼も宗重と対峙するようにして前へと歩む。


そして、互いに刃を抜く。


その瞬間、忽ち激しい音がそこを覆った。


2人は衝突し合った反動でそれぞれ後退した。

文頼の頬には細い筋のような傷が入った。


「お前さん、流派は未だ定まってはいなさそうだな。」


(流派、…。昔、安重とそんな会話をしたことがある。)


            〜

6年程前。

次郎(現在は文頼)と安重は、ある丘の上で世間話の最中であった。


「うまかったろ!今日のおれの打ち込み!笑」


次郎が自信ありげにそう安重へ話すと、安重は腹を抱えながらこう言った。


「はっはっ笑、そうですなー笑、数ある流派から新しいものが出来そうな程でしたね笑」


(流派???、分からぬが、とりあえず馬鹿にされてる気がする!)

            〜


(当時は、あんな事を言っていたが、まさか今になって再び出会うとはな。、)


それを読み取ったかのように宗重は口を開いた。


「流派を知らないようだね、笑。しかし、ならこの素の強さはかなり素質があるかもしれぬな。笑」


文頼はそれに苛立ちを覚えると、直ぐに刀を持ちかえ、宗重へと向かった。

何とも言えぬ速さで向かってくる文頼に宗重は僅かな懐かしさを感じ、それに感服。


「降参だ。お前に負けたよ、笑」


文頼はすぐに足を止めると、宗重率いる650名の兵士らがそこに武器を置き降伏した。



〝この瞬間、井口城は降伏。僅か15分での決着だった。〟


〝井口城の戦い。勝者、牧野次郎文頼そして、護衛衆。〟







それと同じ頃。


伊庭家を取り囲む大名らが一斉に動き出す。

金華城は、ものの一時間程で牧野家嫡男である正一軍によって囲まれた。


「どうなっているのだ!!」


豊親は声を荒げて城内にいた兵士らにぶつけていた。しかし、豊親には2人の息子と3人の娘と2人の妻がおり、彼らの安全をひたすらに考え守る覚悟でいた。


その頃。金華城を囲む牧野正一は。


「この城はどうするべきかね。」

と、正一と共に金華城を囲む軍を率いている唐茶色の羽織を纏い直刀を帯刀する男へ話した。

そして、その男はそれに応える。


「まあ、他の城の様子を見つつ攻めるのが得策でしょうな。」


この男は、正一の3人兄弟の末っ子であり出家を遂げた者。

名を、上杉曜道。

          

「他の城は誰が向かっているのだ。」


「たしか、福光城(ふくみつじょう)に兄上と父上が、大桑城(おおくわじょう)に玄治、頼久、裕頼らが、古城城(ふるきじょう)に頼澄、氏兼、通為、元清、そして大野殿、木下殿、元川殿が、井口城に文頼と護衛衆?たる者が、他の部隊はそれぞれ応援に向かっております。」


「その中だと、速そうなのは福光と古城か。」


「あの方々なら、もうそろそろ伝令がくるでしょうね。」


そう、話していると息をきらす伝令兵が到着する。


「申し上げます!、井口、福光、古城それぞれ陥落!」

「そして、先ほど金華城より降伏を報せる狼煙が上がり申した!」



〝時間として、半刻。伊庭家は牧野軍の手中に堕ちた。〟





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