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墨雪物語
16/32

随一 #16

元服に当たり〝文頼〟という名を与えられてから5日後。


「なにぃぃ!!和子姫が皆川家に住むことになったぁ!!」


夢姫から異例の事後報告をされた文頼は、当たり前のごとく驚きを隠せなかった。


広間には、既に宗良との面会を済ませた和子姫がいた。5日とはいえ、墨に塗れていた頃とは見違える程の美貌をそこに現し、何とも表現しにくい佇まいをしていた。


そして、その日牧野家より急遽の帰省が命じられた。文頼は、急ぎ支度をして宗良らに挨拶を済ませると、照景らと共にその日の昼には出立した。



《その数日前。

牧野家屋敷より僅かに離れた少し大きめの山小屋にて。ある2人の男が数人の家臣を従えて何やら話していた。


「久しいな!笑 尹佑よ!」


再会を喜んでいるのは牧野家当主の信正であった。そして、相対するのは信正が弟、尹佑である。尹佑は現在、牧野家の分家として地方に僅かながら領地を持ち、兵士の一人一人が将位に任せられるほどの実力を持つと言われる軍隊を率いている。そして、その分家を治める領地と合わせて、弟國牧野家(おとくにまきのけ)と言われている。


「そうですな笑 何十年ぶりかにお目にかかりました笑」


信正はこの尹佑の返答に少し顔が曇ったが、すぐに持ち直し本題へと踏み込んだ。

「尹佑。おれは倒幕を目指す。手を組まないか。」

尹佑は待ちわびていたかの表情を見せると、それを直ちに承諾した。》


これにより、牧野家方についた大名らは、皆川家をはじめとして、山内家、佐野家、山井家、佐竹家、秋花家、千葉家、そして最後に弟國牧野家の計7の大名がいる。兵力は最低でも10万は下らない程の大軍が集まると推定された。





牧野家屋敷。


「ジロ、失礼致した、文頼様の到着で御座る。」


久しぶりの帰郷に牧野家総出で文頼を迎えた。そこには、安重や照正らの姿もあったが、真っ先に文頼が向かっていったのは兄弟らのところであった。

 

 玄治や頼久、裕頼らと言葉を交わすと愛する弟たちと熱い抱擁をしようとしたが、弟たちは大きく成長しており、背丈は文頼と大して変わらず幼さがほぼなくなっていた。年は最年少で齢12とそれ程に時が経ったかと実感させた。文頼ももう16となり、立派な大人となっていた。


ちなみに、文頼より下の弟たちの名前は年齢の大きい順で、頼澄、氏兼、通為、元清となっており歳はそれぞれ15、14、12、12となっている。兄たちの年齢は、21、19、18である。





挨拶も一段落したところで、家臣ら含む牧野家が一同に広間へ集められた。


「これより、伊庭家の乗っ取りを決行する。」


祖父であり当主である信正の発言に、文頼らは息を呑んだ。文頼ら若衆にとっては初陣と等しく、実戦の良い機会であった。


「決行日は、10日後だ! ゆけ!!」


そして、各々に持ち場と任務が与えられ直ちにそれを遂行しに向かった。

文頼の持ち場は、秋花家所領付近である。

任務は、それと面している伊庭家領地にある井口城を攻略することであった。それに伴い、文頼はあることを信正へ進言していた。


護側衆(ごそくしゅう)という、精鋭軍隊を結成しとうござる。」


信正はそれに耳を傾け、人手はどうする。と、聞いた。文頼には考えがありそれを信正に伝えると少し顔を緩ませそれを承諾した。


そして、ここに集まっているのは散吉村から募った戦う意志のある名は無き若い者たちと、秋花家や他の大名家、家臣らの中でも若い層の者たちである。

文頼に対して罵詈雑言を浴びせたことのある者もいたが、文頼の寛大な心と救いの手を差し出してもらったことに大きく心を動かされ、ここに参上した。


「少しだけ決行日まで時間がある。故に、これから特訓だ!、」


そして、1つ息をおいて文頼は続けた。


「この策戦が無事遂行出来た暁には、名を授ける。」


それから、決行当日まで文頼含む11 名は鍛錬に励んだ。手が千切れるほどに打ち込み、足が燃えるほどに走り、体から水がなくなるほど汗をかいた。


         〜


ここは、伊庭家の主城、金華城である。


「じゅ、10万だと!!…、」 


牧野軍の勢力が想像を軽く超えて見せてきたために驚きを隠せずにいるのは、伊庭家当主であり中将の伊庭豊親。

それも豊親だけが思っている訳もなく、家臣らも同じくであり、彼らは驚きを怒りに変えて紛らわせる。


「どう考えてもあり得ないだろ!!!」


「国衆に過ぎない一族なのだぞ!!!」


「何がそんなに人を集めると言うのだ!!!」


広間には怒号が飛び交う。中には伝令までも疑い始める始末だ。

しかし、やはりその中に冷静さを保つ異端な者もいる。


「落ち着け。まだその力が分かっておらぬ。」


この者は、ひと息ついて続ける。


「これがみな農民であるならば、我等の勝ちは決

まるも同然ではないか。」


この者は、伊庭家随一の豪将であり、伊庭家における信頼も絶大で長老を務める。名を、永原宗重(ながはらのむねしげ)。将位は、少将とされる。


「ひとまずは、徹底的に調べる必要があります。城を1つ囮にしてみては如何か。」


「そうだな。、では、宗重その役目を果たしてくれぬか。」


「承知致した。」


そして、宗重が守る城の井口(かどぐち)城は文頼らが任務遂行の対象とする場所であった。







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