墨守の姫 #14
次郎らは、秋花家に外交という名目で姫探しに訪れ、秋花家の食卓へと共に参加することになった。そこでみたのは、墨に顔を覆われた何者かであった。奥方とは全く違った雰囲気であり謎に包まれていた。
そして、何も情報を掴めずに皆川家へと帰ると、しばらくして秋花家当主の尭義から外交の文が届く。そして、再び秋花家へ訪れると、尭義自ら次郎らを迎え今までにない雰囲気を醸し出していた。
さらに謎が深まり次郎は困惑するも、畳み掛けるように会合の3日間が始まった。その3日間は、次郎らへ徐々に謎を解かせる材料を提供した。その上、世話役の者からの助けを求める声も届き、次郎は救助策戦を実行する。
次郎らは、次郎と照景らの二手に別れそれぞれ倉庫と広間へ向かった。そして、どちらも刺客からの襲撃を受けるも、広間にて大きな音を立てて何者かが現れる。
ここは、西側大廊下。
「お前らは、どこの兵士だ!」
次郎が目にしたのは、墨の少女を攫い奥の物置へと入っていく中年の将と、目の前にそれを邪魔せんとするどこの軍隊か不明の複数の兵士だった。
次郎は宗良から貸与して頂いた将と共にこれに向かっていった。
しばらく戦闘をするも、多勢に無勢。兵数に劣る次郎らは劣勢となっていた。
そこに、とうとう助けがくる。
それは、橙の羽織を身に着け打ち刀で敵方の兵士を薙ぎ倒した。名を、秋花尭康。秋花家当主尭義の兄だった。尭康と共に先へと進もうと試みるも、層が厚く中々踏み切れないでいる次郎に対して尭康は、
「てめえ!!尭義の勇気を無駄にするきか!?」
怒り混じりに述べると、次郎はそれに頭を振り切られ、生を捨てる勢いで倉庫へと向かった。そしてそこには、墨の少女を今にも襲おうと手を出しかけている汚らしい中年の将がいた。
広間。
ここに現れたものは、次々と刺客を切り払い、照景らの助けを必要と一切しなかった。
「初めから、乗り気じゃなかったんだ、、…。
婚姻なんてよ!!」
その者の全身をみた奥方は、驚きの表情を見せた。
その者は秋花家当主であり、紛れもない奥方の夫。中将、秋花尭義であった。
只の夫婦喧嘩にはまるで見えず、照景らは予想外の加勢に戸惑いが現れていた。
奥方は膝から崩れ落ち、尭義に向かって言い放つ。
「お前!!幕府を敵に回すというのか!!」
尭義は、これを当たり前の如く返事をすると、尭義の目には覚悟と博打という文字を映していた。
そして、照景らには衝撃を与えた。
それは奥方が幕府に関連した人物であることだ。
そして尭義らが周りの付き人らを排除し終えると、奥方はとうとう白状し始めた。
「私は、幕府の最高位である将軍の次女として生まれた。生まれた当時から自身の意志を一番に尊重せよと教育されてきた。気付けば、私は墨守の姫と言われるようになった。徹底された教育は私に対して良い影響しか与えなかったはずだった。
しかし、父が亡くなり跡を継いだ兄による独裁的な親族への支配は留まるところを知らなかった。
私たちは、それぞれ任務が言い渡されそれを実行する駒としての役割を担った。
ある時、私の下に戦略的婚約の誘いがきた。初めは幕府にこの命を捧げるつもりだったが、父の元側近より助言をうけこれを引き受けた。
秋花へと嫁いだ私は、ある村の惨状に憤慨した。幕府のある都にはなかった、醜さや、野性的な思考、そして汚らしい姿。それは私にとってとてもあり得ないことだった。そこには、昔から根付いていた制度がありそれを利用し秋花を幕府一の家へと成長させようとした。
しかし、それを止めるかのように遮ってきたやつがいた。それが、秋花の当主の前妻との娘だった。あの醜い前妻の醜い娘に遮られた幕府の御令嬢である私はこれ以上ない程にこれに酷く当たり痛みつけた。
その上、それを近隣大名に明らかになることを恐れ、娘の顔を墨で全て覆い、傷など分からぬほどにした。
そして、次々に誕生する秋花と幕府との子供たちに対して、私は醜い娘の印象をつけさせ迫害させた。
しかし、異常な者も稀に現れる。それが尭義、お前の弟だ!あいつは、あの醜い娘に自らの餌を与え最終的には世話役の婆までもが加担した。あり得ない。それからは増して甚振った。加担した屑共を殺しながら。
そんな時、皆川からの使者でお前らが来た。それが一番の後悔の要因だ。」
そして、奥方は歯を食いしばり涙を浮かべながら続けた。
「お前らが来なければ、このまま秋花ごと乗っ取れていたのに。くそ!!」




