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墨雪物語
11/32

雪隷と墨姫 #11

次郎は自らを磨く旅も終わり、皆川家へと帰ってきた。旅を振り返りながらも、皆川家での生活にしっかりと戻り皆川家執事としての仕事を滞りなくこなしていた。


冒険の終演から半年程経ったある日。


夢姫が相談を掛けてきた。


それは、隣国の姫の話であるという。


夢姫がいうには、その隣国の姫とは外交のために隣国の家へと行った際に廊下であちらの姫君が困っている様子をしていたのを見つけ、それを助けたことで知り合ったそうで、それからというものの、文でやり取りをしていたそうだ。


しかし、ある時を境にパタリと止まったようで。


「隣国の家は外交的にも重要らしいし、様子を見てきてもらえないか!」


(あの時のことはもう忘れられたか。)


そう思いつつもその相談を受けて外出の許可を得に宗良の元へと向かう。


「うむ。まあ良いだろう。しかし、目的は外交で頼むぞ。姫の様子を見に来たと馬鹿正直にいうと争いになるかもしれないからな笑。」


宗良の底しれない優しさを受け取ると、照景、隆房、清時らを連れて隣国の家、秋花家へと馬を走らせた。

 

そして、秋花家の居城からおよそ近くである大変大きな村を目にし次郎は開いた口が塞がらない程に驚いた。


その村の人々が見るに堪えない姿をしていたのだ。


女、男問わず奴隷のように働いた痕が鮮明に残されている。


次郎と近しい年の者までもその姿をしており次郎の胸を締め付けた。


およそ人口は1000名をゆうに超える。その中に10人程の若者が次郎に向かって走ってくる。


それを照景らは制止させるも、若者たちは罵詈雑言を次郎へ浴びせた。


「お前ら武士のせいだ!!!ふざけるな!!」


「ここの殿様気取りの野郎に会わせろ!!!」


「ここから出ていけ!クズ共が!!!」

 

次郎にとってこれは初めての経験だった。


廻沢では牧野家が中心となっているものの、統治は幕府から派遣されている伊庭家が行っており、不平不満は全て幕府へ向くため暴言などを浴びる機会は一切としてなかったのである。


これ以上ない程に若者らは暴れ散らかし、村を過ぎるまで続いた。

 

荒れ果てた大地を踏みしめ、とうとう曲輪から天守が見えてきた。


ここは秋花家が居城、(さい)城。


先の村とははた違い、しっかりとした造りが目立つ家々が並んでいた。


二ノ丸三ノ丸も堅固なものと見て取れた。


近くにいた番人に案内され城から僅かに離れた客人室のような部屋へと迎えられた。


そこには未だ誰もおらず、4人は肩に力が入った状態で気が抜けずにいた。


「皆川の遣いか。醜い姿を見せに来たのか?」


そう嫌味をぶちまけながら入って来るものがいた。


大層な数の側近を引き連れて、堂々たる面持ちで次郎らを威圧するように座り言った。


「私は、秋花家当主、尭義(たかよし)と申す。幕府より中将に命じられている。」

 

(中将。それは、幕府の中でも上級に位置するが、それは下から数えた方が位の数としては早い。下から、将曹(しょうそう)将監(しょうげん)、少将、中将、大将、元帥、そして最上位に将軍が座る。それぞれ下位2つが20人程、その他は数多変動するがおよそ10名程が常時置かれており、大将位より上は未知。)


 次郎らは尭義の位に少しばかり萎縮しながらも、対等な外交をするべく気合いで自らも挨拶を申し上げた。

 

張り詰めた空気が流れる中、夕刻になり尭義の家族と共に晩御飯を頂戴する運びになった。


次郎らは尭義とその側近らに囲まれながら橙の羽織が掲げられ太刀が立て掛けられている広間へと向かい、卓へとついた。


そこには、男女の子供たちと奥方がすでに座っていた。



(ここの食卓は普通じゃないな…、。)


しばらく経ち次郎がこう思ったのも無理はなかった。


秋花家の食卓は明らかに不自然であった。


普通は、奥から長男や長女を座らせそれから順番に年齢が下がるように配置させる。


しかし、秋花家は違った。


確実にここらの子供らより年は上であるような風格を出している者が最も手前に置かれていた。


それも、顔を墨で覆われ全くの認識が出来ず、衣服は大名家らしさを感じさせる物ではあったが所々に解れがみられ不可思議さを醸し出す。


その上、会話も見られたが手前の者がそれに参加したことはなく、ただの客人が居る時のみ恥ずかしさで話さないという訳では無さそうであった。


そして、次郎は食事に一段落がつき照景らをそこへ置き厠へと出た。


この食卓の不可思議さは次郎の頭を覆い、未だ広間にいる照景らに同情していた。


用も済み、再びもはや戦場であろう場所へと戻ろうとすると広間から例の者が出てきた。


すれ違うと、次郎は例の者は只者ではないと感じとった。


例の者は明らかに普通とは懸け離れたものを放っていた。


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