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、の始まり
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新芽 #1


真っ青の空に少し濁った雲が入り込むような日。


山々に囲まれ、大小様々な田畑と民家を一望できる丘にある少年が寝ていた。

この少年は、ここら一体を治める武士として名を連ねる牧野家の四男坊。次郎である。

「若様。そろそろお帰りになられませぬと、また御父上様よりお叱りをうけてしまいますよ。」

 次郎の直ぐ側で隣国の動向を記した報告書を読み終え、次郎に帰路へ着くことを諭し話した男の名は、海野安重(うんのやすしげ)。次郎の世話係として務める老将である。 

「それだけは避けないとなー。」

 欠伸と伸びをしながら次郎は立ち上がり、安重と共に馬へ跨った。2頭の馬は僅かに次郎の馬が先に進むようにして屋敷へと駆けだした。 


そして丘から離れ少したった頃。

「おー!!これはこれは。若様。」

すれ違い際に挨拶をする者がいた。

「尾多殿ではござらぬか。どちらへお出掛けですかな?」

家臣団の中で重鎮でもある安重は、部下の動向をも逐一確認する。

「少し自然の匂いを嗅ぎに山辺へ。」

気持ちの良い笑みを浮かべそう応えたのは、牧野家家臣の一人である尾多辰憲(おだのたつのり)である。辰憲は屋敷を守る衛兵をまとめる将の務めを担っている。

「左様であるか!次第に雨が降るようじゃ。その前には帰ってくることを勧めるぞ!」

「助言、感謝致す!では、後ほど。」

家臣同士の他愛もない会話を退屈そうに聞いているとすぐに、片に川が流れ、もう一方には立派な寺のような屋敷が構えられているのが見えた。道は草がきれいに均されており、少しばかしの坂がある道を抜けると、巨大な滝が流れ落ちている。

ここは、牧野家の屋敷。

ここでは、牧野家の子どもや、その世話係、警備役の兵士らが住んでいる。

 「若様どちらへ!!」

次郎は馬から飛び降りると、そのまま駆け出した。

「私の愛する弟共のところだ!安重はもう良いぞ、共に来てくれたこと感謝致す!」

次郎は未だ幼く、安重に降りかかる役職の中で最も骨が折れるものであった。

「はあ、。」

やはり、次郎の自由すぎる行動に手に負えず、疲労困憊の安重だった。

そして、安重に向かって雑用係の者が走ってくる。

 「安重様。すぐに大広間へ。直に殿が参られます。」

どれほど重くその老体にのしかかろうとも、安重はそれに文句を垂らすことは決して無く、当に無くてはならない牧野家における支柱になりつつあった。


             〜

その頃、駆け出した次郎はある部屋の前で止まったところであった。

「弟たちー!!!元気か!!!!」

弾けるような笑顔で戸を勢いよく開ける次郎の目にはこの世に未だ眠れる金銀財宝よりも価値があるような、可愛げな子供が4人見えていた。


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