友人の体験談1~夜の帰り道~
微怖
友人から聞いた体験談です。
中学生の時、友人は塾に通っていました。
塾から自宅まではそこそこ離れており
昼間ならまだしも中学生を一人で帰らせるには
なかなか心配になる距離でした。
途中に大きな畑に挟まれた長い道を使うのですが
そこには街灯等が無く夜は真っ暗です。
夜に真っ暗な道を子供を歩かせるのは心配なので
塾の帰りは母親の車で帰ることにしていたそうです。
ある日、運転する母親との帰り道。
勉強はどうだとか晩御飯は何だとか
いつも通りの何気ない会話をしていました。
ですが突然、母親が黙ったかと思うと
アクセルを踏み車の速度を上げたのです。
急なことに驚いた友人は
「どうしたの?」「何が有ったの?」
など聞きますが母親は答えてくれません
加速はしてもぜんぜん曲がらないことや
真っ暗ではあるもののぼんやりと見える窓の景色から
あの畑に挟まれた長い道であることはわかりました。
無言でアクセルを踏む母親が怖くなり
どうなってしまうのかと考えたところで
車の速度が落ちました、長い道を抜けたところでした。
そこでようやく母親が「ふー」っと大きな息を吐いたのです。
ここぞとばかりに「どうしたの?」と友人は聞きました。
母親が言うのです
「畑の道に入った後、
バックミラーを見たら追いかけてくる足だけが見えた。
驚いてちゃんと見ようとしたが、これはまずいものだと感じ
振り切るために速度を上げたんだ」と
友人は実際に見たわけではありませんが
あの時の母親と、話終えた後の疲れ切った様子
訳も分からず速度が上がる車の恐怖から
自分が体験した中で一番怖かったと語ってくれました。
その後も、夜中に同じ道を通って帰っていたそうですが
同じことは二度となかったそうです。