第五話。順子独り立ち。住み始める。
第五話 順子一人住まい。始まる
朝。八時に起きた。麗さんも起きた。
「麗さん。私一人で、大丈夫ですよ。・・・大変だから。・・・」
「手伝うわよ。・・・一人より、二人の方が、気分的に、違うでしょう。・・・」
「はい。有難う。・・・じゃ。一階のホールに、纏めましょうか。・・・それからタクシー呼んで。」
順子は、全部下へ降ろして。タクシー拾いに行った。直ぐ来た。
「あのね。運転手さん。新橋演舞場の傍まで、・・・これ。全部入りますか。・・・」
「あー・・・大丈夫でしょう。」運転手が手伝ってくれた。
「ほら。・・・入ったよ。・・・」
「え。・・・一人。しか。乗れないよ。・・・」
「順子。乗って行けば。私は、歩いて行くから。・・・」
「え。そうですか。・・・じゃ。乗って行きます。」順子は、タクシーで行った。直ぐ着いた。
運転手と二人で、ホールにお荷物を下ろした。終わって、お金を払って、休んでいた。麗さんが来た。
「え。もう来ました。・・・一五分。位かな。」
「ちょっと。急いで。疲れた。何分。・・・二〇分。位。・・・」少し休んだ。
「順子。運びましょうか。・・・」二人でエレベーターを使って部屋に入れた。
「はー・・・これで全部ね。・・・結構有りますね。広げて見れば。」
「麗さん。後は、私が整理しますので。・・・終わりましょう。」
「そうね。・・・こういうの。疲れますね。・・・順子は若いから、疲れないの。」
「はい。・・・何とか。・・・麗さん。千疋屋に行きますか。・・・」
「あ。・・・良いね。久しぶりに。・・・三階がレストランだから。」
二人は歩いて行った。直ぐ着いた。
「私。初めて。・・・」洋風で、綺麗な店だ。此れじゃ食事も、楽しくなりそう。二人席が開いていた。
「麗さん。お任せします。同じもので。」
「あ、そう。・・・じゃ。ステーキセット。食べよう。・・・それにワイン。・・・順子。此処のワイン、美味しいの。飲んでみて。」二人分頼んだ。ワインが先に来た。
「乾杯。・・・順子。本格的に成ったわね。・・・独り立ち。・・・早かったね。・・・出会いが良かったのよ。ワタシから美江ママで。あの店で。・・・とんとん拍子だね。七階と八階。二件のママ。わずか半年で。自分の部屋も借りられて。・・・本当に凄い。貴方は。・・・落ち着いたら。株を勉強して、益々手腕を発揮して、銀座ナンバーワン。って。言われてくださいね。・・・楽しみだわ。順子の出世ぶり。何処まで登れるか。」
「麗さん。オーバーですよ。・・・そんなに出来ないですよ。私。」
「そんな事。言わないの。・・・基盤を造れば。簡単よ。新日本銀行と帝国証券と丸中証券を・抑えて。・・・純子ね。大勢の人と付き合う必要は、無いのよ。・・・何故ならば。大勢付き合っている。トップ一人を抑え込めば、何百人何千人に、繋がるのよ。だって、皆。トップの言う事には、支持するから。今の銀座のトップは。「新日本銀行・根津頭取」だから。・・・これを抑え込めば。間違いなし。・・・純子には、其れが可能に成って来た。・・・分かった。・・・私の事も、頭の隅に置いていてね。」
「はい。・・・麗さん。私は麗さんの御蔭ですので。決して忘れませんので。安心してください。」
「良かったー。・・・楽しみだわ。・・・順子の出世する日。・・・乾杯。」二人は意気投合している。麗さんも、陰で動いている事は、順子も知って居る。こんなに心配してくれる人は、世の中に居ない。と。思っている。そして順子は、アメリカ人が予約したことを麗さんに話した・
「麗さん。大変なことが、起きるの。・・・お店で。・・・」
「どうしたの。・・・・」
「昨日ね。アメリカ人三人か、見えたの。私が対応したの。そしたら。ボランティアの人が。「JUN」を見つけて、オリンピック終わったら。選手たちが、日本を観光するらしいですよ。そして、夜の部を、此処で遣りたい。と。言ってきたの。・・・バレーボールとバスケットボールの監督も来て。十月二十七。二八。二十九日の三日間。六時から、八時まで、二時間。貸し切りにして。と言う。依頼を、契約したの、そして、契約金。五十万円。貰ったの。・・・」契約書をバックに入れておいたので、見せた。
「えー・・・凄い、ジャン。・・・順子。・・・百五十万。・・・三日で。・・・へー・・
・凄い。どうでしょう。・・・美江ママに。言わないと。を借る事だから。」
「はい。・・・だから、麗さんにお願いして、この話を美江ママに。告げたいの。」
「そうか。・・・五十万円。・・・置いて言ったことにして。話しますか。・・・じゃ、今晩。お店で、三人で会おう。六時に。・・・私が電話して置く。順子は、五十万円持って。お店に来て居なさい。・・・八階で。」
「はい・・・お願いします。」
二人は、別れた。順子は自分の部屋に帰った。あー。何となく、開放感がよぎった。
(ソファー。ベッド。テーブル。電話。化粧台。冷蔵庫。)を。用意しないと。
洋服は取り敢えず。押し入れに吊れる。台所は使わない。料理はしない。取り敢えずこれで、・・・弘子の写真を見た。四人分。・・・全員、細身だ。顔の小さいのが二人。あとの二人は、田舎っぽい。けれど、目鼻、立が良いので。化粧すれば、何とかなる。みたいだ。髪も真っ黒で、緑の黒髪だ。身長が何センチか。問題だ。何とか成りそうだ。
三時だ。順子は、銀座迄歩いてみることにして、家を出た。夕方で賑わっている。此の人込みに揉まれて、生きている人達。田舎では。想像はつかない。・・・でも、麗さんが話すことは、一つ一つ、身に染みる。相当な苦労の人だと、思った。やはり、経験がものを言う。フラフラして、店に着いた。掃除をしていた。
「お早う。・・・・」麗さんと美江ママが、来た。
「あ・・・ご苦労様です。」三人でソファーに座った。
「順子さん。・・・お話は、聞きました。・・・凄い力を発揮してくれました。・・・有難う。・・・それにしても、順子さん。・・・百五十万円で、三日間。」
「はい。・・・契約書と五十万円です。」美江ママに渡した。
「麗さん・・・どうします。・・・私も初めてだから。
「私も。なんとも言えないでしょう。ママ。・・・あなた二人の事だから。私は、結論を聞くだけで。ね。ママ。」
「うん。・・・困るわ。どうしよう。」美江ママは。決断した。
「ハイ解りました。順子さんの。功績を称えて。此の五十万円は。順子さんに上げます。・・・今。直観で、計算したの。私は三日間で、百万円なら、十分です。・・・麗さん。・・・大丈夫です。」
「順子。・・・良かったねー・・・凄い。順子。」
「えー・・・良い。んですか。・・・」順子は、俯いた。が。心では。嬉しかった。
「はい。・・・大丈夫です。・・・麗さん。月末が楽しみです。」美江ママが、五十万円。順子に渡して。帰った。麗さんも帰った。順子の胸が音を立てている。
順子は、大きな夢を描いていた。七階で、弘子を待って居た。弘子が来た。
「ママっ・・・」駆け寄って来た。
「見てくれました。・・・写真。」
「あ。・・・はい。見ました。・・・大丈夫よ。何時でも、面接出来るよ。・・・ライオンで。」
「え。あ。・・・この前の大きな、ホール。」
「そう。あそこで」
「はい。有難う。・・・日時が決まったら。知らせますので、宜しくお願いします。」
順子は、八階に行った。
「お早う。・・・」皆居た。十人でテーブルを囲んだ。
「皆さん毎日。ご苦労さん。・・・益々忙しく成りそうです。ので、ご苦労は有るかと思いますが。頑張ってください。・・・頑張った分は、それなりの対処をしますので、心配しないで、励んで下さい。ヨロシクお願いします。」パチパチパチパチ。皆喜んでいる。ドアが開いた。ママが対応した。
「いらっしゃいませ。・・・何名様ですか。・・・四人様。」奥の三番席を仕切った。八人は座れる。つまみグラスを用意した。
「初めてですね。・・・」ママは、メニューを開き、説明した。ワインとヘネシー二本。注文して。テーブルに揃った。ホステスが注いでくれた。乾杯した。パチパチ。
「どうもお疲れ様です。・・・今後ともご贔屓に、宜しくお願いします」ママも座った。
「ママって。・・・」
「はい。私ですが。・・・」
「此れは、失礼しました。・・・まさか。こんな傍に座ってくれるとは思っていなかったので。・・・失礼しました。」
「いいえ。大丈夫ですよ。そんな大それた事ではございません。・・・」
「あのね。ママ。・・・大変。なんですよ。・・・この店の噂は。ぁ。申し遅れました。」名刺をそれぞれくれた。
「え。テレビ局の方。達。四人。・・・えー・・・びっくり。」
「私は、日本テレビの。・・・総合の中井。社会部の山田。政治部の佐々木。芸能部の佐藤。です。ヨロシクお願いします。」
「いいえ。・・・こちらこそ、今後とも。・・・取材ですか。」
「ま。・・・兼ねています。・・・とある銀行の頭取さんから、家の社長が聞いて、今回、我々が、命令で来たのです。出なければ、こんな高級な場所にはとうてい無理です。・・・お前ら、言って、ママとあって来い。と。言う事です。」
「ママね。そんなことで、いろいろ聞かしてください。」
「えー・・・そんな、聞かせることなんか、何もないですよ。三月に東京に来たばかりですよ。・・・まだ、右も左も分かって居ないのよ。」
「あの。僕たちも、三月に就職したばかりです。・・・四人とも。・・・だから。ママにあやかりたいです。」
「ハハハハハ。えー・・・どうしましょう。これから勉強する事が沢山有りますから。忙しい。んです。・・・知っている。範囲なら。ね。話せるけれど。・・・」
「他社は、まだ見えて居ないですか。・・・」
「え。・・・テレビ局。」
「えー・・・」
「初めてです。貴方達が。・・・そんなに評判になって。・・・逆に怖いですね。」
「え。・・・我々も、仕事ですから。良い話も、悪い話も。・・・井戸端会議的に入って行く。って。感じです。・・・でもママ。宣伝には、成ります。此れからはテレビの時代に成るので、我々を、ためらうことなく、利用して頂ければ、有難いです。」
「分かります。・・・都会は、視聴率も多いでしょうから。コマーシャルには、成りますね。・・・でも、私のお店では、座席が決まって居ますので。ね。以上は入れないですから。テレビで宣伝しても。・・・どうかな。」
「ママ。流石。鋭い所。突いてきますね。・・・言う通りです。・・・ただ。街の噂として、取り上げさせて、頂ければ、」
「まだ他に有ると思いますよ。・・・ほら。今度出来る。キャバレー。と言う。スケールの。違う。店が建つでしょう。」
「はい。・・・ママの生い立ちとか。田舎の話とか。友達が東京に来ているとか。・・・身近な、ところで。」
「そうね。・・・楽しく付き合いましょう。末永く。・・・出発点は、私と一緒ね。」
「それでは、今度は、取材じゃ無く。お客さんで来ますので、宜しく。」
「そうね。・・・ボトルは、取っておきますので、又いらっしゃい。」
テレビ局は、帰った。でも、ボトルは取ってある。一番席にお客が入っているみたいだ。ママは、七階に行ってみた。弘子が出てきた。
「あら。ママ。・・・紹介するお客さんが居ます。弘子の後をついて行った。奥の座席だ。七人居た。
「皆さん。家のママです。・・・」
「いらっしゃいませ。何時も御贔屓に。有難うございます。」
「お。・・・ママだ。・・・どうぞ、どうぞ。此処へ。」案内されて座った。ワインを頂いた。
「おー・・・ママと会いたかった。・・・いつ降りて来るかな。って。話していた。ばっかり。・・・銀座一の奇麗なママって。評判だよ。・・・成る程。分かる。」名刺を貰った。「スミダ・ケミカル株式会社」社長 鈴木一郎。
「墨田区ですか。・・・」
「そうです。事務所は。・・・工場は、千葉県市川です。・・・これからパーソナルコンピューター。と言う名前に代わって。小型化されていく、コンピューターの。枠と言うか。箱。と言うか。・・・を造る部署を立ち上げたので。お祝いしている所です。」
「そうですか。工事は、動いて居る。んですか。」
「まだ。なんですよ。・・・コンピューターの、組み立て工場と、交渉中です。・・・オリンピックで、中々、話が進まない、状況です。」
「聞いた話だとね。・・・アメリカでは、製造が間に合わないのと。コストが安い日本の企業を、探している。と。聞いたけれど。」
「おー・・・流石。ママ。其れ。なんですよ。家は、安く造れる開発した機械が有ります。特許を取得した。んです。・・・何処か。大手企業を見つけてください。ママ。」
「えー・・・私。・・・まっ。様々な会社が有りますけれどね。・・・どうでしょう。」
「軌道に乗れば、今、流行の。株式上場に乗れる。んだが。・・・上場の申請のやり方も分からないし。・・・まっ。勉強しましょう。
「社長、高度成長期に乗り遅れない様に。」
この社長も、株上場を夢見ているみたいだ。やっぱり、株だ。社長達が帰った。十時だ。一番テーブルに行った。お客が三人居た。
「いらっしゃいませ。宜しく。・・居ですか。・・・」ママが座った。
「おー・・・やっぱり綺麗なママさんだ。・・・」
「え。・・・初めての方ですか。・・・失礼しました。宜しくお願いします。」
「そうか。噂の、「銀座のママさん」今日は無理して、寄ってみた。んですよ。」
「えー・・・そうですか。此の辺りにお務めですか。」
「そう。新橋です。建て売り開発の会社です。・・・本日は、営業経費を利用して、・・でもね。何回も、使えない。んですよ。・・・悲しいでしょうママ。・・・偉くなりたいな。こう言うとこで、飲めるように。」
「大丈夫ですよ。高度成長期で、建て売りの時代が到来しますよ。必ず。」
「有り難うママ。・・・又来たいな。・・・もう看板でしょう。」
「あら。・・・何時かしら。・・・十一時。・・・そろそろですね。」
「いくらですか。・・・」弘子さん。説明しましたでしょう。
「はい。・・・えーと。三人で一万五千円。ボトル・ヘネシー一本で。計。二万五千円です。」
「あー・・・ギリギリ、いっぱい。だ。」三人で三万円出した。ママが、
「ボトルは、残って居るでしょう。・・・じゃ。私の奢りで、ボトル代だけで。言いですよ。・・・一万円だけ。頂きます。」
「本当。・・・じゃ。名刺を置いていきます。」ママは名刺を見た。「城南開発。」でも黙って居た。
「あら。名刺を下さるの。・・・有難う。又、いらっしゃって。」
「はい。・・・又来ます・・・有難う。」三人は帰った。店を閉めて、全員帰った。弘子が、明日のお昼。四人を、ライオンに連れて来ると言う。・・・いろいろ買い物が有るけれど。ま。良いか。
「良いですよ。・・・じゃ。十一時ね。・・・待って居ます。」
「宜しくお願いします。」弘子は、喜んでいた。順子は、タクシーを拾って。自宅へ帰った。ドアを開けた。真っ暗だ。あー。誰も居ない。電気点けた。これから、此れが続く。・・・そうか。出る時は。玄関だけ、電気を点けて、出ようか。・・・そうしよう。入った途端。・・・真っ暗で、寂しくなっちゃう。・・・と決めた。冷蔵庫の無い。買い物もしていない。そうだ。お寿司屋さんだ。一二時前だ。遣って居るでしょう。・・・電話しておけばよかった。な。でも行ってみよう。でも暗い。恐る恐る歩いた。着いた
「こんばんは。・・・」
「はい。いらっしゃい、・・・・今、閉めようかと、ネタを閉まっちゃった。」
「えー。・・・ごめんなさい。・・・今度、麗さんとこから、引っ越したの。・・・昨日。・・・冷蔵庫もないし、何も買っていなかったの。食べ物。・・・開いていて、良かった。
「良いですよ。ママなら。・・・何にしますか。」
「じゃ。鉄火巻き、穴子巻き、かんぴょう巻き。かっぱ巻き。お願いします。」
「今日は、巻物。・・・良いですね。・・・ワイン。」を出してくれた。
「何処。引っ越した。ですか。」
「新橋演舞場の隣。・・・近いですよ。歩いて来たの。・・・一寸暗かった。」
「へー。マンション。・・・」
「はい。・・・マンションって。言うの。・・・五階建て。の五階。エレベーター付き。」
「じゃ。マンションでしょう。・・・新しいの。・・・綺麗だよ。」
「良いな。・・・じゃ。一人住まいだ。」
「そうです。・・・帰ったら。真っ暗で、寂しくなっちゃう。・・・明日からは、玄関だけ、電気点けて、出ようかと。」
「そうか。・・・そうですね。・・・誰も居ない。・・・暗い。其れは良い考えでしょう。玄関だけ、点けて置けば。」
「そんな事より。今日。八日でしょう。十日。オリンピック開幕で、変化有りますか。」
「無いです。・・・でも。人出は、多く成ったね。市場は、大混雑です。」
「お店は。・・・家は、まだですよ。・・・ママ。の所は・・・」
「家は、予約したの、・・・アメリカのボランティア活動の人と、監督二人。バレーボールとバスケットボールの、選手達が、三日間貸し切りたい。て。夕方六時から十時まで。十月一日から三日まで。一日20人で。・・・予約しちゃった。」
「えー・・・流石。・・・どうして、分かったの。」
「うん。・・・夜の銀座を調べたら「JUN」が・出てきたらしいです。ボランティアの方が来たの。」
「へー・・・そう。なんだ。・・・運が良いねーママ。」
「はい。・・・そう。なんですよ。・・・予約金まで、払って行ったから、来るでしょう。・・・それで、お願いが有るの。お寿司を頼みたいの。二十人だから、幾つ。」
「えー本当。・・・」奥さんと息子も、びっくりして居る。
「本当よ。・・・ね。大きな桶で、何個。・・・」
「そうだな。・・・四人分で、五個あれば、」
「あのね。七階に三個。八階に三個。に、しましょう。・・・何故なら、二組に分かれるから。」
「あ。そうか。二か所ある。のか。・・・三個。づつで。六個。・・・はい、分かりました。」
「ね。・・・特上で。・・・幾ら。・・・」
「そうだな。・・・ママだから。二百五十円で、五人分入るから、・・・一桶。千二百円。で如何ですか。」
「一個の桶でしょう。・・・六個で。七千二百円。・・・三日間だから。二万一千六百円。ですね。・・・」
「えー・・・三日間ですかー・・・」
「そう、なんですよ。・・・三日間。十月二十七日。二八日。二十九日。の。三日間。五時に届けて。・・・メモして置いて。マスター。」
「あ。・・・はい。」慌てていた。メモした。
「あー良かった。・・・巻物、美味しいよ。マスター。・・・」モリモリ食べていた。ヘネシーも、新規で入れた。
「有難うございます。・・・閉めようかと、思ったところに。福の神が。舞い込んできた。って。こんなことが、ある。・・・んだね。」マスターと、奥さんは、喜んでいた。
「じゃ。・・・お願いね。・・・」お金を払った。すると。マスターが。
「ママ。暗いから、送って行くよ。・・・家も覚えても良いから。・・・」
「えー・・・本当。・・・有難う。じゃ。甘えて。」息子に送って貰った。家に入った。電気を点けておいたから。明るかった。シャワーを浴びて、寝た。
朝。九時に起きた。化粧して、電話ボックスに入って、電話局と寝具屋を探して、注文した。寝具は、近くなので、すぐ来るそうだ。電話の工事は、明日午前一〇時に、約束した。今日は、弘子たちがライオンに来る。頂いた、五十万円を、バックに入れて、洋服に、絡めて置いた。引き出し付きの、化粧ボード、応接用の一台。無いと、・・・三越に行けば、有るかな。・・・弘子たち。と別れてからにしよう。順子は歩いて、ライオンに、向かった。何分掛かる、か。確かめた。一五分で着いた。
「ママ・・・」弘子たちが、駆けよって来た。
「お早うー・・・来ていた。んだ。・・・じゃ。入ろう。」五人で入った。大きなテーブルを探した。
「ママ。あそこ。・・・」弘子が見つけた。皆で座った。
「初めまして。順子です。」店の名刺を渡した。四人も軽く会釈していた。
「皆。・・・ママよ。背筋を伸ばして。・・・きちっと。してなさい。」皆一斉に、背筋を伸ばした。
「弘子さん。・・・あまり、緊張しないで。・・・何か注文しましょう。私に任せて、お目見ものは、取り敢えず、ビールで良い。・・・皆。飲むでしょう。」
「はい。・・・」順子は、オートブル大を三個。注文した。ビールが先に来て乾杯した。オードブルも、後から来た。
「さ。・・・食べながら、話しましょう。」順子は、一人ひとりの目を皆から、話している。
「皆さん。立ってみてください。・・・皆、背が高いですね。・・・何センチ有る。」
「A・私は、一六〇センチ。B・私は、一六三センチ。Ⅽ・私は、一六五センチ。Ⅾ・私は、一六五センチ。・・・」
「えー・・・やっぱり、私と同じぐらいかな。と思っていたの、弘子さんも、一六〇センチ。だった。」
「はい。そうです。」
「訛り。・・・か。・・・でも良いと思いますよ。それぞれ。地方の言葉だから、聞きなれないだけで、慣れれば大丈夫ですよ。・・・弘子さん。」
「でも。酷いのよ。ママ。・・・ほら。喋ってみて。」
「ホンダラバ。話す。・・か。」弘子が。
「もういいから。分かったから。こんな大勢居るから。」順子も、笑った。
「でも皆さん。顔立ちが良いので。慣れてしまえば、・・・銀座の人に成りますよ。直ぐに。・・・着るものも変われば、心も変わるから。じゃ。・・・今晩、弘子さんと一緒に、お店に、見学に来てください。・・・一時間位でも良いですから。・・・それから弘子さんに保証人に、成って頂いて、採用となります。・・・住民票を持ってきてください。・・・じゃ。食べて下さい。・・・残すと。罰金取られますので、全部食べて下さい。」
「え。こんなに沢山。・・・皆気になって居た。んですよ。ママ。」
「若いから。大丈夫。てすよ。・・・おビールも追加してください。・・・此処は時間制限ないから。何時までも。居ても良いのよ。」皆で雑談に成った。洋服の話になった。着るものが無い。どうする。
「あんたたち。仕事していないから。着るものも買えないし。・・・お母さんから、仕送りして頂いて。居たのよ。・・・ママ。食べられないから。痩せただけなのよ。ママ。・・・私の部屋に、居るのよ。二DKって。部屋で。五人。」
「えー・・・大変ね。・・・でもね。働くように成れば、大丈夫ですよ。弘子さん。皆、恩返しするから。・・・弘子さんに。・・・ね、皆さん。」
「はい。恩返しします。・・・お姉さんなの。年上だから。」
「あ。そう言われれば、年齢。聞かなかった。っけ。」
「うん。・・・全員、二〇歳です。・・・田舎の近所なの。同じ部落で、・・・ずーと山。ん中。・・・バスが、朝晩しか、走って居ない。・・・朝、乗り遅れたら、何処へも行けない。町まで歩いたら、半日掛かるの。」
「えー・・・そんな。山。・・・雪は降るの。」
「ママ。津軽地方は、したがら、雪が降ってくる。・・・つまりは。風が凄いって事。歩かないで、立って居たら。雪に埋もれてしまうの。・・・そんな山の中。」
「へー・・・聞いた事、無い。・・・津軽地方。青森の北西。ですよね。」
「そうです。・・・もう。絶対、田舎には、帰らないし。住まない。・・・決めたの。・
・・だから、東京に出てきたの、集団就職列車で、一晩掛けて。汽車で。そしたら、仕事場で、いじめられて、四人で、同じ職場で、四月に来て、半年で、こんなに成るとは、考えられなかった。・・・上司の男が。私達四人を強姦しようと板の。・・・四人で力出して、大揉めて、逃げてきたの、お金も、四人で、二千円しか持ってなくて、隣の弘子お姉さんに、電話して、来たの。・・・姉さんが優しい人だ。て。昔から、分かっていたから。・・・良かった。んだ。今まで。居られて。・・・でも、まだまだ。迷惑掛かるべ。・・・お願いします。雇ってください。・・・」
「そうですか。・・・そんなドラマが。有った。・・・弘子さんも大変だった。んだ。・・・でも、そんな素振りは、全然、感じなかった。・・・強いね。・・・青森の人は。分かりました。・・・やっぱり、話し合わないと、分からないですね。」ママも、目が潤んだ。時間は二時だ。順子は、清算して。解散した。今夜は、四人が店を見に来る。順子は、三越に入った。
「家具売り場に、行った。」おー一杯あった。ダブルベッド。応接用の飾り棚。お化粧台。二人用のソファー。二点。テーブル。下に引き出しが付いている。一点。簡単な書類も入る、金庫みたいな。ボックスがあった。一点。
あとは、寝具売り場。浴室用品。ベッド用の掛け、敷き毛布。タオル。バスタオル。そして、冷蔵庫。カラーテレビ。ステレオ。・・・とりあえず。此れを全部注文した。お金を払って、搬送して頂くようにした。明日。二時に来てくれる。・・・明日は、電話、取り付。三越の搬入が有る。順子は部屋に帰った。シャワーを浴びて、休んだ。何もないので、壁に背中を当てていた。寝るのも、布団が無いので。コートを着て寝ていた。
七階の店を開けた。掃除をしながら、消毒をしていた。
「お早うございます。・・・」弘子たちが来た。
「あら。早いわね。・・・」
「お昼は。ご馳走様でした。・・・」五人が揃って、お辞儀した。
「ママ。手伝います。」五人が、手伝ってくれると言うので、頼んだ。七階が終わった。八階も手伝うと言うので。八階に行った。
「どうぞ。・・・」ママが開けて入った。五人も、ぞろぞろ入って、掃除を始めた。終わった。七時前だ。コーヒーを入れて、飲んだ。
「へー・・・明るいですね。・・・映画で見た事あるけれど。暗かったよ。」
「あれはね。わざと、暗くしているのよ。・・・だから、変なイメージに成って居るのよ。・・・どうですか・・・見た感じ。」
「はい。大丈夫と思います。」四人は、嬉しそうだ。七階と八階に、二人。づつに。分かれた。七階は、弘子さん紹介して、皆さんに。八階は私が紹介するから。それぞれ仕事に就いた。女子たちが来た。
「皆さん。明日から。店で働きたいと言う。人を紹介します。道子さんと佳代子さん。宜しくお願いします。実は、七階のチーママの、お友達です。青森出身です。」
「宜しくお願いします」頭を下げた。パチパチパチパチ。拍手で迎えられた。
「そして、七階にも、二人。入ります。お友達です。仲良くしましょうね。」ママの、傍にいる様に話した。ドアが開いた。ママが出た。
「いらっしゃいませ。何名様ですか。」
「五人です。・・・初めてです。・・・」
「はい。どうぞこちらへ」二番の真ん中の席に案内した。メニューを持ってママが対応した。一人五千円。ボトル=ワイン・ヘネシー・レミーマルタン。各一万五千円。
「そうですか。じゃ。ヘネシーをポトリに入れて。・・・下さい。」
「はい。有難うございます。」青森の二人を座らせて。ママが、全部用意した。水割りを作って上げて乾杯した。
「乾杯。・・・」
「初めまして、順子と申します。今後とも。よろしくお願い、いたします。」
「えーとね。フューチャーの。社長から紹介されて、来ました。」
「それは、それは。ご苦労様です。・・・長い付き合いで、いらっしゃいますか。」
「うん。小林社長とは。長いです。以前会社が一緒で、・・・今度会社を立ち上げて、頑張って居るから。・・・私も見習わないと。」
「そうですか。・・・差し支えなかったら。・・・名刺などを。」
「あ。失礼しました。こう言う会社を立ち上げました。」
「新橋ケミカル株式会社」社長・黒澤晃。コンピーターの、枠(箱)造る会社。
「有難うございます。・・・大事にします。」
「有難う。・・・今度社長の子会社に、抜擢されるかも、知れないので、・・・そうすれば、又一緒に、行動すると思います。・・・同じ仕事しているので。」
「オリンピックで。中々、皆さん大変。だって。言って。いました。よ。」
「そう。なんですよ。・・・十一月からは、オリンピックの性には、出来ないから、いろいろと、足がかりを、点けておかないと。歩いています、新橋。なんで、近いから、チョコチョコ。来ますので。・・・ママを。社長がお気に入りでした。よ。」
「こちらこそ。御贔屓に。・・・社長に伝えてください。」
「道子と佳代子です。・・・宜しく」二人は。会釈した。
「あ。・・・ママばかり見ていて。見逃しました。失礼しました。」
「私達の事も。振り向いてくださいね。・・・宜しく。」佳代子は、少し訛り気味で。
「あれ。・・・青森。・・・もしかして。・・・」
「えー・・・分かる。・・・」
「分かりますよ。・・・俺も青森だから。」
「本当だ。・・・青森だ・・・訛って居る。・・・」
「えー分かる。んですか。」ママが。ビックリした。社長が。
「ママね。青森同士、だと。直ぐ分ります。・・・何か、哀愁が、感じるね。」
「そうだべ。」二人は、心が少し解けたようだ。
ドアが開いた。ママが出た。十時だ。
「いらっしゃいませ。・・・あら。・・・御一人。」根津頭取だ。一人だ。奥の三番テーブルに案内した。
「どうぞ。御一人で、珍しく、暫くぶりでした。」
「うん。今日は、一日。何も無く、ぼーっとして。居て・・・今目が覚めて、来ました。思い出して。・・・今日は、明日、早いので、新橋に泊る。んで。大阪へ出張で。何か。オリンピックの、スポンサーの事で、会いたい人が、居るみたいで。私は、会ったことが無い。けれど。大阪の友人の知り合いらしい。とんぼ返りで。・・・明後日開会式でしょう。オリンピック。招待されているから。・・・忙しい。・・・オリンピック終わったら。ゆっくり、話したいことが、有る。んで」
「そうですか。・・・良い話。てすか。」
「うん。ま。・・・良い話ですよ。・・・楽しみに。」
「はい。・・・有難うございます。・・・此の子達。明日から、務めて頂くのよ。今日は、見習で。・・・宜しく。」二人はお辞儀した。
「おー・・・また、綺麗な子達だね。・・・宜しく。」頭取も明日早いので、直ぐ帰った。十一時前だけれど、早く締めた。順子も家に帰った。明日は。早く起きないと。直ぐ寝た。・・・ぐっすり寝たようだ。
朝八時に起きた。シャワーを浴びて。化粧した。座る椅子が無い。とにかく、九時に成るのを待って居た。ピンポン。鳴った。電話屋さんだと言う。ドアを開けた。
「電話を、取り付に来ました。」二人来て、直ぐ。準備が始まった。置く場所を決める。・・・何処が良いかしら。・・・二か所。付けられないか聞いた。大丈夫と言う、ので、寝室と居間に着けることにした。ピンポン。鳴った。
「三越です。注文の品、搬入に来ました。」玄関に出た。四人で来たと言う。置く場所を指示してください。と。言われた。・・・電話屋さんの。契約書にサインして、帰った。お金は、銀行振り込みだそうだ。
ベッド。ソファー。テレビ。冷蔵庫。サイドボード。の置く場所を指定した。
十二時前に終わった。・・・あー。らくだー。ソファーに座った。ベッドにも寝て見た。寝具もタプルで。夢の様だ。早速。田舎のお母さんに。手紙を書いた。電話が無いので。お母さんが心配するので、お姉さんの助けで、遣って居る様に書いた。・・・だから、お母さんも安心しているでしょう。・・・こんなに働いているとは。思っていないので、・・・順子も詳しい事は、書かない。おそらく。学校の電話を借りて、かけてくるでしょう・
そして、麗さんに、電話した。
「もしもし。順子・・・今、電話入ったの。・・・電話番号。・・・言うね。」
「え。早かったわね。はいどうぞ。・・・・・・・・・。分かった。書いたわよ。順子。・・・あなたは。凄いね。・・・あれから、感心しているよ。・・・頑張ってね。」
「はい。・・・有難う。」
あー・・・これで終わり。・・・二時だ。寿司屋へ行こうか。歩いた。ゆっくりで二十分。かかった。
「お早う。・・・」
「いらっしゃい。・・・」マスターの、元気な声が響く。板前の息子は、おとなしい。お母さんも。物静かな人だ。余りしゃべらない。息子は、お母さん似だ。
「一人前と、アナゴ白焼き。アワビ炙って。小肌。とり貝。」頼んだ。
「どう。落ち着きました。・・・」
「うん。今、終わって、一休み。・・・一応揃ったの。・・・テレビは、カラーを入れたの。どうせ、そうなるでしょう。って。電気屋さんに言われたから。」
「えー・・・カラーテレビ。・・・凄いね。・・・家は、まだ、白黒だよ。・・・オリンピックだから、買え変えかえる。か。迷っている。の。・・・お金持ちだな。順子ママ。・・・何処で買った。」
「うん。三越で。・・・どうせなら、カラーテレビの方が、良いよって、言われたから。そうしたのよ。」
「そうしたのよって。言ったって。お金が先でしょう。」
「はい。ま。良いか。・・・今度ね。新人四人。入ったの。可愛い人達よ。・・・青森出身の子達。四人とも、同じ部落で。集団就職で会社に入って。十日目で、強姦に遭って、四人で必死に逃げて、先輩の所に、潜り込んだらしい。くて、今まで、其処に、居候していた。らしいの。家に努めている此の、後輩で、田舎の同じ部落で、隣近所で。私も話を聞いたら。断れない。よね。」
「へー・・・そう。なんだ。・・・悪い奴が居るね。・・・会社だろう。その辺のチンピラなら。・・・真か、会社で。」
「高校卒業して。・・・私と同じ年で。・・・東京に憧れて、来て。・・・雪が五メートルも、降って、吹雪いて、ズボンから、又まで、雪が入ってくる。・・・絶対。田舎には。帰らないって、言ってきたらしいですよ。・・・だから、此の儘居たら、自殺するしか無いって。人生様々ね。・・・考えると、泣けてきますよ。」
「ママも、良い人。なんだねー。・・・そんな子。使ってあげて。」
「まだ、今日から。だから。・・・何時迄。続くか。・・・」順子は。帰って少し休んで。店に行こうと。帰った。やっぱり良いな。新しい布団は。寝過ごさない様に。時計に目覚ましベルが、鳴るようにした。寝た。・・・六時にベルが鳴った。起きてシャワーを浴びて、支度して、家を出た。タクシーを拾って店に着いた。ドアを開けていた。
「お早う。」皆来た。順子が皆に。
「皆さん明日から、オリンピック開幕で、話題もいっぱいになるね。テレビを見るのが楽しみだね。」
「ママ。・・・家は、テレビが無いのよ。・・・皆も。でしょう。・・・」
「そうか。・・・テレビが無い。・・・じゃ外で見るしかないね。・・・」
「そうですよ。・・・デパートとか。駅とか。・・・」
「私は、昨日。カラーテレビを入れたの。・・・」
「えー・・・ママ。んとこ。カラーテレビ。・・・良いなー・・・見に行きたいな。」
そして、順子は、アメリカ人の事を皆に伝えた。
「大事なこと。皆さんに伝えなければなりません。と言う。事は。オリンピック終わったら。当クラブ「JUN」。此処、七階、八階で、アメリカの。バレーボールとバスケットボールの選手たちが。パーティー。を。することに決まったの。二十七・二八・二十九日の三日間。貸し切りにして。一日二十人。七階十人。と八階十人で。・・・皆さんの実力を発揮してください。」
「えー・・・本当。・・・ママ。」
「本当よ。・・・契約してありますので。」チラッと。見せた。
「そして。一番大事な話が有るの。・・・お客さんが、各階十名。女の子たちが、十二名に成ります。・・・それで。デートに誘われる。かも。分かりません。・・・此の事に、対しては、私は一切、タッチしません。ので。・・・自己責任となります。くれぐれも。約束してください。・・・もしかして。此のことで。事件が起きても。私とお店を。切り離してください。・・・これだけは。厳守です。お願いします。」
「えー。・・・アメリカ人。が。この店に来る。」
「へー・・・夢みたい。・・・楽しみだな。」
「バスケットボールの、選手って。・・・もしかして、・・・大きい、じゃない。身長二メートルとか。」
「えーそしたら、バレーボールも。でしょう。・・・」
「えー・・・凄い。・・・ママ。・・・」
「家のママは。・・・凄いねー」皆。楽しみに、喜んでいる。女の子達は結果がどうであれ。アメリカ人と会えるのが、楽しみだ。終戦後。銀座はアメリカ人が殺到し、アメリカブームが、巻き起こり、事件も多かった。順子は。何とか事件に成らないことを、井野根ばかりだ。ドアが開いた。ママが出た。
「いらっしゃいませ。・・・何名様ですか。」
「十名です。・・・根津さんから。紹介です。」
「あ。・・・そうですか。どうぞこちらへ。」奥の三番席へ案内した。二番の席と、繋げて、広くした。満員だ。女の子全員で、対応した。準備が整って。乾杯した。
「どうも有難うございます。・・・頭取には、ご苦労掛けております。・・・皆さんを紹介して、頂いて。・・・お付き合いは、長いですか。・・・」
「うー。そうだな。戦後からだから、長いですね。・・・」
「そうですか。・・・もし、差し支えなかったら。お名刺など。・・・」
「ぁ。ごめん。ごめん。はい。・・・」名刺を貰った。ママが名刺を見た。プレジデントホテル会長。織田誠二。
「えー・・・あの高い所の。・・・ホテルの。・・・」
「そんなびっくり、しないでください。・・・同じサービス業ですから。」
「えー・・・でも。・・・ご苦労様です。・・・わざわざいらしてくださいまして。」
「ん。・・・頭取に。・・・会社の交際費を「JUN」に。落としてくださいって。・・・私らの。付き合いでね。・・・言いたいこと言う。んですよ。・・・他で飲むよりは、知って居る、店の方が良いでしょう。って。頭取の。気心です。何か。ママを気に入っているようで。皆に、声。掛けています。・・・」
「有難うございます。」
「やっぱり。惚れ惚れしますよ。ママ。十朱幸代似ですよ。頭取の言う通り。ま。ゆっくり付き合いましょう。・・・今日、連れてきた。連中は、家の幹部達だから。ママも、親しく、付き合ってください。」
「はい。そうですか。・・・じゃ。皆さんに、名刺を差し上げます。」
「皆。ママから、名刺貰ってください。」社長が声掛けてくれた。皆に上げた。
「皆さん。どうぞ御贔屓に。」ママは起立して。挨拶した。パチパチパチパチ。
「俺も、招待状が来て居る。んだが。明日は、出席できなくて、代理が行きますよ。頭取と一緒ですよ。代理は。・・・専務。こっちへ来て。ママと会って。」
「あ。はい。」傍に来て名刺を頂いた。プレジデントホテル・専務・大橋泉。
「初めまして。・・・良いお店です。近代的で、明るくして、・・・ママの気持ちが見えます。・・・薄暗いと。ちょっとね。・・・明日は、頭取と一緒なんですよ。社長の代理で。」
「頭取は、大阪から、帰ってくるでしょうね。・・・今日の事も、伝えて。」
「はい。分かりました。」順子は、大阪へ行っていることは。知って居た。でも喋らない。・・・エチケットをわきまえながら。勉強している。ボトルを五本入れてくれた。
「この人たち、来たら、出してあげて。・・・専務の名前書いて。」
「え。あ。・・・はい。」専務は、慌てていた。五本全部。専務の名前に書いた。会社の名前は。書かないのが、常識だ。
「有難うございます。・・・これからは、専務さんが、見えますね。」
「はい。僕が来ます。社長は。多忙で、今日は、珍しいです。・・・我々と。歩くなんて。・・・何年に一度ですよ。」
「え。・・・そう。なんですか。・・・貴重な。御付き合え、ご苦労様です。」
十一時で、店は終わりだ。専務が支払いすると言う。ので、ママが言った。
「ママ・・・今日は、此れで。・・・」
「あ。・・・請求書。書いています。・・・」
「要らないです。・・・これで。」封筒を渡させた。ママは、申し訳ない仕草で受け取った。
ママはドアまで、見送った。虎屋のお土産を用意していたので。十個。専務に渡した。重いので、女の子が手伝った。看板だ。
「明日は。土曜日で、開会式だから、日曜日も。お休みにします。じゃ。月曜日からね。弘子と四人が、ママの傍へ来た。
「まま。有難う。・・・皆。やる気が。湧いてきました。・・・これからも、宜しくお願いします。」丁寧にお辞儀した。
「本当。良かったね。・・・気に入って、頂いて。・・・頑張りましょう。」
「じゃ。失礼します。」帰った。塾子は。気分が良い。一人で店を出た。封筒を開けた。三十万円。入っていた。・・・え。どうしようか。十五万円で帳尻は会うので。・・・
専務と美江ママは、接触は無い事から。絶対分からないので。心を鬼にして、十五万円を、引き抜いた。専務も順子がママだと思っているし。十五万円は、あとで金庫に入れて置くことにした。麗さんに電話して、寿司屋で、会うことにした。
麗さんは近いから直ぐだ。
「お早う・・・」
「いらっしゃい。・・・・どうぞ。カウンター。・・・相席で」
一人で紳士風な人が居た。
「順子と、待ち合わせなの。・・・」
「麻生ですか。・・・じゃこちらへ。ずらして。」
「ボトル有りましたよね。・・・」出してきた。ワインを飲んでいた。
「お早う。順子が来た。・・・」
「先に来ていたよ。・・・」
「はい。・・・どうぞ。・・・クラス。下さい。」ヘネシーを水割りで。
「乾杯。・・・」
「今日は何となく疲れた。・・・新入りの子が、四人。・・・気に入ってくれて、務めるって。・・・・」
「良かったね。・・・順子は。女性にも持てるのね。・・・」
「え。・・・有難う。・・・明日から。二日間。お休みなの。・・・だって、オリンピック。でしょう。・・・協力している様に見せないと。・・・」
「偉い。・・・順子。確かに。私達は、話題が売りだから。・・・すべてに、興味を示さないと。・・・職業も。様々な勉強しないと。・・・置いて行かれます。」すると、隣の紳士的な、叔父さんが。
「あ。失礼します。・・・私は、大阪の企業から、明日の開会式に、招待されて、いる。んです。・・・近くのホテルを取ってある。・・・けれどお寿司が好きで、関東の味をたしなみたい。と。この店に入った。んです。一緒の人達は、ホテルで飲んでいる。んです。お二人さん。お綺麗な人で。心が動揺しています。・・・」麗さんが。
「本当。・・・私じゃないでしょう。・・・隣の女性でしょう。・・・」
「え。・・・いいえ。どちらも。です。・・・大阪の雰囲気と違います。・・・女性の態度が。・・・大阪は、二人集まったら。・・・もう。ガチャガチャ。騒ぎまくりますから。・・・自分たちの事だけ。大はしゃぎ。・・・その点。東京は、違いますね。」
「え。東京は、初めてですか。・・・」
「そう。初めてです。・・・」
「そうか。・・・大阪の女生と。・・違う。・・・てことは、寂しいかな。東京は。」
「お。流石。・・・そう来ました。・・・でもね。飽きちゃうの。大阪の女性って。喋って居ないと、自分で、仕草が、分からんと。・・・どうしたら良いか。喋って居れば、人を引き付けられると。思い込んでいる。・・・男から見れば、そこが違う。んだな。」
「分かる。・・・」麗さんだけ喋って居る。
「もしかして、私の見た目で、こちらの方は、上司でしょう。・・・お隣さんは、大分気を使って、いらっしゃる。・・・これが。東京や。・・・」
「あー・・・そうか。・・・分かった。・・・それは、良く。見抜いた。お客さん。」・・・
お近づきに。一杯。どうですか。・・・おごります。ブランディーです。水割りですか。ストレートですか。」麗さんが。
「お。遠慮なく頂きますか。・・・水割りで。・・・お。美味しいね。初めてだわ。・・・なんて言う酒か。」
「え。ヘネシーって、言うの。・・・大阪にも有るでしょう。・・」
「それは有ると。思うよ。・・・でも我々、庶民は、飲めないでしょう。・・・高くて。」
「庶民。なんですか。・・・差し支えなかったら。お仕事は。」
「もう、退職した。六五歳だから。・・・以前は、大阪証券。って。東京神田、駅前に建っている。でしょう。あれが、私が、勤めていた会社です。・・・私は、関西がほとんどで、大阪。神戸。福岡。沖縄。南。ばっかし。や。」
「え。証券会社。・・・今・血気多感な。」
「流石。お姉さん。・・・そうです。高度成長期って。何でも有り。ですわ。だから。今ですよ。お金儲けは。私は退職したから。余り踏み込めないけれど。・・・やり方は、知って。おる。」
「私らも、始めようとしています。でもやり方が。難しい。」
「え。・・・簡単や。・・・上場しないうちに、買えば良いだけや。・・・ただ上場する会社を。見つけるのが。普通じゃ無理やわ。大会社。すなわち、親会社を知らんと。入れないね。・・・もし、入れたら、鬼に金棒や。・・・百万円が三百万円に成るからな。」
「えー何ですか。其れ。・・・」
「ま。長い話になるし、此処では、無理ですわ。・・・関西の方が、上場するには、早いわな。東京の人は、ややっこしい。・・・責任逃れを考えるからな。いろいろ法律が有る。んですよ。難しい。その通り遣っていたら。何時に成るか。分からん。・・・法律なんか。有って。無いようなものだから。誰か一人。責任を取れば、済むことなんや。其れが関東人は。出来ない。・・・丸善。松下電器。見たら、分かるでしょう。関西の商売。テレビのブラウン管を造ったのが。早川さん。て。・・・それが宝の持ち腐れに成って。な。・・・困った。売り方が知らない。其処へ。松下幸之助と言う、関西人が、入って来た。・・・どうや。そのあとは、あなた達の想像に任せるわ。」順子は、
「えー続き。知りたい。・・・」
「要するに。頭を柔らかく。することや。法律は、出来た。ばっかし、やから。隙間が一杯ある。・・・それを見つける。」順子は、突っ込んでくる。
「えーどうやって。」すると、
「隣の綺麗な、お姉さん。目が血走って、居ますよ。興味あるみたいに。」
「え。そうですか。」
「目を見れば。分かりますよ。・・・今日は、これまで。」麗さんが。
「何時帰りますか。・・・大阪に。」
「開会式、終われば、帰りますよ。・・・新幹線で。指定席取ってあるから。」
「へー。残念だな。もっと。株の話。聞きたかった。」
「おーそうか。・・・じゃ。代表の方の名刺下さい。チョコチョコ。来ている。んですよ。さっきの、簡単な話を、教える為に。」
「順子、どうする。私の名刺上げた、ほうが。・・・順子は、現役だから。周りが、うるさいでしょう。・・・」
「そうね。」そう。して、麗さんが。
「はい。・・・じゃ。私の名刺です。」上げた。
「お。中澤麗華。・・・良い名前だね。・・・お金持ちでしょう。・・・綺麗だし。着ているものも。お二人さん。・・・違いますよ。・・・若しかして。覚えて居たら、お電話します。・・・ご馳走様でした。」精算して帰って行った。
「あの人。証券マンだ。・・・有りますね。神田駅前。でかいビル・・・看板。
大阪証券って。上がって居ます、ね。・・・ま。焦っても、しょうがないよ。私たちなりに、順子。頑張りましょう。」
「ですね。・・・麗さん。急ピッチで。動いていますね。今日も、株上場の話を、していました。新会社を創った。って・言っていました。」
「そうか。・・・でもさ。今、言ったの。聞いた。要するに、上場する会社を知らないと、どうにも成らない。って。言っていた。・・・ね。マスター。聞いていた。」
「確かに。・・・そう。・・・言っていた。な。上場する前に。買う。」
「順子。今日は、これまで。・・・もう食べたの。順子。・・・喋っていたから。私の、食べて。」
「えー私、もうお腹いっぱい。・・・じゃ。マグロ頂きます。」今日も、順子が払った。二人は、此処で別れた。部屋へ帰った。玄関の電気を点けて行ったから。明るい。やっぱり電気、点けて行ったほうが。正解だった。シャワーを浴びて寝た。
次の朝。十月十日。開会式だ。テレビは、朝から騒がしい。今日は開会式を見てから。昼食にしようと、考えていた。ソファーに座って、ごろごろしていた。開会式だ。
おー。綺麗だ。映っている。田舎で、お母さんも見ているでしょう。リリリリ。電話が鳴った。
「順子。手紙見たわよ。・・・だから電話しているでしょう。赤い電話。・・・今皆でテレビ、見ているの。・・・近所の人達も、来て居るの。・・・だってテレビ無い、家も有るのよ。十人位来ているの。今、ジュース買いに来て、電話しているの。・・・え。カラーテレビ。・・・へー。・・・凄いな。・・・お姉さんとこも。カラーテレビ。・
・・それじゃ又ね。」お母さんは、元気だ。
電話を切った。テレビ買って、あげて、正解だった。やっぱりカラーだな。今度買ってあげよう。お母さんたちにも。
もう二時か。築地に行ってみるか。久しぶりに、築地場外に行った。やっぱり混んでいる。何を食べよう。と言っても。分からない。魚定食って。食べてみたいな。・・・探して歩いた。・・・有った。暖簾をくぐった。
「いらっしゃい。・・・はいお一人様。・・・」メニューを持ってきた。目抜き煮魚定食。下さい。早かったる煮魚だから、似てあるから、早い。・・・美味しい。魚の味だ。此れが。・・・順子たちは、山育ちで、魚は、殆ど知らない。・・・でも、美味しい感じだ。精算して外に出た。大変だな。・・・皆。買い物して。料理して、何人で暮らして居るのか。人を見ていると、忙しそうだ。・・・東京の人は、早歩きでも。ぶつからないで。歩いている。何で、そんなに急ぐのか。のんびり歩いている人は、私だけだ。
何か、買って帰ろうか。・・・でも分からない。ぅん。卵焼き。へー・・・こんなに卵焼いて、売れるのかしら。山ほどある。買ってみた。いろいろ有る。んだ。適当に買った。ウナギ。お父さんが川から。捕まえたウナギは食べたことが有る。買ってみよう。串差し。一本買った。もう帰ろう。結構買った。家に着いた。テーブルに広げた。冷蔵庫に入れた。テレビを点けた。オリンピックだ。でも、体操は気になる。番組が分からない。新聞が無いから。適当に見ていた。ねむくなって寝た。
朝八時だ。起きた。今日は日曜日だ。・・・シャワーを浴びて、薄化粧をした。ソファーで、テレビを見ていた。朝ごはんは、食べたくない。今日は、銀座をフラフラしようか。支度して。九時半に家を出た。新橋演舞場。ぅん。演目・看板が、有った。劇団公演。歌手リサイタル。歌劇。演奏会。・・・いろんな芸能を開催している。順子は、音楽はあまり得意じゃ無かった。映画も見たことが無い。とにかく、山から、殆んど、出たことが無い。四丁目に行った。やっぱり三越か。入った。地下へ降りて見た。何だ。これ。食べ物屋さん。こんなに沢山。食べたくなる物ばかりだ。今日は、各階を見ることにした。ブランド品売り場。でも分からない。時計売り場。宝石売り場。洋服売り場。靴売り場、食器売り場・家具売り場。八階がレストラン街。一日歩いても飽きないようだ。何か食べようか。でもどれが旨いのか。分からない。イタリアンパスタ料理の店。
へー・・入ってみようか。・・・入った。あ。スパゲティー。は。知って居る。ムール貝入りパスタ。・・・聞いた事、無い。頼んでみた。ビールを頼んで。飲んでいた。パスタが来た。貝事入っているマカロニ。食べて見た。おー・・・美味しい。・・・流石一流のデパートだ。美味しい。初めて食べた。久しぶりに一人だ。・・・でも寂しいな。やっぱり。夜の方が楽しい。昼は、あまり出たくない、感じだ。・・・ライオンが合って居るかも。ご飯も有るみたいだし。三越を出た。有楽町へ歩いた。日劇の看板が目立つ。知らない。ダンシングチーム。あ。宝塚劇団。みたいな。・・・んー。映画館も有る。でも、俳優って、知らない。・・・あー知らないものばかりだ。勉強しなくちゃ。でも。お金が先か。・・・順子は。独り言。言いながら。歩いている。明るいうちに帰った。
リリリリ。電話が鳴った。
「もしもし。順子。・・・何しているの。」
「はい。麗さん。今日は。辺りを散歩していたの。四時間も歩いたよ。」
「えー。・・・そんなに歩いて。・・・夕ご飯食べた。」
「まだです。・・・だって。まだ五時でしょう。」
「ライオンに行きますか。6時頃。」
「はい。分かりました。・・・」
麗さんが、ライオンに行きたいって。やっぱり。ライオンが良いみたい。雰囲気も有るし。何となく、高級感が、天井高いし、広いし。お客さんも品のある人ばかりで。
まだ、一時間ある。ので。少し横に成った。・・・六時だ。家を出た。麗さんが居た。ビックリした。
「え。・・・麗さん。・・・」
「ハハハ。順子を、びっくりさせようと。・・・此処へ居たの。」
「びっくりしました。」二人はライオンに着いた。奥の席を取った。とりあえずビール。何時ものを。頼んだ。順子は、生ハムサラダ。ドイツ風のソーセージも頼んだ。
「乾杯。・・・」
「いろいろ、揃えた。・・・」
「はい。とりあえず、必要なものだけ。・・・あとは、徐々に。・・・」
「後で、欲しい物が出て来た時で良いのよ。・・・」食べ物が、揃った。
「美味しいね。・・・」
「オリンピック。始まったね。・・・私は、どうって事無いの。・・・スポーツは、遣ったこと無いから。」
「そうかー・・・そうね。好きでないと。・・・私は、体操は、興味有るわ。でもスポーツは、嫌いじゃないから。・・・何となく、見ています。」
「順子。・・・オリンピック後の、段取り、計画を立てて、おかないと。・・・」
「はい。・・・思います。」
「それでさ。根津頭取は・その後。どう、動き。」
「はい。先日来ました。大阪に朝早く行くので、新橋にホテル取ったって、直ぐ帰ったけれど。」
「あそう。じゃ。来ているね。・・・頭取の事。どう見ている、順子は。・・・」
「はい。・・・お金有そうだな。・・・親分肌かな。顔が広いかな。・・・」
「そう。・・・順子。そうなのよ。其れをどうするか。・・・これは、私の考えですから、・・・強制では、無いからね。・・・順子の考え次第だよ。」
「うんー・・・」順子は、頷いた。話したいことは、見えていた。
「此れから。先。・・・私達。美江ママも、含めて、・・・もう引き際なの、銀座は、四〇才、過ぎたら。守りに入るのよ。・・・ガツガツしていても。・・・今まで、言わなかったけれど。今住んで居る、マンションは、有る、男に、貰ったの。」
「えー・・・」
「声が、大きいわよ。・・・」
「だって。・・・」
「そうなの。・・・美江ママも、持っているのよ。・・・マンション。だから。・・・私たちは、仕事しなくても、良いのよ。・・・お店の。ビルは、根津頭取の。ビルよ。・・・」
「 えー・・・そうですか。・・・」
「そう。なんです。・・・だから。美江ママは、順子にお店を引き渡したい。と。考えて居るみたいよ。・・・順子を採用したのは。根津頭取の差し金だったのよ。・・・別に、悪い事じゃ無いのよ・・・男はさ。・・・若い子、好きなのよ。・・・欲を言えば。・・・素人を。私達は、散々苦労してきた。・・・だから、銀座は、全て、お見通しなの。嫌われているわけではないけれど。人間。て。引き際が大事たから。・・・ただ、其れだけ。」
「うんー・・・じゃ。辞めちゃう。んですか。・・・美江ママ。」
「そう。・・・だからね。二人で。・・・順子を、育てて。協力して・・・少しでも、良いから、落ちこぼれを、頂ければ。て。話しているの。」
「えー・・・そうかー・・・」
「順子は。たまたま。運が良かったの。・・・引き際の私達に、近づけたから。・・・分かるでしょう。」
「うん。・・・何となく。・・・」
「それでね。・・・順子が、現在の店を経営するようになって、益々。活気付けて、株取引の、拠点にする。・・・悪い事する訳では無いのよ。無法を犯す訳では無いからね。ただ。悪く言えば。・・・順子を担ぐ。・・・」
「え。・・・担ぐ。・・・」
「あ。・・・意味が・・・あのね、簡単に言えば。お店を、株取引の事務所にする。て。言う話。・・・でも、事務を執るわけじゃ無いのよ。情報の拠点に成る。・・・少し遠回りに。話したけれど。・・・分かった。」
「え。・・・要するに。情報を集める。て。事なのね。・・・」
「そうそうそう。・・・純子。流石。切れますね。・・・」
「分かりました。」
「オリンピックが、終われば、お店の出入りが。激しく成るから。・・・八階は、全予約制にする。・・・もしかして。・・・午後二時から、八階を開ける事に成るかもしれないよ。・・・」
「えー・・・」
「順子。・・・これが、チャンス到来だから。・・・これを逃したら、駄目よ。・・・考えて見たら。分かるでしょう。・・・福島の山奥から出てきて。何ができる。・・・こんなチャンスは、此れから、絶対ない。・・・分かるでしょう。・・・無理を言っている訳じゃ無いのよ。順子だから、出来るの。・・・分かるでしょう。根津頭取。帝国証券。丸中証券。・・・この三人を、操れば、順子は、「銀座の女帝」に成れる。
「え。・・・分かりました。」順子の機転は、回転した。
「でも。・・・操る。て。・・・」
「順子。・・・簡単に言うと、女と言う身体を、フル活用する。・・・私も。美江ママも。女。て。・・・日本では、まだまだ。女の出る幕は、開かない。・・・後二〇年は掛かる。・・・奥さんに成って。毎日、掃除洗濯、夜は、旦那の相手。お金は、決まった給料だけ。・・・子供を産んで、育てて、家庭を守る。・・・純子。・・・此処半年で、十万円。二十万円。百万円。と言う。数字を見た。・・・大卒で、一か月二万円前後の給料と、比べたら。・・・分かったでしょう。」
「はい。・・・十分わかりました。」
「だから順子。・・・気持ちの問題なのよ。・・・さっきの話のとおり。・・・選ぶのは、順子よ。
「はい。分かりました。・・・ご指導お願いします。」順子は。軽く、会釈した。
「順子、くれぐれも、私達二人を忘れないようにね。・・・じゃ。美江ママと。計画を練って、・・・だからと言って、私たちの言う通りに、擦る訳じゃ無いのよ。順子の能力が、発揮すれば、良い事だから。・・・まずは、根津。頭取りを、順子の腕次第。・・」
「はい。・・・オリンピック中に、考えます。」
「あれ。・・・まだ、食べていない。・・・食べましょう。・・・でもさ。順子。何時も思うの。・・・他の店より。此処の方が、良いよね。・・・広いし、美味しいし。高級感が有るし。・・・変なお客さんも居ないし。・・・」
「はい。私、もそう思います。・・・コツ腰のレストランに行ったけれど。此処より窮屈ですよね。」
「やっぱり。・・・そう思うでしょう。」麗さんは、順子に、何時。話そうかと、悩んでいた。ことを、話せて、一安心だ。女の生きる道。まだまだ日本は、遅れている。ただ、男の欲望を、糧に。夜の職業をする。・・・九割は、男の餌に過ぎない。・・・私達は、其れを手玉に取り、逆に女の欲望を男から奪い取る。・・・悪く言えば。・・・しかし。お互い様で有る。事は、間違いない。・・・九十パーセントの女は、男に騙されている。・・・私達は、されを。逆手に取る。・・・女の野望。・・・順子に託す。
第四話 順子の野望
二人は、ライオンで、九時まで話し込んでいた。順子は、シャワーを浴びて、直ぐ寝た。十時に起きた。昨日の話を、整理していた。
女一人で、東京で生きて行く。・・・やはり難しい。弘子達の様な、人も居る。麗さんの言う通りだ。私は、運が良い。・・・でも、まだ、階段が有る訳じゃない。話に過ぎない。・・・どうやって、実現させるか。・・・考えて居る。三月からの、出来事を振り返る。順子は、何時も、迷ったとき。過去を振り向く事が大事だ。と。体験してきた。
三月。末、麗さんの家に居候した。四月には、チーママに成った。店を任された。
新日本銀行・頭取、根津晃。
帝国証券・社長、堤英雄。
丸中証券・社長、佐野五郎。三人と知り合って。株式の話を知った。
そして、様々な人達に会えた。
フューチャー、ジャパン・社長、小林広
大森部品・社長、渡野辺正幸
三ツ星不動産・社長、三井五郎
プレジデント、ホテル・社長、織田誠二。専務・大橋泉
スミダ、ケミカル・社長、鈴木一郎
大阪証券○○○○
アメリカ人。スティーブン、ジョン
様々な人物に会った。・・・やっぱし、此れが、私に対する細波。かもしれない。この波に乗って。大海原に出よう。・・・考えた。・・・私は。知り合いは、麗さんしかいない。其の麗さんが居なくなったら。終わりだ。・・・よし。腹をくくって。決めた。
ただ、根津頭取の真相が。分からない。・・・どうすれば、良いのだ。・・・オリンピックが終わらないと、動き始めるだろう。・・・待つことにした。
「お早う。・・・」相変わらず。店は、好調にお客が増えた。一晩。十五万円から二十万円の売り上げだ。
オリンピックも、終盤に入り、体操では、男子団体優勝。個人では、遠藤幸雄が個人優勝。バレーボール女子は、ソビエトを破り優勝。
十月二十四日。閉幕。オリンピック関連投資が、一兆円を超えた。と言う。新聞記事に、世界中広がり。日本経済に拍車を掛けた。・・・輸入。輸出に全力投資する企業も増え。あらゆる商品の開発。品質向上に。取り組んだ。為替レートも、1ドル・365円。で。良い物を造り。アメリカに輸出すれば、儲かるシステムだ。アメリカも日本で造れば儲かる。日本の企業を探そうと躍起だ。
十月二十六日。スティーブン・ジョンさん。が店に来た。
「順子ママ。・・・約束通り来ましたよ。」
「あら。・・・いらっしゃいませ。・・・お元気の様で。」
「あ。元気だよ。」
「こちらへ、どうぞ。」ママは、奥の三番テーブルに、セットした。二人で話すようにしたので、誰も来ない。
「明日。二〇人。大丈夫ね。・・・六時ね。」
「はい。大丈夫です。」
「監督も来ます。・・・五人。コンパニオンとして、指名を、頼みます。・・・皆さんに内緒ね。・・・一人、五万円。」
「うん。話してみます。」
「その子たちは、三日間ね。・・・付き合いますか。・・・一五万円で。・・・ママにも、御礼。五万円。・・・どうですか。」
「はい。聞いてみないと・・・」
「はい。・・・それが、終わったら。選手たちは帰ります。・・・私は、残ります。パスポートは、十一月三日まで。有ります。その間に、日本の会社。有りますか。・・・」
「はい。五社ほど、知って居ます。」
「オーケイ。・・・ママ。・・・じゃ。・・・明日も私は、六時に来ます。・・・今日は此れで帰ります。」
「有難うございます。」ジョンさんは、帰った。ドアが開いた。
「いらっしゃいませ。何名様ですか。」ママが出た。三ツ星不動産の社長だ。
「あら。・・・お久しぶりです。こちらへどうぞ。」奥の三番テーブルに。案内した。五名だ。女の子六人が、対応した。ボトルが有る。つまみを準備した。
「乾杯。・・・」ママも暫くぶりだ。
「ようやく終わりましたね。・・・見ました。・・・競技。」
「あー・・・俺は、柔道見ました。会場に行って。」
「えー入場券。取れました。
「うん。俺は。日本柔道連盟に加盟しています。・・・」
「え。そうですか。・・・決勝戦。」
「はい。・・・駄目でした。・・・でも、柔道で負けたわけじゃ無いですよ。山のような体が、覆いかぶさっただけですよ。・・・それが、抑え込みだ。て。・・・でしょう。分かったでしょう。ママ。」
「え。ニュースで、見ました。・・・確かに、二メートル越えで、二五〇キロ。被さった。・・・動けないですね。どう見ても。・・・反則。・・・ではない。」
「ま。・・・誰もが、負けたと言わないですよ。連盟でも、笑うしかない。て。技が何もない。しかし日本人は、悔しいけれど。優しい心。此れが柔道だ。て。技ありを認めるしかない。・・・大人が、小学生に被さった。と。同じですよ。」
「だから、負けは、負けですか。・・・悔しい。」皆で悔やんだ。
「お仕事は、此れから。忙しく成りそうですか。・・・」
「成りますね。・・・東武東上線沿線。西武池袋線沿線周辺の開発を始める。」
「建て売り住宅。ですか。・・・やっぱり、土地付きが、良いですよね。・・・アパートでは、狭いし。・・・お風呂は、無いし。」
「そう。なんですよ。住まい方を変えるのが、我々の仕事だから。ママ。・・・車を買うか。家を買うか。・・・さあ。どっちにしますか。・・・」
「うん。・・・迷っちゃう。・・・遊びたいし、狭い所も、嫌だし。」
「そうか。ママも。・・・でもさ、子供産んで、アパートで、五人も入れないでしょう。やっぱり。「土地付き・一戸建て。」・・・これが。我々の宣伝。アピール。ですね。」
「良い文句ね。「土地付き一戸建て」か。・・・お金あれば、一戸建てで、落ち着きたいけれど。・・・」
「私は、お金先ですかね。・・・狭くても。・・・車も要らない。・・・アメリカの車。大きい。・・・乗ってみたい。ね。」いろいろだ。
「そうだママ。今度。株上場に、乗せる様に言われている。・・・でも、株を売るには、・・・よほどの努力が必要ですよ。・・・上場する前に。何万株を売らないと、推薦されないですよ。・・・やっぱり、大手の子会社に成らないと。・・・」
「帝国証券の社長に言えば。・・・どう。なんですかね。」
「だから社長に言われている。んですよ。・・・最近。会って居ないから。・・・九時か。・・・電話してみようか。・・・電話した。・・・モシモシ。三井です。・・・今どこですか。・・・新橋。・・・ん。私は。「JUN」に居ます。・・・え。来れ。ますか。」
「今来る。て。新橋だから。九時半まで、来れるで。しょう。・・・」
「お早う。」ドアが開いた。堤社長だ。
「おー。暫く。・・・今新橋で、地主と会っていた。んですよ。お昼食べて。ちょっと前に。決まりました。・・・だから、まだ飲んでいない。ですよ。・・・霞ヶ関と言う所。埼玉県。東武東上線沿線。沿いで。五反部だから。一五〇〇坪。ですよ。畑で。三ツ星不動産に投げますよ。工事全般。・・・」
「え。・・・有難うございます。」
「ぅ。近いうちに。会いましょう。さ。飲みますか。ヘネシー。」
「はい。どうぞ。作っておきました。」
「乾杯。・・・三井社長。本当の乾杯だね。・・・ママね。明日の予定は。忙しいですか。・・・」
「え。・・・何も予定は、無いですけれど。・・・」
「そうか。・・・じゃ。どこかで、会いましょうか。・・・何処が良いか。・・・午前中、用事を済まして。二時頃どうですか。・・・新橋の、第一ホテルロビーで。ちょっといい話が有る。」
「えー。本当。・・・伺います。・・・午後二時。第一ホテルロビー。・・書きました。
社長ね。明日から、此処、貸し切り何です。古語六時より、八時まで。三日間。だから、五時までね。社長。」
「あ、そう。・・・でも、そんなに、時間かからない話だから。良いでしょう。ま。オリンピックも終わったし、今度は、バリバリ仕事しないと。・・・あれ。三井社長。・・・柔道、見たでしょう。・・・あれは。ちょっと。・・・何も言わない。」
「そう。なんですよ。今、話していた。所です。・・・」
「でもさ。世界一だって。・・・投資した金。一兆円。・・・日本も、金。有る。んですね。・・・誰が、持っているのか。・・・想像もつかない。金。」
「いくらか、回して貰わないと、・・・輸出すれば、・・・儲かる。んだが。・・・我々には、関係ないですね。・・・でも、社長の所。関連企業。設立したって、聞いているけれど。」
「そう。なんだよ。・・・ただ。アメリカの企業と。組まないと。・・・それが。」
「そうか。輸出するもの。・・・」順子は、話を聞いている。・・・明日は楽しみだ。
一一時だ。店も看板だ。皆帰った。順子は。弘子達を呼んで。明日。ライオンで、十時、開店同時。に。会うことにした。弘子は、家に帰った。前に買った総菜が有るので。ワインを飲みながら。食べていた。そしてシャワーを浴びて、寝た。
朝。九時に起きた。シャワーを浴びて、化粧して、支度をして、和イオンに向かった。弘子達が、居た。
「あ。ママ。・・・」手を上げていた。
「お早う。・・・入りましょう。」まだ空いていた。奥のテーブルに座った。
「はい。好きなの。頼んで。」
「ママ。・・・分からない。・・・」前と同じものを頼んだ。とりあえず。ビールで乾杯。
「あー。美味しい。・・・弘子さん達。お話と言うのは。・・・ちょっと言い。ずらいの。と言うのは、・・・今日の貸し切りの事で。・・・コンパニオン。五人居ませんか。て。いう事なの。お店。八時マテでしょう。・・・終わってから。デートしたいと言う。お客が、居るらしいのよ。アメリカでは、コンパニオン。て。サービスする。人。なんですって。・・・朝。十時まで。・・・五万円で。・・・五名様。・・・て。言う話。なんですよ。・・・言い。ずらい。です。けれど。・・・如何かな。て・・・飲みながら・食べながらで。そんなに慌てないで。・・・」
「え。・・・五万円。・・・三日で、十五万円。・・・でも、三人。・・・えー。・・・御金欲しいー。・・・どうする。弘子。・・・」
「分かんない。・・・でも、お金が。目の前に。ぶら下って居る。」
「皆。ホテル。バラバラ。・・・」
「いいえ。・・・同じホテルでしょう。赤坂の大きいホテル。ニュージャパンと言う。ホテルです。」
「うん。・・・行こうか。・・・私達。初めてなのよ。・・・でも。・・・」
「何とか成るでしょう。・・・体力は有るから。・・・バスケ部で。鍛えたから。・・・モシモシ。・・・バスケとバレーの選手たちなの。」
「えー。・・・話し。合うね。・・・オーケイ。して下さい。」
「じゃね。八階に来て。私の傍に居て、五人。六時からですよ。宴会は。じゃ。頑張って。ね。」
順子は、何となく、引け目を感じた。順子が精算して別れた。一時だ。タクシーで、第一ホテルに行った。ロビーを探した。まだ一時半だ。
「おーい。ママ。」社長が来た。
「あ。こんにちはー。・・・ご苦労様です。」二人は、席を探した。窓際が開いていた。
「コーヒー。貰おうか。・・・何か食べたら。・・・ケーキ食べようか。」
コーヒーとケーキを注文した。
「ママね。・・・帝国証券の、社外役員に、推薦したいのですが。・・・」
「えー・・・社外役員。て。」
「あー。以前。話さなかった。かな。ママ。英検二級。持っているでしょう。・・・今後は。外国との、取引に関わることにして。特別待遇の社員。て。言う。んです。何故ならば・上場前の株を買う事が出来る。と言う。特典が有ります。・・・あ。コーヒー。飲みながら。・・・その代わり、何十万株を、集めて貰う。・・・いや。直ぐじゃ無いのよ。三年位掛かる。んですよ。・・・実績を作らないと。いけない。んな百万株。と言う。其れが。上場する。会社の、力と言うか。成績に成る。株が多いほどその会社は、安定している。と。みなされる。・・・」
「えー。難しい。・・・私にできますか。・・・」
「できます。・・・足りないところは・私が、おお延します。・・・何故ならば。社長は、以上に。買えないのです。従って。ママの名前で買う。と言う。仕組みを、作りたい。・・・と言う。事です。」
「えー・・・分かります。・・・」
「お。流石。ママ。・・・機転が早い。・・・じゃ。此処書類に名前と。・・・とりあえず名前だけで良いです。あとで、店に行く時でも。持っていきます。・・・忘れるといけないので、請求してください。・・・あの書類。と言えば。分かりますので。」
「はい。有難うございます。」順子は。時間を見た。二時半だ。時間は有るので、頭取の事。聞く。かな・・・? 悩んだ。・・・でも思い切って。
「堤社長。・・・根津頭取の事。気になる。んですが。過去は、どんな人。だったんですか。・・・」
「うん・・・そうか・・・」
「はい。・・・近いうちに会う約束してあるのです。・・・堤社長には、正直に話したかった。から。・・・」
「そうか。・・・話しても、良いが。俺に聞いた事は。内緒だよ。」
「はい。其れは約束します。・・・」
「少し4長く成るけれど。時間は。・・・」
「はい。六時まで、お店に行ければ。・・・」三時前だ。社長が話してくれると言う。
「頭取は。凄い人脈者で。関東では、知らない人、いない位の人で。経済界では、トップの部類に入る人だ。もちろん私も投資して頂いている。・・・あまり逆らえない人です。・・・頭取の融資が止まったら、会社は潰れます。・・・依って、関東で何百社の会社に、投資している。ま。・・・融資だな。・・・過去と言えば、ママも、勉強しているか。な。渋沢栄一と言う。徳川慶喜に仕えた。人物で、運のいい人で、維新の時、パリ万博の、施設団長で、フランスに居て、戦争から逃れた人で。日本が落ち着いたときに。帰って来た。そして、日本の発展に命を賭けて。何百と言う、企業を創立させ、今の日本の土台を創った。と言っても。過言ではない。従って、その事業に係わった。若い部下たちが、日本中に散らばっていた。昭和に成って、世界大戦が勃発して、日本も参加し、敗戦国に成り。日本全土が。火の海に成った。東京は特に酷かった。
昭和二〇年。八月。終戦となり。アメリカ軍が日本再生。政治改革に乗り込んできた。一般国民、会社は、焼け野原になった土地。家の復活、再生をしなければならない。当然金がない。物がない。この時に、維新改革に、関わった。残党達が、乗り込んだ。・
・・金融業だ。国、指定の銀行じゃ。手続きとか。時間がかかる。其れを逆手にとって。民間金融業を創った。のが。根津頭取のグループだ。関東。関西を股にかけた。・・・金利は高い。でも、悪い事している訳では無い。成功した会社も多く有る。・・・潰れた会社も多く有る。其の潰れた会社の土地。・・・金を借りて、家を建てたが。返せなくなった土地。家。
悪く言うと、買収する。・・・その土地が。此の銀座。赤坂。港区。界隈に有る。その不整理が。まだ残って居る。更に、新日本銀行と言う、金融会社の資産は、幾ら有るか、誰も分からない。国税局も分からない。・・・日本一の金融頭脳を持った。会社の頭取だ。海外取引も有る。そして株式投資に力を入れている。一般の銀行より、手続きは緩和されていて、融資が早い。・・・現在は、国に登録して、正規な金融業だ・・・ママが気に成るのは。女性の問題でしょう。・・・女性には金を使う人です。今まで女性問題での。トラブルは、一ミリも、聞いた事が無い。・・・全て。金で解決している筈だ。・・・これも分からない。・・・でも、七〇歳。近いでしょう。でも。若いね。・・・私より年上だが。若く。見えるでしょう。人間としては。悪い人ではない。・・・取引は、譲らない。・・・のが、頭取の真骨頂だ。・・・此処だけの話だが。・・・若し、ママが、近づけるなら、チャンスだ。今。女性は。居ない筈だ。・・・資産は有る。・・・ 男は、誰でもそうだが。・・・やっぱり若い女性が良い、同じ金を使うなら。・・・
英雄色を好む。と言う。伝えが有る。モンゴルのチンギス・ハーンは。六〇〇人の女性を雇っていた。と言う。伝説がある。ママ。人生は、いろんな人と付き合って。楽しく生きた方が。幸せですよ。・・・それも、若いうちに。(女の盛りは短い)
帝国証券と丸中証券は、頭取の子会社です。・・・喋っちゃ。駄目ですよ。・・・これぐらいで、どうですか。・・・仲良く、遣りましょう。・・・銀座一に成れるよ。今決断すれば。・・・ただ、忠告します。・・・左妻には、成らない様に。・・・終わり。」
「えー・・・有難う。・・・分かりました。・・・ご忠告まで。有難うございます。」
二人は、別れた。五時半だ。順子は、店に急いだ。十分前に着いた。全員居た。弘子達に会った。皆で、準備していたようだ。お寿司も並べてあった。ボトル。ワイン。シャンパン。全部そろっていた。
「八階で私の傍に居てね。五人。」弘子に言った。
「はい。」ジョンさんが来た。
「ママ。・・・もうすぐ来るよ。全員。」順子はる手振りで。ジョンさんに、伝えた。分かったようだ。
「ハロー。・・・」入って来た。七階と八階に分かれた。順子たちはジョンさんの傍にいた。・・・五人の人達と合わせた。オッケー。だ。・・・すると。ジョンさんが。テープレコーダーを、出して。ジャズをかけた。ボリュームも上げた。ママは、七階に、行った。やっぱり。テープレコーダーで。ジャズをかけて居た。ママは、内装会社に頼んで、床にシートを敷いていた。正解だった。シャンパンを。抜いた。上には飛ばさないけれども。下に漏れていた。皆自由に、振る舞って居た。殆ど。一メートル八〇センチを超えている人達だ。ホステス達も楽しそうに、乗り、乗りで振る舞って居る。時間も早く過ぎた。もう解散の時間だ。ママはジョンさんに、その旨を伝えた。そして解散に成り。弘子達は、ホテルを書いた。メモを貰っていた。皆それぞれ自由に帰った。ホステス達も自由に帰って、誰も居なくなった。すると、麗さんが来た。
「えー・・・どうしたのですか。・・・」
「私も、内緒で入って居たの・・・ごめんね。・・・後片づけ有るでしょう。」ジョンさんもびっくりして居た。
「この人。誰・・・」
「私の友達よ。・・・」麗さんを紹介した。
「本当。有難う。・・・」ホステス達は全員。出て行ったので。
「私は。こうなると、思っていたから。・・・順子。私は、プロよ。」
ジョンさんも手伝って、全部片づけた。一時間かかった。九時過ぎた。
「あー。・・・助かったー・・・」三人で、麗さんの。知って居る。近所のバーに行った。薄暗い。カウンターしかない。
「順子。この人。アメリカ人・て。」
「そうです。今日の、パフォーマンスは、全部、ジョンさんのプロデュースね。」
「そうです。有難う。」
「そう。なんだ。・・・ごめんね。割り込んできて。」順子が。
「良かった。麗さんが来てくれて。・・・ジョンさんをどうしようかと。考えて居たの。・・・こんな素敵なお店。・・・良いね。」順子も気に言ったようだ。静かで。ゆっくりするには。良い場所だ。
「麗さん。・・・ジョンさんが。日本の会社を、紹介してください。と言う。ので。十一月三日まで、滞在しているの。」
「そうですか。・・・何を造る会社を。」
「コンピューター内蔵を造る会社。だって。・・・目星は有ります。・・・明日、電話しようかと。・・・思っていたから。」
「下請け。・・・」
「そう。らしい。・・・だから、私も、通訳で。・・・ジョンさんは。日本話せるけれど。文章が。読めないの。・・・」
「へー・・・凄い。順子。」十一時だ。三人は、別れた。順子は、シャワーを浴びて、直ぐ寝た。
二十八日。朝、十時。リリリリ。電話が鳴った。
「もしもし。ママ。弘子。今ホテル、出るの。ライオンで会いませんか。
「はい。・・・良いよ。まだ支度していないから。・・・少し、時間かかるけれど」
「はい。私達は、行って居ます。」電話を切った。順子は、直ぐ支度をして、ライオンに向かった。入った。弘子が、手を上げた。
「ご苦労さんでした。・・・」順子は、お礼を言った。
「ママ。・・・凄かったの。・・・楽しかった。有難う。」五人とも、喜んでいる。
「良かったね。・・・気にして居たの。・・・どうしているかな。て。」
「大丈夫よ。・・・今日もね。・・・病みつきになりそう。」
「駄目よ・・・病みつきに。成ったら。・・・」
「冗談ですよ。・・・でもね。・・・ママにお礼を、言いたくて。」
「良いのよ。・・・私を気にしないで。・・・今日と明日。頑張って。」やっぱり。お金か。・・・しみじみ、考えさせられた。順子は、家に帰り三社に電話した。十一月一日。一時に、ジョンさんが宿泊している。ホテル・ニュージャパンで会うことにした。
※フューチャー・ジャパン。
※大森部品
※スミダ・ケミカル
この三社を、スティーブン・ジョンさんと、会うことに成った。
一〇月二十八・二十九日、のアメリカ人との。パーティーは、無事終わり。三〇日の朝。十時に、電話が、入った。弘子達だ。ライオンで会うことに成った。順子は、支度してライオンに行った。
「ママ。・・・」手を上げた。順子も座った。
「ご苦労様でした。・・・疲れたでしょう。・・・」
「疲れました。・・・でも楽しかった。・・・」
「ママの。御蔭で、・・・皆。・・・十五万円。だった。でしょう。・・・それがママ。」
順子は、一瞬。ドキっ・・・とした。
「え。・・・何か。有った。・・・」
「うん。・・・それが。皆。全員。二十万円。づつ。貰ったの。・・・どうしようかと。」
「えー。・・・二十万円。・・・良かったねー・・・」
「だから。・・・ママに。一万円。づつ。上げようかと。思って。」封筒を。出した。
「何。言っているの。・・・そんなの要らないわよ。・・・あなた達のお金でしょう。私の事は、考えなくて。良いのよ。・・・貰っておきなさい。」
「でも。・・・こんなに。・・・じゃ今日。此処。奢ります。・・・」
「それなら頂きましょう。」五人で。一杯。頼んだ。ワインを皆で飲んだ。
「これ美味しい。・・・初めて飲んだ。・・・」嬉しそうだ。皆。初心な人達だ。私もそうだが。でも落ち着かないと。順子は、ママのふりをして、皆を景気づけた。
「良かったね。・・・でも皆。体は、大事にしないと、いけないよ。・・・」
「分かって、居ます。・・・ママ。・・・今回は、ママが居たから。抵抗が無かったの。・・他の人じゃ。・・・断ったよ。・・・ね。皆。」弘子は、ママを持ち上げた。
「今後とも。ママ。宜しく。お願いします。」
「大丈夫よ。皆で力を合わせれば。・・・今回のように。・・・でも、こう言う事は、此れからは、・・・無しにしてね。」
「はい。分かりました。・・・あとね。・・・凄い話が有るの。あの人たち。今度プロバスケットの、選手に登録する。て。・・・そして、契約金が、日本のお金で、一千万円。貰ったらしいの。・・・契約金が入るから。もっとお金がある。て。言って。いた」
「えー・・・そうですね。アメリカは。スポーツ選手は、高級取りなのよ。・・・」
「それでね。ママ。・・・今度、アメリカに、遊びにおいで。て。・・・切符買って。送ってくれる。て。」
「えー・・・全員。」
「そう。名刺。貰っちゃった。・・・でもね。三枚。三人。て、言うか。・・・訳分からない。・・・」
「ハハハ。・・・凄いね。貴方達。・・・アメリカへ行くの。・・・」
「分からないよ。・・・英語も出来ないし。・・・でもさ、初めて会ってさ。・・・怖いよ。・・・ママね。」
「そうね。・・・私も怖い。・・・無駄遣いしないようにね。」
「分かりました。・・・」皆で喜んだ。そして、今日は、お店を休むことにした。
「え。今日休み。・・・分かりました。」順子は、御馳走になって別れた。家に帰った。
そして、全員に、電話して、休みの事を、伝えた。通じなかった人には、お互い連絡し合って、伝えて貰った。店は。十一月一日から。通常通り。営業する。
十一月一日の朝。九時に起きて。掃除をした。一〇時に、寿司屋へ行った。
「こんにちはー・・・お寿司代金。支払いに来たの。二五、〇〇〇円。」
「いらっしゃいー・・・あ。どうぞ。」カウンターに座った。お客は居ない。マスターが請求書を出した。二一六〇〇円。
「多いですよ。・・・おつり有るよ。」
「良いです。・・・何時も、お世話になって居るから、時間も過ぎたりして。」
順子は、おつりは、取らなかった。そして。特上とワイン。アナゴの詩に焼き。とり貝刺身。を頼んだ。
「終わりましたね。・・・オリンピック。・・・男子の体操凄かった。金メダルで。女子は。銅メダルでね。・・・でも凄かった。
「あ。そうか。・・・ママは、体操していたから。気になる。・・・」
「え。見なかったの。」
「見ていたけれど。・・・はっきりは、憶えて居ないよ。・・・」
「そうね。・・・私も興味無いのは、忘れました。・・・そう。柔道は、皆さん。あれは技じゃないって。言って居たわよ。」
「あれは見た。・・・あんな、クジラみたいのが、被さった。だけの。事。でしょう。」
「でもね。一応。競技だから、審判が居て。・・・動けなければ、負けだ。もんね。可哀そう。柔道は。」
「良かった。・・・日本の選手達は、頑張って、メダルも三位だった。金・一六個。三か国が、今まで最高で、九四か国。・・・潤った人は、誰ですか。」マスターが言った。
「え。此処は。・・・」
「家は。・・・普通だったよ。・・・ま。ちょっと、ひげ、生えたぐらい。・・・ママとこは。・・・」
「家は。・・・一寸だけ。バスケとバレーの選手達。三日間。貸し切り。」
「えー・・・本当。・・・ママは、凄いな。・・・その若さで、三月に銀座に来て。運が良いのか。・・・実力でしょうね。・・・」
「え。・・・運ですよ。マスター。・・・考えても、私の実力なんか。・・・どう見ても、・・・無いでしょう。」すると、無口だった、奥さんが。
「あら。・・・ママ。実力ですよ。・・・だって、運が来ても、実力が無ければ、実行できないでしょう。」
「有難うー。マスター。ママが。・・・そう言って居ます。」
「そうだな。・・・家では、あまり喋らないけれど。・・・今。力が入ったね。」
「だって。ナイトクラブって。いっぱい有る中で。・・・凄いですよ。・・・アメリカのお金持ち。達が。だって、バスケットって。アメリカでは。最高級取り。なんだよ。・・日本円で。一億円。取っている人達でしょう。クラブが有って。野球も、日本の何百倍でしょう。・・・」
「えー・・ママ知って居る。んだ。・・・」
「週刊誌で、見ただけですけれどね。・・・随分。落として行った。でしょう。ママ。」
「えー・・・一寸だけ。・・・」順子は気分良かった。そして、タクシーで、
十一月一日。
ニュージャパンに着いた。一時少し前だ。皆着ていた。ジョンさんが、手を上げていた。
「あ。すみません。遅れました。・・・」
社長達も居た。ジョンさんのテーブルに行って。社長三名を、紹介して。名刺交換をしてテーブルを囲んだ。コーヒーを頼んだ。順子が。
「スティーブン・ジョンさん。を。紹介します・・・・オリンピックのボランティアで、家のお店に、来ました。そして、気に入って頂き。選手たちが、銀座のクラブで、飲みたいと言う。企画が組まれたそうです。其処に、家の店を、推薦して頂き、知り合いになりました。話しているうちに。仕事のお話になりました。ボランティア活動が、終わり次第。自分の仕事をする。と言う。話になり。仕事の内容を聞いたら。コンピューター内蔵の製作をしている会社で、日本で造りたい。ので。造ってくれる、会社を、知りませんか。と言う。事に成りました。そして、以前、名刺を頂いた。今日来ている。三人の、社長さん達を、紹介して上げようと、頭に浮かんで、電話で、申し訳ないですが。連絡をしたら。気分よく、受けて頂いて、此処で、ジョンさんと、あえ事に成りましたので、どうぞ。私は、仕事の事は、全然わからないので。どうぞ、ゆっくりお話ししてください。・・・新貝宜しくお願い申し上げます。」順子は、上がった。
「有難う。順子ママ。・・・今お話し。してくれた。通りですが、・・・日本語、片言話せますので、喜々津らと思いますが。・・・パンフレットを差し上げて、お話しします。」パンフレットを皆に上げた。いっばい、有る。
「アメリカでは。今。コンピーターを小さく。コンパクトに作っています。其処で私は。特許を取得しました。要するに内臓のシステムです。・・・ただ、今日は、パンフレットを、持ち帰って、造れるか、造れないか。何処が分からないか。様々なご検討が必要です。ので。解答は。アメリカに文章で送って頂きたいのです。・・・足りないものは、提供します。試作品は、会社に有ります。本日は、我々と共同企業体に、成って頂くか。を。知りたいのです。持ち帰って検討をお願いします。」一人の社長は、
「私どもも、小さく成って居ることは、承知していました。パーソナルコンピューターと。聞いております。」
「オーケイ。・・・その通りです。・・・大変な仕事です。其れは分かっています。私は。先取りして、進めたいので、細かい仕事の、日本に、頼みたいのです。」
「そうですね。・・・答弁期間は、何日ですか。・・・」
「オーケイ。良い質問です。・・・期間は、有りません。と。言っても。限りがありますね。・・それでは、一か月間。では。如何ですか。・・・ただ。作れるか、どうかです。・・・本気で参加できる会社は、私の会社に、講習に来て頂きます。・・・」
「そうですか。特許を取得している。・・・」
「はい。そうです。・・・パンフレットをみて頂いて。ご検討ください。・・・細かく書いてありますので、ご理解頂けると、信じています。」
「分かりました。ご検討させて、頂きます。」皆は、コーヒーを飲みながら、話している。ジョンさんは。順子に、何か話して、帰った。皆も後で、回答する。と。言って帰った。ママは店に行った。まだ五時だ。飲み物と、つまみを点検して、頼んだ。そうじをしていた。今日は。給料日だ。ママが来るはずだ。そうじを終えて、金庫を開けて。帳簿を見ていた。此の金庫は、私と美江ママしか、分からない場所にある。現金が入って居るから。店に保管してある。出していた。数えた。帳簿と照らし合わせている。
ドアが開いた美江ママが来た。
「お早う。・・・順子さん。・・・」
「はい。・・・ママ。・・・今。帳簿、点検していたの。」
「はい。ご苦労様です。・・・」
「はいどうぞ。・・・」ママに見せた。・・・
「順子ささん。・・・本当に。・・・ま。有難う。・・・三百万円。・・・売り上げ。」
「はい。・・・それに。女の子達。一人。四万円です。・・・」
「今月は・・・一人。五万円。・・・上げてください。」
「分かりました。・・・三百万から、百万円引いて。残り。二百万円です。・・・」
「え。順子さんは。・・・」
「私は、前日。五十万円頂きましたので。要りません。・・・」
「え。・・・駄目でしょう。あれはあれで。・・・」
「いいえ。・・・大丈夫です。ママ。・・・全部受け取ってください。」順子は、突っ張った。美江ママは。
「そうですか。・・・それでは、頂きます。・・・本当にご苦労さんです。」頭を下げた。
「美江ママ。・・・ただ。今月は、・・・オリンピックが。有ったからですので。その点をご理解ください。・・・これからの。売り上げは、ちょっと、減る。かもしれません。・・・」
「そうね。・・・分かります。・・・でも有難う。これからも宜しく、お願いします。」美江ママが、こんなにお礼を言うのは。今まで無い事。だった。美江ママは帰った。女の子たちが来た。八階に集めた。
「皆さん。本日は。給料日です。・・・皆さん。均等です。・・・」順子は。一人づつ袋を渡した。
「ママ。五万円。入っています。・・・」
「はい。・・・一万円は、お手当です。・・・受け取ってください。・・・」
「えー・・・有難うございます。・・・」全員、頭を下げた。
「良いのよ。皆に、頑張って頂いたから。御礼です。・・・ところで、アメリカ人は、どうでした。・・・感想は。」
「はい。・・・良かったです・・・あのジャズが。・・・好きに成って。レコード買っちゃった。」
「私も。・・・なんか、店の雰囲気に合いましたので。・・・」
「でしょう。・・・私も、ジャズが好きになりました。・・・これから、お店で流しましょうか。・・・ジャズを・・・」
「ママ。良いですね。・・・」皆が喜んでくれて。良かった。一安心だ。皆それぞれ自分の仕事に戻った。弘子が来た。
「ママ。明日から、私達五人で、お店の開店前に。掃除をやらせて下さい。」
「えー・・・本当。・・・助かるはー・・・じゃお願いね。・・・私も来ますので。鍵を開けないと。・・・」
「はい。お願いします。」
次の日。十一月二日。
弘子達が店の掃除をしてくれて。店を開けた。
ドアが開いた。
「いらっしゃいませ。・・・」社長達三人だ。
「昨日はどうも。・・・ご苦労様でした。・・・どうぞこちらへ。」奥の三番テーブルに、セットした。女子達は、呼ばない。ママと四人だ。
「ママ。・・・凄かったですよ。アメリカの社長。何故。知って居たのですか。・・・」
「え。・・・色々繋がりが有る。んですよ。・・・」
「素晴らしい人です。アメリカでは、有名です。・・・やはり、特許で知られたみたいです。・・・」
「そうですか。・・・まだ、若いでしょう。あの方。・・・三十ちょっと。かな。」
「そのようですね。・・・あれから、三社それぞれ、夜中まで、全員で検討したみたいで。わが社も、夜中まで、今日も、一日パンフレットを見ながら・・・社員が興味を持って、ぜひ遣りたいと言う。結果が出た。んですよ、三社とも。・・・したがって、三社で、新会社を立ち上げて。・・・対応しようか。と言う。結果です。」
「そうですか。・・・ジョンさんは、明日帰ると言っていました。・・・でも、もう少し過ぎてからの方が。・・・今直ぐでも無い様だし。・・・今言った内容を、アメリカに文章で、送って見ては。・・・製造講習をする。と。言っていましたから。アメリカへ行く様に、成るでしょうから。」
「ディスクトップって。家の社員が言って居ました。机の上に置ける。昔のテレビ型
みたいに小さく成る。って。・・・知って居たようです。・・・箱と言うか。本体。キーボード。マウス。・・・精密な部分と。プラスチックの容器を造る部分。工程があるみたいで。・・・三社集まれば、全て対応できます。」
「そうですか。・・・アメリカとしては、一社に纏めて頂いたほうが。取引に対しては良いと、感じます。・・・私は、素人ですけれど。」
「そうです。ママ。言う通りです。・・・流石。ママ。機転が早い。」
「え。・・・素人が口出す場面ではないから。・・・ただそうかなって。」
「じゃ。・・・文章で送って、見ましょう。・・・とにかく。ママ。日本では誰も知らない事だから。・・・纏まるように。ママからも。伝えてください。・・・でもね。資金が。・・・三社で。・・・どうですか。社長達。・・・三人で、顔を見合わせた。・・・新日本銀行が。・・・堤社長に言えば。・・・そうだね。資金繰りは大丈夫でしょう。」
順子は、頭取の出番だ。脳裏を過った。・・・やっぱりお金だ。店も順調に繁盛している。ジョンさんは帰った。其れから一週間が過ぎた。
順子の家に。アメリカから電話だ。出るか。出ないか。言われた。出る様に伝えた。ジョンさんだ。
「もしもしママ。ジョンです。・・・文章届きました。・・・やる気十分ですね。私も、一つに纏まれば、良いですね。・・・だから。会社を創って。アメリカに来て頂きたい。と。伝えますので。ママからも、お応援お願いします。」
「ハイ解りました。私も頑張って、応援します。」順子は、社員に潜り込めるかもしれないと。感じた。
十一月十二日。
「お早う。・・・」ドアが開いた。
「いらっしゃいませ・・・」ママが出た。
「あら。・・・早い。・・・どうぞ。」奥の三番席にセットした。頭取だ。二人だけで。話していた。ママね。今度の土曜日。箱根の強羅と言う温泉がある。・・・
強羅のタクシーで、「大和証券・寮」の傍の。東京の人の別荘。と言えば直ぐ分る。
其処に私の別荘がある。んですよ。其処に来てくれないかな。順子ママ。・・・今後の話をしようかと。考えて居る。・・・」
「えー・・・どうしました。」順子は、惚けた。すぐ返事をしたならば。軽く見られると、勘が。言っている。
「うん。・・・実は。・・・色々。私の、終い支度。を、考える様になってきた。・・・要するに。遺産の事。んなだが。・・・子供が居ないですよ。家内一人だけで。・・・急だと、どうにもならいんで。・・・」
「そう。なんですか。・・・一寸。待っていて。・・・」順子は。何も書いていない、手帳を広げて見ている。十五日。土曜日。・・・開いています。」
「自。来て、くれますね。・・・低い声だった。」何か、何時もと違った、感じだ。此れは、頭取は、下手に出て居る。チャンスだ。
「何時まで、行きますか。・・・」メモ帳を入れた封筒を、私にくれた。電話番号。地図。小田急線。新宿発。指定席番号。箱根湯本駅降りて、箱根登山鉄道に乗り。終点強羅駅で降りる。タクシーに乗る。・・・玄関の、門構い写真、家、屋敷の写真。辺りの風景写真。此れを見れば、全部書いてある。切符も入っている。
「はい。・・・分かりました。・・・」頭取は帰った。
ドアが開いた。
「いらっしゃいませ。・・・」ママが出た。
「あら。テレビさん。・・・」
「ママ。テレビさんは、無いでしょう。・・・ハハハ。」
「ごめん。つい。・・・出ちゃった。・・・どうぞ。何名様ですか。」
「この前の、三人です。」奥のテーブルにセットした。
「どうでした。・・・オリンピックは・・・」
「全然ですよ。・・・家なんか。・・・あなた達が宣伝してくれないから。」
「そう。・・・なんか、駅のポスターに、出ていたらしいよ。」
「分からない。・・・駅とか街を歩いたことが無いから。・・・私達は、昼間は、寝ているのよ。・・・だから、何も出来ないの。・・・知らないし。・・・」
「えー。・・・出て行くでしょう。買い物とか。」
「はい。買い物は、行きます。・・・でも、三越位かな。」
「ひとの、出入りが凄かった。東京駅全部が。パニック状態だった。・・・混雑で。」
「本当ね。テレビで見ました。・・・でも金メダル。十六個も、取って。世界三位で。」
本当に景気が良く成るのかな。ママも少し、しょぼん。としていたら。
「ママね。・・・今度、芸能界の人連れてきますよ。・・・その人はね。必ず貸し切りにするよ。」
「本当。・・・お願いします。・・・何時。・・・」
「忙しい人だから。・・・分からないけれど。・・・俳優さんらに紹介してくれますよ。」
「有難う。期待して待って居ます。」人付き合いが、良いような感じに見える。外を回っているせいかな。毎日のように芸能関係者を、追いかけるそうだ。賑やかで帰った。店も終わり、皆帰った。順子も家に帰った。食べ物がない。寿司屋へ行った。
「こんにちは。・・・」空いている。カウンターで、何時もの。頼んだ。麗さんに電話した。
「麗さん。何している。・・・寿司屋さんに来ますか。・・私は、今、入ったの。」
「麗さんが来る。て。」
「マスター。・・・景気良く成りますかね。・・・オリンピック後は、景気が良く成る。って。テレビでは、大騒ぎして。」
「でもさ。・・・テレビは、世の中を煽るだけだから。・・・ある程度煽らないと。政治家は。動かないから・・・」マスターも、世の中を気にする人だ。
「こんばんは。・・・」
「いらっしゃい。・・・毎度ー・・・」
「チャット。早いじゃない。」
「はい。・・・暇でね。早く締めた。・・・一日。給料だったの。・・・計算したら。三百万円。超えた。」
「えー・・・凄い。じゃん。順子。・・・それで美江ママは。」
「喜んでいた。・・・だから。麗さん居た時。五十万円。頂いたでしょう。・・・だから今回は、要らない。って。断ったの。」
「え。・・・そうか。・・・其処が、東北人の良い所ねー・・・ま。良いか。焦らないで。・・・本来は、貰っても、良かったよ。・・・でも、貸しを作ったから、よしで、良いか。・・・今更ね。でも今月は。五十万円でしょう。」麗さんが。・・・順子は、はっ。と。気づいた。
「マスター。・・・順子ね。今月。五十万円。だって。・・・給料。」
「あー・・・・麗さん。・・・」
「良いのよ。順子。・・・マスターは。・・・」
「本当ー・・・凄いなー・・・それにしても。」奥さんも。
「へー・・・夢みたい。・・・」
「今回は、・・・アメリカの、バスケとバレーの選手達。六十人。来てくれたの。三日間。貸し切りで。・・・」
「え。・・・順子ママ。昨日言わなかったよ。・・・」
「はい。・・・麗さんが。・・・」
「そうか。順子ママは。・・・しっかりしているから。・・・」
「えー・・・それじゃ私が。しっかりしていない。て。言う意味。・・・」
「まーまー。飲んでください。話の流れで。麗さん。・・・」
「でもね。・・・順子は、頑張り屋。なんだ。・・・頭良いのよ。マスター。」奥さんが。
「そうね。・・・やっぱり輝いていますよ。・・・目が光って。・・・」
「皆さん。・・・どうしたの。・・・そんなに褒めて。・・・そうでも無いですよ。ただ流されているだけ。」
「もう。順子に奢られているの。・・・逆に成っちゃった。・・・寂しい。」順子が、低い声で。
「麗さん。・・・今度の、土曜日。箱根に行くの。・・・ほら。別荘。・・・麗さんに内緒に出来ないと。思って。・・・」
「え。・・・良かった。じゃん。・・・順調ね。作戦は。・・・でもね。これからは、私に内緒で。良いからね。私も順子を、付き纏って。要るわけじゃ無いから。内緒で良いのよ。・・・うまく行くから。・・・困った時だけ、私に言って。」
「有難う。・・・何時も気に成るから。」順子は、目頭を熱くしていた。
「自由に羽ばたいて。良いのよ。・・・順子。・・・」
「有難う。・・・」麗さんが居なかったら。此処まで。来れ。なかったから。気に成るのは当然だ。順子は、何時も謙虚さが、表れる。
「今日は。お寿司。美味しいね。・・・いっぱい食べた。・・・ジユン子は。アナゴの白焼き、好きね。何時も頼む。」
「お塩で。美味しいの。・・・私は、山育ちで、海を見た事無いの。・・・海水浴した事無いし。船も見た事無い。・・・本物の。」
「そうね。・・・海はあまり知らないね。・・・でも、ウナギは食べたね。・・・順子のおじいさんが、ウナギ取りの名人で、何時も、貰って食べていた。」
「へー・・・ウナギ。・・・」
「ちょっと広い川で。石がごろごろあって。・・・滑ったりして。其処にウナギがいたの。・・・でも、取るのは、夜中に行くの。昼間は、穴に潜って居て、夜に餌を探しに出て来る。んだって。」
「えー・・・そうなの。順子。・・・」
「そう。なんです。・・・一度、ついて行ったことが有るの。・・・滑って転んで。でも楽しかったよ。・・・暗いけれど、水が光るの。お月様で。」
「あー。そうか。・・・水が鏡に成る。んだ。・・・」
「環境は、良いよね。・・・ただ時代に遅れちゃいますよ。・・・今は。昔なら、日本の何処と、言ったって、分からない。・・・現代は、情報が。直ぐ流れるから。・・・場所を探しながら、生きて行く。・・・こうして、東京に住んだら、田舎へは、帰らないですよ。・・・私なんか、来た時から、絶対。田舎には住めない。て。決めていたから。」
「私も、考えて居るの。・・・田舎には帰れないな。て。」
「マスターは、東京でしょう。・・・」
「そう。此処です。築地で。地元です。・・・友達もいっぱい居たけれど。・・・居なくなったね。引っ越して、行ったみたい。・・・ほら。良い場所。山の手。・・・此処は、どぶ。臭くて、・・・上流からの下水で、川が汚れて、・・・・私らは、商売しようと、しているから。何処へも引っ越せないでしょう。」
「へー東京でも、有る。んだ。」順子は麗さんに話したので、何となく、気が晴れた感じで、気分が良かった。順子が精算した。帰って寝た。
※十一月一二日。
六時にお店に行った。弘子達が居た。ドアを開けて、皆で掃除をした。全員集まった。そして土曜日。日曜日は。ママの都合で、休むことを。伝えた。了解受けた。
「お早う。・・・あら。」ママが出た。社長達三人だ。三番席にセットした。
「いらっしゃいませ。・・・」乾杯して、飲み始めた。小林広。渡辺正幸。鈴木一郎の三人。
「ママね。この度。共同で会社を立ち上げました。やっぱりアメリカの仕事を遣りたいと言う。社員たちの。声が多くて。精密機器製作所・「ジャパン、ケミカル株式会社」 代表取締役・鈴木一郎。取締役・渡野辺正幸・小林広。と言う。会社です。・・・アメリカには、送りました。」
「あら。早かったわね。・・・家にも、十二日に電話がありまして。・・・ジョンさんの会社でも、検討した結果。新会社を創設して下さいって、伝えてください。って、言って居ました。・・・ちょうど良かったね。・・・だからアメリカに視察と言うか。講習と、言うか。・・・行く様に成るでしょう。」
「はい。・・・それで、順子ママを、相談役に。成って頂きたいですが。・・・」
「え。・・・良い。んですか。」
「はい。・・・実は、・・・帝国証券の堤社長から聞いていたので、英検二級。取得している。と言うので。・・・これから、英語で解析する事が。出てきますので。是非、お願いします。」
「えー・・・出来るかしら。・・・ま。勉強すれば。何とか成ります。有難うございます。」
「今日。書類を持って来ましたので、書いて、私に下さい。・・・印鑑証明書と、謄本も、一緒にお願いします。」
「はい。・・・」順子は、書類を受け取った。
「じゃ。今日は、私の、奢りで、お寿司を取りましょう。美味しい所知って居ますので任してください。」順子は、寿司屋に電話して、特上大を一つ、なるべく早く。お願いした。
「本当ね。・・・とんとん拍子で。・・・皆さんと縁が有りますね。新日本銀行の根津頭取さんも、たまに、来ますよ。」順子は、融資の話が必ず出て来ると、睨んで、…くすぐってみた。
「そうですか。・・・頭取も来て居ますか。・・・」
「私が、七階にいた時。美江ママが、紹介してくれて、其れから。二三回。かな。」
「もしかして。・・・お世話に成るかも。・・・知れないです。」
「その時は。順子ママに。お強請り。するかも。その時は宜しく、お願いします。」寿司が届いた。女の子が持ってきた。
「はい。どうぞ食べて下さい。」
「おー。・・・凄い。初めてですよ。・・・豪華な寿司。」
「特上。だって。・・・食べて。・・・私が出来る事。あれば。なんでも言ってください。・・・英語、習わないと、いけないですね。・・・片言、話せます。でも、ビジネスは、難しいですよ。・・・おそらく、アメリカは、イエスか。ノーで。・・・決まりますから、・・・先を読まないと、遅れをとる。と言う。話を先生に聞いた事が有ります。日本は、何か、言葉で逃げる習性が有る。って。言って居ました。」
「そうです。確かに。・・・英語はママに任せて。・・・家の技術社員は、優秀なのが大勢。居ますから、大丈夫です。」
「そう。今の。社長の言い方で。・・・大丈夫です。と。大丈夫かもしれない。とでは。大分違いますね。・・・此の辺りですね。日本語。の逃げる癖。」
「そうか。ママ。分かります。・・・私らも使いますね。かもしれない。」
順子は、おおよその検討を立て始めている。・・・頭取を動かせば。必ず成功するでしょう。今日は家に帰って直ぐ寝た。十六日は、ちょっと買い物が有り、三越に行った。店も変わりなく、賑やかに終わった。家に帰り。明日の準備をした。明日は。新宿に行って。小田急線に乗る。新宿。・・・行ったことが無い。七時に目覚ましをセットして寝た。