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女帝  作者: 鈴木幸一
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第三話。ナイトクラブ「JUN」オープン。チーママに抜擢

 第三話 ナイトクラブ「JUN」オープン。(チーママに抜擢された)

 ※三月二十四日

 朝。十時に起きた。シャワーを浴びて、化粧をして、ソファーに座って居た。コーヒーの準備も、しておいた。麗さんが起きて来た。

「お早う。・・・シャワー終わったね。」

「はい。」麗さんは、洗面所に入った。順子は、コーヒーを入れて待っていた。

「あー。スッキリした。・・・順子。・・・洋服を、選んで、今日は早くいかないと。ママが、心配するから。・・・今何時。・・・十一時半か。・・・パン食べて、支度して。出ましょう。

「はい。順子は、冷蔵庫を開けて、パンを焼いて。ブルーベリージャム。カマンベールチーズ。ヨーグルト。生ハム。をテーブルに出した。二人で食べた。・・・直ぐ片付けて支度をした。洋服は麗さんが選んでくれた。

「今日は、此の、ブランドを着て行けば、大丈夫でしょう。・・・私は、此れを着て、・・・まっ。・・・良いでしょう。」支度は終わった。十二時に家を出た。八階だ。

「お早うございます。・・・」麗さんに続いて入った。順子は、真っすぐママの傍へ行った。

「お早うございます。」深くお辞儀した。

「あら。・・・お早う。早かったね。・・・何時。」一時だ。

「はい。順子さん。今日からは。・・・主役だから。引き締めて頑張ろうね。」

「はい。・・・頑張ります。」順子は、やる気。十分だ。気合が入っている。

「順子さん。・・・気合を入れ過ぎないように、気を楽に。心は引き締めて、誰でも突き当たる事ですから。」

「はい。」いろいろ、ママの手解きを受けて、歩いている。カウンターの中。棚の備品の並び方。ボトルの点検。つまみの点検。お手拭きの点検。レジの点検。等。隅々まで、細かな事を覚えておくのが。ママの役目だ。備品の置き場所。等。そしてママと、テーブルの、飲み物。グラス。取り皿。つまみの点検。も。終わった。

 麗さんが来た。

「ママ。しっかり整ったわね。・・・造りも素敵だわ。・・・若々しくって。近代的な色合いで。」

「はい。・・・有難う。・・・順子さんに、合わせたつもりなの。」

「そうですかー。・・・やっぱり。・・・若作りに見えます。」

「本当。・・・良かった。麗さんが。気に入ってくれて。」

「順子。・・・やり替えが有るね。・・・」

「はい。・・・」

「落ち着いてね。・・・それだけ。・・・慌てないで、どっしり構えて。」

 順子は、心臓が、ドキドキ。鳴って居る。女の子たちが、ゾロゾロ入ってきた。順子は、ママに、名簿を貰ってある。名前を呼んで、初対面していた。順子は、背が高いので一際、目立つ。ママもそれぞれ初対面している。三時回った。全員一列に並んだ。麗さんと、ママは、対面で、皆さんの服装を見ていた。細かい所を、チェックして、くれた。ママが、

「皆さん。いよいよ、本番です。・・・と。言っても、固くならない様に。・・・普通にして和気藹藹で、お願いします。本日の招待客は、二十名です。バラバラに入ってきますので、混雑は、無いと思います。」そして、順子が。

「皆さん。本日はご苦労様です。・・・私がこのような重責を、担う事に相成り、責任を感じている所です。・・・でも、皆さんが私以上に、落ち着いている様に感じます。今後とも。「JUN」の、発展に、力を貸してください。よろしくお願いします。」

 パチパチ、拍手が鳴った。ママも、感心している。皆、それぞれ、細かいことに、気を配ってくれて居るみたいだ。ドアを開けて置く。この、ビルディングは、ワンフロアー。一件だけなので、エレベーターから、直接入れる。他のお客とは、会うことは無い。・・・それがこの、ビルディングの。良い所で、人気がある。

「お早うございます。」お客さんが見えた。四人だ。席へ案内した。お客さんが座り、一番に、ママと順子が挨拶して、次のお客を迎える。皆は、そこに座る。テーブルが、三か所に分かれているので、それぞれ五、六人。づつ、座れるので、ゆったりした店だ。

「お早うございます」お客が、六人。テーブルへ案内した。ママと順子が、挨拶に行く。こんな展開で三日間、続く。今日は、リハーサルなので、此れで終了。

 順子が、「

「今日は、リハーサルですので。今日のお客さんは、ママの常連で、お友達です。ご苦労様でした。此れからは、ゆっくり召し上がって、帰ってください。」

「あれ。・・・リハーサル。だった。・・・本番みたいだった。順子さん。・・・流石。チーママだ。・・・良かったよ。・・・本当に。」皆に褒められた。

「チーママ。明日も、今日の、挨拶するの。」ママが。

「いえ。・・・挨拶は有りません。今日は、皆さんに挨拶した。のです。・・・明日は、座ってから。挨拶回りするので、改まった挨拶は、有りません。・・・どうぞ皆さん、今日は、ゆっくりしていって。下さい。」

「へー。凄いご馳走だね。・・・・美味しい。」

「そうよ。本番と同じよ。・・・でも明日は、お寿司を追加します。・・・お楽しみに。」

 皆。和気藹藹に成って。お互い打ち解けて話し合っている。

「チーママ。・・・出身は何処ですか。」順子は、脳裏を過った。また大学の?

「はい。福島です。・・・?」

「あ。そうですか。・・・私は、山形。私は北海道。私は宮城。」

「じゃ。皆さん。出身地。紹介してくれますか。」順子が言った。

「北海道。長野。新潟。東京。東京。青森。岩手。茨城。」

「有難う。・・・皆さん地方の方が、多いですね。」順子は、優しく言った。

「私は東京で、浅草です。・・・下町っ子、で。・・・でも銀座は、初めて、です。」

「えー。そう、なんですか。東京の人でも銀座は。あまり来ないです」

「そうよ。・・・だって。物価が。・・・物が。・・・私達には。・・・無理です。」

「そうね。・・・誰でも、買えませんよ。・・・一流のブランド品。なんか。」

「でもさ。・・・ずーと、見て居るけど。順子チーフ。て。・・・着ている洋服、ブランド品じゃないの。」

「あ。・・・はい。そうです。確か。フランス製。ディオール。グッチ。かな。」

「へー。良いなー。・・・お高いでしょう。」

「えー。それなりに。・・・でも、安い方ですよ。・・・ピン~キリまで。です。私のぐらいの、で。安い物も、有りますよ。・・・」九時だ。ママが。

「それでは、皆さん。お開きにしましょう。・・・明日。お願いします。解散した。ママと麗さんと順子は。残った。

「順子さん。有難う・・・素晴らしい挨拶でした。・・・」

「そうね。順子。・・・勉強している。のね。・・・ママ。此の子は、学校で生徒会長、長くやっていたから。・・・けっこう親分肌、なのよ。」

「えー。そう、なんですか。・・・それじゃ。・・・出来ます。ね。安心した。明日もね。」

 三人で、明日の段取りなど話し合って帰った。午後一時半ごろ、店に来る事に決めた。麗さんと順子は、家に帰って、お互いシャワーを浴びて、ソファーに座って、今後の事いろいろと話していた。十二時だ。部屋へ行って寝た。

 ※三月二十五日

 二人は、十一時に起きて、シャワーを浴びて、化粧して、冷蔵庫にあるものを食べた。そして、早いけれど。家を出て、一時前に店に着いた。

 一階のエレベーター入口の両端に、高さ一六〇センチ。生花二つを並べてあった。

 祝。新装開店。「JUN」企業名は、入っていない。

「お早う。・・・」ママが居た。

「あら。早かったわね。・・・」コーヒー飲もうか。コーヒーを入れてくれた。

「順子さん。・・・良いの、着ていますね。・・・」

「あ。ママ。・・・私のお下がり。・・・いっぱい有るから。・・・当分間に合う。わね。順子。・・・全部合うのよ。体系が同じだから。」

「はい・・・助かります。」

「良かったねー。・・・着る洋服がねっ・・大変なのよ。・・この世界は。お金かかるし。・・・特にうちの店は、明るいし。・・・ね。」三人で。店を点検していた。

「あ。そう。二日間はね。お寿司が来ますので。・・・乾きものは、袋に入っている、適当なもので、宜しいかと。・・・」

「はい。そうですか。」

「一テーブルに、大皿二つ、置いておけば、大丈夫でしょう。」

「お早うございます・・・」女の子たちがゾロゾロ。入ってきた。全員遅れないで来てくれた。

 三時過ぎだ。

「何か。お手伝いします。・・・」寿司が、運ばれてきた。各テーブルに、二皿。づつ。置いた。

「こんなに、大きい寿司桶って、有る。んですね。」びっくりして居た。

「有難う。・・・大体、終わりました。・・・けれど。・・・大丈夫でしょう。今夜は、二十名、位かな。宜しくお願いします。」

 準備万端。ドアを開けて、待って、皆待機していた。順子は、ホステス。一人一人に、挨拶していた。皆さん、洋服を新調してきたみたいだ。と言う事は。長く務めるのかな。順子は、心で、閃いた。

「お早うー・・・おめでとうございます。」五名。皆さん手土産を持ってきた。ママが、先頭で待機している。ご祝儀袋と、手土産を受け取って、順子に渡す。順子は、奥にある。金庫に祝儀袋を補完する。次々と、お客さんが入ってきた。

 一〇人座れるテーブルが。三席有るので、それぞれ、ゆったり、接待、出来る。次々にお客さんが来た。皆さん社長級の、貫禄ある、お客さんばかりだ。招待客。全員、来店した。(二十二名)

 順子は、心持。緊張している。順子は、次々と、名刺交換している。背が高いので一際目立つ。全員揃って、乾杯した。お客さんの代表が、挨拶してくれた。ママは頼んでいなかったけれど。

「えー。堤と、申します。・・・銀座は、日毎に、新しい店が誕生しています。そして、このような素晴らしい店が、又、誕生しました。本当に、おめでとうございます。此れも、美江ママのご尽力の賜物かな、と、感じます。高度成長期に入った。日本。・・・我々にとっては、無くてはならない。社交場で有ります。・・・

 そして、粒のそろった、お姫様の居る店は、銀座一、です。今後のお姫様たちの、ご接待に、期待いたしまして、御礼を申し上げます。」帝国証券、堤英雄、社長だ。パチパチパチパチ。大拍手。辺りは、ざわざわ動き出し、宴会となった。順子は、ママと二人で、お客さんを一回りした。堤社長が、手を上げて、順子を指名した。順子は、社長の隣に座った。五人で来たようだ。

「此処の、チーママに、抜擢された、んだって。・・・凄いな。・・・やっぱり、美江ママは、人を見る目が有る。ね。順子さん。ママを抜いて、銀座ナンバーワン。に成ってね。・・・」

「えー。有難うございます。頑張ります。・・・」小さくお辞儀をした。

「それから、チーママ。隣の四人。全員。それぞれ。新会社の経営者だから、日本を背負う、企業を目指して、頑張ろうって、言う、人達だから、交流も盛んになるので、常連さんに、成って頂くように、・・・皆さんー。この人がチーママだから。利用して上げて。・・・」すると。

「おー。・・・綺麗な方ですねー。・・・此れから利用させて頂きますよ。・・・社長の紹介だから。・・・」(フューチャー・ジャパン・小林社長)だ。

「宜しくお願いします。・・・」お辞儀をした。

 この店は、ボーイが居ない。何故ならば、全世界の、乾きものを入り直ぐって集めて売っている。問屋が有るので。直接買える。ので。シェフを雇う経費で、ずっと、高級感のある、おつまみです。銀座でもまだ。出回って居ない、商品です。ので、人気が出ると思います。・・・調理場は無いです。全て、チーママが、開店の前に準備しなければなりません。強いて言えば。此れが大変です。お客さんの好みを全て把握して、出すからです。今日は、社長達も難しい話は、しないようです。それぞれ女の子の、名前を憶えて帰るようです。

 時間は、八時を回った。そろそろ帰る支度をしていた。ママと順子は、ドアの外で、お礼を言って。記念品を渡した。お客さん全員帰った。

「はい。・・・皆さん。お疲れ様。」ママが。皆さん。此れから反省会。します。自由に座って、好きなもの、飲んで食べて下さい。残らないようにね。お寿司が、けっこう余りましたね。・・・ママが。・・・明日は・・・でも、豪華に見せないとね。・・・まっ。・・・良いか。一人呟いていた。

「残さない様に、全部食べて。女の子たちは喜んで食べていた。寿司は、高級な食べ物だと、知って居る。東京の人でも、一年に何回。食べられるか。だ。

 ワイン。ヘネシー。シーバス。レミーマルタン。等、高級な飲み物ばかりで、楽しい様子だ。十時だ。そろそろ終わりましょうと。ママが言って、皆、お土産を手に、帰った。麗さんと、順子も帰った。シャワーを浴びて、ソファーに座って、今日の話をしていた。

「順子。挨拶したのが。帝国証券の社長。・・・うん。・・・私も見た事。ある。・・・何となく貫禄がありますね。・・・オーラも有ります。・・・後の人達、四人。」

「はい。社長の知人で、新会社フューチャー・ジャパンを設立した人達。だそうです。・・・今後、常連に成ってくれる。って、言っていました。」

「そうですかー。・・・良いですね。・・・滑り出しが良いから。・・・明日もお楽しみだね。・・・順子。」

「はい。・・・」疲れたようだから。直ぐ寝た。

 ※三月二十六日

 二人は、十時に起きて、シャワーを浴びて。支度して、十二時に家を出た。

「お早うございます。」ママが居た。

「あら。・・・早いわねー。・・・お昼済んだの。・・・」

「えー。まだだけど。昨日のお寿司で、お腹いっぱいです。・・・お昼は要りません。」

「私も。そう。なんです。・・・じゃ、コーヒー入れましょう。」三人でコーヒーを飲んでいた。

「ママ。・・・順調ねー。・・・」

「はい。おかげさまで。・・・順子さんの評判。良かったです。も。皆さんに綺麗だ。って。言われて。・・・羨ましいでね。・・・順子さん。」

「え。・・・そうですか。・・・有難うございます。」

「今日も、麗さんの洋服。・・・素敵だね。」

「そうです。まだまだ有るのよ。・・・ところで今日の招待客は。何人ですか。」麗さんが言った。

「今日も、二十名です。皆さん今までの知り合いだから。・・・ゆっくりしてください。って。言ってあるから。普通のオープンと、違うでしょう。・・・普通は、ちょっと座って、帰っちゃうから。・・・今後の事も有るし、・・・」

「そうですか。・・・そうね。大勢来て、ガチャガチャ。騒がしいよりも、良いですね。チーママもゆっくりできるし、・・・普通は、バタバタして忙しいばかりです。ものね。・・・」

「麗さん。・・・昨日お寿司残っちゃって、どうしようかと。・・・でも。・・・余り寂しいと。何となく。・・・」

「うん。私もそう思ったけど。・・・ママと同じ考えよ。・・・今回は。・・・見え張っても、しょうがないと思います。・・・お金じゃないから。ママ。」

「有難う。麗さんは、何時も見方だから。・・・助かるの。・・・順子さん。」

「はい。・・・」話している時。お寿司屋さんが来た。

「お待ちどうー。」桶、六個を受け取って、テーブルに並べた。

「あら。そろそろ、女の子たち来るかな。」三人で、待っていた。

「おはようございます。」ゾロゾロ入ってきた。全員。揃った。

「皆さん、ご苦労様です。・・・本日は、二十名。超えるかも知れませんので、宜しくお願いします。」ママが挨拶した。そして順子が。

「皆さん。ご苦労様です。今日で御招待客は、最後です。・・・今回は様々な勉強させて頂きました。今後も皆さんと、共に。クラブ「JUN」を、盛り上げて行きたいので。今後とも、宜しくお願いします。」パチパチパチ。全員、喜んでいた。

 ママと順子は、ドアの外で待機している。お客さんが来た。十人だ。

「あら。・・・いらっしゃいませ。」ママが出た。順子は、御祝儀袋とお土産を、ママから受け取り。奥の金庫に入れた。そして順子は、一番広いテーブルに、お客を案内した。女の子五人を指名して、座った。

「おー。良い店だね。クドクドしていなくて、スッキリした感じで。」日本銀行の頭取・根津晃だ。

「美江ママ。・・・今日は、私は挨拶しないから。」頭取は、取引関係者たちに、支障をきたすので、控えめにしていた。・・・そして、三十分位で帰った。

 又、お客さんが来たようだ。順子は、ママの傍へ行った。

「いらっしゃいませ。」ママが出て挨拶した。六名の様だ。順子は御祝儀袋を受け取り金庫へ入れて。お客を案内して、女の子を指名して、座った。ママが来た。

「本日はご苦労様です。・・・六名も来て頂いて。・・・有難うございます。」挨拶した。ママのお友達だ。又、お客さんが来たようだ。順子が出た。今度は、七名だ。

「いらっしゃいませ。」ママが受け取った。

 ママが受け取ったご祝儀袋を順子は金庫に入れて、お客さんをテーブルに案内した。女の子と一緒に座った。

「本質はご苦労様です。・・・何時もありがとうございます。」ここの席は一寸広いので、全員座れた。女の子が、パラパラだけど、仕方ないと感じていた。

「これで、全員かな。」ママは、お客さんを数えた。三人多いけど、誰か。誘ってきてくれたのね。ママも順子も座った。改まって、全員で乾杯した。(二十三名)

「一言。お祝いを申し上げます。私は、佐野五郎(丸中証券社長) と言います。美江ママとは、長い付き合いです。中々やり手で、男勝りな、女性です。今回も、このような素晴らしいお店をオープンされて、意気ごみを感じます。更に、綺麗なホステス達を。抜擢されて、今後が楽しみです。・・・我々の、社交場として、利用していきたいと思っております。・・・本日はおめでとうございます。」パチパチパチパチ。拍手が鳴った。お互い好きな飲み物を、選んで、水割りなどを作って。上げた。り。お寿司を取って。上げて。和気藹藹で、盛り上がっている。

「ママ。・・・この乾きもの、凄い、旨いね。・・・しっとりして。・・・」

「でしょう。・・・アワビよ。手作りで、真空パックで。まだ、そんなに出回って、いないみたいですよ。・・・」

「でしょう。・・・初めてだよ。美味しい。ワインに合う。」

「此れも、とり貝。赤貝。ハマグリ。アサリ。牡蠣。ホタテ貝。ホッキ貝。からすみ。鮭。たこ。伊勢海老。車海老。魚類が、何十種類も、有るの。全て真空パックに、成って居るので、取り扱いが簡単で、味もしっかりしていて、美味しいのよ。・・・食べて。」

「おー。・・・旨い。素晴らしい。・・・此れも初めてだ。」社長達は、笑顔で食べている。ママも、此れが「JUN」の、売りなので、安心した。

「ママ。あの子、順子ちゃん。て、言った。け。・・・此処のチーママに、抜擢した、んだ。・・・良い子だから。皆の取り合いに成るね。・・・幾つ。」

「社長にだけよ。・・・誰にも教えて居ないの。年齢は。・・・二十よ。・・・」

「えー。ずいぶん落ち着いています。ね。・・・綺麗だし。さっきから、見て居るけど、十朱幸代。似だね。日活女優の。」

「有難うございます。御贔屓にして下さい。」ママは嬉しかった。順子は、三席を順番に回って挨拶している。評判は。絶好調だ。仕草も、麗さんに教えられ、機敏に、動いていた。麗さんは、店では順子と、話さない様に、している。ヘネシーとワインは受けて居る様だ。ヘネシーも、三ランク有るが、№一、ランクの、コニャック類を、置いてある。時間は、八時を回った。お客さんも、ソワソワしている。帰るようだ。順子もママも気づいた。ママはお土産を、準備して、ドアの所で待っている。ゾロゾロ帰る。

「お疲れさま、でした。」ママと順子は。丁寧にお辞儀して、お土産を渡した。全員帰って。順子は、皆を一つのテーブルに集めた。残り物も全部集めた。ママが来た。

「皆さん。三日間。ご苦労様でした。御礼を申し上げます。・・・皆さんの、ご給金です。」と言って。皆に封筒を渡した。すると、一人が、

「ママ。・・・此れ、私たちの記念品です。皆で出し合って、買ってきました。飾ってください。

「えー。・・・有難う。」ママは、開けて見た。「自由の女神のブロンズ像」だ。

「素敵だねー。・・・有難う。・・・」ママは一番目につく場所に飾った。高さ、六十センチ位有る。・・・残りの物で反省会だ。チーママが。

「皆さん。今日まで、お疲れさま。でした。十時まで時間が有りますので、ゆっくりして行ってください。・・・今後の事は、美江ママと、個々に話してください。」

 本格的に採用して居ないので、この場で、ママが交渉する。と言う。麗さんと順子は。此の事には、タッチしないことに成って居る。十二名居るので、何名残ってくれるのか。七階の子たち、二名は、数に入って居ないので。青森と。宮城と。順子。・・・麗さんは、少し離れたテーブルで食べていた。青森は。

「チーママ。・・・疲れたでしょうー。・・・気疲れが。・・・私には無理だわ。流石。順子さん。・・・お店の名前も良いね「JUN」って。・・・読めなかったよ。私。英語なんか分からないですよ。・・・良いねーチーママ。・・・大変だけど、皆の夢。なんですよ。この世界では、・・・私は良いのよ。此の儘銀座に居る。だけで、幸せなの。」

「「そんなこと無いわよ。何時どうなるか。分からないわよ。・・・順子を宜しく。ね。」

「はい。・・・でも。チーママは、綺麗だから。私なんか。・・・」

「そんなこと無いわよ。・・・じゃっ。落ち着いたら。お昼ご飯二人で食べましょう。」

「えー。本当・・・嬉しい。・・・これ、私の電話番号。よ。」青森は、メモを順子に渡した。

「あ。そうですか。・・・じゃ私も。」二人は。電話番号を交換した。ママが話していた。

「この店は、順子さんに、チーママを、任せてあります。今後は順子さんの指示で、運営することに成ります。私は、時々来ます。・・・オープンしたばかりで、先が見えて居ませんので、四、五、六の三か月間は、一日。一千五百円でお願いしたいの。・・・七月からは、一日。二千円に、上げます。今日は十二名居ますが、十名に搾ります。只、繁盛すれば、女の子を増やしていきます。二名様。洩れますが、次の機会が有りますので。待っていただければ、有難いです。出来る事ならば。此処で決定したいのですが。待っても良い。・・・方居れば、手を上げていただきますか。」ママは、静かに話していた。すると、二人。

「私たちは、学生なので、来春、卒業しますので、来年まで、待っていても、大丈夫です。」

「あ。・・・そうですか。・・・有難うございます。・・・じゃ。そんな事で、決めても宜しいでしょうか。

「はい。・・・」十人決定した。ママは、麗さんと順子呼んだ。

「今ね。務めてくれる人たち。決まったの。・・・この人たち、十人。です。」十人は、立った。順子チーママに挨拶した。

「宜しくお願いします。・・・」

「こちらこそ。・・・宜しくお願いします。・・・」深くお辞儀した。麗さんも、嬉しそうに見ていた。

「良かったね。順子。・・・」皆は、住所。名前。年齢。出身地。電話番号を記入してママに、渡した。後でコピーして、順子に渡すことになった。

「じゃ。此れ、残さないで全部食べて、行って。」皆で、座りなおして飲んで食べていた。九時を回った。後一時間有る。順子は、決まった人たちと、此れからの、夢などを話していた。ママと麗さん、二人は、女の子を順子に任せた儘。二人で今後を話し合っていた。そしてママが。

「明日は、お休みです。・・・明後日二十八日、七時より開店しますので、宜しくお願いします。」挨拶して。十時を回ったので、解散となった。麗さんと順子はタクシーで帰った。

「あー。疲れた。ね。・・・順子。・・・明日ね。ライオンでママと会う事に、なったので、十時に出ましょう。二人はシャワーを浴びて、寝た。

 次の朝、順子は八時に起きて、化粧室して。コーヒーを入れて飲んでいた。麗さんが起きて来た。化粧して、ソファーに座った。コーヒーを入れて飲んでいた。

「順子。今日は、此れからの店の運営、・・・お金の管理とか、給料とかを話すと思うので、あまり、欲を出さないでね。・・・ママも、まだ大変だと、思うので。お互い分かち合って。譲るところは、譲って行かないと、・・・順子は。まだ若い。んだから。一歩譲って、ね。」

「あ。・・・はい。其れは分かっています。まだまだ勉強する事ばかりですから、・・・成り行きに任せます。麗さんと銀座に居られること、だけで、満足しています。宜しくお願いします。」

「じゃ支度して、出かけましょうか。」二人は、支度して、家を出た。十分前ライオンに着いた。店に入って辺りを見た。手を上げていた。ママだ。テーブルに行った。

「どうも。お疲れの所。・・・順子さん。・・・本当にご苦労様でした。」ママが封筒を順子に渡した。順子は、三日の手当だと思って受け取った。

「それに麗さん。・・・にも。」ママは、封筒を渡した。

「良いのよ。・・・私は。」と、言ったが、受け取ってくださいと言うので、受け取った。麗華に一万円。順子に二万円。二人は、給金を貰った。

「有難う。・・・ママ。・・・沢山。頂いて。」

「良いのよ。・・・御祝儀が。予想以上に頂いたから。・・・気にしないで。さっ。私に任せて、」ママはボーイを呼んで注文した。飲み物が先に来た。取りあえず。ビールで、乾杯した。

「チーママね。此れからの給料の事で、・・・女の子たちは、千五百円で、チーママは、二千円で、手当を点けます。と言う事は、・・・客単価が、一人五千円なの、十人入れば、五万円でしょう。十人×千五百円=一万五千円。チーママが二千円。合計=一万七千円。ですので、残り三万三千円が店の運営資金に成ります。・・・箱代払って、仕入して、・・・プラマイゼロ。です。・・・したがって、一日六万円以上に、伸ばしていきたいの。其れに達成出来れば。チーママに、手当を配分します。五万円以上、一万円毎に、千円を配分したいと考えて居ます。(例、五万円=二千円。六万円=三千円。七万=四千円。八万円=五千円。)で、如何なものでしょうか。」

「えー。・・・ママっ。・・・無理しないで。・・・高給すぎます。・・・配分は、この数字の半分で、良いす。・・・まだ、遣ってみないと、分からないから。ママ。・・・私に、気を使わないで。」

「ママ。・・・私は、勉強のつもりで居ますので、給料の良し悪しは、考えて居ません。ので。女の子と、同じくしてください。・・・それで、良いです。・・・麗さん。そうしてください。・・・お店の継続が大事です。・・・継続は力なり。って。言葉が有ります。・・・手当の話は、五年後にして下さい。・・・だから、皆さんと同じく。決めてください。・・・」

「そうですよ。ママ。・・・皆と同じで良いです。・・・そう決めます。」

「えー。・・・だって。悪いわ。・・・麗さんには、何時も。」

「良いです。ママ。順子だって。・・・居辛く成りますよ。そんなに頂いたら。・・・ママ。決めてー。・・・皆と一緒に。・・・、順子。」

「はい。其れで良いです。・・・」

「分かりました。・・・じゃ、そのように。させていただきます。」ママは、深くお辞儀をした。大分喜んでいるみたいだ。順子は、一日千五百円で働くことに成った。・・・一か月、二十五日、働いて、三万五千円だ。大卒で二万円前後だ。給料としては、高級取りである。順子は、此れで満足している。決まった。ママは、大分、恐縮している。・・・継続することが、大事なことは、分かっていた。

「どうも。有難う。・・・麗さん。・・・今日は、飲んで、食べて。」ママは気分が良い。ようだ。三人は、一安心して、未来の話をしていた。

「麗さん。・・・日本は何処まで、発展する。でしょう。・・・そう。新幹線が開通しますね。・・・三人で、新幹線切符を、調達しなくちゃ。・・・」

「そう。なんですよ。ママ。・・・目ぼしい人。見つけて。・・・」

「はい。探しましょう。」順子は、新幹線の事聞いて、ワクワクしている。夢は、大きくはばたきたい。成功達成は、その次だ。三人は、分かれた。

 家に着いた。二人は、ソファーに座って、コーヒーを飲みながら、話している。

「順子。・・・私の言った通りでしょう。・・・ママが私に気を使って。・・・美江ママの言う通り頂いたら。順子は、金に溺れて、誰をも信用しなくなる。都会には、そう言う、成り上がりの人が、いっぱい居ます。・・・棚から牡丹餅が落ちる、と言う事も有るの、それを貰った人は。成功した人ではない。・・・有頂天になっているだけ。必ず滅びる。そういう人を、何人も、私は見てきているの。だから、順子。・・・色々な人と付き合って、打ち解けて。理解して、自分を磨いて、人格を上げれば、おのずと、お金は、入ってくるよ。・・・能力も備わってくるし。・・・そう言うのが、努力の結晶と言う。・・・順子。」そんな会話をしていた.

 二人は、シャワーを浴びて寝た。

 ※三月二十八日。(チーママ初出勤)

「JUN」に初出勤。順子は、麗さんと冷蔵庫に有るものを食べて。一時頃、家を出た。タクシーで行った。店を開けた。少し、昨日の匂いが、残って居た。ドアを開けて置いた。この店は、各階、一個だけなので、隣が無い。防犯もカメラが付いていて、非常ベルもドアの傍と中にも有る。侵入者が来たら、ドアを閉めて、中に逃げて、非常ボタンを、押せば、警備会社に通報される。警備会社は、銀座の繁華街に有るので、二、三分で来てくれる。防犯対策は、万全である。順子は、消臭剤で、隅まで掃除して。

 つまみの点検。果物、の点検。飲み物の点検。おしぼりの点検。椅子テーブルの、位地。グラスの点検。綺麗にしたら。消臭剤と容器を、隅の方に何か所か置いてある。足りないものは、電話で注文する。飾りに使用する生野菜は、果物屋さんが、持ってくる。外での買い物はしない。最後に、ごみを一階の入り口の傍にあるので。其処に入れる。朝一で、綺麗に掃除してくれる。ので、臭みは無い。

 そして皆の、名簿を作りたいの、だが、ママが来ないと、資料がない。でも準備だけして置く。・・・これで、よし。順子は、ソファーに座って。ゆっくり休んでいた。

 起きた。時計を見た。五時だ。うとうと寝たらしい。まだ、時間がある。・・・外へ出て、ウロウロ歩いてみた。ちらほら人が歩いていた。電通通りと、標識が立っていた。広い通りだ。画廊が有った。順子も絵は好きだ。展覧会には出したことは無いけれど、今まで、二、三百枚は描いてある。・・・でも、物置に入れて、有るので、破れているかな。六時を、回ったので直ぐ店に戻った。ママが居た。

「あっ。お早うございます。・・・」

「あら。来て居た。んですね。・・・いよ、いよ。ですね。・・・」

「はい。一時頃来て、掃除を済ませました。・・・」

「そうですか。ご苦労様です・・・・これね。女の子のメモ帳です。」順子は受け取った。

「十名ですね。・・・ママ。やっぱり地方の方たちが、多いですね。」

「そうね。・・・集団就職で来た人たちが。行くところが無くなって、来るのよ。・・・まだ、銀座には、高級感が有るので、警戒しているみたい。・・・新宿。池袋辺りは。多いらしいよ。でもね。危険が多いから、気を付けた方が。良いですね。」

「はい、そうですか。・・・でも、皆さん。良い感じに、思いました。」

「そうね。私もそう感じていたの。・・・宜しく、ね。・・・」

「おはようございます。・・・」女の子たちが入ってきた。ママも居たので。

「お早う。ご苦労様です。・・・」全員来た。全員ソファーに座って。チーママと対面に成った。・・・メモ帳を出して、名簿の点検をし、作成した。・・・高さ、六十センチ×幅40センチ。奥行三十センチ。重さ四十キロの、金庫が有る。其処には、店に関する全ての書類を、入れて置く事に成って居る。ので、そこに入れた。七時だ。順子が。

「皆さん宜しくお願いします。」と。お辞儀をした。ドアを開けて待っていた。ママは奥に座って居た。お客さんが来た。

「いらっしゃいませ。」チーママが先頭で、全員並んでいる。

「あら。社長。・・・先日は、ご丁寧に有難うございました。・・・どうぞ。」奥の席一番テーブル。に案内した。お客さん、五名。ママが居た。チーママは、五人指名した。

「あら。社長。・・・一番乗りで、来てくれたのね。・・・どうぞ御贔屓に。」ママが、高級ブランディー。レミーマルタンを出してきた。

「これ。一番乗りのお客様に、御祝儀です。受け取ってください。ボトルに入れておきます。」

「え。本当。有難う。・・・」受け取った。丸中証券の社長だ。いつも一緒の五人だ。ママは少し居て、帰った。チーママも座った。

「ママ。・・・此れから、大変だね。・・・応援するから、皆で。・・・皆さん。この人がママだから。・・・頼むよ。個人的に通って。やってね。」社長が、

「分かりました。・・・ママ。・・・応援するよ。」

「有難うございます。宜しくお願いします。」

「はい。・・・挨拶は終わり。・・・俺達も、ママと一緒で、此処から、始まる。第一歩だ。・・・お互い情報交換し合って、邁進しましょう。・・・改めて、乾杯。」宴会は賑やかになった。チーママが。女の子を紹介した。

「6・宮城県生まれ・花子。十九才」です。

「7・北海道生まれ・奈美・二十才」です。

「8・山形県生まれ・リカ・十九才」です。

「9・東京生まれ・美津子・二十才」です。

「一0・長野県生まれ・陽子・二一才」です。

「どうぞよろしくお願いいたします。」パチパチパチ。拍手を貰った。

「ところでチーママ。初めて、会った時。十朱幸代似だって、皆が騒いでいた。んですよ。・・・何処出身ですかー」順子は、ドキッと、来た。・・・。

「私は、福島県です。」

「あー福島。県。・・・俺は山形県だ。」一緒のお客さんが。・・・順子は、ホッとした。大学の事、言われたらどうしようかと、考えたからだ。

「山形ですか。雪国ですね。」

「そう、なんだよ。雪が、五メートルも、積もる。・・・だから、屋根裏から、スキー履いて、出る。んだよ。・・・大変だよ。学校まで三キロ、スキーで、・・・ほら。歩いたり走ったり、オリンピックで、遣っているでしょう。・・・あれだよ。往復。」

「えー凄いですね。・・・」すると、社長が。

「だから、この人は、粘りも有るし、根性も有るし、負けず嫌いだし。酒は強いし。熊みたいな。もんだよ。へこたれないし。」

「酒は、子供の頃から飲んでいたよ。・・・酒飲むと温まる。んだよ。・・・それ、憶えちゃって、・・・中学校二年の冬。だったな。」

「へー。親達に、叱られなかった。んですか。」

「うー。そんな、親父みたいに、ふらふらに成る位。飲まないから。母さんも何も言わなかったよ。女も飲んでいたから。・・・ママも、福島だったら、雪降るでしょう。」

「はい。降ります。・・・でも、五十センチ位ですよ。・・・学校休みに成るの。だから、嬉しかった。・・・でも、私は、新聞配達していたから、休めなかったの。・・・二十件分。・・・家が、点々に有って、何百メートルも、離れて居るから。雪の時は半日かかります。」

「えー。・・・本当ですかー。・・・あなたが、新聞配達。・・・分からねーな。聞いてみないと。・・・その痩せた身体で」

「えっ・・・これでも、ね。体力有るの。体操していたの。中高時代。六年間。」

「えー・・・これまた、びっくり。ママ。・・・じゃ。筋肉質。なんだ。・・・」

「はい。・・・一応、・・・県大会で、三回入賞しているの。四位。五位。六位。県の歴史には、入って居ます。・・・六位まで、歴史に残る。んですよ。」

「へー。・・・凄い。の。一言。」

「ハハハ。・・・損な、大袈裟ですよ。・・・遊びでやって居た。だけなの。・・・だから新聞配達は、凄い。運動に成った。・・・山。ばかりで。上り下りが。きついですよ。六年間。休まず。・・・お小遣いにも成るし。・・・良い事尽くめ。・・・でもね。自転車を二台。買ったから。・・・私だけ。喋っている。感じで。・・・」此処は、順子の話で皆、盛り上がった。

「良いですよ。・・・順子ママの、ピーアールで、・・・過去とか、生い立ちとか。で、良い、じゃない。」お客さんも聞きたがっていた。

 ドアが開いた。九時半だ。

「あ。・・・失礼します。」順子は、席を外して、ドアの傍へ行った。

「いらっしゃいませ。」八名だ。三番テーブルに、案内した。女の子がおしぼりを持ってきた。順子が挨拶した。帝国証券の社長だ

「先日は、お疲れさま。でした。・・・今日も、大勢で。いらっしゃいませ。」とりあえず。ビールで乾杯。ワイン。ヘネシー。レミーマルタン。三本。置いた。つまみも揃えた。

「じゃ。ヘネシー貰おう。」社長が、ヘネシーを開けた。順子ママも、水割りで頂いた。

「私は、初めてヘネシーを飲んだら。・・・美味しい。・・・好きに成っちゃった。」

「おー。飲める。・・・んだ。・・・じゃ。ママを、酔わせちゃおう。」

「えー・・・でも。あんまり飲めないの。・・・頭が痛くなって、フラフラしちゃうの。だから一杯だけなの。」

「そうか。・・・ま。慣れれば、飲めるようになりますよ。・・・でもさ。此れから、このスタッフで、行く。ん、でしょう。・・・粒ぞろいで、・・・皆さん綺麗な女の子ばかりで。・・・毎日来るようだね。・・・若いし。年齢は、聞かない方が、良いかな。」

「大丈夫ですよ。皆さん若いから、気にしないよ。ちなみに、私は、二十歳です。」

「名刺は、・・・写真が無いから。わからないね。」

「1・北海道生まれ。美輪。二十才。と言います。」美輪。

「あ。忘れて居ました。・・・今度。ドアの横に。全員の、写真と名前を書いて。看板として、張りますので。」順子が言った。

「おーそれなら分かります。初めての、お客さんは、・・・何名、居るのか、・・・顔も、分かった方が、入りやすいですよ。」

「はい、その通りです。」順子は、忘れていた。じゃ。皆さん紹介しましょうか。

「2・山形県生れ。冬子。十九才」です。

「3・青森県生れ。弘子。二十一才」です。

「4・岩手県生れ。律子。二十才」です。

「5・茨城県生れ。里子。二十一才」です。

「チーママは。」

「え。福島県。順子。二十才。・・・です。・・・皆さん、若いでしょう。・・・」

「へー・・・此処の店は、銀座では珍しいですよ。・・・殆んど、年季の入った、女性ばかりですよ。・・・他の店は。・・・直ぐ噂に成りますよ。順子ママ。」

「えー有難う。・・・そう。なんですか。」

「それはそうですよ。・・・ぴちぴちした。若い女性の方と、こうして、話せるのが、我々叔父さんの、望みですよ。」

「有難うございます。・・・どうぞ、大勢の方に紹介してください。」お客さんは、やはり、年齢とか、名前とか。出身地を、気にするようです。もう十一時に成り。順子は、一番テーブルに挨拶して、御礼を言って、閉店の旨を伝えた。皆さんが、カードで支払うようです。順子は、会計を済ませ。出口で、お土産を渡して。お辞儀をしていた。

 そしてホステス達にも、御礼を言って、お土産をあげた。又、明日。写真を持ってくるように、頼んだ。明日は、写真を張る。額を買って来る、のを、忘れない様にする。店を閉めて、全員帰った。家に着いた。麗さんがテレビを見ていた。

「只今。・・・」

「はい。お帰り。順子。ご飯。未だでしょう。」

「はい未だです。」麗さんは、テーブルに、箱が、用意してあった。・・・箱を開けた。弁当とつまみが、入って居た。どれでも、好きなもの、食べて。順子と麗さんは、今日の反省を話していた。

「麗さん。今日は、初日なのに、十三人も来てくれたの。・・・五人グループと八人グループ。・・・」

「えー。・・・凄いね。」

「そう。なんです。七階のお客さんだけどね。・・・でも、初めても人も居ました。」

「やっぱり。・・・あの社長。・・・ほら。・・・証券会社の。」

「そうです。二組とも。」

「そうか。・・・証券会社。・・・やっぱり、株ね。・・・順子。」

「はい。・・・私も、そんな気がします。・・・でもね。不動産会社の社長を連れて来る。って。帝国証券の社長に、言われました。」

「あ。そうー・・・不動産。・・・も。先行き、明るいみたいだね。新聞に出ていた。オリンピック後。東京近辺。郊外が、住宅開発がどんどん進むって。更に、スポーツも盛んになって、各企業が自社グランドを持つようになる。って。」

「へー。新聞ですか。」順子は、あまり新聞を見ないようだ。〇時を回った。二人は、シャワーを浴びて寝た。

 ※三月二十九日

 朝、九時に起きた。一緒だ。

「順子。先に化粧室。済ませて。」

「あ。はい。」順子はシャワーを浴びて、化粧して、出て。麗さんもシャワー室へ入った。順子は、新聞を見ていた。(新聞は、玄関ドアの、前に置いて置くように、頼んである。)

 経済新聞は、見慣れないと、とこを見たら良いか、分からない。株銘柄のページが有った。帝国証券。丸中証券。会社名が載って居た。あ。・・・これだ。・・・でもまだ分からない。順子は、コーヒーを入れて、麗さんが来るのを待っていた。

「あー気持ち良いー。・・・あら、新聞見ていたの。」

「はい。・・・でも、分からない。」順子は。コーヒーを飲んでいた。

「順子。・・・一度。帝国証券の、社長に。・・・株の手解きを、教えて頂きましょう。・・・教えて貰わないと、無理です。・・・今直ぐで、無くても良いから。機会を、見計らって。」

「はい。・・・私も、今、新聞見て、分かりました。・・・でも、本読んで、勉強はします。・・・何か、分かると思いますので。」

「順子。今日は、ラーメン食べに行きましょう。・・・市場に美味しい店有るの。」

 二人は、支度して家を出た。十分位で着いた。・・・ラーメンを食べて、場外市場を散策した。順子は、初めて見るものばかりだ。四時ごろ家に帰った。ソファーで、横に成った。テレビを見ているうちに、うとうとしていた。・・・目を覚ました。時計を見た。

「え。六時だ。順子は慌てて支度して、家を出た。店に着いたのは、七時一〇分前だ。まだ誰も来て居ない。でも直ぐ来た。

「お早うございます。」ゾロゾロ来た。

「ご苦労様。・・・」皆、若いせいか、元気だ。

「チーママ。・・・写真。持って来ました。全員、出した。

「はい。有難うー・・・大きい額縁。美江ママが、用意して置いたらしい。・・・どこかに、有る、筈です。」探したら、有った。

「有りました。・・・此処に張りましょう。・・・番号順に張ってね。写真の下に、名前を書いて置いてください。」皆で造った。五〇センチ×五〇センチ。・・・良いじゃない。ドアの横に着けた。

「でも、ネジで、がっちり止めないと、駄目ね。・・・明日でも、誰かに、止めて貰います。・・・今日は、外しておきましょう。」順子は、中に入れた。七時過ぎていた。皆でテーブルを囲んで雑談していた。

「チーママを、なんて呼びます。此れから。」

「チーママでは。可笑しいから。・・・順子ママ。順子さん。ママ。・・・どれが良いですか。・・・皆さん。」皆で考えた。

「店の名前が。ジュン。だから。・・・順ママ。・・・で。如何ですか。」一人が言った。

「はい。・・・それで、良いじゃないですか。・・・順ママ。・・・」

「私は、良いです。・・・皆に、決めて頂ければ。」

「じゃ。決まりですね。・・・順ママ。」八時だ。ドアが開いた。

「お早う。・・・」六人で来た。

「ママ。どの人ですか。」

「はい。・・・私です。」順子が出た。

「あ。・・・堤社長から紹介されて、来た。けれど。・・・」

「はい。・・・そうですか。社長には何時も、御贔屓に、して頂いております。順子と申します。」お互い名刺の交換をした。三ツ星不動産。代表・三井五郎。

「どうぞこちらへ。」奥の一番テーブルに案内した。ゼインで動いた。お客が居ないので、全員で座った。順ママが

「お飲み物は、ワイン。ヘネシー。レミーマルタン。ビール。日本酒。どれかお選びになって。・・・」

「うん。・・・ヘネシー下さい。・・・良いだろう・・・皆。」皆さんが良いと言うので、ヘネシーを出した。おつまみも揃った。・・・とりあえずビールで乾杯した。

「オープンしたばかりの店だから。って。聞いて来た。んですよ。」

「はいそうです。二五日に。・・・」

「じゃ。二、三日前だ。・・・綺麗な、若い子、の店だから、・・・目の保養に成るよって、言われて、来たのですが。・・・成る程。その通りです。ママ。」

「えー。そんな事、言っていました。・・・まだまた未熟ですので、皆さん、初めての、夜のお仕事に、務めたの。・・・まだまだ新人ですので。此れから勉強しますので、宜しくお願いします。」

「おーそうですか。・・・でも。・・・皆さんプロに見えますよ。・・・ママなんか、落ち着いて、・・・プロに見えますよ。」

「えー。そうですか。有難うございます。・・・今後とも、宜しくお願いします。」

「何人いる。・・・」

「十一名です。・・・平均年齢二十歳です。」

「本当ですか。・・・見えないね。二十歳には。・・・へー。・・・そうですか。」

「この度ね。建て売り住宅と言う、プロジェクトを、立ち上げて、邁進しようという。・・・もちろん株式会社にして、投資してくれる人を、集める。ん、だが、・・・この六人が、役員で、内、私が代表になって、動き出す。・・・結成式の、反省会って、言う事です。」

「えー。そうですか。・・・建て売り。て。・・・分からない。」

「あ。分からない・・・僕等も初めてで、勉強しながら遣る。んです。・・・まっ。簡単に説明すれば、東京、近郊の、鉄道沿線に、住宅団地を造ろうと言う。開発。」

「え。・・・例えば、何十軒、とか。」

「そんな、もんじゃない。何百軒。何千軒。と言う。大規模ですよ。・・・ですから、資本金。を集めなければならない。従って。大手の帝国証券をバックに、投資者を集める。・・・そして、一部上場を、目指す。・・・だから堤社長に、おんぶに抱っこ、ですよ。」

「へー。何千軒、ですか。」

「そうです。真に。高度成長と言う時代に、我々は先行投資をする。・・・乗り遅れないように。・・・この店も、我々と一緒に、躍進するでしょう。・・・ママ。」

「有難うございます。・・・参加させてください。・・・と言っても。先出すものが無い。・・・どうしよう。」

「ママね。・・・自分が無くても。持っている人を探せば。良い。んですよ。( 帝国証券、推薦会社の株。)と言えば。殆ど信用が有ります。・・・日本全国。」

「そうですか。・・・うんー。・・・私達には。・・・」

「まっ。まだ慌てる事無いですよ。・・・二、三年かけて、・・・我々は、東武東上線沿線。西武池袋線沿線を、軸に、開発する。・・・又、大手の系列で東急沿線。小田急沿線。何れも、大規模開発に成る。・・・まま。夢を大きく持って、頑張りましょう。」

「はい。・・・勉強します。」順ママも、頭が、困惑していた。ま。・・・徐々に、着いて行くしか、ない。と。思っている。隣席、でも、未来の話をしていた。確かに、東京に、集中する感じがする。私達でも、毎日が変化して行く様子が見える。テレビも、高度成長。と言う、言葉が盛んに、発しているし。オリンピックも、東京一極集中。と言っている。・・・東京は、人口が溢れる。から。近郊に移り住み。電車通勤と言う。時代に、成ろうとしている。・・・私でも感じる。だから、この波に乗り遅れないように、情報キャッチの、アンテナを立てておかないと、乗り遅れる。順子は、そんな未来の夢を見ていた。陣も十一時だ。そろそろ閉店だ。順子は、閉店の旨を伝えた。会計を済ませてお客さんは、帰った。全員テーブルを囲んだ。

「今日は、六人。だったね。」皆心配そうに。

「そうね。・・・皆。焦らない様に、まだ。三日よ。・・・」順子は、落ち着いている。

「ママ。・・・明日。日曜で、休みですよね。

「あっ。・・・忘れていたー。そうです。・・・休みです。ごめんなさい。・・・じゃ。明後日から、お願いね。」

「それから、ママ。看板取り付け。・・・ネジで。」

「あ。そうね。・・・誰か、頼まないと。」心配だ。麗さんに、相談するしかない。皆帰った。順子も鍵を閉めてタクシーで帰った。

「ただいまー。・・・麗さんがソファーで、横になって居た。

「はい。お疲れ、さん。・・・明日お休みね。・・・お寿司屋さんに、行こう。・・・二時まで、遣って居るから。だ丈夫よ。」辺りは、歩いて、行った。空いていた。

「こんばんは。」

「いらっしゃいー。」板前は、元気なようだ。カウンターに座った。

「お寿司は、やっぱりカウンターが、良いよね。」

 ワインとヘネシーを、出してきた。

「どうぞ。・・・」グラスと、ボトル日本を、立てた。

「マスター。此処にボトル、二本立っていると、飲ん、べーに、見えない。・・・一寸、離して、置きましょう。」麗さんが言うと。マスターが、笑っていた。

「何時もの、特上二人前と、刺身で、小肌。しめ鯖。・・・アナゴ白焼きで。

「はい。毎度。」

「麗さん。明日、お休みだけれど。・・・大変なことが、有るの。・・・」

「何。・・・」

「写真の、看板を作ったけれど。・・・額が有ったので、一応纏まったの。額の中に。・・・ところが。ドアの横が。コンクリートなので、ネジで止められないの。・・・どうします。・・・」

「えっ。・・・私に聞かれても。」二人は、困って居た。するとマスターが。

「何。・・・今の話・・・聞こえたけれど。」

「聞いていた。・・・だって、マスター。が。」

「明日。俺も休みだから。付けて遣ろうか。・・・」

「え。・・・本当・・・出来るなら、お願いします。」順子は、喜んだ。

「出来るよ。・・・道具有るから。・・・有るよね。」奥さんに聞いた。

「有るわよ。穴開けドリル。ねじ回し。機械。物置に。」奥さんが。

「えー何時に。・・・マスターに合わせます。」順子は、お願いした。

「えー・・・お昼食べてから、・・・一時半で。どうですか。」

「良いです。・・・あー良かった。・・・東京って、どうしようかと、思っていた。・

 ・・田舎なら、誰か居るから。直ぐ頼めるけれど・・・誰も知らない、東京では。・・・と。思っていた所だった。・・・良かったー」順子は、嬉しいばかりだ。

「悪いね。マスター。」麗さんも、喜んでいた。

「麗さん。乾杯。・・・よかったー」息子の、板前さんも来てくれるそうだ。二人は何時もより、酒が進んだ。二時で看板だ。二人は帰ってすぐ寝た。

 ※三月三十日。休み。順子は、安心して、ぐっすり寝たようだ。十時に起きた。シャワーを浴びて、化粧して、コーヒーを入れて飲んでいた。麗さんも起きて、化粧室へ行って、シャワーを浴びて、スッキリしてきた。順子は、麗さんにコーヒーを出した。

「私どうする。・・・」

「一緒に行きましょうよ。・・・一人じゃ。・・・」

「そう。・・・パンと生ハムとチーズ。はちみつも有るでしょう。」順子は、用意した。二人はパンを食べながら、新聞を見ていた。・・・四月一日・木島則夫・モーニングショウ。始まる。と。書いてあった。生放送で、町の噂。風景等。様々な角度からとらえて、テレビで放送する。と言う番組だそうだ。

「朝の番組。・・・四月一日から。・・・明日から、何か賑やかに成りそうね。・・・テレビ。」

「そう。これからは、テレビの時代に成るから。様々な番組が始まりますね。スタジオ生放送だから。大変でしょう。・・・芸能界も、テレビ出演に、力が入るだろうから。銀座も華やかに成るわよ。・・・順子。チャンスが増えますね。」

「そうね。歌手も、大分、様変わりして、若い、新人歌手が、大勢い。出てきていますし。夜の世界も、私たちが出て。改善して行かないと。・・・麗さん。」

「おー・・・その調子だ。順子。・・・インスピレーションが凄いのよ。貴方は。」

「えっ。・・・」順子は、麗さんの、人を観賞する目が、鋭いと感じた。様々な現状。現象に、興味を示し、人を見る、・・・常にアンテナを高くし。気を配る。私達の仕事は、相手の考えていることを、素早く、察知する。見抜く。・・・これが一番大事だ。

「そろそろ。出ましょう。」寿司屋さんの前まで。歩いた。マスターたちが居た。

「お早うございます。・・・お世話に成ります。少し早かったかしら。」

「あ。お早うー。・・・家の車で行きましょう。」と言われて。四人で店に向かった。

「マスター、此処だよ。」店の前に車を寄せて、四人で、エレベーターで、八階に行った。順子は、先に降りて、店から、額を待ってきた。

「此れ、なんです。・・・」五〇センチ×五〇センチの、額を見せた。

「あ。・・・これ。簡単だよ。」マスターと息子が、

「この辺りで良いー。」

「はい。其処で良いです。」マスターは・ドリルで穴を二つ開けて、額を当て。ネジで、取り付けた。

「どう。ママたち。・・・」

「おー。素晴らしい。・・・良いです。・・・有難う。」順子は、喜んだ。麗さんが。

「マスター。お店に入って見る。・・・」

「あー・・・みたいね。」四人で、店に入った。

「おー。・・・素晴らしい。・・・高級クラブ。って。感じだ。・・・流石。ママたち。・・・御見それいたしました。・・・まさか・こんなお店経営しているとは。・・・ご無礼しました。」

「なに。言って、いるの。・・・マスターのお店の方が、高級ですよ。和風で、物が違うも。・・・此処は、見たくれ、だけよ。・・・今度、ゆっくりお店に来てください。女の子も沢山居るし。・・・あ。そうそう。今度から、お寿司の出前。お願いします。お客さんが、店で、女の子と、お寿司食べたいって、言う人居るの。その時。・・・」

「え。・・・そうですか。・・・お願いします。・・・此処なら、直ぐ。来ます。」

「はい。決まり。」順子は、嬉しかった。四人で、寿司屋に帰った。寿司屋さんも休みだ。何かお礼をしたいのですが。麗さんは。家に帰って「空也最中」に、電話で、注文しようと、思った。

「マスター。有難う。・・・後でね。・・・」別れて、家に戻った。

「順子。空也最中に、電話して、・・・最中、一二個入り、二つ。注文して置いて。夕方、六時頃取りに行くって。」順子は、電話注文した。

「夕方、最中取りに行きながら。ライオンで食事しよう。」

「はい。」二人は。ソファーで、横に成った。うとうとして、目が覚めた。

「あ。六時だ。」麗さんを起した。二人は、化粧しなおして、タクシーで、空也の前で降りた。二つ、受け取って、ライオンに向かって、歩いた。

「おー流石。・・・いっぱいだ。」空きテーブルを見つけて、座った。ビール大ジョッキを二つ頼んだ。

「此処は、相変わらず。いっぱいだね。・・・今日は、日曜日だから、特に、混んでいるのよ。」

「順子。此れ、お寿司屋さんに、届けてね。横の路地を、入ると、玄関だから。・・・」

「はい。」二人は、何時ものつまみを頼んだ。

「此処は、シンプルだけど。何故か、美味しい。ジャガバター。ベーコンは特に好きだね。・・・あと生ハム。」

「麗さん。田舎じゃ、ベーコンとかバターとか生ハムとか、見た事無いから、誰も知らないよね。」

「そうよ。私だって、初めて着た時・ここは、砂利道よ。・・・でもライオンは、有った。一際目立っていた。でも入れなかった。高給で。」

「へえー・・・砂利道。・・・時代の移り替わり様は、早いよね。・・・戦後二十年。映画も、音楽も、芸能全て。東京に来ないと、見られない。・・・時々、夜に、母を思い出すの。・・・何しているのかな。って。」

「順子。そろそろ、ホームシックに、掛かっている。んじゃない。・・・誰でも有るのよ。・・・故里忘れる。って。時間かかりますよ。・・・私は、十年過ぎた。けれど。まだ夢に出てきます。母の顔が。」

「でも、叔母さん元気だよ。・・・」

「うん。・・・でもね。ボケが、掛かっているみたいだね。・・・可哀そうだけど、東京には、呼べないわ。」

「だから。家の母が、面倒見るって、言っていたことが、有ったのよ。・・・でも、まだ、良いって、頑張っているよ。」

「そうなの。頑固だから。・・・しょうが無いね。・・・田舎は。田舎の儘で変わらない方が、良いと思うよ。・・・ちょこちょこ、変わられたら、故郷の意味、無くなるでしょう。・・・やっぱり萱葺きが良い、とか。薪風呂が良いとか。砂利道が良いとか。って、残っていた方が、良いと思うけれど。・・・やけに東京。東京ってさ。無理しなくても。・・・ズーと茅葺で。砂利道で。」

「麗さん。・・・私も東京に来て、間もないけれど、それは感じている。」

「でもさ。稼いで、金儲けするのは、・・・やっぱり東京よ。・・・順子。」

「はい。・・・その通りです。」二人は、同じ故郷を感じて居る様だ。八時だ。

「あ。此の最中。今日中に、食べないと、」すぐに出た。

 タクシーで帰った。途中で、寿司屋さんの路地を入って、玄関のベルを鳴らした。奥さんが出てきた。

「順子です。・・・これ、お礼に、・・・受け取ってください。」ひと箱渡した。気持ち良く、取ってくれた。

 二人は、家に帰り、ソファーに座った。

「此の最中。本当は、今日中に食べないといけないの。・・・でも。お腹いっぱいだから、明日食べよう。」麗さんは、最中を冷蔵庫に入れた。二人は。寝た。


 時は四月になり、東京のサラリーマン達も、新たに動き出した。新入社員。人事異動。転勤。そのおかげで、お祝いの宴が夜の街を賑わしている。

「お早うございます。」JUNも、全員揃って、店に待機していた。お客さんが入ってきた。順子が、入口で待っていた。

「あら。社長。いらっしゃいませ。・・・どうぞ。」奥の三番席に案内した。

「今日は、十五人だよ。」帝国証券の社長達だ。

「え。・・・じゃ。二番席と、繋げましょう。」皆で、準備した。

「どうぞー。・・・」十一人で、慌てて、準備した。ようやく座って。乾杯すると言う。全員起立して、社長が。

「本日は、新入社員と合同で、銀座の高級クラブで宴を、催す事になりました。看板が、十一時です。ので、皆さん。交流を深めながら、会社の発展に尽力を尽くして頂きたい。・・・乾杯。」パチパチパチ。すわさて落ち着いた。順子は、社長の隣に座った。すると社長が。お寿司を、大皿で。三ケ。取ってくれと言った。直ぐに、近所の寿司屋に電話して、急ぐように頼んだ。八時に来た。

「どうぞ。お寿司が届きました。」順子と女の子たちが、三か所に寿司桶を、並べた。

「おー。・・・これ。・・・寿司って、言う、んですか。」地方から、入った、社員は初めての様だ。

「田舎じゃ。寿司屋さんなんか。無いですよ。・・・初めてだ。」新入社員が、十名居た。五人は、何時もの人達だ。

「そうかー。・・・寿司は、田舎じゃ、まだ知られていない。・・・」不思議そうに話していた。一人の新入社員が。

「このような、部屋で、・・・女優さんみたいな、人達と、酒飲みかわす。しかも隣に座って、相手にしてくれる。・・・夢の様だ。・・・想像していなかった。風景だ。」と、言った。すると、社長が、

「でもねー。・・・皆。この様なこと、出来るのは、家の会社だからですよ。・・・他では、このような宴会は、出来ないと思いますよ。・・・だから皆、頑張ってください。」

「そうですよ。・・・まして、社長と一緒に、宴会出来る会社は、あまり無いと思うよ。・・・家は、社員を大事にする会社で、有名、なんだよ。」部長が言った。新入社員も、びっくりして居る様だ。順子たちも、新入社員を、持ち上げて、親しく言葉を交わしていた。十時を回った。お客さんが入ってきた。チーママが応対した。

「どうぞ。何名様ですか。」四名の様だ。一番テーブルに案内した。初めてだと言う。ので、店の料金のシステムを話した。おつまみ付きで、一人五千円。ボトル一本。一万五千円から二万円。お寿司が十人前一桶。五千円。・・・と、成っております。

「あ。そうですか。・・・分かりました。・・・」それで良いです。・・・四人。座ってくれた。ボトル、ヘネシー一本入れた。女の子四人を指名した。

「いらっしゃいませ。・・・」

「おー。・・・綺麗なお嬢さん。・・・一人に一人。着くの。」

「あ。・・・はい。・・・システムとしては。・・・ただ。混んでいる時は、その限りでは有りません。・・・」

「ま。・・・そうだろうな。・・・ママは、何方ですか。」

「はい。・・・案内した人が、ママです。・・・今はあちらの席に居ます。」

「うんー。・・・ママが綺麗な人だって、聞いて来た。んですよ。・・・成る程。全員綺麗な人ばかりだね。」

「はい。・・・有難うございます。・・・どうぞ、御贔屓に。・・・今後とも。」四人は名刺を上げた。

「あのね。・・・銀座にオーブしたばかりの「JUN」と言う。高級クラブが有る。と。評判。なんだよ。どうせ飲むなら。・・・金を使うなら。・・・綺麗なお姉さんが居る所の方が。良い。って、巷の、噂だよ。」

「本当。ですかー。・・・それは、それは。有難うございます。そのような評判。頂いて。光栄です。」順子ママを、呼んだ。

「この度、私どもが、新橋の烏森口に新日本銀行系列で、会社を設立したのです。京王。小田急沿線に、建て売り住宅建設の開発に取り組む。私が代表です。」

 順子ママだけ。名刺を頂いた。部長。課長。係長。「城南興業開発株式会社。代表・笹川慎太郎。」ママは、此処で、根津、頭取の名前は、伏せた方が良いと、脳裏を過った。

「はい。有難うございます。・・・今後とも、・・・宜しくお願い申し上げます。」会釈をした。

「ママね。・・・家の会社は、バックが大きいから、私も力が入って居る。んですよ。全面バックアップで、面倒見てくれる。・・・こんなチャンスは、無いので、・・・我々四人で、上場目指して。取り組む、んで、・・・気晴らしにチョコチョコ。来るので、頼みますよ。・・・上から、上場するように、指導を受けているので、ママにも、チャンスが到来しますよ。」

「えー。・・・こちらこそ、どうぞ宜しく。」

「ま。・・・今日は、帰りますが、・・・良い話を持って来ますので、宜しく。」

 今日は帰ると言うので、会計を済ました。ママがエレベーターまで送った。

 皆帰った。順子も、鍵をかけて店を出た。十一時半過ぎていた。麗さんに、公衆電話から、電話を掛けた。

「もしもし。私順子。・・・麗さん。・・・私、今店を出たの、ご飯食べました。」

「え。・・・まだ食べて居ないよ。」

「だったら。・・・お寿司屋さんで会いますか。」

「そうー。・・・じゃ。私が先に行って、いますよ。」

「はい。・・・今タクシーで、行きます。」二人は、近所の寿司屋で待ち合わせをした。直ぐ来た。

「こんばんは。・・・」麗さんが居た。

「お帰り。・・・」

「麗さん。今日は。なんか。お寿司が食べたくなって。・・・」

「へー・・・何か良い事。あったー・・・」

「うん。・・・有ったの。よ。・・・二十人も、客が入ったの。・・・それで、新橋に事務所を、構えたお客さんが来て、気分の良い社長さん達で、・・・常務。専務。部長。つ四人で、・・・その会社は。新日本銀行の系列。なんです。って。言っていたの。・・・七階の店に。来ている、根津頭取の。銀行でしょう。・・・こういう時。どうすれば良いの。」

「そうか。・・・でも、誰から聞いて来たのか。・・・JUN。の店。」

「そこまで。話さなかったから。・・・あ。私、まだ何も頼んでいないのよ。・・・

 ヘネシー。と。特上。と。小肌つまみで。・・・麗さんは、頼んだ。・・・」

「私は。何時もの。頼んであるの。・・・そうか。・・・美江ママの、知り合いだから。でもさ。近いうちに分るでしょう。・・・ただね。頭取って。系列だからって、・・・知ってはいるけれど。・・・親しくは、無いでしょう。おそらく銀行の部長クラスで、止まって居る。と思う。」

「小田急沿線。京浜沿線で、建て売り住宅を、開発して行く。て。言っていました。」

「クラブでの。会話は、何処でも、凄い話をしていますね。・・・前日来た、赤坂のママとお客さんも、株と、不動産の話していましたよ。」マスターが、言った。

「そう。なんですよ。マスター。・・・夜の街は、会社の会議の続き、なんですよ。・・・社用族って。幹部達だけで、・・・決定権が有るから。・・・私達も情報が早いのよ。マスターも、順子に、情報を貰えば。金儲け出来ますよ。・・・今ね、マスター。大手企業が、○○系列会社と言って。子会社を創って、株式上場させて、お金儲けしようと言う。のが、巷での噂。なんです。・・・其処に乗って行かないと。乗り遅れますよ。・・・マスター。」

「本当ですね。・・・じゃ。順子ママに、お願いしますか。」奥さんも笑っていた。

「はい。分かりました。・・・横流し、しますよ。・・・マスター。」二人は。益々勉強しないと、いけないと感じていた。


 季節は、五月になり。陽気も穏やかで、町も賑わっているようだ。「JUN」の常連客も、新客も、増えてきた。店の看板の写真が、話題になって居る様だ。

 ※五月一日、十時頃。美江ママから、電話が入った。四月分の、決算報告をしようと言うので、順子は、十一時頃店に行った。美江ママが来て居た。

「あら。ご苦労さん。・・・」順子が金庫のカギを開けた。記帳ノート。と。お金の入った箱を金庫から取り出して、美江ママに渡した。今までも、毎週土曜日に清算はしていたのですが。今回は、美江ママも忙しくて、二週間分溜まって居た。

「ご苦労様です。」ママは、記帳ノートを、受け取って、見ていた。

「えー。順子さん。・・・こんなに、沢山。・・・有ったの。」

「はい。・・・十二日間。分です。」JUNの店は、現金取引になって居た。ので、金庫に、入れた儘だ。

「順子さん。・・・何十万円・・・有りますよ。・・・本当。・・・素晴らしい。」ママは、喜んでいた。四月分。皆の給料も払うので、順子と二人で、計算を始めた。女の子たちは手当を合わせて、皆平等に配分した。順子は、皆と同じで、良い事に決めた。だが。想像以上の利益が有ったので。手当が大分ありそうだ。ママが。

「順子さん。・・・始めたばかりなのに。・・・百万円超えている。売り上げだ。」

 美江ママも。びっくりだ。七階より、多い売り上げだ。

「順子さん。・・・七万円支払います。」ママが封筒に入れて、渡された。

「えーママ。・・・こんなに、沢山。・・・」皆の倍近い。胸がドキドキしている。

「良いのよ。・・・こんなに頑張って頂いて。・・・助かるわー」ママも本当に嬉しい様子だ。美江ママは、麗さんに電話した。

「麗さん。・・・お昼まだでしょう。・・・ライオンに来てください。」麗さんに電話した。すぐ来ると言うので、ママと順子は、事務を片付けて、ライオンに行った。

 空いていた。何時もの辺りに、席を取って、待っていた。麗さんが来た。

「お早うー」

「どうぞー・・・」美江ママは、嬉しい。様子だ。麗さんも座った。

「何時もので、良いわね。」ビールとヘネシーとワインを頼んだ。乾杯した。

「ママ。・・・今日は、嬉しいようで。・・・何か有りました。」

「有ったのよ。・・・麗さん。・・・今、JUNで、二人で今月の。決算したの。・・・百万円。超えたのよー・・・麗さん。」

「えー・・・順子。・・・凄いジャン。・・・」

「はい。・・・大体分かって、いたの。百万円。超えそうだ。と。・・・」順子は、誰にもお金の話はしていなかったのだ。クラブの売り上げも、一ヶ月。百万円を超える時代になった。真に、金が金を呼ぶ。と言う、ことわざ、も有る。麗さんの名前も、評判になって居る様だ。何故なら、「JUN」の、ホステスを連れてきたのが、麗さんだ。三人は、三時頃別れた。今夜は、ママが給料払いに、店に来ると言う。順子は、シャワーを浴びて、少し寝た。六時半に起きて、化粧して、店に行った。ママが来ていた。

「おはようございます。・・・先程は御馳走様でした。」

「いいえ。ご苦労さん。・・・皆さん、もう来るでしょう。」

「はい。・・・殆んど、遅刻する人は居ないです。

「お早うございます。・・・」全員来た。ママが。

「皆さん。四月分の、お給金、支払います。ので。」と言って。全員に渡した。封筒に、名前は空いていない。何故ならば、皆、平等だから。と言う意味です。と言った。皆さん成る程と、感心していた。順子も。・・・成る程。分かりやすい。美江ママは、給料で差をつけると、仲間割れするのを、分かって居た。すると。

「ママ。・・・こんなに沢山。頂いて、良い。んですか。」

「あら。・・・良いのよ。これからもお客さんに、気を使って頂いて、下さるように。お願いね。」

「はい。有難うございます。」女の子達は、銀座一の給料を頂いた、と。感じている。大学での、会社員の倍である。・・・誰でも分る。此れが。後々の評判となる。そして、巷では、銀座一のクラブと評される。事になって行く。

「JUN」は、社長同士で、裏の情報発信基地。と言う、レッテルを張った。ホステス達も、全員が、株の勉強をしていた。そして勧誘の話を持ち掛ける相手は。金持ちの上流階級の人達に限る。・・・此の事を教えた。・・・何故ならば、「世の中は、金が金を呼ぶ」と言う、諺がある。従って、金のない人達に、株の話をしても、無駄である。

 ・・・皆が、納得した。

 そして、クラブ「美江」も、「JUN」と言う名前に変えた。・・・七階と八階が。「JUN」と成った。美江ママと、麗さんも。株の相談役として、社長達に、此処のホステス達。二十人の指導と言う立場に、推薦され、二人は、昼も夜も、行動を共にし、株の投資する人物を勧誘していた。この二人は、会社直系となる。


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