第二話。銀座で夜の蝶舞い飛ぶ
第二話 銀座で夜の蝶舞い飛ぶ(デビュー)
ソファーで、今後の事。話していた。
「順子。今まで見たお店。・・・どう。」
「どう。って。言われても。・・・広いお店は、圧倒されて、怖い感じです。」
「そうか。・・・やっぱり。・・・じゃ。最初の店。十人位居たお店。・・・どう。・・・まだまだ有るのよ。・・・知っているお店。・・・」
「え。でも。・・・毎日フラフラしているの。・・・大変なの。」
「気にしなくて良いのに。・・・じゃっ。・・・そこに決める。(ドミノ)。七丁目だから。ワンメーターで通えるから。・・・良いか。」
「何。・・・ワンメーターって。」
「タクシーの料金。・・・メートル毎に料金が上がるの。・・・最初は、長く乗れるの、・・・それからちょっと走る毎に料金が上がるのよ。・・・馬鹿にならないのよ。」
「あ。そう言う意味。・・・分かりました。」
「じゃ。・・・ママに連絡するわね。・・・モシモシッ・・・麗です。・・・昨日の子。ママのお店。気にいったって。言っています。・・・取りあえず面接します。・・・はい。・・・明日。銀座の、ビヤホール・ライオン。で。十一時。はいっ。・・・行きます。」
電話を切った。順子は、嬉しそうだ。
「はい。・・・明日。十一時。ビヤホール・ライオン。・・・あのママ。ビール好きなの。・・・大きなビヤホールで、雰囲気も良いの。」二人は、お祝いに、ワインで完敗した。翌日。順子は。九時に起きて洗面所に行って化粧して。ソファーに居た。麗さんが起きてきて洗面所を済ませて、ソファーに座った。
「十一時だね。・・・順子、服を選びましょう。・・・麗さんが・・・洋服を抱えてきた。・・・はい。どれにするか。」順子は、立って、いろいろ見繕った。これでどうでしょうか。一つ選んだ。
「うん。・・・ちょっと派手かな。・・・ま。あのママなら。・・・良いか。」
麗さんも着替えて。二人は下へ降りて、タクシーを拾って、銀座へ行った。ビヤホールに着いた。入った。
「おー。・・・凄い。混んでいる。」十時開店なので、空いている。ママが、二人を見つけて手を振っていた。麗さんも見つけた。テーブルに座った。
「あら。・・・ご苦労さん。」ママが喜んで。名刺を順子に渡した。「ドミノ」美江。と書いてあった。
「取り敢えず、ビールね。・・・ジョッキを三個注文した。メニューを見た。順子は分からないので、麗さんとおなじものを頼んだ。取り敢えず乾杯した。
「良かったわ。・・・此処忙しくなって来たの。オリンピックが開催させるので、皆さん社長さん達が、毎日、会合が有って、反省会とかで、来てくれるの。・・・新しいお客さんも。増えて、助かるわっ。オリンピック。」
「そうか。・・・オリンピックね。・・・十月から。その打ち合わせとやら。で。銀座も大繁盛。って。訳か。・・・ママっ。此れから続きますね。高度成長って、政府も動き出したし。・・・高層ビルディングが、いっぱい建つって。」美江ママも喜んでいる。
「そうみたいですよ。麗さん。・・・家は、不動産屋さんと、証券屋さんが多いから。・・・上の八階が居抜きになったので。そこ借りて、内装工事をしているの。後一週間で終わるのよ。だから。ね。順子さんには、八階の新しいお店で。・・・三人、決まっているの。・・・麗さん。後四人、探してください。・・・お願いします。」
「え。・・・ママ。・・・凄い。・・・やっぱり綺麗な人は。特しますね。・・・ママ。」
「はい。おかげさまで。・・・あら。飲んで食べて。ほらっ。いっぱい来ましたよ。美味しいのよ。・・・順子さん。」
ママは、ジョッキビールを頼んだ。順子の分も頼んだようだ。麗さんはワインを頼んだ。三人は二杯目を。楽しく飲んで話している。ホールも満員だ。外で待っている人も居る。
天井が八メートルは。有る、優雅な感じだ。・・・順子は、驚くことばっかりだ。
「順子さん。生まれは、何処ですか。」
「はい。福島県です。」
「ママね。順子は、田舎から出て来たばかり。なんです。私の実家の隣で、お父さんが亡くなって、妹達三人とお母さんが。田舎に居るの。大変なので私が誘ったの。年齢は、十九才に成ったばかりなの。・・・田舎者で何も知らないから。ママに、面倒見て頂かないと。・・・私と長い付き合いなので。ママを推薦した次第です。」
「はい、はいっ。・・・そうですかー。・・・でも、麗さん。・・・失礼ですけれど、順子さんは、田舎の人には、見えませんよ。・・・小顔で、黒髪で、色白で、背が高くて、羨ましいです。・・・何も言う事無いです。」
「有難うございます。・・・宜しくお願いします。」順子も会釈をした。
「それじゃ。順子さん。今日から、七時に、お店に来てください。家は総勢十二人居ます。けど。お休みの方も居るので、通常、八名は出ています。・・・家は皆さん優しい人ばかりだから気兼ねしないで何でも聞いてね。直ぐ仲良くなれます。」
「はいっ。宜しくお願いします」順子は、深くお辞儀した。
「それではママ。この辺で、失礼します。」すると、美江ママが。
「順子さん。・・・少しですけれど。御仕度代です。・・・受け取ってください。」
「えっ。・・・」すると。麗さんが。
「順子ちゃん。ママの心尽くし。だから、頂きなさい。」
「あ。はぃ。頂きます。」と言って。赤い袋を、貰った。三人は、別れた。美江ママは、タクシーを拾って帰った。二人は、タクシーを拾って、築地で夕食の食べ物を買って帰った。入り口の傍へ行くと。カチャット音がして、ドアが開く、入って、・・・ガチャ。と。鍵が閉まる。台所に買ったものを広げた。器に移して、ソファーで食べて、順子が直ぐ、ゴミ袋に入れて、一階のごみ置き場に入れてきて。赤い袋を開けた。驚いた。五万円、入っていた。
「麗さん。・・・これ。」見せた。
「良いのよ。貰って。・・・支度金だから。」
「でも。こんなに。沢山。」(ちなみに、大卒初任給。二万円位。)
「順子。・・・これが銀座の相場なのよ。」麗さんは、ニコニコしていた。
五時だ。順子はシャワーを浴びて、支度を始めた。麗さんに、化粧の仕上がりを、チェックして、洋服も選んで貰った。まだ自分では、着こなしは無理だ。お客の前に出るので。細かい事が分からないので当分麗さんがしてくれる。順子は。出かけようとした。
「お店。分かるの。・・・」
「あ。・・・分からない。・・・」麗さんが笑った。一緒に行ってくれる事に成った。順子は店で降りてエレベーターに乗って七階で降りた。麗さんは帰った。
「お早うございます。」順子はみんなの前であいさつした。
「順子と言います。お世話に成ります。・・・宜しくお願いします。」頭を下げた。
チーママと言う人が傍に寄ってきた。
「藍。と言います。・・・店のチーフを任されています。・・・分からないことが有ったら何でも聞いてね。・・・初めてですか。・・・」
「はい。・・・そうです。初めてで何もかも、ちんぷんかんぷんです。・・・震えています。」
「・・・そうですか。じゃ。此れからは、私の傍に付いて、居て下さい。・・・私の真似をしながら覚えて行けば。良いですよ。」
「はいっ。有難うございます。・・・お願いします。」・・・順子は、皆の気を使い、中々打ち解けなかった。・・・でも、皆の仕草を研究していた。お客さんが、五名入ってきた。・・・全員で。
「いらっしゃいませー。」と。入口に、チーママを先頭に一列に並んだ。順子はチーママの次に並んだ。そして、チーママがテーブルに案内して、三人を指名して、座らせた。順子はチーママと二人で、おしぼりやら、お客の注文を受ける世話をしていた。・・・忙しい、二人でテキパキとこなしていた。少し落ち着いたので、チーママが、
「新しい子を、紹介します。」と言って。社長に、順子を紹介した。
「順子と言います。・・・御贔屓に。」順子は軽く会釈をした。・・・お客が。
「おー。・・・ママっ。・・・又可愛い子。見つけて来たねも・・・此処へ座って。」
お客が指名してくれたのは。初めてで、鼓動が鳴って居る。順子は、奥の社長の隣に座った。
「はい。・・・何する。」順子は、分からない。
「ぅん。・・・そうか。・・・飲み物。何にする。」
「あっ。・・・はいっ。ジュース。頂きます。」社長は、相当初心だと感じていた。
「ははは。・・・そうか。初めてか。・・・そうだな。初めてって。誰にでも有る。んだよ。・・・恥ずかしい事じゃ無い。んだよ。・・・人生誰でもゼロから始まる。・・・今夜は順子さんの。門出を祝って。・・・乾杯。」社長の音頭で、店は賑やかになった。
出身地。趣味。等々聞かれていた。順子は、生徒会長を長くして居たため、自分の知って居る範囲はスムースに順序良く話す事ができる素質を持っている。又、グループを束ねる事も得意だった。でも、田舎とは違うと考えて居た。
都内の高級クラブのお客さんは、人生経験豊富な、しかも、トップに立っている人達が多い。会長職。社長。芸能界。スポーツ界。政治家。新聞社。週刊誌。文芸家。達が癒しを求め。しかも、お金に糸目を付けない。五十代を超えた人達の溜まり場である。従って、ホステスの心を見抜く。人が、必ずいる。ちょっとした仕草が見破られる。
此れが銀座だ。ホステスと言っても、地方とはかけ離れて、いる。実に特殊な職業である。客単価も高いが。ホステスの給料も高級額が支給されます。最近は外国人の方を連れて来る社長さんも多くなり、国際的な雰囲気も要求されます。英語を、話せる順子はそんな雰囲気に益々憧れを感じていた。また、自分に合っているとも感じた。
「順子ちゃん。・・・良く見るとね。・・・十朱幸代と言う、女優が居る。んですよ。・・・似ていますね。・・・都会派で、清純さが、売り出し中の。・・・知らない。」
「はい。ご存知有りません。・・・」
「あっそうか。・・・今、サラリーマン達に、大人気。なんだ。・・・そっくりだよ。」順子は又、言われた。実際に知らない。様々な話題に追いついて、いけない自分に、引け目を感じた。もっと勉強しようと本気で思った。美江ママが来た。
「あら。社長。いらっしゃいませ。・・・良い子でしょう。」
「良い子見つけて来たね。」
「今後ともよろしく。」と言ってママは席を外した。順子以外に、四人座っていた。
順子は、移動がなかったので、この席に居た。一時間位居た。社長達、が帰ると言うので、チーママに伝えた。チーママが請求書を持ってきて社長に渡した。社長は精算した。そして順子は、社長から小さな封筒を渡された。
「良い。んだよ。・・・チップだから」と、受け取った。社長たちが帰った。順子はチップの事話した。新日本銀行。社長。(根津晃)と。書いた名刺が入っていた。
「あっ。・・・いいのよ。・・・貰っておきな。」
「はい。」順子は、小さなポケットに入れた。
チップ。って。貰って良い。んだ。って。・・・都会は、不思議な事が多い。
順子は、自分は現代に遅れていると感じた。経済と外国語を勉強しないと、高度成長に就いて行けない。と。感じた。店には、ラスト音楽が流れた。(グット・ナイト)と言う。松尾和子とマヒナスターズ。と言う、グループ歌手達が歌っている。
店は、他のお客で満員だった。店の中は、ほんのり暗い感じで、皆の顔が、ほんのり白く見える。光の演出だそうだ。お客さんが帰って、終わりのミーティングをチーママが挨拶して終わって解散した。順子はタクシーを拾って帰った。降りたが、ちょっとウロウロした。大分探した。
「あ。此処だ。」やっと探した。目印を決めておかないと。と。思った。十二時だ。
「ただいま。」麗さんが、待っていた。
「はい。お疲れ。さん。・・・大分疲れていますね順子。・・・顔がやつれて居ますよ。」
「え。・・・本当ですか。」恥ずかしかった。今まで、やつれる。何て言う言葉は、辞書でしか見たことがない。恥ずかしかった。
「あら。良いのよ。・・・初めてだから。しょうがないのよ。・・・そうやって覚えていく。・・・順子。・・・生きて行く事は大変でしょう。」
「ハイ。・・・これ。・・・」小さい封筒を広げて見せた。順子は、びっくりした。
「良いのよ。・・・順子。其れも銀座の、良い所、なのよ。・・・お祝いでしょう。初めてだから、お客さんが、気を配って、くださったのよ。・・・初めての仕事で、良いお客に出会ったのよ。・・・こういう事ってあまり無いのよ。・・・そのお客さんを大事にしないと。・・・順子は運が、良いね。・・・」
「だって。・・・一万円よ。」順子は、嬉しいやら。怖いやら。
「良いのよ。・・・さ。寝ましょう。」二人は、交代でシャワーを浴びて。自分の部屋へ行って寝た。次の朝、麗さんが九時頃起きて、化粧が終わりソファーでテレビを見ていた。順子がまだ起きてこない。十一時だ。
「あ。・・・ごめんなさい。寝坊しちゃったー。」モジャモジャ頭で麗さんの前に来た。
「ハハハ。・・・どうしました。・・・お化粧してきなさい。」順子は洗面所へ行った。麗さんは笑っていた。相当疲れましたね。あの顔は。・・・順子が来た。
「あー。大分。酷いことになって、居た。・・・」
「順子さん。・・・如何ですか。・・・気分は。・・・」
「ハイ。・・・頭から水を被りました。・・・少し良くなりました。・・・」
「うん。・・・順子。・・・それだけ真剣だった。んだよ。・・・人間って。真剣になると疲れるのよ。・・・合格だよ。・・・デビューは。」
「え。・・・どうしてですか。」
「いま。言ったでしょう。真剣になると疲れる。って。・・・やる気十分なのよ。」
「はい。そうですか。有難うございます。・・・それにしても、疲れました。」
「ソファーで横に成ったら。・・・お昼は、出前取るから、外へ出ないから。・・・出前。来るまて。横になって居なさい。順子は横になった。麗さんは、特上寿司二人前と。鉄火巻き一人前。出前を頼んだ。一時間ぐらいで来た。ピンポン。麗さんが出た。順子も気づいた。
「あ。・・・すみません。寝ていて。」と言って。運ぶのを手伝った。テーブルに並べた。
「はい。・・・お寿司取ったから食べなさい。」
「あ。はい。」順子はすわった。L型の大きいソファーで二人。寝ることもできる。大きい所に麗さん。小さい所に順子。テレビは大きい所の正面にある。順子はキッチンを背に座るので。テレビは左方向だ。順子はキッチンの方に近いので、お茶やコーヒーは順子が入れる。二人は寿司を食べ始めた。
「麗さんは。私はビール飲みたい。」三百ミリの缶ビールを自分で、出してきた。
「順子は。・・・」
「はい。私は。要りません。」麗さんが一人で飲んでいる。
「順子。・・・昨夜のおさらい、離して。」初めての体験談。今後の仕事の、良し悪しに成る。麗さんは。其れを試す。
「あ。・・・はい。・・・チーママと言う人が居ました。そして、皆さんに紹介されて挨拶をして、大きなテーブルを囲んで、色々とミーティングをしました。ミーティングは言葉の使い方。座り方。お酌の仕方。歩く姿。等々立ち振る舞いの指導を受けました。でも、思ったのですが。・・・私の為にしたのかなって。・・・思ったりしました。・・・それからお客さんが五名入ってきました。其処にチーママが私を新人です。と。紹介してくれて、四人で座りました。私は、お客さんに、此処に座りなさいと言われたのでその人の隣に座りました。・・・話しているうちに、社長さんだと分かりました。色々と聞かれた。り、談笑しました。賑やかに。・・・席はずっと其処でした。皆は移動していました。」
「うん。・・・そうか。・・・順子。・・・気を使って。くれて、いたのよ。・・・順子に。意地悪なチーママだと。振り回されて。そっち、とか。こっち、とか、動かされていじめる。のよ。」
「え。・・・そうですか・・・。」
「この世界は。そう言う所なの。・・・おそらくママが。私の紹介だと伝えて居るみたいね。・・・心配していたの。振り回されないかなって。・・・良かった。」
「そう。なんだ。・・・でも。雰囲気は凄く良かった。・・・私に合うと思った。・・・この仕事。それに。チップって。・・・二万円貰ったの。チーママが貰っておきなって。」
「え。・・・本当。・・・良かった。じゃん。・・・素晴らしい。順子ちゃん。その意気。」麗さんは嬉しかった。嫌だと言われたら、どうしようかと、店を変えなくちゃ。なんて。考えて居たのだ。
「順子。今後は。此のペースで進行して行くわよ。朝十時に起きてお昼食べて、夕方六時にお化粧して、出勤する。・・・用事が有る時は、何時に起きても良いです。」
「はい。・・・麗さん。昨日の社長さんがいろいろ話していたのを。聞いていたのですが、此れからは。英語と中国語を話せないと。良い金儲けが出来ないって。言っていた。ので。私も、考えたのですが。中国語の勉強をしたい。・・・いや。・・・今直ぐじゃ無いのよ。・・・東京に馴れたら。・・・英語は、ちょっと話せるから。」
「えー。・・・そうか。英語話せる。・・・中国語。・・・順子は若いから、夢が有って良いね。・・・そうしなさいよ。その気に成れば、先生なんかすぐ見つかりますヨ。」
「麗さん。・・・それにもう一つ。今直ぐでなくて良いの。・・・経済の事。勉強したいの。・・・」
「えー。其れも。昨日の社長さんが喋っていた。為替がどうのこうの。ドル立てがどうのこうのって。・・・何の事か分からなかった。」(ちなみに・一ドル=三六〇円)
「順子。・・・素晴らしいじゃない。・・・それが一番大事。なんだよ。この世界。・・・良く気づいたね。・・・素晴らしい。・・・私も勉強中よ。・・・二人で勉強しよう。・・・経済。・・・今。本持ってくる。」と言って。麗さんは部屋へ行った。
「はい。・・・此れ。四季報って。言うの。・・・先ずは、企業の構えと名前。成り立ち。・・・この本は。各企業全部載っているの。・・・先ずは此処からスタート。はい。」
本を見せられた。
「へー。こんな分厚い本。七センチ位有る。・・・大変だ。」パラパラ開いた。分からない。二人の話は、弾んでいた。寿司も食べた。二人の目標は。一緒だった。一時だ。六時まで暇がある。順子は寿司桶を一階の荷物受け所に置いてきた。
「どうする。順子。五時間あるけど。・・・デパートの本屋さんへ行ってみようか。二人はタクシーで三越に行った。本売り場。
「えーこんな広い。・・・何でも有る。・・・麗さん。探しやすく分けてある。んだ。へー。専門書。・・・あっ。有った。」経済専門書。此処だ。何を買ったら良いか分からない。当たり前だ。外国語とか、経済とか。初めて考えるのだから。当たり前に分からない。麗さんは私より分かって居るみたい。中国語。英語。経済早わかり。と言う本。三冊買った。取り敢えず読んでみれば。おおよその内容を把握できるように。細かいことはそれからだ。順子は、学校では上位の成績で居たから勉強の仕方は分かっている。読めない字は無い。英語もそこ、そこ。分かる。・・・でも発音は田舎の先生。だから、ちょっと引っかかる。経済は全然。無能である。二人は自分の本を買って出た。向かいの和光に入った。
「はー。・・・またまたびっくり。でも、あまり驚かない様に言われたので抑えていた。それにしても。ビックリの値段。すると麗さんが時計の陳列棚に居た。
「順子。・・・どれが良い。・・・どれでも良い。買ってあげる。」
「えー。・・・」
「良いのよ。・・・どれでも好きなの・・・値札は、気にしないで。・・・」すると男性店員が来た。
「あ。・・・いらっしゃいませ。・・・何時もお買い上げ有難うございます。・・・時計でしょうか。・・・」
「はい。・・・この方に合う時計・・・どうー。」すると何個も出して見せる。四個並べた。値段は外れている。此れとか、此れとか、順子は迷っていた。麗さんが。
「決まらないようね。・・・じゃ。私が選んであげる。・・・はい。此れください。」
と言って、革バンドの小さい角形の時計。手首に掛けてみた。丁度合う。
「此れで良いね。」順子に掛けさせた。
「えー。凄い・・・いい感じ。・・・嬉しい。」麗さんが、店員にカードを渡した。少したって店員が来た。
「お買い上げ有難うございます。」深くお辞儀してカードと領収書を返した。すると女性の店員が手荷物を持ってきて、麗さんに上げた。麗さんは受け取った。何だろう。他に何か買ったのかなって。思った。二人は店を出て。タクシーを拾って家に帰った。ソファーに座った。買い物を全部出した。
「え。順子。本。三冊買った。私は一冊。(絶対損しない株の買い方。)よ。」
「それより麗さん。・・・この時計・・・幾ら。・・・」麗さんは、聞かなくても良い。と。言っている。けれども順子は、気持ち悪いから教えてと、すがるので。仕方なく値段を言って、領収書を見せた。(ロレックス)八十万円と書いてあった。順子は震えて。時計を外した。(輸入品は、一ドル=三六〇円だから。高級品だ。)
「こんな高級品。私には合わないかに要らない。」って。何回も言うので。言い聞かした。
「順子。これは私の心尽くしなのよ。人の心を踏みにじったら。いけないのよ。・・・恩を着せるわけじゃ無いから。素直に頂きなさい。・・・そして。他に有るの。・・・此れは。私があの店に対して。見栄を張ったの。なぜか。・・・後々あの店に順子が行ったとする。と。店員さんが。直感で。あの時。ロレックスの時計を買ってくれたお客さんだ。すぐわかる。・・・此れが銀座で生きて行く、初対面なの。・・・分った。・・・自分を売る作戦なの。けして無駄ではないから時が過ぎれば分る。」
「へー。・・・そう。なんだ。・・・分かったような、分からないような。・・・」
「時が来れば、分かるから。ね。もらって下さい。・・・ぁ。それから、店にはこの時計は掛けて行かないでね。今年いっぱいは掛けない方が良い。何故ならば、周りから妬まれるから、勤め初めの人が、買える訳無い、でしょう。・・・これを掛ける時は、私用で動いている時だけね。・・・お店では掛けないように。・・・時が過ぎれば分かるから覚えて居て。ね。」
「はい。有難うございます。・・・大事にします。・・・」
「あー良かった。・・・出勤の支度よ。」順子は化粧室へ行って。シャワーを浴びて、化粧を整えて、来た。麗さんはソファーに座って、テレビを見ている。順子は、直ぐに出勤した。
「お早うございます。ドアを開けた。ママが居た。
「あら。今日は早いね。・・・良いのよ。早いのは遅れるのは困ります。・・・順子さん。・・・初日は、如何でした。・・・」
「はい。・・・緊張ました。・・・」
「でしょう。・・・皆さん経験しているのよ。大丈夫。・・・まだ早いから八階見て来ましょう。」二人はエレベーターで八階に行った。階段は無い。
「どうぞ。工事の方たちは帰ったから。殆ど完成なのよ。綺麗でしょう。若向きに造ったのよ。・・・まだ、ここのチーフ決めて居ないから。・・・順子さんに、任せたいかな。て。・・・考えて居るの。と言う事は、麗さんと住んでいるから。何時でも相談した。り。聞いた。り・出来るでしょう。・・・どうー。」
「えー。・・・無理でしょう。・・・私なんか。・・・」
「と思うでしょうー。・・・素人風のお店。て。男性達は好む。のよ。・・・だから。明日。麗さんと、ライオンで会いましょう。十一時にね。麗さんに伝えて。・・・皆に無いしよ。よ。」
「はい。・・・」順子は又、分からなくなった。二人は七階に降りた。皆来ていた。
「お早う御座います。」ママが
「お早う。・・・今日も頑張りましょう。・・・」ドアが開いた。
「お早うー。・・・ママ入るかい。」代表みたいな人が来た。ゾロゾロ入ってきた。
「はい。・・・あら。今日はどうした。んですか。大勢で。」(丸中証券、佐野五郎。社長。)だ。
「ママ、急で申しわけ、無い。けど、貸し切りに出来るかな。」
「え。・・・待って。チーフに聞いてみます。・・・」相談していた。チーフが来た。
「あら。社長。・・・大丈夫よ。予約は無いので。」
「あー。良かった。・・・会議が終わって百パーセント決定したね。・・・お祝いしたい。んですよ。・・・何か料理。この前の出前。お願いします。」
「何名ですか。・・・十二名。・・・ですか。」チーフは数えた。チーフは料理屋に注文した。なるべく早く。と、言った。テーブルと椅子を体面に成るように移動して。全員座った。慌ただしく成って。準備した。社長が乾杯の音頭を取って、落ち着いた。
ママが。社長の脇に座った。チーフの指示で、八人も座った。順子は、へー。パーティーか。・・・またまたびっくりだ。料理が届いた。パーティーの時は、出前を取って賑やかにする演出だそうだ。料亭でするよりは、洋風で女の子も居る。し、お互い気を使わないでワイワイ騒げる。朝から晩まで机に座っているサラリーマン達には持ってこいの寛ぎの、場所。だ、そうだ。
「どうぞ、食べてください。・・・いっぱい有ります。ので。」このような宴会の場は、チーフの采配ぶりが試される。女の子とお客の対話を気にしながら。見ている。粗相のないような話しぶりを見ているのでチーフは緊張する。パーティーの時は大変です。
順子は。お客と打ち解けて居る様だ。ママも順子を気にしている。昨日の順子とは違っていた。一日で、変わった。ママもびっくりして居る。この子はただ物ではない。この道に備わって居る様だ。ママも社長と話し込んでいる。
「何が決まったのですか。・・・差し支えなかったら。」
「あ。・・・ママね。・・・此れからの日本は高度成長期に入って。発展する。従って、中小企業が、ドンドン出来る。それに準じて、投資が始まる。すなわち株券がやたらと出回る。其の株券発行に、全力を尽くす。為の部署を設立したので。祝賀パーティーだそうだ。・・・社長がホステスを指名した。あの人。・・・ほら。女優みたいな女の子の隣に座っている。・・・」
「え。女優。」
「いる。じゃん。・・・背の高い子。」
「あー。今度入った、新人です。・・・順子と、言います。」
「お呼び、しましょう。か。」
「うん。・・・でも。部長に悪いな。」
「良いですよ。部長さんは。私に任せて。」ママはチーフを呼んで、順子とママが席を交代する。支持をした。
「初めまして。・・・順子と言います。・・・」
「お。・・・どうぞ、どうぞ。此処へ座って。」順子は社長の隣に座った。社長が。
「何処。出身ですか。」
「あ。・・・はい。福島県です。・・・」と言った。すると隣にいた子が、小さな声で。
「順子さん。・・・学校です。学歴です。・・・」順子は。ドキッとした。脳みそがくるくる回った。どうしよう。麗さん。・・・麗さんの顔が浮かんだ。
「あっ・・・ちょっと。・・・」
「あ。・・・そうか。良いの、良いの・・・プライバシーまでは。入らないから。大丈夫だよ。」順子は。ホッとした。冷汗がドッと流れた。
「こんな綺麗な子。久しぶりだな。・・・又、不味いかな。・・・幾つ。・・・」
「あ。はい。二十才です。・・・」
「へ。見えないね。」順子は、一瞬。・・・今度は心臓が張り裂けそうだ。
「二十には見えないよ。・・・どうみても。二十五才位かな。」順子は、又、冷汗が足のつま先まで流れた。
「ま。良いよ。・・・何、飲む。」
「ヘネシーを、ちょっと。水割りで。お願いします。」
「おー。飲める。・・・良かったー。僕は飲めない子は、苦手。なんだよ。・・・」
社長が作ってくれた水割りで完敗した。
「おー。イケるね。・・・」順子は初めて飲んだ。・・・ん。香りがほのかで、美味しかった。ヘネシーなら飲めそうだ。と。思った。時間も十一時だ。和気藹藹に賑やかだ。するとチーママが、
「皆さん。社長にママが口説かれて。一時間。延長に成りました。・・・どうぞごゆっくり。」おー。・・・社長。太っ腹。全員拍手した。後一時間。順子と社長は話し込んでいた。
「社長さん。どういったお仕事。ですか。」
「うん。僕の会社は。株券を動かしている会社だよ。(丸中証券)大手企業。中小企業の株券を売っている。株式投資と言う・・・全国を股にかけて。います。」
「え。・・・良く分からないですけど。話は聞いています。でも。私たちには程遠いと。思っているから。興味無いですね。」
「いや。・・・そんな事、無いよ。・・・此れからは株を。勉強しないと金儲けは出来ないよ。」
「そうですか。・・・うんー・・・」順子は興味有り気に話した。
「じゃ。今度、ゆっくり、話そう。」と。名刺をわたされた。順子は大切そうにしまった。賑やかに宴会は続いて、グッドナイトの曲が流れて、お開きとなった。社長がチーフにカードを渡した。するとママが出口で皆に手さげ袋を渡していた、お土産だそうだ。・・・お土産くれる。んだ。順子はまたびっくりだ。お客が帰って、全員集まって。ママがお礼を言って、店を出た。順子はタクシーを拾って帰った。今度は間違いなくマンションの前で、料金を払って降りた。ドアを開けて入った。麗さんが居た。
「あら。・・・今日は遅かったね。・・・」
「はい。大勢入ってきて。貸し切りに成って。一時間延長したので、遅くなったの。」
「へー。何人。」
「はい。十二人。居ました。」
「凄いね。・・・「ドミノ」は、流行っているのよ。女の子が粒揃いだから。」
「粒揃い。て何。」
「あ。・・・そうか。粒揃いとは、全員、綺麗な、可愛い女の子達がいる。と。言う事」
「あ。そうか。・・・そう言えば、皆さん綺麗です。・・・」順子は化粧を落としてきた。すっきりしていた。
「今日は。もう寝よう。・・・明日。反省会ね。朝九時ね。」二人は交代でシャワーを浴びて。二人は部屋へ行った。順子はすぐ寝た。やはり疲れている。
順子は、八時に起きて、お湯を沸かして、コーヒー。と、お茶を用意して、化粧室へ行って、整えていた。麗さんが起きた。
「あら。早かったね。」化粧室へ行った。四十分位ででてきた。
「麗さんが。何飲みますか。」
「うん。コーヒー。飲みたい。」順子もコーヒーだ。二つ入れた。ソファーに座って。昨夜の話に成った。
「麗さん。・・・昨夜は、丸中証券の社員が十二人来て貸し切りに成ったの。テーブルを移動させて、対年で座るように。・・・賑やかだったです。・・・そしてママが社長さんの傍に座りなさいって。途中で言われて座ったの。此れ。名刺です。」麗さんに見せた。
「え。・・・順子。・・・凄い名刺貰ったね。・・・」返してくれた。
「それで。」
「うん。最後まで傍に座っていた。」
「それで。何話した。」
「うん。どんな会社を経営している。んですか。って。聞いたら。証券会社だって。・・・何をする会社ですかって、聞いたら。株式投資を行っている。て。」
「順子。素晴らしい人と出会った。ね。・・・真に昨日二人で話した。株の事。です。・・・
順子。其の社長を。大事にしないと。」
「はい。今度又話そうって。帰った。よ。」
「順子は。・・・良い。星。持っている。よ。・・・凄い」
「まだ有るの。ドアを開けたら、ママが居たの。・・・早く着いたから、八階に行きましょうって。工事中の店を。二人で見たの。・・・そしたらママが。この店のチーフママを、私に遣ってもらう。って。言われたの。何故か、麗さんと毎日居る。でしょう。て。だから、麗さんに相談しながら、遣って頂きたい。て。そして。今日。ライオンで。十一時に会いましょう。って。麗さんに伝えてください。て。・・・だから。十一時まで。ライオンに行かないと。」
「えー。・・・今何時・・・十時。・・・昨日一番に言わなくちゃ。・・・じゃ直ぐ支度しましょう。」
「すみません。・・・疲れて居て。・・・つい。」二人は、慌てて着替えて。家を出た。ライオンに着いた。店の中を見渡した。・・・居ない。入口に戻った。
「はーい。」ママが来た。
「ごめん。ごめん。遅れて・・・さ。入りましょう。」三人で入った。今日は、空いているようだ。席に座った。
「麗さん。ごめんね。・・・遅れて。」
「良いわよ。・・・何か頼もう。・・・取り敢えず。ビールにしよう。ビールを大ジョッキで。三個。注文した。直ぐ来た。乾杯した。料理もママが選んで頼んだ。
「今日は。私がご馳走するからね。・・・麗さんに頼みが有って、・・・八階の店。チーママが見つからないのよ。それで昨日ね。順子さんにお店を見て頂いたの。・・・気に入ってくれたの。だから。麗さんにお願いして、順子さんをチーママに。推薦したいの。・・・そして店名は、「JUN」と、付けるの。何故ならば、順子さんの順。そして、ローマ字で、書くことは、・・・外人さんに。パッと、分かるように。」どう。
「えー。・・・早過ぎじゃない。ママ。・・・重すぎない。順子。」
「はい。重いです。・・・自信が。・・・どうか。気がかりです。・・・」
「だから。ね。・・・麗さんに相談しながら。遣って。貰いたいの。・・・お願い。この通り。」ママは。深く。頭を下げた。
「そうか。・・・ママに。そんなに頼られるのは、一生に一度。・・・かもねー。・・・順子。チャンスかもしれないよ。絶対こんな話は在り得ない。・・・私が協力すれば。出来る事か。・・・ママ。・・・本当に有難う。・・・良。順子頑張ろう。」
「それでね。オープンは。再来週の金曜日に決めたいの。あと二週間有るから。ゆっくり準備して、工事は、今日終わるので。・・・十日間で備品を入れて、三日間で、ミーティングして。金曜日オープン。って。麗さん。・・・どう。」
「はい。十日で備品入る。・・・そこだな。・・・三月二十日。か。・・・女の子は。」
「はい。それが、順子さんで六名なの。七階の店よりちょっと大きいのよ。十名位居ても良いですけど、居ないの。・・・麗さん、頼みたいな。あと四名。」
「はい。・・・それが先ね。・・・オープンは多いほど、良いのよ。・・・一週間ぐらいは。最初から女の子、居なかったら。お客が来なくなるよ。・・・もう五日。ずらしたら。・・・ってことは。・・・三月二五日。・・・どう。」
「やっぱり。麗さんの言う通りかな。・・・そうしましょう。・・・じゃ。順子さん。決まりね。」オープン予定。決定。
「はい。・・・」順子は。かなり頭が回転して居る様だ。
「後は。やっぱり女の子五人。・・・麗さん。・・・お願いします。」
「はい。当たってみます。今ね。移動している。んです。よ。時期的に。三月から四月は。暖かくなると人は動きます。・・・私も頑張ります。順子の為に。」
「え。・・・」順子は、不安そうだ。
「ま。順子は一世一代だね。・・・このチャンスは。・・・ママも頑張り屋だから。見習えば。自分の為に成ります。ね。ママ。」麗さんは。ママに今日は、・・・こんなに。ご馳走。頂いて。・・・話が終わったからゆっくり食べましょう。ママは嬉しそうだ。
美江ママは。麗さんよりちょっと年上のように見える。・・・なぜか。どっしりした感じだ。・・・頼れそうだ。順子は。二人の身振り素振りを見ながら食べている。初物ばかりだ。皆こんな美味しいの。食べている。幸せそうだ。東京の人達は。夜の世界は奥が深いと感じた。女の子の取り合い。・・・難しそう。この二人は。お金。・・・幾ら持っているのでしょうか。・・・気に成る。脳裏を過っている。
「順子。・・・ヘネシー。飲んだら。・・・昨日社長にヘネシーご馳走に成った。らしい。少し飲めた。でしょう。」
「はい。」
「じゃ頼もう。」ママがヘネシーを一杯頼んでくれた。十二時を回った。順子は美味しそうに。ヘネシーを飲んでいた。
「でも。今日は仕事だから。あまり飲めないよ。順子。」
「は。はい。・・・此れだけです。」麗さんは笑っていた。ママも、安心して、ジョッキを二杯目だ。
「私は。ビールが美味しいの。よ。此処は特に美味しい。・・・麗さんは。ワインでしょう。」
「そうなのよ。ワインが。・・・此処のワインも美味しいの。」二人は気が合うようだ。
一時過ぎた。ママは、カードを出して清算した。三人は店を出た。ママはタクシーを拾って帰った。一時を回っていた。
二人は三越デパートに入った。バッグ売り場に行った。
「順子。・・・セカンドバック。・・・買ったら。」
「はい。考えて居ました・・・どれ買ったら良いか分からないので。」
「あ。そう。・・・私が見つけてあげる。」と言って、ルイビトン売り場に入った。
「此処のバッグなら、順子に合うよ。」順子は・又値札が気に成る。
「順子。値札を見ないの。・・・店員が。見ているから。・・・」でも気に成る。
「じゃ。・・・此れ。」バッグを指定した。店員が来た。ケースから出した。
「良いじゃ無い。・・合うわよ。・・・それにしなさいよ。」
「はい。順子は値札を見た。・・・言葉が出ない。二万円。・・・」
「はい。其れにしなさい。」麗さんが店員にバッグを、預けた。
「はい。有難うございます。」と。バッグを買った。二人は。外へ出てタクシーを拾って帰った。テーブルで、バッグを広げた。ソファーに座っていた。麗さんは、
「素敵ね。・・・」と喜んでいた。順子も持ってみた。
「良いね。・・・高級品ね。・・・初めてだから・・・嘘みたい。」麗さんが。
「順子。此れが銀座だよ。」
「ハイ。・・・」順子は嬉しくて堪らなかった。四時だ。まだ早い。今日は土曜日だ。
「順子。コーヒー飲もうか。」
「はい。」順子がコーヒー入れてきた。二人で飲んでいた。
「順子。・・・気に成って居たけれど。・・・丸中証券。って。・・・一流だけど。・・・ドミノに。来ていた。んだね。・・・ママも、人脈が良いね。」
「あとね。・・・新東京銀行の社長さんも。来たよ。」
「え。・・・新東京銀行の社長さんも。来て。居るの。」
麗さんは、又、びっくりした。ドミノは、凄い人脈を掴んでいる事が分かった。今後の順子の接待は。かなり慎重と、真剣に考えなければならない。順子の指導に力を入れなければ、と。考えた。
「順子。・・・雰囲気は、掴めた。」
「はい。・・・大雑把な事は。・・・でも、ホステスさん達の心は、・・・まだ・・・」
「そうね。女心は難しいよ。特に、この世界は。・・・順子。お客さんとの会話は、控えめにして、・・・つまり、お客の取り合いが、この世界の厳しい所なの。・・・こう言っていた。あんなこと言っていた。とか、が。火種に成るのよ。・・・周りと話すときは、慎重に。」
「はい。・・・そうね。・・・妬みが生まれる。よ。ね。・・・店の中で・・・やっぱり客の取り合い。になる。・・・分かってきた。」
「でしょう。・・・まっ。徐々に。其のあたりが。此れからの順子の腕。次第です。よ。」
「はい。・・・麗さんの言いたいことは。分かります。」
「そろそろ支度したら・・・明日は日曜で休みでしょう。・・・ひょっとしたら。明日、ママが、ライオンで会おうって、言うかも。」順子は、支度していた。
「此れ。・・・どうですか。・・・」着替えてきた。
「あら。・・・良いわよ。・・・似合う。・・・私の全部似合うよ。順子。」麗さんは嬉しいようだ。順子は、少し早いけれど。出勤した。
「お早うございます。」ドアを開けた。八人全員。ソファーに座って居た。
「順子さん。コーヒー飲む。」誘われた。
「あ。はい。・・・自分で入れます。」
「良いのよ・・・サービスします。」と言って、この店の古参が入れてくれた。
「はい。・・・どうも有難う。」順子も皆に混じった。まだ七時前だ。
「順子さん。福島って。・・・東北の。」
「はい。そうです。」
「私は、青森。・・・弘子と、言います。」
「え。・・・青森ですか。・・・遠いですね。」
「そうなのよ。・・・此処何年も帰ったことが無いの。」
「えー。・・・でも、電話しているでしょう。」
「それが、出来ないの・・・だって、近所に電話なんか引いてないから、町でも何件か。だよ。・・・山中でさ、毎日クマと遊んで居るのよ。」
「本当。・・・」皆。笑っていた。賑やかな人で、皆の人気の的に成って居るみたい。ドアが開いた。お客さんだ。チーママが行った。
「いらっしゃいませ。」全員立って迎えて、お辞儀する。
チーママが席゜を案内する。全員立って、おのおの気遣いをする。お客さんは四人だ。小さいテーブルに案内した。小さいと言っても八人は楽に座れる。順子ら、四名指名受けた。
「いらっしゃいませ。」お互い名刺を渡して。順子も座った。ボトル。水。をテーブルに置いてあった。
「皆さん。水割りですか。」順子が声を掛けた。
「全員。水割りだよ。」全員に水割りを作って上げた。乾杯をして、楽になった。
「あー。やっと終わったよ。」年配の人が呟いた。
「何か有った。んですか。」女子皆で。問いた。
「うん。人事異動が終わって、一安心。で。反省会って。訳。」
「あー。人事異動。難しい。ですか。」
「そりゃ。・・・出世に繋がるから。・・・難しいよ。・・・転勤も有るし。」
「えー。そうですね。・・・転勤か。・・・嫌だな。・・・知らない町で。」
「それが。サラリーマンの。宿命何です。我々大手企業は、特に厳しい。人事が人生を変える。って、言う事。」順子は。
「何をしている会社ですか。・・・差し支えなかったら。・・・」
「う。・・・証券会社です。・・・株式投資って。お金を投資してくれる人を探す。」
「へー。・・・投資って・・・幾らですか。」順子は突っ込んだ。
「投資。・・・いろいろ有る。んですよ。ま。此処で話しても時間が。」
「はい。そうですね。・・・話題変えましょう。」
「お。良い事言うね。・・・何する。・・・芸能、スポーツ、経済、政治。」
「難しい。・・・あ。オリンピックだね。」順子が。
「お。良いとこ、気づいたね。・・・俺も高校。大学と、柔道を遣っていたよ。オリンピックは、目指さないよ。・・・強いの。いっぱい、居るから。・・・何万人に一人だよ。オリンピック行けるのは。」
「そうね。私は。体操していたの。・・・オリンピックのオも。考えた事。無いですよ。・・・でも。県大会には出ましたよ。・・・五位入賞。・・・しかも二回。」
「凄いね。・・・体操。・・・四競技に出たの。・・・あれ。私だけ話して居るみたい。・・・」
「良いのよ。・・・順子さん。・・・自分得意の事は。・・・お客さんが聞きたい。って、言っていれば。」チーママが言ってくれた。
「凄い。ジャン。・・・何処の大学。」順子の胸に刺さった。・・・やっぱり大学だ。脳裏を過った。
「え。・・・高校なの。・・・私。」思い切って、打ち明けた。
「え。高校。何処の。」
「福島高校です。・・・二年三年。・・・三年の時は、四位。・・・大変よ。高校でも。だから大学生の。選手は。苦労していると思います。」
「でもさ。あなたは、でかい。ジャン。・・・背が。」
「はい。・・・皆に言われます。・・・でも。柔らかいの。柔軟。体質。なんです。・・・子供の頃から。足も、手も、自由に曲がるの。」順子は、手を後ろで、組んだ、り。身体を曲げて見せた。・・・拍手喝采。だ。ママが来た。
「あら。賑やかね。・・・何か楽しい事話しているの。」
「ママ。・・・今ね。順子さんが、主役で盛り上がっているの。」
「へー。・・・どうしたの。順子さん。・・・」
「はい。ママ。・・・お客さんと、オリンピックの話になり、体操の話になり。・・・そして私が体操をしていたので、盛り上がったの」
「凄いのよ。この人。・・・見せて見て、ママに。」
「えー。」じゃ。手をくるくる回した。り。体を。ひねった。り。柔らかい。
「えー。順子さん。・・・そんな特技。有ったの。・・・素晴らしい。こういう人って。中々いなのよ。」
「はい。特技って。・・・体操よ。・・・改まって。特技で無いですよ。ママ。」
「でも。・・・誰も出来ないことは。特技なのよ。」
「有難う。・・・こんなことで。褒められるなんて。・・・」
「ママ。この店は。楽しい、ね。」周りは個々にお客さんと話している。湧き藹々だ。
社長が、順子だけに、名刺をくれた。
「明日は。日曜日でお休みです。・・・又来週元気で会いましょう。」ママが言って解散した。
高級クラブ、何故。高級と言うか、ここのママは、ある程度の、おつまみを。セットで出している。日本全国の有名な食べ物。殆ど乾きもので揃える。何十種類もある。酒。ウイスキー。ブランディー。ワイン。飲み物も、全て一流品を揃えてある。銀座でも指折りの一級品ばかり、伴ってホステスも入りスグリの女性ばかり。だから、値段も高い。従って、初めてのお客さんには、予め値段の告知をして、納得の末。入って頂く。銀座は殆ど、このような仕組みに成って居る。又。家賃も高い。この事は都内の企業は分かっている。ホステスたちも心得ているので、何時も世間の状況を勉強している。四・五人で、入ると大卒の一か月分の給料に匹敵する。この店は十四人位座れるテーブルと。八人位座れるテーブルの。二席がある。十人入れば二席に分かれて。売上は賄える。
社用族の口コミが、店の発展の繋がりになるので、・・・特に証券会社は、様様な人脈を持っているので、大事な看板に成る。
(ホステスたちの給料は、一日千五百円×十名=一万五千円で。一か月=三万八千円。・・・お客は、一人一万円で。平均十名、で、十万円に成れば、経営は成り立つ。)一晩、十万円。前後で。二十五日で、約、二百万円。前後の売り上げに成る。賃貸金払って、純利益は、一か月。百万円前後になる。
客単価は、一人、一万円。このシステムを、ホステスたちには、教えてあるので、それなりのサービスをするように。伝えてある。店とお客が、お互いオープンで付き合っているので、安心している。又、東京は社用族と言って、企業の交際が税金として、認められているので、役員たちは自分の財布は、減らすことはない。
大胆に交際に、費やして、いる。従って。企業は課長以上に、昇格しない。と。楽しみは無い。東京はオリンピックで、金が舞い飛んで、いた。大手企業も下請け子会社の設立計画で、交流が盛んに動き、交際費に、天井は無かった。銀行、証券会社は、それを知って居た。行け、行け、どん。どん、と言う。社用族が、繁華街を。我が町のように、往来していた。
※ちなみに、当時の物価
大卒初任給 男= 二万円。前後。女=一万八千円。高校手人給=一万二千円。
パン一斤=三十五円。 ビーフステーキ=千円。 アンパン=十円。
エレベーターガール=一万五千円。蕎麦=七十円。 ビール大ビン=百十五円。
ラーメン=六十円。コーヒー=六十円。 映画=四百円。 ワンカップ=九十五円 チャーハン=八十円。 週刊誌=六十円。ヘネシー一本=五千円。 上寿司=二百円。
高級ワイン=三千円。ホテルニューオータニ宿泊代一泊=二千二百円。
クラブ「ドミノ」は。十五名のお客で賑やかに閉店だ。十一時半だ。ホステス達はタクシーを拾って帰った。明日は休みだ。順子も家に着いた。ドアを開けた。
「お帰り。・・・」麗さんが起きていた。
「ただいまー。・・・」順子は、バックを置いて、ソファーに座った。
「あー疲れた。」
「食事。済ました。」麗さんが。
「う。・・・まだ。・・・明日お休みなの。」
「あそう。・・・外へ出ましょうか。」二人は外へ出た。十二時だ。まだネオンが光っている。近所の、寿司屋に、入った。此処は、二時まで遣っている。
「いらっしゃいませ。・・・毎度。・・・何時も御贔屓に。」カウンターに、座った。
「ワイン下さい。順子は。・・・ヘネシー。・・・有るわよ。・・・じゃヘネシー。水割りで。」二人は乾杯した。
「はー美味しい。」順子は。ヘネシーを好きになった。美味しそうに飲んだ。
「麗さん。社長に名刺を頂いたの。・・・これ。」麗さんに見せた。
「ん。・・・この名刺。・・・またまた凄い。・・・順子。・・・(帝国証券株式会社。代表・堤英雄。)・・・良く名刺くれたね。順子に。普通初めて会った人に名刺はくれないよね。・・・順子だけ。」
「そうよ。・・・分かんない。」麗さんが寿司屋のマスターに。
「マスター。ね。・・・お店で初めて会った人に名刺くれないよね。」
「そう。でしょうね。・・・よほど好かれた。んじゃない。・・・じゃないと。中々。」
「よしてよー。・・・なんか。恥ずかしい。」
「凄いね。・・・順子は。・・・あ。マスター。今度家に下宿している。順子と言うの。・・・宜しく。ね。・・・一人で来た時。」
「宜しくお願いします。」順子は、ぺこりと頭を下げた。
「はい。・・・こちらこそ。御贔屓に。」麗さんは何時もの寿司が出てきた。
「あら、順子の頼んでいなかったね。自分で頼みなさい。」
「え。・・・分かんない。」
「あ。そうか。マスターね。この人。・・・田舎から出てきたばかりで。お寿司って分からないの。・・・私と同じで良いよ。」
「えー。・・・そう。なんですかー。・・・何処ですか。田舎は。・・・」
「うん。私の実家の隣。・・・山奥ね。私の商店と、酒屋さん。二件しかないの。・・・寒いし。・・・雪って五十センチ位降るの。」
「えー。・・・そんな田舎に。・・・こんな綺麗な人。居た。んですか。」
「ほら。・・・順子。・・・又、言われたでしょう。・・・十朱幸代に似ている。と思わない。・・・マスター。・・・」お寿司が出てきた。直ぐ食べていた。
「あー。そう言えば。・・・似ています。・・・そっくりですよ。体型も。何処へ勤めている。んですか。・・・」
「マスター。それ。・・・お預けね。・・・そのうち。・・・まだ。務めたばかりで。初心なのよ。」
「銀座。赤坂。六本木。」
「さ。・・・どちらでしょう。・・・三か所の中。」
「んー・・・銀座。」
「当たりー。・・・宜しく。ね。」
「美味しい。・・・初めてです。・・・こんなおいしい寿司。・・・二回目かな。お寿司食べるの。」
「へー。・・・俺も初めてですよ。寿司食べるの。二回目。だって言う人。」
「ハハハ。・・・だって。順子。」
「でも、二回目。だものね。・・・じゃ。明日から毎日来ますか。」順子も冗談を言った。
「そうしなさい。・・・続けて、百回。・・・ね。マスター。」冗談話で、賑やかだ。
「え。もう二時。・・・そろそろ閉店だ。・・・今日は。楽しかっね。・・・順子出前も有るのよ。・・・毎日でも、ね。マスター。」
「はい。お願いします。・・・毎日でも、大丈夫です。」
「あー美味しかった。・・・麗さん。」・・・順子は財布を、出した。
「良いの。・・・順子。」麗さんが払った。二人は帰った。直ぐ寝た。順子は十一時頃起きた。シャワーを浴びて。化粧室でセットして、テレビを見ていた。麗さんも起きて来た。
「お早うー。・・・化粧室済ました。・・・」と言って、化粧室へ入った。暫くして出てきた。
「今日は、お休み。」順子はコーヒーを入れて待っていた。麗さんはコーヒーを飲みながら。
「順子。今日は、昼抜きにして外で食べよう。」
「はい。・・・何時に出ます。か。」
「今何時。・・・十二時過ぎた。・・・三時頃・・・どう。」
「はい。分かりました。・・・麗さん。昨日の社長って。・・・貫禄あるように見えた。・・・けれど。知っているの。・・・」
「うん。・・・名前は、・・・有ったことは無い。・・・だって、普通。会えないでしょう。証券投資取引、じゃ。トップクラス。じゃない。・・・順子。いろいろ作戦を。練らなくちゃ。・・・順子は。英検二級持っている。て。言ったわ。ね。」
「はい。持っています。」
「うん。・・・確か。二級だと・・・利用価値は、高い。かも。」
「はい。・・・麗さん。国家資格だから。利用価値は有る。と、思います。」
「そうね。・・・勉強しないといけないね。・・・順子、証券会社の。社長との。繋がりを考えよう。子会社を創設するには、社長の許可が必要だから。実権は、社長が握っている。そして株式会社にする。ので、株を多く販売して、資金を集める。多く集める程、会社の繁栄に繋がる。依って、証券会社を、利用しないと投資家は集まらない。と言う、仕組みが成り立つ。・・・依って情報は全て証券会社が握っている。・・・だから、順子。証券会社をどう利用する。かが。・・・鍵だ。・・・と言う。事は。・・・丸中証券、帝国証券の。社長を操るには、・・・どうします。順子。
「うん。難しいよ。・・・私には。」
「これ。宿題だね。・・・二人の。・・・でも、・・・勉強しないと・・・経済新聞を取りましょう。明日にでも電話して。・・・足しには成るでしょう。経済新聞。」
二人は、まだ、想像にしか過ぎない。実戦は甘く無い事は、承知の上だ。しかし、東京のど真ん中で、大きな夢を実現したい。麗華も以前から夢は見ていた。順子が来たせいか。夢が膨らんだ。デモ自分は今更。ホステスには成れない。・・・順子を動かせば未来は見えそうだ。時計を見た。
「あら。三時過ぎている。・・・出ましょう。」二人は外へ出た。歩いていた。あれ。昨夜の、お寿司屋さん。」順子は気づいた。
「あー。そうだよ。・・・此処入る。」でも、午後五時からって、書いてある。
「入りましょうか。・・・麗さん。・・・」
「順子が良いなら。良いよ。」二人は、四時半だけど。覗いて見た。
「はい。・・・いらっしゃい。」
「時間。・・・早いけど・・・大丈夫。」
「あっ。昨夜の・・・良いですよ。・・・只今開けます。」開けてくれた。
「有難う。・・・此の子。がね。・・・今日も此処のお寿司、食べたい。って。煩いのよ。・・・板さんを。気に入ったみたいだよ。・・・どうします。」
「えー。・・・それは、それは。・・・何と言ったら。・・・良い。んですか。」
「順子。・・・板さん迷っていますヨ。・・・ワインとヘネシー。下さい。」
「はい。」グラスで出てきた。二人は乾杯して。飲み始めた。
「順子。此処。お得意さんにしたら。家から。近いし。・・・」
「そうね。・・・そうしましょう。」と。決まった。
「じゃ。・・・ワインとヘネシー。・・・ボトルで下さい。・・・まぐろ尽くし、で、二人前。」
「はい。有難うー。・・・」マスターは、喜んで出してきた。この店は奥さんと板前一人の三人で経営している。板前は息子で、家族経営だ。未だ、十年位だと。言う。気分が良い寿司屋さんだ。麗さんは、常連では無いけれど。チョコチョコ、来ていた。
「へー。家族で経営している。んですか。・・・奥さん。・・・息子さん。・・・幾つですか。」
「え。・・・僕は、一年目です。・・・三月で。」
「へー・・・でも。落ち着いていますね。・・・私とは違うは。」
「順子。其れは。・・・都会の人は。何処か。違うのよ。・・・ね。」
「いえ。・・・そんな事、有りません。」
「優しいねー。・・・順子。見習わないと。」
「はい・・・見習います。・・・一個、先輩。」
「本当ですかー。・・・二、三個上。かな。って、見えました。」
「ほら。・・・順子。貴方は。落ち着いているから。先輩に見えるのよ。・・・板さん。この人・・・ほら・・女優の、日活の十朱幸代。に。似ているでしょう。・・・」
「あ。・・はい。思い出した。・・・ここまで、出て居た。んだけど。」
「ほら。週刊誌。買いなさい。」
「え。週刊誌有りますヨ。持っていますヨ。」マスターが、持ってきた。
「はい。」順子と麗さんは。週刊誌を。見せられた。すると、表紙が本人だ。
「ほらー。順子。・・・見てー」順子は、見せられた。
「えー。大分、大人っぽいですね。・・・都会派って言う感じ。・・・恥ずかしいー。」
「似ているでしょう。・・・清純派で、綺麗で。」
「あー。恥ずかしい。・・・似ているような、気も、しないでも無いけど。・・・分からない。」
順子も。少し酔いが、回ったみたいだ。
「あれ。・・・もう二杯目だっけ。・・・麗さん。初めてですよ。二杯も飲んだの。・・・もう飲まない。頭がフラフラしてきた。お寿司が美味しい。・・・東京って。良いですね。美味しい物ばっかり、食べられて。・・・田舎のお母さんに食べさせたい。・・・田舎では見た事。無いです。・・・寿司。って。」
「そうねー。山奥で、バスも一日二回、朝晩、往復する、だけ。ですも。・・・食べた。順子?・・・もう要らない。・・・私は、こはだ、下さい。・・・順子。もう少し食べたら。・・・同じく、下さい。」二人は。ボトルを入れて、お腹いっぱい食べた。七時だ。日曜の性か、お客は、私たち帰るまで、来なかった。閉店は、十一時。だそうだ。二人は帰ってすぐ寝た。
次の日は、スッキリしていた。順子は九時頃起きて、シャワーを浴びて。化粧を済ませ、テレビを見ていた。麗さんも起きて来た。
「あー。寝たね。昨夜は。・・・スッキリした。・・・順子。電話帳見て。新聞社に電話して、経済新聞取るように連絡してください。
「はい。」順子は、新聞社に連絡した。近所だから、契約に来る。と言うので、待っていた。直ぐ来た。そして二年継続の契約をした。今日の新聞を、置いて言った。
「順子。・・・此処よ。・・・各企業の、銘柄別に一株の単価が乗っているよ。・・・上がり。下がり。・・・昨日の取引高。・・・え。何百万株も取引、有ったって。・・・株って、凄いね。・・・今まで分からなかったね。・・・はい。見て。」順子に新聞を見せた。
「え。・・・分からない。・・・銘柄。建設。鉄鋼。金融。サービス。・・・いっぱい有るね。・・・企業って、こんなに、いろいろ有る。・・・麗さん。此れは、じっくり構えないと、直ぐには無理ですよ。」
「そうね。・・・でも、此れを遣ろう。・・・社長達に。アプローチして。」
二人は、コーヒーを飲んでいた。順子は、麗さんが買った四季報を見ていた。
「うー。資本金。系列会社。代表。全部書いてある。帝国証券。出ていた。中山証券。出ていた。・・・麗さん。此処に出て居るよ。店に来た二人の社長。」
「あ。・・・本当だ。・・・順子。・・・アタックだね。」
「はい。・・・アタックする。」
二人は意気投合した。順子は、基本を知らない事には、踏み込んでも無理なので、暫く、待って。先ず。社長達に聞いてから、今後の行動に入る。二人は話し合った。
「どうする。フラフラ出て見る。・・・今日は、銀座まで歩いて行こう。」
「はい。」二人は着替えて、家を出て、歩いた。
「歌舞伎座よ。私は。興味ないわ。・・・勉強が大変なの。・・・知らないで、見ても訳分からない。」
「そう、なんだ。・・・立派な建物ね。・・・歌舞伎座。」順子は、目を見張るばかりだ。銀座まで歩いて行くには、遠い感じだ。
「麗さん。・・・大分歩くようね。」
「ちょっとね。でも、歩いたほうが、良いのよ。」順子は、体力には自信を持っているので何とも、なかった。でも、こんなに歩くのは、暫くぶりだ。四丁目交差点に着いた。
「今日は、千疋屋に行こう。」麗さんは、又、歩き出した。
「此処よ。」果物屋だ。二階に行く。階段を上った。二人は疲れて、ぐったりしていた。フルーツパーラー。・・・三階は、レストラン。
「入ろう。小ケースに並んだサンプルを見た。順子は。・・・思わず、声を出した。
「わっ。・・・ナニコレ。・・・」又、値札を見た。
「順子。・・・値札は見ないの。・・・何時も言っているでしょう。」
「はい。・・・それにしても。・・・分かんない。」入って注文する。何が良いか分からない。麗さんと同じものを頼んだ。
「パフェー、大を二つ。頼んだ。」順子は、辺りを見回した。皆、見た事無いものを食べている。運ばれてきた。
「どうぞごゆっくり。」二つ置いた。順子はびっくり。
「はっ。・・・」
「見て居ないで、食べて見なさい。」スプーンとホークが付いていた。順子はホークを手に持って食べていた。色んな果物が乗っている。
「あー。・・・美味しいー。・・・」
「順子。声出さないの。」
「でも。美味しいです。・・・」此れも初めてだ。果物。メロン、リンゴ、オレンジ、イチゴ、ビワ、モモキューイ、サクランボ、マンゴウ、バナナ、パイナップル。・・・一〇種類。入っていた。
「麗さん。此れ。一番高いの。・・・凄く美味しい。」低い声で話しかけた。
「順子。ここがフルーツパーラー。て、銀座で一番おいしい果物屋さん。・・・此処の果物を贈り物に、使ったら、喜ばれるよ。・・・百パーセント。当たりはずれが無いの。此処の果物は。其れが売りだから。・・・覚えて居て。」
「はい。・・・それにしても美味しい。・・・お腹いっぱいだ。」
麗さんが精算して店を出た。家のソファーに座って、今後の事を、話し合って、いた。
「順子が来てから、十日目、過ぎたけど、キューピッチで進んだね。・・・落ち着こうと思った、ら。新店舗の話に巻き込まれて。又。バタバタ忙しく成る、ね。・・・順子。大丈夫。・・・身体。」
「身体は大丈夫だけど。・・・東京に馴れて居ないから。・・・それが。」
「そうね。・・・此れも順子の運命ね。・・・チーママに成るには。十年は掛かるのよ。普通は。・・・ホステスに成って僅か四、五日で。・・・」
「うん。・・・でも。・・・麗さんが居るからじゃない。・・・麗さんが遣れない代わりに私を抜擢したと思います。・・・ほらっ。・・・麗さんの人脈を利用しようって、作戦かも。よ。・・・」
「えー。・・・そうか。・・・順子。凄い。其処まで見抜いた。・・・そうかもね。・・・でも。人生は。ケース×ケースだから、乗せられても、自分の有利に、勝利に持っていける。チャンスかも。・・・順子。・・・だからチャンスと思って。頑張ろう。」
「はい。私も麗さんと同様に感じています。・・・チャンスを引き寄せます。」もう五時だ。順子はシャワーを浴びて、出勤の支度をしていた。洋服を選ぶのが大変だ。六時に家を出た
「お早うございます。」ドアを開けた。皆さん、早い出勤でいた。皆でテーブルを囲んでコーヒーを飲んでいた。
「順子さん。・・・」青森のルミさんが傍に来て座った。」低い声で、話しかけてきた。
順子さんの話題で、盛り上がっていたの。後でね。と、話はしなかった。ママが来た。皆に声をかけた。今週も頑張りましょう。皆、テレビを見て、話題にしている。テレビを見て居ないと、話題に参加できない。そうか、テレビの話題かー。皆、朝からテレビ見ている。んです、ね。順子は、テレビどころじゃ無かった。それぞれの生活の仕方が有る。ので、・・・。
「いらっしゃいませ。・・・」チーママが入口へ行った。お客さんが入ってきた。
「お早う。・・・○○さんから紹介で、来た。けれど。チーママ。って。」
「はいっ。私です。・・・あ。○○さん、ね。分かります。」すると、電話が鳴った。
「チーママ。・・・電話です。」変わった
「はい。私ですが。・・・はい。見えています。・・・分かりました。」今来たお客さんと話している。分かったようで。四人で来てくれた。皆で接待の準備をした。乾杯した。チーママの指名で、それぞれ席に座る。順子は、指名されないので、隣のテーブルで待機だ。すると直ぐ、お客さんが入ってきた。チーママが出た。順子達の席に座った。
「あっ。社長だ。順子は、直ぐ分った。傍に行った。
「お。順ちゃん。・・・今日は三人だよ。・・・お客さんを誘ってきたよ。」社長は御機嫌良いようだ。取引先の人らしい。ホステス四人で囲んで座った。帝国証券の社長だ。
順子はおしぼりを社長に渡した。
「有難う。・・・」乾杯して、落ち着いた。皆さん年配の様だ。
「あれっ。此の子。・・・・誰かに。似ていない。」順子の事だ。すると皆が、順子を見ている。
「ほらっ。・・・今、売り出し中の、日活女優。十朱幸代。だよ。・・・今、清純派で。都会派で、紳士たちに人気。なんだ。」
「あ。本当だ。・・・似ている。」お客さんが大騒ぎだ。社長も、店に連れてきた甲斐が有ったと、喜んでいる。
「そんなに、囃さないで。・・・恥ずかしいから。」社長が、僕が見つけた。んだよ。とか言って。得意そうにしている。
「この人は、ね。今度会社を設立した、社長で。コンピューター内蔵の開発に取り組んでいる会社。なんだよ。(フューチャー・ジャパン株式会社。)社長・小林広。と言います。
「小林です。・・・」名刺を、順子にくれた。順子も名刺を渡した。すると小林社長が。順子に
「私どもは、地球の未来に貢献する。コンピューターの部品開発に取り組んで行く会社。なんですよ。・・・まだ難しい。悩ましい会社です。でも、帝国証券の社長が先頭に立って、後押ししてくれるので。鬼に金棒。なんですよ。」
「へー。・・・難しい。」順子は、・・・順子は。透かさず、
「じゃ。・・・此れから株式投資者を。探す。んですか。」
「お。・・・此の子は。凄い、六勘。・・・びっくりした。・・・こんな若い子。が。」
堤社長が。
「そう、なんですよ。此の子。初めて会った時。・・・オーラが有る。んですよ。・・・だから、今日、社長に合わせたくて。」すると、小林社長が。
「そうですか。そう言えば何となく。・・・じゃ。・・・家に投資して貰うか。」
「え。・・・投資。・・・出来ないですよ。お金が無いから。」順子は、困った顔した。
「ま。今日は。初対面だから。こんなところで。」話は持ち越しになった。順子の胸の鼓動が。震えていた。オリンピックの話題が先行しているみたいだ。店は盛り上がっていた。時間だ。今日は十一人のお客さんで。まー、まーの出だしだ。閉店して、皆帰った。順子も家に着いた。
「あー。疲れた。」麗さんが。株の勉強をしていた。
「お帰り。・・・順子。・・・あのね。公開株。て有るの。・・・って言う事は、会社の、現在の、一株。百円。だとする。・・・その株を市場に売り出す。・・・それには、公開しなくてはならない法律が有り。審査に掛ける。・・・審査して、この会社は将来性あり、伸びて行く、要素が有るので、現在の百円の株を、三百円に上げて、公開しても良い。と言う。お墨付きを貰える。すると。一株百円が、三百円に上がる。百円の株を、十万株(一〇〇×一〇〇〇〇株=百万円が三百万円に跳ね上がる。と言う。仕組みが、法律で定められている。・・・依って。立ち上げたばかりの会社の株は、安く設定されている。・・・その株を、一億円分。持っていれば。三億円に跳ね上がる。・・・分かる。順子。・・・要するに、公開前の株を。一千万円。持っていれば。公開すれば三千万円に成る。と言う、仕組み。・・・ただし。大事なことは、将来伸びる会社じゃないと。儲からない。・・・本当に伸びる会社ならば。公開株が五倍に跳ね上がる。と言う仕組み。・・・あー。・・・疲れた。今日これを見つけたの。)
「えー。・・・難しい。
「順子。・・・難しくないの。・・・知らないから難しいの。・・・知って居れば簡単。なんです。」麗さんは、大分、勉強したらしい。すると麗さんが。
「あ。ご飯の用意していなかった。・・・冷蔵庫に有るもので、済ませよう。私もこんな事。していて、外に出なかった。のよ。」順子は冷蔵庫を開けた。
「あー。麗さん。いっぱい有るよ。」順子は。食パンと生ハムを持ってきて、食べていた。麗さんは、ワインとチーズを取って食べていた。
「麗さん。今日の社長の話。・・・今の話に繋がる。て感じがする。・・・だって会社創立して、株、投資者を探す。て。言っていました。」
「本当。・・・もしかして。・・・将来の見通し、有るか、どうかだね。・・・何を造る会社か。・・・其処が問題。」
「うん。コンピューター内蔵の部品。て。言っていた。・・・此れからはコンピューターの時代が来る。」と。言っていた。
「えー。・・・そうかな。・・・コンピューター。て、分からない。・・・もしかして。」麗さんは。何か閃いた様子だ。
「麗さん。・・・何か、わかった。」
「うん。・・・分かった。閃いた。・・・現在、コンピューター。て、二十畳ぐらいの部屋に、機械が設置してある。ので、大変だ。て聞いている。・・・ソニーのトランジスター、ラジオ。みたいになれば、世の中が、変わる。恐れがある。と。考える。」
「え。コンピューター。て。知っているの。・・・麗さん。」
「あまり知らないけれど。以前に、聞いた事が有るの、・・・部屋の中を走り回っている。って・・・小さく改良すれば。良い。んだが。て。此れがネックだ。て。」
「うー。じゃ。小型化が。求められて、いる。・・・フューチャー・ジャパン。て。興味、湧いてきた。」
「そうね。今度、店に現れたら、詳しく聞ける。かな。・・・順子。」
「はい。・・・それなりに、探ってみます。」あ。もう二時だ。寝ましょう。二人はすぐ寝た。
三月十五日
順子は、東京で、十日過ぎた。・・・この十日間で、目の回るような、動き、だった。疲れては居るけど。凄く進歩している様に、感じている。・・・また、振り掛かる、チーママと言う。責任ある、仕事に頭を抱えている。昨日は遅かったので寝坊した。十二時だ。シャワーを浴びて、ソファーに座って、居た。麗さんも起きて来た。
「あー。・・・寝坊した。」洗面所に入った。一時間位入っていた。
「あー久しぶりに、お湯に入った。」出てきた。順子は、コーヒーを入れた。
「有難う。・・・昨夜は話し込んだね。・・・でもさ。この話は二人だけでね。きっと旨くいきそうな感じがするの。・・・順子。頑張ろう。」
「はい。」
「お寿司屋さんに行こう。・・・何となく、雰囲気。良いじゃない。家族経営で、嫌みも無いし。気楽で。」
「そうね。私も、良いと思います。・・・美味しいし。近いし。・・・出ますか。」
二人は、寿司屋へ入った。ボトルが有るので、直ぐ出してくれた。
「乾杯。」あー美味しい。二人で微笑んだ。マスターが.
「何か良い事。有りました。」
「はい。有りました。・・・コンピューター、の、話。今、勉強しているの。昨夜は二時まで。二人で。・・・特上二人前。其れに、こはだ、二人前お刺身で。」
「はい。」・・・息子の板前が、機敏に動いている。
「コンピューター。って。・・・お客さんで、居ますよ、開発している。って。言っていた。・・・今は、大きくて、・・・世界中が、小さく出来ないか、研究している。って。言っていました。」
「えー。そうですか。・・・それを日本で、一番先に作ったら。凄い。じゃない。・・・そうか世界中か。日本も何十社も有りそうね。」
「はい。・・・そう言っていました。・・・町工場までが、手を出してきた。って。」麗さんは。
「そうね。・・・オリンピック。終わって。・・・それからでしょう。今は、オリンピックで、何となく騒がしくなって。いる。し。」
「コンピューター。・・・何か。有る。んですか。」
「うんー。・・・私達には、程遠い話なの、ただ、お店で、お客さんが、・・・コンピューターの話をする人、居るの。・・・私達には、サッパリ分からない。」麗さんは、株の話は、外で話さない様にしている。順子も、そう考えて居る。
「マスター。道路工事が、凄いみたい。環状線、高速道路。・・・私たちは、出て歩かないから。分かんないけれど。下町の繁華街は、地方から出稼ぎの、叔父さん達で、大繁盛らしいですよ。飯場を建てて居るから、柄が悪い。て。・・・浅草。門仲。北千住。辺りは。」マスターも、言った。
「うん。だって。・・・殆んど東京に、集中しているから。・・・この辺りも人が倍以上に増えていますヨ。・・・築地なんか、てんてこ、舞だよ。・・・だから・今までより、早くいかないと、品切れに成る。んですよ。」
「そうね。銀座も人は増えていますね。関西から進出しているから、店舗。事務所は殆んど、いっぱい。で。箱が、空いて、無いらしい。」
「麗さん。箱。て何。」
「箱。って。・・・店舗。の事。・・・私たちの店も、箱。て言うの。」
「うー。箱。・・・か。」
「此れからは、先端技術が進んで、私達には、想像出来ない事が起こる。・・・車も、今は、アメ車が多いけれど、国産車がどんどん出て来る。って、お客さんが、言っていた。」
二人は、三時頃帰った。順子は。シャワーを浴びて。化粧してきた。まだ早いのでソファーに座って。テレビを見ていた。麗さんは。ソファーで、横に成って居た。
順子は、六時に家を出た。
「お早うございます。」まだ三人だ。ルミさんが傍に来た。二人で話した。
「順子さん。今度八階で、お店オープンする。んだって。・・・評判よ。」
「あ。・・・そうです。・・・ママが。・・・麗さんと話したみたいで。・・・私は飾りみたいな。感じです。」
「あ。そうか。・・・麗さんが。・・・」麗さんの名前が出たので。納得しているようだ。・・・順子は、面倒なことに成ると思い。麗さんの名前を出した。のだ。・・・正解だった。ママと麗さんは、友達だと言う事は。銀座では分かっている。ルミさんは、何も話さなくなった。全員揃った。・・・ママが来た。
「七時、回ったわね。・・・」八時だ。客の入りが遅い。・・・すると。ドアが開いた。ママが出た。
「いらっしゃいませ。・・・あら。・・・暫く。ね。・・・どうお過ごしでした。」四人で来た。ママが、狭いテーブルに案内した。チーママが、四人指名して座った。順子も居た。ママの古い付き合いの様だ。女の子は、ママと五人だ。取り遭えず、ビールで乾杯した。ボトルを探したが無かった。
「俺のボトル無いでしょう。・・・ヘネシー入れて。」お客さんがヘネシーを入れた。順子は、心持。安心した。
「何処。・・・行っていたのですか。・・・浮気していたね。・・・正月からよ。二か月も。」ママが話した。
「あー。アメリカへ、行っていたの。この四人で・・・コンピューター。の、勉強で。」
「えー。コンピューター。・・・」順子は、耳を立てた。
「そう。・・・ママね。此れから、日本にも、コンピューターの時代が到来する。大手企業は、人脈探しに、躍起になって居る。だから勉強しないと、遅れをとる。て。事」
「そうですか。・・・私達には、難しそうね。・・・此れからは、日本に、居る。ん。でしょう。」
「あ。そうだよ。社員とコンピューターの勉強ですよ。・・・この四人が先生だ。」
「へー。凄いね。」お客さんが入ってきた。チーママが対応した。七名様、大きい席に案内した。ママも行った。
「順子が。コンピューター。て。大きいでしょう。」
「あー。・・・今はね。・・・それを以下に小さくする。かが。世界中で、取り組んでいる。のが、現状。なんです。よ。」
「え。・・・難しそう。」
「でも。我々日本人は、小さくするのが得意だから、家の会社も、小さい物を主体に考える社員が、大勢居るから、日本では、期待されている。・・・新部署を創って、株式投資を、申請する。・・・今申請しても、公開まで。二、三年は掛かる。んですよ。・・・今のうちに。家の株を、取得していると、二年後には、三倍。あるいは、五倍。に成る。可能性は、有る」順子は、突っ込んだ。
「では、どうすれば、お宅の会社の株買える。んですか。」
「え。・・・買うー。」
「え。・・・違うの。・・・興味有って、・・・気に成った、だけ。」
「うん。其れは、証券会社に申し込む。か。・・・直接。会社に来て。買う。・・・まだ、計画中だから。創立したら。教えるよ。」順子は、お願いします。と。嬉しく微笑んだ。店内は、ラストソングが流れた。十一時だ。やはりカードで支払っていた。チーママが受け取った。領収書を渡した。そして、ママのご苦労さんの挨拶で、閉店した。順子はタクシーを拾って、帰宅した。麗さんが起きていた。
「ただいまー。」
「おかえりー。・・・順子。ご飯。・・・未だでしょう。」
「はい。」
「お弁当。買ってあるから。シャワー浴びて。」順子はシャワー浴びて、着替えて。テーブルに、座った。ウナギ弁当が二つ。お漬物。味噌汁。果物。一杯。用意してあった
「順子。飲み物は、自分で、取って。・・・私は。ビールを。」
「はい。」順子は。サイダーを取って来た。
「麗さん。今日も、今有る会社に、コンピューターの、部署を立ち上げて、子会社を創設させる。って、・・・お客さんが来たよ。・・・常連みたい。暫く来なかったのは、アメリカへ、行っていた。って。・・・コンピューターの勉強で。」
「へー。コンピューター。・・・時代が変わるね。・・・アメリカ式に成って。・・・新幹線。高速道路。自動車。高層ビルディング。高層アパート。カラーテレビ。洗濯機。炊飯器・・・服装も、輸入物が入ってきて。大分変ったよ。・・・置いて行かれない様に、頑張らなくちゃ。」
「そうですね。・・・株。かー。」株の話題が気に成るようだ。二人は、零時を回ったので寝た。翌朝順子は、九時に起きた。シャワーを浴びて、化粧して、ソファーに座っていた。麗さんも起きて来た。
「順子。化粧済んだ。」
「はい。済みました。」麗さんがシャワー室へ入った。順子はコーヒーを入れた。麗さんが来てソファーに座った。
※三月十八日
「順子。今日何日。・・・」
「はい。十八日です。」
「え。オープン。何日。・・・確か二十五日。だった。よね。」
「はい。・・・ドミノママに、電話しようか。」
「ママ。・・・麗華です。・・・お店の進み具合。どうですか。
「はい。備品。全部揃いましたので、連絡しようかと。思っていたの。・・・今日此れから。如何ですか。・・・ライオンで。十一時。」
「はい。・・・大丈夫です。・・・」
「順子。今日ママが、ライオンで、打ち合わせ、したい。って。十一時頃。」
「はい。」順子は、テーブルを片付けて、部屋へ行って、支度をしていた。麗さんも支度をした。麗さんは時計を見た。十時だ。二人は、下へ降りて、タクシーを拾った。
四丁目、交差点で降りて、歩いた。すると後ろから。
「麗さん。・・・」振り返ると。ママだ。一緒にライオンに入った。空いている。三人で、奥のテーブルに座った。
「どうも。麗さん。・・・今日連絡しようかと。思っていたの。・・・一致したね。」
「そうね。・・・お互い。考えが。」ママが何時ものメニューを頼んだ。ビールにワイン。順子もワイン。
「お疲れさまー。・・・」乾杯した。
「昨日全部そろったの、・・・今日十八日でしょぅ。後一周間。・・・大丈夫でしょう。」
「はい。大丈夫でしょう。女の子は、五人見つかりました。・・・でもね。ママ。ちょっと難しいの。時間が無かったので。バイトなの。学生で、短大生二人。三人は、条件次第で、相談したいって、ただ。三十一日までは来ます。・・・以後は、ママに相談したい。って。学生も、店も見たいし、お金も相談したい。って、学生は、初めてなので、何も分からない、って。」
「えー。・・・麗さん。有難う。頼れるわ。ねー。・・・順子さん。麗さんは助かる人なのよ。・・・銀座では。頼りなの。皆さん。」
「え。・・・じゃ。・・・何人に成りますか。」するとママが。
「えーと。専属が三人。順子さん。で四人。・・・五人。プラスで。九人です。ね。私も行くから、一〇人です。一週間は。・・・そうか。・・・相談するって。・・・まっ。其れは後で、有難う。麗さん。」ママは、麗さんに、両手を合わした。和気藹藹で盛り上がった。皆少し多めに飲んでいる。・・・お互い三杯目だ。
「麗さん。・・・二日間だけ、お願い。来てくれる。て言う事、は。招待状を出してあるの。一〇人、づつ。二時間。四時からです。三回。・・・何時間でも良いから、四時から一〇時まで。・・・お願い。・・・二十五日、二十六日の、二日間だけ。」
「えー。・・・私。・・・分かりました。」
「麗さんが、来てくれるの。・・・私は心強い。・・・良かった。」順子は喜んでいた。
「リハーサルは。二十四日。十二時から、三時まで、・・・麗さんから、連絡してくけますか。・・・五名の方たち。・・・すると、全員で十九名です。」
「はい。分かりました。・・・それからママ。お金の話。・・・千五百円から、二千円。位です。と。話してあるから。・・・七時から十一時まで。」
「本当。ですか。・・・大丈夫です。・・・助かるわ。」
「ハッキリ言うと。・・・二千円なら。喜んで勤めるみたい。・・・他では、千五百円よ。・・・」
「えー。そう、なんですか。・・・家は、高かった。のですか。・・・安心した。」
「じゃ。大丈夫ね。お決まりで。ママ。・・・改めて、乾杯。」麗さんも嬉しそうだ。順子も、嬉しいやら怖いやら。三人は、三時半にライオンを出た。ママと別れて、家に帰った。順子は、六時まで寝ることで、部屋に行った。麗さんは、ソファーによこになった。・・・六時に成って、順子は出勤した。
「お早うございます。」ドアを開けた。ママも来ていた。全員居た。ママが。
「皆さんに、話しておきたい事が有ります。来週の二十五日、八階のお店が、オープンとなりました。気づいていた方も居ると思いますが、内緒にしていたのです。何故ならば、この銀座は、妬む人たちが居るので、早くから、発表すると、不味い。んです。ですから、皆さんにもお話はしなかったのです。分かってください。其れと、八階のチーママは。順子さんに。お願いしました。と言うのは、皆さんご存知の。麗さん。との、協力の元。オープンします。依って、麗さん家に、下宿している、順子さんに指名したのです。八階の。モットーは。素人風の、お店。と言う。フレーズで、運営していきます。ですから、八階の子達は。二十才の子ばかりです。・・・損な事ですので、今後、八階も、御協力をお願いします。「JUN」と。ローマ字で、名付けました。国際派をピーアールして。行きたいので。・・・皆さんもご協力お願いします。・・・まだお願いが有ります。二十四日は。リハーサルを遣りたいので、全員、参加でお願いします。午後四時からですので、八階に三時半まで、御出席お願いします。一日分支払いますので。ご協力ください。」全員、溜息ついていた。順子の傍へ寄ってきて、応援の話をしていた。
ドアが開いた。
「いらっしゃいませ。」チーママが出た。五人の様だ。小さいテーブルに案内した。お客さんが、小林社長の紹介で、来たのだ。が。と言ったので、ママを呼んだ。
「はい。・・・小林様の紹介・・・あっ。分かります。・・・何時も御贔屓にさせていただいております。美江と申します。・・・今後、宜しくお願いします。」名刺を渡した。
「ヘネシー。一本入れて。・・・皆。好きなの。注文した方が良いよ。・・・」
代表の方が、言った。それぞれ、ワイン。お酒。ビール。様々だ。テーブルに、全部揃えて、乾杯した。
「は。・・・やっと落ち着いたね。」女の子たちも、それぞれ座った。
「ご苦労様です。小林さんと、同じ仕事ですか。」
「えー・・・家は、この度、小林社長と。共同企業体を造り、仕事を貰えるように成った。んです。」
「それは、それは、良い事です。ね。・・・忙しく成る。て。言っていました。からね。・・・」
「まだ準備の段階ですが。オリンピック後に、本格的に動きます。・・・家は細かい仕事が得意でね。・・・コンピューターの、基盤づくりを、任されて。」
「えー。・・・難しそう。私達には、・・・でもね。皆さん繋がって、いければ。大きな目標も達成出来るでしょうから。・・・良い事ですね。」
「ママは、優しいね。・・・ママの評判は、我々にも伝わっています。」
「有難うー。どうぞ、これからも御贔屓に。」ドアが開き。お客さんが四名。チーママが対応していた。小さいテーブルで。女の子四人指名だ。ママと順子は、その儘居た。
「お名刺は、・・・差し支えなかったら。・・・頂ければ。」
「あっ。名刺ね。・・・はい。」順子も、頂いた。代表で渡辺正幸。様。
「署長さん。この度、八階でお店をオープンしますので、宜しくお願いします。」
「えっ。・・・そうですか。・・・何日ですか。」
「はい。二十五日。オープンです。・・・小林社長さんには、招待状出してあります。・・本格的には、二十八日頃からに、なると思います。」
「そうですか。其れでは、我々も、常連に成らないと。・・・」
「はい。お願いします。・・・此の子に。チーママを預けておりますので。どうぞ。」
「はい。順子ともうします。どうぞ。御贔屓に。」挨拶した。
「あ。そうですか。・・・先程から気にして居たのですが、十朱幸代に、似ていますね。・・・日活の女優に。」
「えー。そうですか。・・・有難うございます。」
「本当ですよ。・・・順子さん。って。言いました、っけ。・・・今、紳士達に、話題になって居る、女優だから。・・・お客が、増えますヨ。・・・綺麗だから。」
「有難うございます。・・・宜しく。」ママは。深くお辞儀をした。順子も、揃えた。
順子も、僅か、二週間ぐらいで急激な情報、更に店のチーフを任される。と言う。・・・抜擢され。眼の回るような毎日だ。しかし。これも麗さんの、顔で進んだ話で、自分の力で、無い事は、十分承知の上だ。麗さんを頼ったのが、順子の運を導いてくれている。