第1-0話 英雄譚の黒幕は……
「ラン! 次はどうすればいい?」
「そうだな……そろそろ四天王を倒してもいい進行具合だろう。
ただし、適度に苦戦しながら最後は一撃で……面倒な連中に見せつけてやれ!」
「了解っ!!」
「じゃあいくぞ、【属性改変:エビルスレイヤー】!」
彼女の得物である、身長を遥かに超える槍が白銀に輝く。
「えへへ……ありがとうラン! ボク頑張って”演出”するから、あとでいっぱい褒めてね!」
彼女が飛び出していった直後、俺に魔法通信が届く。
『ランさん! 次はどうすればいいですか?』
「最近部下に不穏な動きがあるそうだな……ガス抜きも兼ね、一度派手なイベントを挟んだ方がいいだろう」
「”突如敵の軍勢が王都を襲う!” これで行こう」
「ただし、与える被害は最小限に!」
「じゃあいくぞ、【認識改変:爆発エフェクト10倍】!」
『らじゃーですっ!』
水晶球の中で、小柄なケモミミ少女が了解のサムズアップを返す。
「よしよし……」
仕込みを終えた俺は、安堵のため息をつく。
これでまた時間を稼げるはずだ……この繰り返しが世界平和を引き寄せるのだ。
わんわん!
傍らに控える青毛の神狼の頭を優しく撫でてやる。
俺が指示を飛ばしていたのは勇者に魔王、そしてこいつは地獄の番犬ヘルハウンド。
なに? 敵同士と内通するなんてお前が物語の黒幕か、だって?
まあそう言うな。
これには海よりも深い理由があるんだ。
なぜ単なるギルド職員の俺が、こんなとんでもない連中と組んでいるかと言うと……。
話は半年ほど前に遡る。
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