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人生番外編を異世界で  作者: ラクト
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アンドレの屋敷にて

「いらっしゃいませ。デイビット様、ルイ様、リィフェルト様、ティル様、ライアン様、シェイマー様ですね。お部屋までご案内いたしたします」

使用人に屋敷の奥の部屋まで案内された。

コンコン。

「失礼いたします。お客様がお見えになりました」

部屋に入ると、アンドレはピアノの前に座って楽譜を眺めていた。

「やぁ、ようこそ。わざわざ来てくれてありがとう」

「いえ、こちらこそ招待していただき、ありがとうございます」

デイビットが代表して挨拶をした。

「すごい部屋ですね…。楽器がいっぱい」

シェイマーは驚いた顔でキョロキョロと周りを見た。

一体どれだけの楽器を持っているのだろうか。この部屋だけで屋敷建てれそうだ。

さすがプロ、金持ってんなぁ。

アンドレ・ハーデンは公爵家の次男で、10歳でプロになった天才ピアニストだ。

元々お金持ちな上、プロなのだからこれだけの楽器を買い揃えるくらい余裕だっただろう。

「何か気になる楽器があったら弾いてみるかい?」

「い、いいのですか!?で、では、あの楽器を…」

「わたくしもよろしいでしょうか」

シェイマーとティルは気になる楽器があったようで、それぞれ弾き方を使用人に教わることになった。

ここの使用人は楽器ができるのか。さすが、ピアニストのお屋敷ですね。

「ルイくんはヴァイオリン、ライアンくんはフュールができるんだよね。あとで、この曲一緒にやらないかい?」

そう言われて、お兄様とライアンはそれぞれ楽譜を受け取った。

「これは私が最近作曲した曲で、子供向けの簡単な曲だ。どう?できそう?」

「はい、少し練習すればできると思います」

「おれ…ぼくもこれくらいならできると思います」

あ、ライアンが一人称変えた。まぁ、目上の人だしねぇ。7歳だしまだ気にしなくてもいい気もするが…。

それはさておき、二人共少し練習すればできるらしく、お兄様は部屋の左奥のアップライトピアノで、ライアンは自分のフュールを取り出して練習し始めた。

「デイビットくんはどうする?」

「俺は楽器はできませんし、聴くほうが好きなので座って待っています」

「わかった。何かあれば言ってくれ。じゃあ、リィフェルトちゃんはこっちにおいで」

そう言われて私は右奥のグランドピアノのところに行った。

「私の演奏を聴いて妖精をもう一回見てもらいたい」

「わかりました」


アンドレがピアノを弾き始めると徐々に妖精が集まり始めた。

始めはコンサートの時と同じようにただの光だったが、集中して見ると徐々に輪郭が見え始めた。

「リィフェルトちゃん、どう?」

「集中して見れば前よりも少しはっきり見える気がします」

顔ははっきり見えないが、なんとなくの姿ならわかるようになった。あと、何か言っているようだが、聞き取れない。

3分ほどの曲を弾き終わると、妖精は徐々に消えていった。

「前よりもはっきり見えるなら、今度はリィフェルトちゃんが何か弾いて妖精を呼び寄せてみよう。感情と魔力を音に込めるんだけれど、特に魔力を込めるのが難しくてできない人が多いんだよね」

ん??魔力???え、そんなのあるの!?

「私、魔力なんて使ったことがないんですけれど…」

「あぁ、そっか。その歳なら普通はまだ使ったことないよね。じゃあ、とりあえず感情を込めて弾いてごらん」

「はい」

曲はいつも弾く『バラと太陽』。子供向けの比較的簡単な曲だ。

感情込めながら弾くとかあまりやってないし、うまくいくかな…。

少し不安に思いながらも弾き始めた。するとすぐに

「弾くのやめて!!!」

え…?

頭で理解する前に急に眩しく光った。

「ひぃ!な、なに?!」

思わず弾くのをやめてしまったが、ペダルを踏んだままだったせいか妖精たちの光はなかなか消えなかった。そして、大量の妖精に触れたせいなのか、さっきまで聞こえなかった妖精たちの声が聞こえた。

『まじょさまのまりょく』『まじょさまどこやった』『かえして』『まじょさまどこ』

そんな声があちこちから聞こえた。

「リィフェルトちゃん、ペダルから足離して!!」

「あ、はい!」

私はすぐにペダルから足を離した。すると、妖精たちは徐々に姿を消していった。

い、今のなに…。魔女様?それに、なんであんなにたくさんの妖精が…。

「リィ!!大丈夫?」

お兄様が慌てた様子で駆け寄った。

「はい…。大丈夫です。少しびっくりしてしまって…」

「アンドレ様、今のは一体なんですか。リィの演奏と何か関係があるのでしょうか」

「あれは魔力量の関係だろう。妖精が集まる直前、膨大な魔力が音に注ぎ込まれるのを感じた。私も魔力調整に慣れていなかったときは、よく大量の妖精を呼び出しては魔力切れで倒れたもんだ」

あ、だから妖精が集まる前に弾くのをやめろと言ったのか。そして、今まさに魔力切れとやらで倒れそう…。てか、いつもピアノ弾いたあとに疲れてたのはこのせいか。今回は感情込めようとしたときに魔力も一緒に込めてしまったって感じかな。

「どうしましたの?!リィフェルトちゃん大丈夫ですか?」

ティルやシェイマー、ライアン、デイビットも集まってきた。

「何があったのですか?」

シェイマーが尋ねた。

そうか。みんなは妖精が見えないから何が起きたかわからないのか。

「私が魔力の調整に失敗してしまって…」

「まぁ!それは休んだほうが良さそうですわ」

「そうだね。隣の部屋で休もうか。カルティア、任せてもいいかい?」

「はい」

私は隣の部屋へのベッドへと運ばれた。

「魔力切れした際には魔力回復薬や回復促進薬を飲むのが一般的ですが、10歳以上でなければ服用できません。ですので、少しだけですが私の魔力を流し込みます。本当は他者の魔力を子どもに流すのも良くないのですが、薬を飲むよりは体への影響は低いので」

そう言ってカルティアは私の手を握り魔力を少しだけ注いでくれた。

なんだか少し楽になった。そして、ベッドに横になると一気に眠気に襲われてそのまま眠ってしまった。

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