コンサートにて
コンサートの日が訪れた。
「はじめまして、ルイ・マクスーニの妹のリィフェルト・マクスーニと申します。本日はよろしくお願いいたします」
「はじめまして、ライアン・グスリングです」
赤髪の美少年ライアン。お兄様の話によると伯爵家の次男で、大変優秀らしい。剣術の腕前もなかなかなのだとか。
「デイビット・ホルネンスです」
デイビットは公爵家の三男で、兄が二人、妹が一人いるらしい。メガネが似合いそうなガリ勉っぽい見た目をしているのに、体を動かす方が好きらしい。
「ティル・ストリープですわ。以後お見知りおきを」
お兄様にまさか女友達がいるとは…。ティルは侯爵の長女で、弟が一人いるらしい。弟は私と同い年だとか。
きれいな金髪をなびかせながら笑う姿はまさに女神様。眼福である。
「シェイマー・キャステンです。よろしくお願いいたします」
二人目の女友達。将来どっちかがお兄様のお嫁さんになったりするのかな。シェイマーは、この中で一番真面目らしい。ただ、何事も丁寧に行うせいで、全てが遅いと聞いた。マイペースなのかな。
ちなみに、私ら兄妹とデイビットは公爵、ティルが侯爵、シェイマーとライアンが伯爵という感じである。
「さて、行こうか」
お兄様に手を引っ張られてホールへと入っていった。お兄様は相変わらず優しい兄のままだ。
「わぁあぁああ!すごく美しいですね」
思わず声を上げてしまった。ホールは直方体の所謂シューボックス型だ。天井や壁には綺麗な装飾が施されており、大変美しい。
「本当ですわね。わたくしも感動していますわ」
ティルも初めて来たようで、目をキラキラさせながらキョロキョロしていた。
今日のコンサートは有名なピアニストのアンドレ・ハーデンのソロコンサート。作曲家としても有名で、美しく力強い曲を書く。そして、今日のコンサートは、彼自身が作曲した曲を彼が演奏するということで、かなりたくさんの人が聴きに来ていた。
私達は予約した席へと座った。
「リィフェルト様は普段どんな曲をお聴きになるのですか?」
隣に座っているティルがそう話しかけてきた。
「私は、アンドレの曲はもちろんですが、モーテン・キャルドールやサラ・フィクロスの曲を聴くことが多いです」
「まぁ!わたくしもモーテンの曲はよく聴きますわ。いい曲ばかりですわよね」
「はい。どれも素敵で繰り返し聴いています」
「わたくしはスウィリの『花と雨』も好きでして」
めっちゃ話しかけてくんなぁ。正直、人と話すのそんなに得意じゃないから、早くコンサート始まってほしい…。
しばらくすると本ベルが鳴った。
ホールの照明が落ち、舞台にあるピアノにスポットライトが当たった。そして、ピンスポットライトが下手側を照らすと、アンドレ・ハーデンが登場した。
彼は静かにピアノ椅子に座り、一曲目を弾き始めた。
一曲目は『春の森』
暖かな春をイメージして作られた曲である。オーケストラ版の楽譜も作られており、みんながよく聴く曲の一つだ。
生で聴くのはやっぱりいいなぁ。演奏者の姿を見るのも好きだ…し…?ん??なんだあれ。
アンドレの周りになにかいる。キラキラ光っている気がする。
「お兄様、アンドレ・ハーデンの周りになにかいるのですが、あれは何ですか?」
隣に座っているお兄様に尋ねた。
「え??何も見えないけれど」
「え、でも、ほら、楽譜を置くところとかピアノの周りにいますよ」
「んー?」
お兄様には見えていない?
「どうされました?」
ティルが話しかけてきた。
「アンドレ・ハーデンの周りになにかいるのですが、見えますか?」
「周り…?いえ、特にはなにも…」
「そうですか」
「リィ、今はコンサート中だし、またあとで聞くよ」
「わかりました」
ティルにも見えていないのか。あんなにもはっきり見えるのに。
あ、もしかして、年齢が関係しているのかな。よく小さい子どもは大人には見えていないものが見えるっていうし。
まぁでも、あとで他の方たちにも聞いてみよう。
コンサート終了後。
「それで、リィ、一曲目のときに話してたことの続きだけれども、どんなのが見えたの?」
「水色とか緑とかいろんな色の光が、キラキラ飛んでたの」
私は、コンサート中に見えたものについて話した。結局あれはコンサート中ずっとピアノの周りにおり、終わった途端消えた。
「なんの話だ?」
デイビットが不思議そうな顔をして聞いてきた。
「さっきのコンサートのときにリィが、いろんな色のキラキラ光るものがピアノの周りにいたって言っててね。でも、僕には何も見えなかったんだ」
「わたくしにも見えませんでしたわ」
「俺も特に何も見えなかったな」
「でも、ほんとにー」
「それは妖精だよ」
?!
後ろから大人の声がし、驚いて振り向いて見るとアンドレ・ハーデンがいた。
「アンドレ・ハーデン様!?どうしてここに…?」
「ちょっと君に用があってね」
「私にですか?」
「そうだよ。さっき少し話しを聞かせてもらったが、お嬢ちゃんは妖精が見えるんだね」
「妖精…。え!?あれは妖精なんですか?」
「そう。あの子達は私の音に集まっていたんだ。そして、私も妖精が見える体質なんだよ」
まじか。あれは妖精だったのか。というか、妖精なんて実在したんだ。
「妖精が見えるなんて羨ましいですわ!」
「えぇ、本当に。私も見てみたかったです」
ティルとシェイマーが羨ましそうにこちらを見てきた。
いやぁ、私もまさか見えるとは思ってもいなかったよ。
「ちなみに君は今、どれくらいはっきり見えるんだい?」
ん?はっきり見える見えないがあるの?
「えっと、私が今日見たのは、ぼやっとした丸い光でした」
「そうなんだ。じゃあ、まだはっきり妖精が見えるわけではないんだね」
「はっきり見えるとどんな感じなのですか?」
「人の姿をしていて、それぞれ好きな格好をしているね。基本、髪の色と同じ色の服装だけれども、変わった子は違う色とかカラフルなのとか着ていて面白いよ」
ほぉ。前の世界でよく見たものと似てそうね。
「あの、どうしてリィには妖精が見えるんでしょうか」
お兄様がアンドレ・ハーデンにそう尋ねた。
「残念ながら、見える原因っていうのは明らかにされていないからわからないんだ。私と同じピアニストでも見えない人ばかりだしね」
「…そうですか」
「まぁ、でも、途中から見え始めたって人もいるからね。君等もみえるようになるかもしれないよ」
「「「本当ですか?!」」」
お兄様とティルとシェイマーがハモった。
「うん」
「よかったぁ」
「見えるようになりたいですわ」
「私も!」
3人共そんなに見てみたいのか。
デイビットとライアンは妖精に興味がないのか、二人でなにやら話していた。
「そうだ。お嬢ちゃんは何か楽器はできる?」
「はい、ピアノが弾けます。あと、申し遅れましたが、リィフェルト・マクスーニと言います。よろしくお願いいたします」
自己紹介をするのをすっかり忘れていた。私に続いてみんなも自己紹介をした。
「ありがとう。リィフェルトちゃんはピアノが弾けるのか。他の子達は何か弾ける?」
「僕はピアノとヴァイオリンが弾けます」
「わたくしはピアノが少し…」
「私はピアノとチェロです」
「俺は何も…」
「おれはピアノとフュールが少々弾けます」
お兄様、ティル、シェイマー、デイビット、ライアンの順で答えた。デイビットは楽器は習っていないのか。フュールはハープのような弦楽器だ。
「それなら、今度私の家に弾きに来ない?リィフェルトちゃんには妖精を近くで見せたいし」
「いいのですか!?ぜひ伺いたいです」
「ありがとうございます!」
みんな嬉しそうにお礼を述べた。
こうして後日、アンドレ・ハーデンのお家にみんなで行くことになった。
名前考えるのって大変です…。