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最後の謀。

晴政様は不殺系主人公です(大嘘)。自らの手で誰かを殺したことは一度もありませんから‼︎



 

 「申し訳御座いませぬ」


 焼失した元の陣に代わって新たに設けられた安東軍の陣幕にて、南部晴政が安東舜季に対して頭を地に付けて謝罪していた。


 「あっ、頭を上げてくだされ‼︎晴政殿‼︎」


 「長野衆の離反に気付けなかったのは私の失態、どうかお許しを」


 「晴政殿が悪いわけではない‼︎何卒、頭を上げてくだされ‼︎」


 舜季がそこまで言ったところで、晴政はやっと頭を上げた。舜季が言葉を続ける。


 「こちらはむしろ感謝したいくらいで御座います。あなた方は戸沢軍の奇襲を退け、私の命のみならず将兵達の命を救ってくれた。今度はこちらが恩を返す番です、あれを見て下さい‼︎」


 舜季が指し示した先には一晩で大部分が燃え、禿げ上がった山。そして露わになった角館城の掠手門(裏口)があった。


 昨夜の奇襲部隊もそこから出陣したのだろう。


 「虎口(正門)からでは無く、あそこから攻めれば容易く角館城を陥落させることができましょう‼︎更に敵は昨夜の奇襲の失敗により兵数が減っております。我ら安東軍にお任せあれ‼︎」


 


 かくして安東軍は少なくない犠牲を出しながらも掠手門より攻撃を加え、見事角館城を落とすことに成功した。


 安東舜季の怒り様は凄まじいもので、戸沢家は一族郎党斬首されるところだったが、晴政の取り成しによって2年前の南部領への進攻に参加した戸沢政安を含めた数人の家臣達が切腹することで、戸沢家は族滅を免れる形となる。


 当主の戸沢道盛は晴政に恩義を感じ、残った家臣達と共に南部家に服属することとなり、ここに戦国大名としての戸沢家は滅亡することとなった。


 戸沢家の領地は約定通り、安東家と南部家で半分ずつ折半されたが、角館城は南部家の功績の方が大きいと、安東家から譲られることとなった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 南部軍は戦の勝利を祝って、軍全体で宴を開いていた。中央には斯波詮高と戸沢政安の首が据えられている。


 「はっは〜晴政サマ‼︎相変わらず戦だけは強ええなあ‼︎」


 「やかましい」


 九戸信仲が酔っ払って、家臣にあるまじき態度で晴政に絡んでいる。自分が巻き込まれたら叶わんといった風に、周りの人間はそれをヒヤヒヤしながら見て見ぬふりを続けていた。


 晴政は正直ぶん殴りたかったが、コイツの息子は後にかの九戸政実となる男である。一族間に何か遺恨が残ったら困る。


 「晴政様ぁ、守信にも構ってくださいよぉ」


 完全に出来上がった大浦守信が引っ付いて来る。


 晴政は正直ぶん殴りたかったが、コイツの息子は後にかの津軽為信となる男である。一族間に何か遺恨が残ったら困る。


 晴政は怒りを酒で誤魔化しながら、ひたすら我慢するのだった。


 「晴政様、此度の戦は@&)※ljm」


 信愛も酔っ払っているのだろう。普段は抑えているどぎつい津軽弁のせいで何を言っているのか全く聞き取れない。


 晴政はなんだか撫でたくなったが、後で怒られそうなのでやめた。


 まあ思うところはあるが、今はゆっくり楽しんでくれたら良い。




 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 


 戸沢領から北の空を眺める。


 鳥というのは危機察知能力がとても優れているらしい、何でも嵐が来る数日前にはそれを察知して逃げてしまうとか。


 北の空から鳥の大群が、南部軍の頭上を越えて飛び去って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 「舜季様‼︎急報です‼︎領内に所属不明の軍勢が出現‼︎現地で略奪を行いながら猛烈な速度で進軍した軍勢が本拠地の檜山城を包囲している模様‼︎至急救援が必要とのことです‼︎」


 角館城が落城した翌日のことであった。南部軍と同じく戦勝祝いの宴を開いた安東軍に、突然の緊急事態が発生した。


 安東舜季は二日酔い気味の頭を働かせて、事態を何とか飲み込む。 


 「浅利家か‼︎あの不義者共め‼︎同盟を忘れおったか‼︎」


 舜季はすぐさま救援に向かおうとする。


 「お待ち下され、舜季殿。何やら大事ですな、乗りかかった船だ。我らも協力致しますぞ」


 不意に声を掛けられ振り返ると、そこには先の戦にて共闘した南部晴政の姿があった。


 「南部軍が来てくれるなら千人力じゃ‼︎済まんがまたよろしく頼み申す‼︎」


 「承知致した。横取りを狙ってくる奴らがいるやもしれん、我らは角館城の防衛体制を整えてから向かいます。安東軍は先に行って下され」


 「うむ」

 

 舜季はそう言って、安東軍を率いて自らの本拠地(秋田県北部)に向け帰って行った。


 南部軍も少し遅れて安東家の本拠地である檜山城に向かう。


 


 

 しかし南部軍の将兵達はことここに至っても、晴政がなぜそこまで安東家に協力するのか段々と疑問に思っていた。


 答えを軽く教えておこう。晴政は斯波家との戦いから始まったこの一連の戦にて、数多くの謀を張り巡らせたが、一番最初に仕掛けた謀はまだ発動していない。


 そしてその最初の謀は最後の謀でもある。


 最初で最後の謀を最大限に活かすのが、安東家からの信頼だった。ただそれだけのことである。


 

 

 

 戦いの終わりが静かに近付いていた。



土下座は、無料や‼︎

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