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謀略。

ゆっくりしていってね‼︎(2000字なのですぐ終わる)



 戸沢家本拠地角館城



 南部軍に先んじて戸沢領に攻め込んでいた安東軍は、角館城に籠城する戸沢軍に苦戦していた。


 「この人数差でまだ攻め切れぬか。角館城、噂に違わぬ堅城よ」


 安東家当主であり総大将でもある安東舜季は、落ち着いた様子でそう呟いた。


 「だが晴政殿が既に斯波家を下したと聞く。南部軍が戦線に加われば、勝利はもう決まったようなものよ」


 晴政殿から密約を持ちかけられた時は驚いた。南部家と我が安東家は、昔から互いをあまり良く思っていない。協力するなどもっての他だった。


 互いの感情よりも互いの利。時代は変わったということだな。


 良いぞ良いぞ、晴政殿。安東家と南部家、協力してこの戦国乱世を生き残って行こうではないか。


 


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「今回の戦の主題は、安東家に戦ってもらい、そして出来るだけ死んでもらうことだ」


 角館城に向け進軍する南部軍の諸将は、南部晴政に呼び出され戸沢攻めの展望を聞かされていた。


 「この戦をきっかけに、安東家と同盟を結ぶのではないのですか?」


 北信愛が疑問を口にする。晴政は不気味な笑みを浮かべながら話を続けた。


 「ふん、それも考えていたんだが、もう一つ良い考えが浮かんでな。信愛、(石川)高信の叔父上がこの軍に参加していないのを不思議に思わなかったか?」

 

 「……? 確かに高信殿は経験豊富な信頼できる名将、いればとても心強かったでしょうね。


 しかし頼りになるからこそ国内の抑えにと、高信殿を領地に残して来たのだと、私は思っておりましたが……」


 「高信には別の仕事があるから残して来たのだ。まあ、今はまだ気にするな。それより戸沢家との戦に集中するとしようぞ」


 


 数日後、南部軍は角館城に到着。城への強攻を続ける安東軍と合流した。


 「晴政殿‼︎待っておったぞ‼︎」


 挨拶のため安東軍の陣幕を訪れると、安東舜季が満面の笑みで出迎えてくれた。


 「舜季殿、御壮健なようで何よりに御座る」

 

 「晴政殿こそ斯波軍との戦の話を既に伺ったぞ、いやはや鮮やかなお手並み、見事の一言に尽き申す‼︎」


 「運が良かっただけにございます」


 「またご謙遜を‼︎ささっ、軍議の準備は整っておりまする。どうぞこちらへ」


 狸爺め、内心返り血に染まった南部軍の姿に、金玉縮み上がっておるだろうに、ちっとも内心を見せず上手く取り繕っているものだ。


 「舜季殿、この辺りの地形を見せてもらえるか。あなたほどの男だ、既に鼠の通り道一つまで調べ尽くしておるのだろう?」


 「ははっ‼︎それは言い過ぎで御座います。それなりですよ、それなり、どうぞこの地図です」


 地図を見て数秒、晴政の頭の中にて始まりから終わりまで、戦の全てが組み立てられた。


 「舜季殿、この辺りの山に根付いておる国人、長野衆とは交渉しているのか?」


 「当然してはおりますが、独立心の強い国人達です。ゆえに強硬的な態度を控えて交渉しておりますが、返事が芳しくなく……」


 「オレに良い考えがある。交渉を任せてくれ」


 「おおっ、晴政殿がそう言ってくれるなら安心だ。成果をお待ちしておりますぞ」


 「かたじけない」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 翌日、長野衆の頭領のもとに一通の書状が届けられた。頭領は中身を確認して驚愕した。


 [これ以上の交渉は完全に無駄だと判断致しました。今からこちらの味方に付き詫びを入れようとも、必ず一族郎党根絶やしに致します。あなた方が地に頭を擦り付け、泣いて必死に助命を懇願する様はとても愉快でしょう、楽しみにしております]


 その内容はあまりに傲慢で恫喝的で、ふつふつと怒りが湧き上がって来た。そして戦う相手が決まったとも言える、戸沢家に味方し勝利するのが唯一の生き残る道である。


 何より自分達をここまで虚仮にしたこの男が許せない。


 


 書状には安東舜季と差出人の名前が大きく書かれていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「舜季殿、安東軍は連日の城攻めにて相当の被害が出ており、疲れも溜まっておりましょう。これより南部軍が城攻めをお替わり致します」


 「おお……晴政殿。何とも有り難い申し出、そなたこそ誠の義将というものよ。分かり申した、安東軍は一旦退がりましょう」


 「我が軍は陣を城の近くに移動します。安東軍は我らが使っていた陣に入り、休んで下され。長野衆との交渉は上手く行っておりまする、側の山道から攻められることもないでしょう」


 「それはかたじけない」


 「いえいえ、安東家と南部家は既に共に戦う同志に御座います」


 晴政は満面の笑みで舜季に語りかける。舜季は感激し、ただただ目の前の男への信頼を深めて行くばかりであった。

 

 


 南部軍の城攻めが一段落した夕刻、連日の城攻めの疲れを癒すため熟睡する安東軍の陣幕が、にわかに騒がしくなった。


 「敵襲‼︎敵襲だ‼︎」


 陣幕の側の山道より長野衆を味方に付けた戸沢軍が、奇襲を仕掛けて来たのだ。付近の山道を知り尽くす長野衆の協力があったからこそ、可能となった奇襲攻撃である。


 長野衆の調略が上手くいっていると晴政から聞かされていた安東軍は、山道方面の警戒を怠っていたため、対処が遅れた。


 安東軍はほぼ一方的に崩される。中にはまだ眠っているものさえいる始末である。


 安東舜季は死を覚悟した。このままでは安東、南部連合軍は全滅だ。


 その時、安東軍の陣幕に多数の火矢が射掛けられ、それが異常なスピードで燃え上がる。


 照らし出されたのは敵の姿、そして凄まじい速度で救援に訪れた南部軍の姿だった。


 種を明かしておくと、火矢を射掛けたのは実は南部軍であり、その火が迅速に燃え上がったのは、もともと南部軍の陣地だったこの陣に、あらかじめ大量の燃料が仕掛けられていたからである。


 戸沢軍の奇襲から、陣幕の炎上まで全て晴政の(はかりごと)である。


 しかし安東舜季は気付くことができなかった。現在進行形で命を救ってくれたのは南部軍であり、火矢を射掛けたのは突然裏切った長野衆である。


 奇襲は気付かれていると意味が無い。戸沢軍の奇襲部隊は、安東軍に大きな被害を与えたものの、待ち構えていた万全の南部軍に容易く制圧された。


 燃え上がる安東軍の陣幕から出た炎はそのまま山火事となり、何とか逃げ延びた戸沢軍を焼き殺した。


 当然安東軍も無傷なはずがないが、南部軍の決死の救出により、予想以上の人数の命が救われた。


 もちろんこれも安東軍に恩を売り、信頼を損なわないための謀の一つなのだが……。


 


 

 それでも安東舜季は気付くことが出来なかった。負傷した己を抱え、炎から救い出してくれたのは南部晴政その人だったから。


 


クズ行為は気持ちが良いゾイ‼︎

史実でえげつない謀略をしまくった人達の気持ちが、少し分かってきました(末期症状)。

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