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統一。

(悲報)10万字ブースト、嘘だった。


でも頑張るぜ‼︎




 天文24年(1555年)




 蘆名、相馬、岩城家を屈服させた南部家は、奥羽平定への最後の仕上げとして、満を持して最早死に体の伊達家への侵攻を開始した。


 伊達家は南部家に支援される伊達義宣(大崎義宣より改名)と、近年では気力のすっかり衰えた伊達稙宗の二派に分裂している。


 南部軍の軍陣には義宣の軍も加わり、万全の体制と思われた。


 しかし圧倒的な戦力差にて押し潰すのみと思われた人々の予想とは裏腹に、南部軍の総大将を務める大浦守信の率いて来た軍勢は約6000兵程度であった。


 義宣の3000兵と合わせて9000。充分過ぎる数ではあるが、前回の仙台での会戦の動員に比べれば、見劣りはしないでもない。


 それに対する稙宗の軍勢は7000程度、充分に逆転のあり得る人数差である。


 南部家はこのところ勝利が続いているので、いささか相手を舐め過ぎているのではないか?


 様々な憶測が飛び交うも、その戦場で起きた惨状を予測出来た者は一人もいなかった。


 まず兵の少なさは、稙宗を野戦に引きずり出すためのものである。


 始めから籠城策を取れば、南部軍の万を超す後詰めに包囲され、城の陥落は必至だ。


 外部の勢力にも最早斜陽の伊達家を救援し、わざわざ南部家と事を構えようとする物好きなど存在しなかった。


 唯一の望みである長尾家からも、過去に養子を送り込み家を乗っ取ろうとしていたこと。朝廷に認められた陸奥守である南部晴政に正当性があること。武田との戦いを優先したいこと。など多くの理由が重なり、にべもなく断られている。


 だからと言って野戦でも勝てる保証は全くないのだが、僅かな望みに賭けて野戦で勝ち続け、各個撃破を狙って行くしか道が残されていないのだ。


 かくして大名としての伊達家の存亡を懸けた戦いが始まった。


 合戦の裏では、南部晴政の仕掛けたおぞましい策謀が渦巻いているとも知らずに……。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「総大将としてこの策を使ったならば、修羅へと落ちることとなろう、オレと同じくな。しかしお前ならそれが出来ると信じている。一軍を任せる四将は何も親類縁者だから選んだ訳ではない。誰よりもオレの側で南部の戦を見てきた四人だからこそ選んだのだ」


 出陣前に晴政から掛けられた言葉が脳裏をよぎる。


 大浦守信は笑っていた。これから始まる非道な行いが、自らの性情にぴたりと符号するように感じたからだ。


 美しくなくとも、勝ち続ける生涯を送りたい。


 幼き頃から何故だか、はっきりと頭に刻み込まれていた感情。


 それを実現させてくれる主君に巡り会えた幸福。






「晴政様、貴方はずるい人です……。非道も外道も独り占めなんかさせませんよ。汚れ役を回して欲しい好き者も、ここにいるんですからね」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「何故、父上と殺し合わねばならないのか……」


 伊達義宣は嘆いていた。


 気付いたら大崎家より追い出され、気付いたら反稙宗派の旗印として担ぎ上げられ、気付いたら実の父である稙宗とこうして戦場で対峙している。


 それでも黙って従っていたのは、南部家に従属する形であったとしても、一応の形として伊達の家名を残すためだ。


 覚悟は決めたはずだが、いざこうして父を殺してしまうかも知れないという場に立たされると、己の業の深さに恐れを抱いてしまう。


「もう後戻りは出来ないがな……」


 この合戦では自らの率いる軍勢は、南部軍の盾となるように、危険な前方に配置されている。


 しかし理由はそれだけではない。


 南部軍は背後で睨みを効かせ、義宣達が妙な気を起こさないようにと、いわば督戦隊のような役目を担っているのだ。


 義宣はその抜け目のない非情な陣容に、内心恐ろしいものを感じるが、聞くところによると南部軍を率いているのは、南部晴政では無いと言う。


 率いているのが晴政だったなら、一か八か戦場で裏切り彼を討ち取ることで、南部家の崩壊を狙えたかも知れない。


 だが現実はそう上手くは行かない。


 義宣に残された道は、目の前の父の軍と戦うことだけだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



南部軍6000      

伊達軍(義宣)3000

    

           北

     



          南部軍

        伊達軍(義宣)

      


西                      東


        伊達前軍(稙宗)

        伊達後軍(稙宗)




           南


伊達軍(稙宗)7000

 

          

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 

 各々の思惑が複雑に絡み合いながら、遂に合戦の火蓋は切られた。


 軽い矢合わせが終わると、先頭を務める伊達軍(義宣)がまず始めに、相手と接触する。


 槍衾による攻防が繰り広げられ、相対する両者が一進一退の状況となった。


 中央がもつれ合っている間に、すかさず南部軍の騎馬隊がその機動力を生かして、両翼からの包囲を行う。


 騎射を繰り返しながら、着実に伊達軍(稙宗)に被害を与えて行く。


 しかしその動きに積極性はなく、様子を窺うように付かず離れずの距離を保って矢を射掛けているのみだった。


 膠着した状況が続く中、戦場に異変が起こる。



 



 パーーーーン‼︎‼︎






 戦場に鳴り響く轟音。


 南部軍が新兵器、火縄銃を、前線に向かって一斉射撃した。


 当然、伊達義宣の軍勢も巻き添えに。


 続けて5回程、敵味方見境なしの一斉射撃が繰り返される。


 前線は敵味方入り乱れての混乱状態となる。


 伊達軍は両者状況の理解出来ないまま、南部軍総大将、大浦守信より更なる指示が下される。


「全軍、突撃‼︎」


 その指示と共に、南部軍の兵士達は懐に忍ばせていた、何やら少量の粉末を吸い込むと、異常に士気が上がり、恐れを知らぬ突撃を開始する。


 南部軍が服用したのは、芥子(ケシ)の未熟花より抽出された阿片と呼ばれる生薬。


 効能は興奮、鎮痛、陶酔。俗に言う麻薬である。


 南部領の商人が畿内で手に入れた南蛮由来の植物を、晴政の指示で津軽にて実験的に栽培したものだ。


 疲れも、恐れも、痛みも感じない兵士達の狂気の突撃が、味方であったはずの義宣率いる伊達軍の後背に襲い掛かる。


 突撃の間際に、先頭を走っていた兵士が一列になって太い銃身の見た事もない形の火縄銃を打ち掛けた。


 一つの銃身ごとに無数の小さな弾丸が発射される。


 これも晴政考案の散弾銃と呼ばれる代物だ。


 体勢が大きく揺らいだ義宣の軍勢に、南部軍の狂気の突撃が突き刺さる。


 背後から襲われた軍勢は壊乱、今まで戦っていた稙宗の軍勢の方へと肉弾として殺到し、陣形をずたずたにして行く。


 そのまま迫り来る南部軍に応戦しようにも、こちらへと逃げて来る義宣の軍に邪魔をされて、陣形を整えることすら覚束ない。


 そうこうしている内に、南部軍の散弾銃の第二射が至近距離で放たれた。


 前線が大きく削り取られる。


 既に軍としては崩壊に近い有様である。


 辛うじて体勢を保っていた後方部隊も、左右から様子を窺っていた南部軍の騎馬隊が突撃を仕掛けて来て、前線の援護にも行けない状況だった。


 そのような状況で、大きく崩れた前線に南部軍の容赦のない突撃が突き刺さる。


 前線部隊は総崩れ、その崩壊の余波が後方にまで及ぶ。


 崩れる味方の兵と共に、そのままの勢いで殺到した南部軍が左右の騎馬隊に気を取られる伊達軍の後方部隊に襲い掛かった。


 伊達軍はこれを持って総崩れ、伊達義宣、伊達稙宗は南部軍の騎馬隊による執拗な追撃の末、戦死した。






 合戦は南部軍の勝利に終わった。


 当主を失った伊達家は既に組織立った抵抗をすることが出来ず、程なくして桑折西山城、米沢城などが陥落。


 一時は奥州の殆どを支配下に置いた伊達家は、北方よりやって来た理外の暴威によって、ここに幕を閉じることとなった。


 新勢力に負けた旧勢力として、数多ある同様の大名家に名を連ねることとなる。


 そして伊達家の滅亡は南部家が、いや南部晴政が東北の覇者として君臨することを意味する。


 全国数多の大名家に先駆けた地方の統一は、驚きと畏敬を持って迎えられることなった。


 




 南部鶴、そして北方鎮護の旗印。


 南部家の二つの象徴が、冷たい風に吹かれて翻っていた。

 





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 おまけ


 1560年頃の作中の勢力図です。例の如く国境線は適当だし、マイナー過ぎる勢力は入れてません。


 南部家の圧力怖すぎて草。


挿絵(By みてみん)





ここからは大国間のグレートゲームの話みたいになって行くので、ちょっと物語の書き方が変わってしまうかも知れません。


具体的に言うと地の文多目で、平気で数年飛んだりするかも。

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