お前のシイタケ見せてみろよ。
オレにもポイントくれよ〜。頼むよ〜。
何でこんなこと言い出したかっていうと、歴史の日間一位さんと差が開き過ぎてて、恥ずかしいだろうが‼︎
何事も全ては上手く行かないものである。
戦場で無敵の強さを誇る南部晴政も、実は語られていないだけで、多くの失敗を犯している。
今回はその一部に触れたい。
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「シイタケが食いたい」
ある日の夕食のとき、晴政はふと思ったことを口に出した。
夕食に招かれてきた家臣達は、その一言に目を丸くして驚いた。
「晴政様、南部家の資金は全て領内の富国強兵へと使うと、公言されたところではありませぬか。我らも家臣の立場として強く止めることは出来ませんが、その様な贅沢品を所望されては、先の言葉を違えることになりますぞ?」
「……シイタケって贅沢品なのか? すまん、無知な主君に一つご教授願いたい」
ここ数年で南部晴政として生きてきた方の記憶が、薄れて来ているのも事実。晴政はこういうときは素直に頭を下げることにしている。
家臣達は慌てて頭を上げるように願うと、晴政にシイタケの現状について語り出した。
「危険な山に分け入って、一攫千金を狙う者もいる程です。それでも見つかる可能性は非常に低い。まあ、だからこそ我らが南部領の昆布やアワビが、出汁を取るための唯一の手段として高く売れる訳ですが」
「ふふふ、この晴政とあろうものが、そんな金のなる木を放って置いたとはな。この晴政に任せろ、シイタケをオレの手で生み出して見せようぞ」
晴政は現代の記憶を総動員する。そしてその知識とやらは残念なくらい乏しかった。
なんか穴の空いた木を、森に置いといたら生えて来るんだろ?
「まずはこのくらいの短く切った木に穴を開ける」
「南部様、穴ってどうやって開けるんだあ? そんな道具持ってねえべ」
「……まあ良い。鉈か斧で適当に切り込みを入れとけば出来るだろ」
「分かったあ」
「あと何か知らんが、ジメジメしたところに並べて置いとけ。多分、シイタケ生えて来るから」
「嘘だあ」
「生えてる‼︎ 生えてるぞ‼︎」
「……南部様、確かに凄えけど、生えたのがこんだけじゃこの木の方が高くつくべ」
「ぐっ、まあ良い。この後が大事なのだ、もういい、オレ一人でやるから、お前らは農作業に戻れ」
「んだ、そんじゃそうするべ」
ペチペチペチペチペチペチペチペチ。
農民が休憩がてら戻って来ると、シイタケで木を一心不乱にビンタする晴政の姿があった。
農民はなんだか哀れなものを見る目で、話し掛けるか非常に悩んだが、声を掛ける。
「な、南部様。それは一体……」
「お前には分からなくて良い。これはこの小癪な木材どもに子種を植え付けているのだ。今に見ていろ」
「……」
「あんまし去年と変わらねえなあ。南部様、まだ続けるのかい?」
「……何故だ? 何が悪い……。そうだ、原木の穴に何か弾丸みたいな物を埋め込んでいるのを、見た覚えがあるぞ。弾丸、弾丸か……」
「オラもう農作業に戻るぞ」
パーーーーン‼︎‼︎
農民が休憩がてら戻って来ると、原木を火縄銃で撃ち抜いている晴政の姿があった。
「南部様……、怒らないで欲しいべ」
「何だ?」
「それは多分、間違ってると思うべ……」
「……やってみなければ、分からんだろう?」
案の条、シイタケは生えて来なかった。
後日、北信愛に相談したところ、彼は非常に真面目に栽培に取り組み、生えやすい木や、生えやすい環境の研究を至極真っ当に行い、それなりの生産量を得ることに成功した。
ほとんど信愛の功績なのだが、晴政はシイタケを籠一杯に抱えて、八戸城内を走り回って、自慢していたという。
晴政や信愛から学んだ農民は、この後もシイタケの栽培を続け、領内で指折りの大金持ちになったらしい。
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「お父しゃま、抱っこして」
「おちちうえ、私もして欲しい」
「……私も」
晴政はこの世の春を謳歌していた。
幼い娘達に囲まれ、戦場での彼を知る者からしたら信じられないくらい、ニヤついていた。
「はっはっは、順番にな。痛っ、止めて、髭にぶら下がらないで……」
「貴方様、私にも構って下さい」
「おおっ葵、お主は今夜も可愛いがってやるから少し我慢してくれ」
「もうっ、貴方様ったら……」
照れて俯いてしまったのは、妻の葵。
元々は南部領の小さな商家の娘なのだが、城下で彼女を見つけた晴政が一目惚れしてしまい、晴政は身分を隠して必死のアプローチを仕掛けた。
やがて謎の髭面男の何に惹かれたのかは分からないが、彼女も結婚を快諾し、晴れて南部家へ召し出されることとなる。
旦那の家だと連れていかれた先が八戸城で、結婚する男の本当の名前が、南部晴政だというので、彼女の親族一同は卒倒しそうになった。
どこの名家の出身でもない女と恋愛結婚した晴政は、領民や家臣からの変人だという評価を不動のものとしたが、結婚後の夫婦仲は非常に良好で、三人の娘をもうけるまでになった。
だが、そんな順風満帆に思える生活にも、一つだけ問題がある。
率直に言うといくらヤっても男が生まれなかった。
晴政は武家の棟梁である。
流石に男系の子孫を残せないのはマズい。娘を有力な家臣に嫁がせて一門衆にするという手もあるが、所詮晴政の直接の子供ではないため、その家臣に無用な苦労を負わせることになってしまうかも知れない。
果ては南部宗家の支配力の弱体化が起こり、南部家大分裂、滅亡。なんていう黄金パターンまで普通にあり得る。
「どうしたら良いんだ〜? 叔父上、助けてくれ〜」
もしや自分の種に問題があるのではないか?
自信を無くした晴政は、ヤケ酒を起こして完全に酔っ払った状態で、経験豊富な叔父である石川高信に泣きついていた。
「晴政様、ご安心めされよ。娘が出来るなら、息子もいずれ出来まする」
「それこそ分かんねえだろう? 要は運だよ運、オレにはきっと戦場以外のツキがねえんだよ」
「なれば、側室を娶ってはどうか? 一人の女子が生める人数には限りがある。あまり葵姫に無理をさせ過ぎるのも良くないでしょう」
「やだ。葵に怒られるもん」
「乱世の風神も、嫁の前では形無しですか……」
「叔父上の息子くれないか? 亀九郎(後の信直)だっけ、何故か嫌な予感しかしないけどな‼︎」
「……有難い話ではありますが、もう少し嫡男を作る努力をなされては? 我が息子を養子とするには些か性急に過ぎる気が致します」
「努力はしてるんだよなあそれが……、そのせいで腰痛めてんだよオレ」
「……もう私から言えることは一つです」
「?」
「神仏に祈りましょうぞ」
「……素晴らしき名案だな」
晴政は翌日、八戸城を朝早くに脱走すると、領内各地の寺社仏閣を数週間掛けて回った。
前世も含めて初めて行った中尊寺の金色堂は、とても美しかった。
この年、晴政の祈りが通じたのか葵が身籠り、南部家は待望の男子を迎えることとなった。
鶴千代と名付けられたこの男児こそ、何故あんな鬼畜からこの聖人が生まれるのかと、後世にて首を傾げられる治世の名君、南部晴継である。
サブタイトル思い付いて、一人で爆笑してたのは私だけですか?
はい、下ネタです。すみませんでした。




