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戦後のゴタゴタ。

ちょっと執筆速度が上がって来た気がします。


やる気さえ出れば、すぐに書き終わる。

宿題みたいなもんですね。





 「追撃戦で狙う人間には優先順位がある」


 追撃戦が始まる前に晴政が南部家の諸将へ言い聞かせた言葉である。


 「一に伊達晴宗、ニがその他諸将、三が伊達稙宗だ」


 「敵方の総大将の稙宗殿が最後ですか?」


 「放っておいても後数年の内には寿命で死ぬだろう。それにこの戦に負けた時点で、相手方の家臣や諸侯からの稙宗への信頼は破綻している。最早、奴に価値はない」


 「成る程、それで後継者の晴宗殿を重点的に狙うのですね」


 「晴宗さえ殺せば、伊達家は後継者が不在となり、伊達家の更なる分裂を狙える。強い血縁関係を持った奴らの中には、伊達家の跡継ぎの資格を有する者が大勢いる。その後継者争いが起こったときこそ、伊達家の完全な分裂という訳だ」


 「そしてその争いを南部家が時には煽り、時には制止し、じわじわと侵略を進めて行く。そういう事ですな?」


 「その通り、理解出来たなら早速、追撃を開始せよ。兵力の配分は今言った優先順位に沿うように」


 「「「はっ‼︎」」」


 家臣達の返事と共に、各々が追撃を開始した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 「晴宗の若造を擁立したのは、とんだ失策であったな……」


 「あの男、名門伊達家の頭領たる器というものが、まるで感じられぬ。神輿は軽い方が良いと言っても、口だけは達者だから困る」


 「見誤ったのは、南部軍の強さよ。今からでも降伏出来ないだろうか? このままでは、我らも殺されてしまう……」


 南部軍の執拗な追撃の前に疲れ切った表情を見せるのは、桑折景長、牧野久仲、中野宗時の三人。


 伊達晴宗を担ぎ上げ、天文の乱を引き起こした張本人達である。


 彼らは戦前に晴宗に協力し家督を取らせることで、後々の伊達家内での影響力を高めようと画策していた。そしてあわよくば晴宗を傀儡とし、伊達家を裏側から乗っ取ろうとも思っていた。


 だがその計画はこの敗戦によって、大きく狂わされることとなる。


 地域への影響力を大きく落とし、風前の灯火となった伊達家を乗っ取ったところで、それが何になるというのだ?


 そもそも今の状況で、南部軍から逃げ切れるかも怪しい。彼らには晴宗を生かすために命を懸け、殿を務める気などは毛頭ない。


 現在も未来も絶望しか見えない状況であった。


 「南部家に降伏するとしても……」


 「手土産が必要であろうな……」


 「南部晴政が納得する手土産が……」


 三人は顔を見合わせて、悪い笑みを浮かべる。


 まだ自分達に残っている交渉材料が、一つだけある。


 何も言わずとも互いの考えていることは、手に取るように分かった。




 


 その夜、厳しい撤退戦に精魂尽き果て、倒れるように眠っていた晴宗の陣地が突然、奇襲される。


 そしてその下手人は南部軍ではなかった。





 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 追撃戦の戦果が次々と届けられていた晴政の本陣に、この日三人組の来客があった。


 「南部陸奥守様……」


 「これなるは此度の戦役を引き起こした主犯の一人である、伊達晴宗の首に御座います……」


 「これをもって我々の命を許して頂きたく……」


 晴宗を裏切り彼を討ち取った景長、久仲、宗時の三人であった。


 「ふざけるでない‼︎ 何度主君を裏切るつもりだ‼︎ この恥知らず共が‼︎ そうやっていつかは晴政様の首でも狙う気か‼︎」


 「晴政様、私が手討ちに致します。ご命令を……‼︎」


 晴政の側に控える石川高信と北信愛の二人が、激昂している。


 やはり交渉は難しいか……。一縷の望みに懸けて来た三人も南部軍の剣幕の前に、震え上がっていた。


 自分達の周りを取り囲む南部軍の兵士達も、返り血に濡れたその顔に獰猛な笑みを浮かべて、晴政からの指示を今か今かと待っているようだ。


 




 「……見事なり」






 上座に座る晴政からにわかに放たれた一言に、場のざわめきが止まった。


 晴政はさっと立ち上がったかと思うと、差し出された晴宗の首に両手を合わせて弔いの念を表す。


 そして今度は震えながら平伏する三人の側に、かがみ込んだ。


 余りの恐ろしさに、三人は全身の血液が逆流するような感覚に襲われる。


 ぼたぼたと油汗が地面に落ちた。


 「面を上げよ」


 晴政の声と共に、恐る恐る顔を上げると穏やかな笑みをたたえた晴政の顔があった。


 「分かる、分かるぞ。お主らはオレに仇なすことと、主君への忠誠心の間で大いに揺れていたのであろう。武士として当然のことだ、罪を許そうではないか」


 「あっ、有難き幸せ‼︎」


 三人は緊張から解放されると、我先にと再び平伏する。


 「だがオレの家臣にはしない。やって貰いたいことがあるのだ」


 「?」


 「伊達家の正当な後継者を擁立して貰わねばならぬ。そちらにおられるオレの家臣、義直殿の義息子である大崎義宣殿こそが、南部家が認める伊達家の正当な後継者だ」


 晴政の言葉に従軍していた義直すらも、驚いた表情をしている。


 義直は養子として、伊達稙宗より彼の次男である義宣を貰い受けた過去がある。


 おかしい話ではない。


 長男である晴宗が死んだ今、伊達家の家督の継承権は他家に養子に入ったとは言え、義宣にも充分にあると言える。


 「義宣殿を旗印として暴走する稙宗を打倒せよ。安心しろ、その戦いは南部家が存分に支援しようではないか。御三方、頼めるな?」


 「し、しかと承りました‼︎」


 



 平伏する彼らを尻目に、晴政は陣幕の奥へと消えて行く。すれ違い様に晴政の目を見た高信と信愛は戦慄した。


 何度か見たことがあるおぞましい目。


 二人は確信した。






 この主君はまた最凶で最悪に、ろくでもないことを考えていると。






 そして大崎義直の横を通り過ぎるときに、彼にだけ聞こえる声で呟いた。


 「義直、良かったな。稙宗から押し付けられたガキをやっと殺せるぞ」


 自らの心の奥底までを見透かすようなその一言を、義直は恐ろしく感じると同時に、この主君に一生ついて行こうと、改めて忠誠心を深めるのであった。






 南部軍は伊達家連合軍に対する追撃戦によって、諸侯の多数の家臣を討ち取り、更には伊達晴宗までをも討ち取ることに成功する。


 奥羽のパワーバランスは戦を勝利で飾った南部家に大きく傾く形となった。





感想をくだされ。

最新話の感想じゃなくてもええんやで?


活動報告ちょびちょび書いてます。


誤字報告を滅茶苦茶、指摘して貰っています。

本当にいつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 台詞のかっこよさ、話のテンポ。晴政に覇道を感じる。これぞ魔王感。 [一言] とても面白い。楽しく読ませて頂いてます。
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