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内政チートは一般人じゃ無理です。

お馴染みの内政話。でもこれが自分で書いてみると難しい‼︎



 天文11年(1541年) 南部家本拠地 三戸城

 南部晴政


 

 南部晴政に転生したオレは、いきなりやる事だらけで大忙しだった。


 南部家の本拠地であるここ三戸城は、3年前、家臣である赤沼備中に火を放たれてほぼ全焼してしまった過去を持つ。


 もっとも赤沼備中はオレこと南部晴政に、領土問題の裁定で嫌がらせされたり、妻を寝取られたことが原因でブチ切れたらしく、現代人の感覚で言えば悪いのは明らかにオレの方である。


 オレが憑依するまでの南部晴政は本人の能力は高いが、非常に素行が悪かったようだ。これでは家臣が頻繁に謀叛を起こすのも仕方がない。


 何はともかくオレの最初の目標は、焼失した三戸城の再建と、南部晴政のイメージ改善だ。

 

 三戸城の修復は未だに終わらず、当主であるオレの寝室から空が見える。


 陸奥国の寒空に泣きそうになりながら、オレは三戸城の修復を進めていくのだった。


 

 「信愛、修復がなかなかはかどっておらんようだな?」

 

 「……申し訳ございませぬ。どうにも今年の冷害のせいで、普請のために集めた領民達に活力がないようで……」


 

 そう答える男は南部家期待のホープ、北信愛。まだ若年ながら非常に聡明で、オレへの忠誠心も高い。


 それにイケメンである。畜生、羨ましい。


 

 「お主が謝る事ではない、しかしこのまま延々と時間が掛かり過ぎるのは問題だな……。よし、城の食料庫をもう一つ開けるぞ。それと建設のための木材を少し使って火を焚け。人夫達に何か温かいものを食わせてやろう」


 「へっ?よろしいので?」


 「構わん構わん、それと人夫達をいくつかの組に分けて仕事をさせろ。最も良い働きをした者達は、来年の年貢を半分にしてやる」


 「はっ、はい‼︎」


 「それと城の設計も見直しだ。オレの寝室など無くても良い、大広間か客室で寝る。天守閣もいらん、建物は一階建てだ。ただし石垣や防衛施設は絶対に手抜きするな」


 「しかと承りました‼︎」

 


 ふふふ、信愛がキラキラとした目でこちらを見ている。イメージアップ戦略が見事に成功したようだな。

 

 忠誠心のある奴は扱いやすい、まして優秀な奴は最高だ。これからも馬車馬のように働かせてやろう。


 信愛は晴政の悪い笑みを見ることは無く、足早に持ち場に戻って行くのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 陸奥は貧しい。特に我らが南部領である陸奥北部は輪をかけて貧しい。


 この時代の豊かさというのは、まず何よりも米だ。稲作に向いている、米が多く獲れる場所が何より豊かなのだ。


 南部領では北東から吹く冷たい風によって、毎年のように冷害が起こる。まあ簡単に言うと寒過ぎて稲が育たないってことだな。


 このころ日本中で当然のごとく行われている二毛作(1年のうちに同じ耕地で2種類の作物を育てる)も、南部領ではできない。


 こんな貧しさがほぼ現代まで続いたほどだ。


 何とかしなくちゃいけないよな……。この南部領を豊かにするのはオレが意識を乗っとってしまった南部晴政の願いだ。


 現代人なりに最初に考えたのは、稲作からジャガイモやサツマイモなど寒冷地でも育つ作物への転換だ。しかし、各地の情報を集めてもそんなものは見つからなかった。


 薄々感づいてはいたが、それらはスペインやポルトガルとの南蛮貿易によって日本に持ち込まれたものだったのだろう。


 1541年、まだ南蛮人達は日本に到着していない。おそらく近い内には日本に来てくれると思うが、いつなのかは分からない。最初の上陸地点の九州に人を派遣するか……、日本の端から端って遠すぎるだろう‼︎



 

 遠すぎる。気を取り直して考えるが、これも貧しさの原因の1つだ。


 陸奥は日本という国にとって辺境も辺境、政治、経済の中心地である畿内(近畿地方)から見て陸奥は遠すぎるのだ。


 人口も少ないし、商品も少ない。つまり商業が未発達なのだ。商人達からするとまともな産業もない遠い陸奥国に来る理由がない。


 となると現代知識で石鹸や酒を作って商人達を呼び込もう‼︎としたいところだが生憎、オレはそんなものどうやって作るか知らない。


 まあ、できることからコツコツと進めて行くしかないだろうな……。


 農業に関しては領内の治水。備中ぐわ、千歯こきなど歴史に疎いオレでもなんとなくわかる道具の開発と普及。紙の原料の楮、染料の藍、油の原料の荏胡麻、蚕の餌の桑、塗料や接着剤になる漆、これから日本中で流行る茶、それら商品作物の栽培を奨励して行こう。


 産業に関しては職人達を厚遇して、全国から引き抜きを積極的に行う。長大な海岸線をつかった塩田による塩の生産。領地内外の鉱山の探索、採掘。軍事、農業にも利用できる牛馬の飼育の拡大、できれば豚も輸入したいし、いずれは蝦夷地(北海道)を使って更に大規模な牧畜もやりたい、この時代忌避される肉食も何とかして根付かせないとな。


 商業に関しては領内の港の整備、大型船の建造。日本最北端に位置してるんだ、太平洋側とも日本海側とも交易できるのは強みと言って良いだろう。今の南部領では売るものが殆ど無いので、初めのうちは赤字になるが、前述した農業、産業振興策が軌道に乗ればいずれは黒字転換していくはず……、できれば良いなあ……。


 まあ所詮、オレにできるのは大まかな方針を決めることだけだ。


 細かい所は家臣に押し付けちまおう、信愛とか信愛とか、あと信愛とか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 視点 北信愛



 最近の晴政様は以前とは打って変わって、立派な為政者となられた。


 我々の頭を悩ませていた粗暴な振る舞いもすっかり鳴りを潜め、家臣や民からの信用も回復しつつある。かくいう私もその1人だ。


 以前は人に任せっきりだった政務にも積極的に取り組まれ、家臣に出す指示もより正確に、より具体的なものになった。


 まだ若輩の私にも、晴政様は重要な仕事を次々と任せられる。信頼されるというのがここまで嬉しいものだと思わなかった。


 晴政様の下でこの乱世を駆け抜けて行きたい。


 ふと夜空を見上げると、南部領を照らす満月に主君の姿が重なったように感じた。




どうでしたか?

8話まで書いてみた感想としては、作者的には戦争の話のが筆が良く進みました。

戦争の話は次話から‼︎乞うご期待‼︎

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