野獣と化した晴政。
なんか小説執筆が生活の中心になってしまっている気がします。
疲れてんですよ、サブタイトル見たら作者の頭がヤバい状態なのが、わかるでしょう。
堺での諸々の交渉や気に入った名品の買い付けを終え、晴政は本拠地へ帰る準備を進めていた。
船は日本海側の越前(福井県)に停めてきているので、ここからまた陸路だな。色々な場所を通って行きたいと思って選んだルートだが、正直少し後悔している。
この時代のインフラ事情の酷さを甘く見ていた。北陸から近江、京、堺という黄金ルートなのでそれなりに整備されていると踏んでいたのだが、これがかなりキツイ。
帰ったら南部領の街道も徐々に整備していこう。時代を先取りして、馬車が走れるくらい広くしたいな。そうしたら陸路での輸送の効率も上がるだろう。
道が綺麗だと敵から攻められ易くなるという欠点があるが、南部軍は機動力重視の再編成を進めている。
迅速に守って、迅速に攻める。この戦術のためには道が整備されていた方が都合が良い。一部の道だけを整備することで敵の進行ルートを限定させることも出来るしな。
晴政が宿の一室にて帰ってからの計画をぼんやりと考えていると、襖の向こうから家臣に声を掛けられた。
「晴政様、会談の要請が来ております」
「入れ」
晴政が促すと家臣が襖を開けて平伏する。
「いちいち頭を下げるなと言っているだろう、礼より速さと正確さが肝要なのだ。面を上げよ、続きを言え」
「はっ、細川家の者が晴政様との面会を求めて、表を訪れております」
「何者だ?」
「三好範長を名乗っております。噂によると細川家中で最近台頭して来た、畿内でも一目置かれる実力者だとか」
「良いだろう、入れろ」
細川家の重臣三好家当主、三好範長。
戦国時代最初の天下人、三好長慶その人に相違なかった。
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「名高き北方の雄、南部晴政様にお目通り叶い、光栄に御座います」
良く通る声、鋭い眼差しに溢れ出る覇気。
オカルトなど信じないが、晴政はいわば第六感の部分で、その男から天下の英雄たる気配をひしひしと感じ取っていた。
「畏まり過ぎだ、範長殿。オレなど大したことはない良い家臣に恵まれただけだ」
護衛をしている家臣が、(どこがだ……)といった表情で主君を見ているが、構わず話を続ける。
「噂に違わず謙虚なお方だ。晴政様、本日はご相談したいことがございまして、内密の話です。人払いを頼めますか?」
晴政はすかさず手で合図をする。護衛達は渋ったが、晴政が睨み付けると顔を青くして、そそくさと退室して行った。
晴政自ら部屋の外を見て、誰も聞いていない事を確認すると再び範長に向き直る。
「かたじけない」
「良い。して、内密の話とは?」
「……幼き頃からの私の夢、この乱世を終わらせる事についてです」
いきなり爆弾をぶち込んで来た範長、しかし黙って続きを促す。
「朝廷と室町幕府はこの国を治める力を失って久しい。そして細川家は実質的な政権を握っているにも関わらず、私利私欲のために内乱に明け暮れる始末」
「政権と主家の批判か、確かに内密中の内密だな」
「あなただから話すのです。私はこの状況を終わらせるため、公には言えませんが、既に各地へ根回しを始めています。第一の目的は細川家の追放」
「……」
「しかしそれに悩んでいるのです。細川家との対立を堂々と打ち出せば、更なる混乱を生み出すだけではないかと、日の本の戦乱は余計に長引くことになるでしょう。今ならまだ引き返せる、晴政様、私はどうしたら良いのですか?」
何故だか聞いてて無性にイライラしてくる、オレだってこの戦国の世で数々の人間を見てきた。コイツが心にも無いことを言っていると勘で分かる。嘘臭い匂いがする。
戦国武将の南部晴政としての精神が表に出てくるのを感じる。
……オレのことを馬鹿にしてるのか?
「範長、お前は最低だな」
「なっ⁉︎」
「オレから同意を得て免罪符が欲しかったのか?そんなんは坊主共の役目だぜ。長々と小難しく語って悦に浸っているようだが、やろうとしているのは主家殺し、その次は何だ?将軍か帝でも惨殺するのか?」
「そんなことは一言も……‼︎」
範長が徐々に怒りの表情に変わっていく、今日一番の良い顔だ。無視して畳み掛けるように語る。
「結局のところ、お前はこの国の王になりたいのだ。自分以外の人間が必死に媚びへつらい、自分に対して平伏するのが見たいのだ。オレも含めてな」
「貴様‼︎」
範長が掴み掛かって来るが、修羅の国、日の本辺境の戦いの天才たる南部晴政の体は、それを容易く捌き、逆に投げ飛ばして畳の上に抑え付ける。
「それだ、その剥き出しの激情だ。
先程の外ヅラだけ良い偽物のお前とは違う。
立派な為政者ぶるのを辞めろ、欲望のままにこの国を平らげんとせよ。
傲慢な天下人としてのお前は、
最高だ」
「っ……」
範長が大人しくなったところで、抑えていた身体を放してやる。そして大声で護衛を呼びつけた。
「皆の者‼︎範長殿がお帰りだ‼︎丁重に見送るように」
倒れ伏していた範長が何とか起き上がると、こちらを睨み付けて来る。
「南部晴政……‼︎貴様だけは許さぬ……‼︎いつか望み通りこの国の王となった私に‼︎這いつくばってその頭を地に擦り付けて、平伏するが良い……‼︎」
「来たときより、ずっと良い目をしているでは無いか範長殿。悪名を恐れるなよ、古今東西、圧倒的な暴力以外で王になったものはいない。そしてここまでされておきながらオレを殺すと言わない辺り、やはりお前には天下の器がある。精々励むんだな、最高の奸雄よ」
三好長慶、[日本の副王]とまで呼ばれた当代随一の英雄は、三好家の最盛期を含めて、その生涯の最後まで王を自称しなかった。
晩年、彼は家臣にその理由を問われると、ある男が自らに頭を垂れていないが故に、我はまだ王にあらずと語ったとされている。
後世の歴史家は、これは当時の天皇、もしくは征夷大将軍のどちらかのことを指していると考察しているが、事実は定かではない。
ああ⁉︎主人公がまた南部晴政寄りの精神に‼︎
帰ってこい晴政‼︎いつに増して無茶苦茶だぞ晴政‼︎




