第一話 やっちまった
目を開けると、そこにはボロい木の天井が広ががっていた
いや、広がるというほど広くもないが
ここはどこだろうと考える
背中と後頭部に当たる、柔らかい感触
周りには木で作られた柵
ーーーーそういや転生したのか、俺
瞬間、理解した
すっげ、ほんとに記憶そのまんまだ
「リリカー」
部屋もドアが開いて、知らない女性が入ってきた
誰?
「リリカー、○△□○✕」
優しそうな笑顔を俺に向けてくる
なっ、何言ってるのかわからん
リリカー、しか聞こえない
「お母さんですよー、りりかちゃん」
あ、お母さんどうもです
ちょっとまだ体がなれずに聞こえなかっただけか
ブロンズの短髪を揺らしてこちらに駆け込んできて、柵の中の俺を覗き込む
するとうっとりした顔をして
「あぁ〜、やっぱり可愛いらしい。世界で一番よ」
子供好きの親とは、良いではないですか
ん?てか今の感じだと俺の名前はリリカになってるのか
もうちょっとカッコイイ名前にしてほしかった
「お〜い、帰ったぞー」
男の人の声が聞こえる
流れからしておとうさんだろうか?
ドアから汚れた服を着た人が入ってきた
「ちょっと!こっちに来るのならしっかり洗ってからにして!リリカが汚れるでしょ!」
「いや、でも僕もリリカを早く見た………」
「着替えてから!」
「わ、わかったよ」
腰に手を当てて怒られると、お父さんらしき人はおとなしくドアの向こうに消えた
見事なかかあ天下だが、案外家庭は円満そうだ
「うふふ、リリカちゃーん。ママが遊んであげますからねー」
そう言って笑ってぎゅっと抱きしめられた
柔らかい胸の感触が…………
なんだかものすごい落ち着く
ただ、ドキドキとか、そう言う感情は湧いてこない
なぜだ?まだ子供だからだろうか?
「おおー、やっぱりリリカは可愛いなー」
いつの間にか着替えてきたお父さんまで抱かれてる俺を見ていた
声と同じで、優しそうな顔つきをしている
見ていてくださいお父さん、お母さん、きっと強くなって可愛いではなくかっこいいと言わせてみせますからね!
「ふふ、どうしたのかしらこの子?なにか張り切ってるわ」
「この時期にすでに目標があるなんて、将来有望だな。ハハ」
「当たり前でしょう!こんなに可愛い私のリリカがそこらへんのモブで終わるはずがないわ」
期待しててください、神様にもらった力もあるから努力すれば何とかなるはずなので!
「ああ〜、でもなんでリリカはこんなに可愛いのかしら?本当に天使みたいだわ」
またうっとりするお母様、まだ鏡見てないからわからないが、俺ってもしかして結構容姿がいいのかな?
隣のお父さんも頷いてるし
嫌でも生まれたばっかの赤ん坊なんてみんな可愛いもんか?
そう言ってまた母は俺をギューッと抱きしめる
うぐっ、苦しい
「うっ…………」
「か、母さん。強く占め過ぎだよ」
「え?………あっ!ごめんなさいリリカ!」
「うっ、………いや、大丈夫ですよ」
「そう、よかったわ」
俺を抱く手を緩めて安堵するお母様
全く、父様の助言がなかったらどうなっていたか
結構馬鹿力かもしれない
「ご、ごめんなさいねあなた?さっきあなたの事、叱っておきながら………………?どうしたの?」
「か、母さん…………」
「?どうしたのよ?」
父様が人差し指で俺を指差しながら、手を震えさせて狼狽している
え?どうしたの?なんかこわいんだけど?
「り、リリカ?」
「?なんでしょうか?」
自分の名前らしきものを呼ばれたのでとりあえず答えた
一体なぜこんなに驚いているのだ?
ん?
気がつくと俺を持つ母様の手も少し震えている
お、俺なんかした?
「リリカ、………あなた」
「?」
「言葉が話せるの?」
「……………え?」
間抜けな声が出た
え?なんだって?は?
ーーーーあっ
やっちまった