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プロローグ 仕事しろ

 憧れていた

 テレビの中で、雑誌の中で、絵の中で戦う少年少女に

 羨ましかった

 努力をして、報われて、友達や、恋人と笑い合う少年少女が

 

 だからかもしれない


「ああ、まさかこんなバカみたいな終わり方がほんとにあるなんてな…………」


 真っ白な何もない世界で俺はつぶやいた

 友達がいた、困っていた、救いたかった

 

「はは、危ない事に首突っ込んでたのは知ってたが、ほんとに死んじまうとわな」


 その言葉が自嘲気味なのだと言うことは、自分でも分かった

 ただ、テンプレートみたいな死に方でも、自分の憧れた者たちと同じような死を遂げられたなら

 かっこいいと思える死を遂げる事ができたなら、それでといいかと思える

 後ろからバットで殴られて終わり

 どこまでもテンプレート

 この真っ白い死後の世界も、そして……………


「てことはテンプレート的に、お前が女神様?」

「分かっているのなら敬語を使いなさい敬語を」


 そう言ってぷりぷり怒る、目の前の白髪の美少女

 ムーっと頬をふくらませる

 

「そんで?俺はどこに転生すんだ?」

「話が早くて助かりますね。あなたには、今からラグ・アスラという、いわば、剣と魔法の世界に転生されてもらいます」

 

 マジでテンプレートだった!

 教科書あったらそのまま持ってきている感じだ

 

「………で?俺は魔王でも倒せばいいの?」

「いえいえ!とんでもないです!そんな事しなくていいですよ!」

「え?しなくていいの?」


 ここは教科書とは違うらしい、ついでに魔王がいることがわかった

 おっかねー

 まあ、それはとりあえずおいておいて


「じゃあなんで俺はここに呼び出されたの?」

「ええ、それなんですがね?実は、その世界は転生される方々になかなか人気のある世界でして、人が多すぎるので抽選で転生者を選ぶことになったんです」

「あ〜、なるほど。それで俺が選ばれたと」

「ええ、そういうことです」


 顔を綻ばせて肯定された


「でもここに俺を呼んだってことはそれだけじゃないんだろ?それだけなら何も言わずに転生させればいいもんな」

「はい、ほんとに察しが早くて………というが、話が早くて助かりますよ」

「まぁ、よく知ってるからな」


 こういう異世界転生物は


「で?用件とやらは?」

「転生するにあたって、あなたに能力を一つ差し上げます」

「うん、だと思ったよ」

「何かありませんか?」

「その前になんで俺だけ?」

「実はですね?あなたの地球での行動を、天界の神たちがずつ見ていたんですが…………」


 ああ、まあ、たしかに悪いことをした覚えはないしな、回り回っていいことがあると言うが、まさか死んだあとに回ってくるとは思わなかった


「それ見て神たちみんな号泣で」

「泣いてねぇで助けろよ神共」

「いや、それが。私もなんだか見ていられなくって、救済を与えようとしたのですが………『おい、今いいとこなんだよ!』『邪魔したら堕天させんぞゴラー!!』と言われてしまいまして」

「もう一度言うぞ?泣いてねぇででさっさと助けろ神共」


 自分の娯楽のために人の人生狂わすとか、愚神もいいところだ

 さっさと地に落ちろ、何なら俺とそこ交代しろ

 お前らに地獄見せてやる


「でぇ、ちょっと罪悪感あったので、上に行って許可もらってきました」

「俺の転生利用そんなショボかったのかよ………………!」


 いや、それでもなんか貰えるんだったらもらうけども


「それで、何がいいですか?何でもよろしいですよ?」

「何でも?」

「ええ、最強の魔法でもいいですし、モテモテ能力でも………。何なら無条件で尽くしてくれる美少女なんてどうです?」


 ああ、どれもいいな。正直どれもらっても困る気がしない

 ただ………


「なんでもいいのか?」

「ええ、もちろんです」


 そうか、なら決まっている


「ーーーーなら、どんどん強くなる。努力すれば努力するだけ強くなる。そんな能力がほしい」

「努力すると強くなる能力、ですか?」

「ああ、そうだ」

「本当によろしいのですか?強くなりたいのであれば、もともと最強でも良いのですよ?」

「いや、これでいい。俺がなりたいのはそういうやつじゃないからな」


 俺が憧れたのは、困難に立ち向かっていって、そのたびに成長していく、そんなやつだからな


「わかりました」


 そう言って俺から少し距離を取る


「それでは転生を始めます。準備はよろしいですか?」

「おう、どんとこい」


 首を傾げて問うた彼女に、胸を張っていった

 そうして彼女は微笑んで


「幸せな生活を送ることを祈っています」

「祈るだけじゃなくて、助けてくれると有り難いんだがな」

「ふふふ、そうですね。次はそうできるよう、私も精進します」

「………ほんとに頼むぜ?」

「心配しすぎですよ」

「そうか?」

「ふふ、では」


 彼女は手を組むと目をつぶり、すると周りに光が現れ、俺に収縮していく

 なんか想像してたよりすげーな………

 転生か………


「なあ、お前とはもう会えないのか?」

「え?」

「いや、転生だから、お前神だし、もう会えないの少し寂しいな〜と」

「ほんとに面白い方ですね。そんなこと今まで言われたことありませんでしたよ。ふふ」


 そう言って笑って


「たまにそちらの世界にも降りますので、そもときは仲良くしてくださいね」

「そっか、分かった」


 光が強くなっていって


「じゃあな、女神」

「ええ、良い異世界ライフを」


 目の前が温かい光に包まれると、俺の意識は少しずつ飛んで行った

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