5人の妖精と冬の女王
季節はなんかいもめぐるもの、あたりまえのことだけど。
それは、みんながそれぞれの季節を大切にすごしたとき、神さまのような4人の王様が満足して、次の季節の王様にバトンタッチするから。
だから、心残りがあると王様は満足できなくて、春がおそくなったり、冬が終わらなかったりして、次の季節がたいへんなことになる。
季節の王様のしたには“春”、“夏”、“秋”、”冬“、リーダーである“年“の5人の妖精がいました。
妖精たちは、季節が終わりに近づいたとき、王様たちが満足して次の季節にバトンタッチができるようにする役目を、神さまからもらっていました。
冬の女王はつめたく、いつもほかの女王をうらやましくおもっていました。
「どうしてわたしの季節はこんなに寒いの?」
冬の女王はじぶんの季節のことがきらいでした。
「それに、冬はみんな冬眠で寝ちゃうから、ひとりぼっちになってばかり、せっかくわたしの季節になったのにすぐに終わっちゃう。」
するとそこに5人の妖精がやってきました。いつも冬の女王を満足させるのはたいへん。
だけどもみんな冬の女王のことが大好きでした。
「冬の女王様、今年もすばらしい冬をありがとうございます。」
「女王様、ありがとうなのー!」
リーダーの“年”があいさつをすると、4人の妖精も声をそろえてあいさつをしました。
だけど冬の女王はどこか不機嫌。
「ちっともすばらしくないわ!だってここにはキレイなお花も咲かないし、みんなは寝ているし、それに寒くてしかたないわ!」
冬の女王は冬に満足していません、これでは冬が終わらなくなってしまいます。
冬が終わらないと生き物たちはおきられず、花は咲かずたいへんです!
妖精たちは困ってしまいました。
そこで妖精たちは話しあい、冬の女王が満足できるように、妖精たちがそれぞれプレゼントをすることにしました。
「冬の女王様、 今からわれわれ5人の妖精が女王様に残りの冬を満足してすごしていただくために、女王様のほしいものをプレゼントします。」
すると冬の女王のきげんはすこし良くなりました。
まずはいちばんのしもべである冬の妖精から。
「ほんとう?じゃあ寒くてしかたないから、暖かい家がほしいわ。」
冬の妖精は考えました。冬の妖精は思いつき、魔法でまわりの雪をかき集めておおきなかまくらを作りました。
「これで、女王様に冷たい風はあたらないの!」
冬の女王は寒さが和らいで、少しだけ満足しました。
次は春の妖精のばんです。
「さっきより、あたたかくなったけれど、からだのなかはまだ寒いわ。暖かい飲み物をちょうだい。」
春の妖精は少し考えると思いつき、魔法で暖かくておいしいシチューをつくりました。
「これで女王様のからだはポカポカなの!」
女王様はシチューを食べるとからだが温まりよろこびました。
次は夏の妖精のばんです。
「つぎはキレイなお花がみたいな、とってもキレイでおおきなお花!」
夏の妖精は困りました。それは春の妖精の特技で夏の妖精は苦手でした。けれど夏の妖精はいいことを思いつき、魔法で冬の空におおきな花火を咲かせました。
「女王様に花火なの!とってもキレイなの!」
冬の女王様は大喜び、だけどまだ満足にはなっていません。
次は秋の妖精のばんです。
「それじゃあ、冬は退屈でしょうがないから、なにかおもしろいものをちょうだい。」
秋の妖精は悩みました。考えに考えて秋の妖精はとってもおもしろい本を魔法でつくりだして、冬の女王にプレゼントしました。
「この本を読めば、女王様に退屈なんてないの!」
冬の女王は、はじめはあまりうれしくなさそうでしたが、読みはじめるとおもしろくなり、夢中になりました。
冬の女王は妖精たちのプレゼントにとても満足しました。
だけど冬の女王が満足したのは妖精たちのプレゼント。冬の女王は冬の季節には満足していなかったのです。
「どんなにあなたたちがステキなプレゼントをくれても、わたしは冬の季節はさみしくてキライなの!だってあなたたちだってプレゼントを渡し終わったら、いなくなるでしょ!」
冬の女王はとつぜん泣きだしました。
「女王様泣かないで!元気だすの!」
「女王様、お泣き止みください、あなたの涙にわたしたちは敵いません。姿がきえてしまいます!」
神さまは妖精たちに冬の女王に満足してもらうように命じました。
だから満足させることができないと、妖精たちは姿を現実世界にとどめることができなくなってしまいます!
「ウェーン、ウェーン」
それでも冬の女王は泣き止みません。
ついに妖精たちは姿をとどめられず、きえてしまいました。
冬の女王は本当にひとりぼっちになってしまいました。
「ヴェーン、ヴェーン」
冬の女王はさっきよりも大泣きになりました。
まわりの雪もだんだん強くなり、大吹雪になってしまいました。たいへん、このままでは本当に冬が終わらなくなってしまいます!
それでも冬の女王は泣きつづけます。
「ウェーン、ウェーン」
冬の女王はしばらくすると泣き疲れて、泣き止みました。
「やっぱりわたしは冬の季節がキライだわ、みんな結局どこかに行っちゃって、いつもわたしをひとりぼっちにする。」
冬の女王はとてもさみしい気持ちになりました。
さみしい気持ちはどんなにおいしいスープをのんでも、どんなにおもしろい本を読んでも、きえることはありませんでした。
しばらくひとりぼっちでいると、さっきの妖精たちのことを思い出しました。
「あの子達はわたしが満足するために、とっても頑張ってくれた。なのにわたしは、わがままをいってばかり。」
冬の女王はもう一度、5人の妖精たちに会いたくなりました。
「そういえば、あの子達にまだお礼をいってなかったわ。一人一人にありがとうをいいたい。」
冬の女王はふと、5人目の“年”の妖精から、まだプレゼントをもらっていないことを思い出しました。
「もし叶うなら、もう一度みんなに会わせてください。」
冬の女王は両手をくんで真剣にお願いしました。
さっきの大吹雪はしずかになり、まわりも静かになりました。
『やっぱり、冬は寒いね~。』
『寒すぎるだろ、“夏”の俺にはやっぱり苦手だぜ。』
『冬はキラキラして、とてもキレイだね。』
「僕たちがおねがいして連れてきたの~!」
なんと春の女王、夏の王様、秋の王様を5人の妖精たちがそれぞれの季節から連れてきたのです!
冬の女王の5つ目の願いが叶ったのです!
『いままで、お前はよく冬のつらい季節をひとりでがまんしてきた。だけどこれからは毎年、1日だけど夏の俺と、春と秋が一緒にいてやるから心配するな。』
『そうだよ、キレイなお花なら私が“春”の力で咲かせてあげる。ほらっ』
『冬の女王のよんでいる本、すごくおもしろそうだね、僕にも読ませてもらってもいいかな?』
「僕たちも一緒に女王様とすごすの!」
「“年”の妖精であるわたしには、彼らを1日この季節にとどめておくことが限界です。」
冬の女王は泣き出しました。だけど今回はさみしくて泣いたわけではありません。
「みんな冬に来てくれてありがとう!」
妖精たちはそれぞれの魔法でおいしい食べ物や、たのしいオモチャ、キレイな灯りをともして
冬の女王が冬のことが好きになるように、精一杯みんなでパーティーをしました。
冬の女王はもうすっかり、さみしくなくなりました。
みんなのおかげで冬の女王は冬のことが大好きになりました。1日だけどみんなにあえて、こんなに楽しいパーティーができるから。