表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

優しい思い

 お盆休みに、長野の友人宅を訪れる事にした。

 東京からは、関越自動車道から上信越自動車道へと入り、インターを下りてから更に一時間ぐらい走った山の中だ。

 去年の暮れのボーナスで買ったSUVでの初めてのロングドライブとなる。

 

 お盆の休暇時期ともなれば、当然のように渋滞が予想されるので、昼間に仮眠を取り、出発は日が暮れてから、友人宅には翌朝に到着する予定を立てた。

 それでも、同じ様な事を考える人間が居るようで、関越道は一部で渋滞していたが、上信越道に入る頃には車も減り、スムーズなナイトドライブを満喫できた。


 予定が狂い始めたのは、上信越道のインターを下りる頃だった。

 夜空に電光が走り、フロントガラスに大粒の水滴が当たり始める。

 直ぐに雨は本降りとなって、ワイパーを忙しなく動かさないと視界が保てないほどになった。


「まいったなぁ……これじゃ撥水加工でも太刀打ち出来ないか……」


 幸い、カーナビがあるので道に迷う心配は無いが、山道の視界は悪い。

 彼女に出会ったのは、そんな時だった。

 見通しの良い直線道路で、手を振る人影があった。

 こんな土砂降りの夜に、どうしたのかと車の速度を緩めると、道路脇には赤い軽自動車が停まっていた。


「すみません、急に車が動かなくなってしまって……この先の所まで乗せて行ってくれませんか?」


 そういう事ならば断る理由も無い。

 助手席には、菓子やCDが置いてあったので、後部座席に乗ってもらった。


「すみません、シートが濡れてしまって……」

「あぁ、大丈夫ですよ、気にしないで下さい」


 雨に打たれたからか、彼女は少し青白い顔をしていたので、エアコンの設定温度を少し上げた。


「この先のカーブ……急なので気を付けて下さい……」

「トンネルを抜けると、直ぐに右カーブになります……」

「下り切って、直ぐに曲がりますから、気を付けて……」


 彼女は地元の人らしく、危ない場所を後部座席から教えてくれて、視界の悪い中でもヒヤリとする事も無かった。


「シートを濡らしてしまって、ごめんなさい……」


 友人宅のある集落へ着いた所で、彼女はふっと姿を消した。

 きっと、とても優しい人だったのだろう……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ