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第二百十五話 かりそめの力を得た者

 










「な、なんだ、これは!?」


 クレイグが玉を飲み込んだ瞬間、彼の身体を光が包んで姿が見えなくなる。

 さらには、魔力の風が吹き荒れて近づくこともままならない。


「族長!!」

「どうされましたか!?」


 そんな時、異変を感じ取ったドラゴンたちが駆けつける。

 アリスはクレイグを睨みつけながら、小さく声を出す。


「わからない。ただ、クレイグが何かを……」

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」


 アリスの声をかき消すように、ドラゴンの咆哮が上がった。

 光と風が収まると、クレイグがいた場所に立っていたのは巨大なドラゴンであった。


 だが、その姿はクレイグとは思えないほど強く大きかった。

 本来の彼を一回り、二回り大きくした体格に、赤い鱗もどこかどす黒く変わってしまっていた。


「貴様、クレイグか……?」

「どうして、外に出ている!?謹慎を命じられていただろう!?」


 アリスの危機に駆けつけた純血のドラゴンたちがクレイグを見て驚愕する。

 そんな彼らを見下ろし、クレイグはつまらなそうに鼻を鳴らした。


「……ふん。ピーピーと喧しいな、純血」

「なんだと!?」

「混血風情が、調子に乗りおって……っ!!」


 クレイグの言葉に、純血たちはドラゴンの身体へと変身する。

 そして、怒りのままにクレイグ目がけて襲い掛かった。


「ま、待てっ!!今のクレイグはなにか……っ!!」


 二人のドラゴンを制止しようとするアリス。

 というのも、クレイグの姿がまさに異常だったからである。


 本来であれば、純血のドラゴンを二人相手にして、クレイグに勝ち目なんてない。

 しかし、アリスの直感が今のクレイグは非常に危険だと警鐘を鳴らしていた。


「おぉぉぉっ!!」

「くたばれ!!」


 だが、混血風情に馬鹿にされたと頭に血が上っている純血たちは、アリスの忠告に立ち止まることなくクレイグに接近する。

 みるみるうちに接近していき、純血の牙が届こうとしたとき……。


「ふんっ!!」

「がっ……!?」


 クレイグはその場でくるりと身体を回転。

 鞭のようにしなった尻尾が、純血のドラゴンを二人とも吹き飛ばした。


「なっ……!?」


 これには、アリスも目を見開く。

 クレイグの攻撃に、純血を二人同時に吹き飛ばすほどの力があっただろうか?


 少なくとも、つい先ほどアリスに叩きのめされたドラゴンとは似ても似つかない。


「…………これが、力か」


 クレイグは改めて自身の力を実感したように、身体を見下ろす。

 まるで、内部から力が湯水のようにあふれ出るようだ。


「なるほどな。純血共が力の劣る混血を見下していた気持ちが分かるぞ。弱者は、なんと滑稽なのだ」

「クレイグ。貴様、いったいどうやって……」


 一人でクレイグは納得する。

 今の自分は、強力な純血よりも強い存在となった。


 そうなってから世界を見てみると、今までとはまるで違った世界になっていた。

 これだけの力を持っていれば、振るいたくもなるだろう。他者を格下に見たくもなるだろう。


 アリスの言葉に、クレイグは仕方なく答えてやることにした。


「魔王軍のヒルデ。奴からもらった玉を使った。素晴らしいな……俺がドラゴン族を支配したら、魔王軍と強い協力関係を結ぶ必要がありそうだ」

「貴様……っ!!懲りもせずにまた魔王軍の力を……!!」


 ギリッと牙を強く噛みしめるアリス。

 魔王軍が侵入してきたせいで、純血のドラゴンの一人が重傷なのである。


 それに、リースやマスターにも攻撃を仕掛けた魔王軍を敵対視しているアリスは、魔王軍と手を組もうとするクレイグに怒りを隠せない。

 そもそも、協力関係で終わるはずもない。


 組織の規模で言えば魔王軍の方が比べものにならないほど大きいし、ドラゴンとしての戦闘力が低い混血が増えているドラゴン族では、いずれ飲み込まれてしまうだろう。

 しかし、クレイグはそんなことを考えることもできない。


「ふん!お前が何を言おうと聞く耳持たん。貴様を……いや、この集落中にいる純血共を皆殺しにして、俺が新たなドラゴン族を束ねる族長となろう」

「ちっ……!」


 ズズズっと殺気を溢れ出させるクレイグに、アリスは自身もドラゴンへと変身しようとする。

 そんな時、この緊迫した状況に似合わないのんびりとした声が聞こえてくるのであった。


「……何してんだ、お前ら?」

「あ、姉上!」


 声をかけたのは、両手で苗木をたくさん抱えたリースであった。

 嫌々苗木を取って戻ってきたら、妹とドラゴンが睨み合っているではないか。


 そのドラゴンというのも、警備のためとはいえ襲い掛かってきた心証の悪いクレイグだ。


「リースか。ドラゴン族最強の黒龍……」

「……何で気安く名前を呼ばれているのかわからないんだが……」


 見定めるような目で見られて、気持ち悪そうに身をすくめるリース。

 クレイグに話しかけたくもないので、妹であるアリスに話しかける。


「なんだ、この状況?」

「姉上。こいつ、変な玉を飲んでから急に……」

「変な玉……?」


 いまいち、何を言っているのかわからないリース。

 それを見ていたクレイグが口を開いた。


「変な玉とは言い様だな、アリス。あれは、俺に本当の力を授けてくれた素晴らしいものじゃないか。……そうだ。俺が族長になったら、あれを混血のドラゴンたちのために輸入しよう。素晴らしいドラゴンたちになるぞ……!」

「なんだこいつ、キモイ」


 口を開いたと思ったら意味の分からないことをニヤニヤと笑いながら話すクレイグに、リースは身を彼から遠ざける。

 まあ、彼女にとってはいきなり性格が大胆に悪い方向へと変貌し、到底かなうことのない未来を語っているのだから仕方ないかもしれない。


 しかし、クレイグの目は怒りの炎が宿る。


「……口の利き方がなっていないな、リース。俺は、ドラゴン族の長となるものだぞ」

「本当に、なんだこいつ」


 妄言も大概にしろとリースは目で訴える。

 それを馬鹿にされたと捉えたクレイグは、ついに実力行使にうって出る。


「わからないんだったら、わからせてやろう。今の俺は、お前をも超える最強のドラゴンになったということをなぁぁっ!!」

「うぉっ!?」


 赤黒いドラゴンがリースに襲い掛かる。

 リースもこのままでは分が悪いと、慌てて黒龍の姿へと変貌する。


 人間の形態のままかつてのクレイグやラスムスを撃退した彼女であったが、今のクレイグに人間の状態で戦うのは非常にマズイと直感していた。

 彼女は翼をはためかせて飛び上がり、クレイグの突進から避ける。


 リースもそれほどドラゴンの集落に思い入れはないが、今は妹の統括する集落である。

 そこに被害は出すまいとして、飛びあがった状態から集落の外へと向かって行く。


「はっ!逃がさんぞ!!」


 そして、まずはリースからだとクレイグも追いかける。


「……はっ!?だ、誰かいるか!?救護班を呼べ!それと、今から何があっても集落から出るなよ!!」


 この場に取り残されたアリスであったが、すぐに我に返るとクレイグに打ち倒されたドラゴンたちの回復を命じ、さらに集落から出ないよう厳命する。

 あのパワーがとんでもないほど押し上げられたクレイグと、最強のドラゴンであるリースの激突の余波に巻き込まれれば、一般のドラゴンたちは身が持たないと判断したのである。


 そこまで言うと、アリスはすぐに翼を部分展開して飛び上がり、リースとクレイグが去った方角へと飛んだ。


「姉上!!」


 彼女の目には、ただ肉親を心配する色が宿っていたのであった。




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